長らくのご愛読ありがとうございました
2005年3月23日 封切日本映画
当ブログが最後に紹介するのは「ローレライ」。フジテレビ映画事業局長の亀山千広が世に送り出した底抜けスペクタルファンタジーでございます。監督は特撮界のトップランナーである樋口真嗣。「ガメラ」シリーズの特撮を担当したのは知ってたけど若い頃に香港のゴールデンハーベストで仕事したり、「新世紀エヴァンゲリオン」にも参加してたとかは知らなかった。
原作は「亡国のイージス」の福井晴敏ですが、実は本作は映画のための書き下ろしで樋口監督に「亡国のイージス」みたいな話を作ってくれ、と頼まれて書いたものです。「第二次大戦」「日本軍最後の潜水艦」「女の子」の3つをテーマにリアルよりもファンタジーに振り切った方向で福井氏は書いたそうです。確かにローレライシステムなど無理ありすぎですし、最後の吶喊を含めて「んな、アホな!」なところが多かったです。が、それは狙いであって彼らが作ろうとしてたのはアニメが最も得意とするファンタジー戦記ものだったのです。
はっきり言いますとこの映画はそんなに面白くありません。登場人物が多い分、一人一人の書き込みが薄い。ストーリーの背景が見えてこないので、共感できるキャラクターが少ないのだ。鶴見辰吾がやった諜報主任などもう少しクローズアップしてもよかったと思う。役所広司の演説シーンが泣かせ所なんだろうが、何回もやるのでしらけてしまうのだ。あんたはアル・パチーノかと思ってしまうのだ。
大味で物足りない作品ですが、「なんか面白そう」と思わせる娯楽映画の水準は保っています。これこそが亀山千広の映画作りではないのかと思うのです。「踊る大捜査線」も犯罪解決よりも組織の一員としての刑事を扱ったドラマでした。さおの従来と違ったドラマ作りに「なんか面白そう」と思った観客が足を運び、その等身大の刑事に共感を抱いた観客によってあの「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」の大ヒットが作られました。私はあんまり面白いとは思いませんが、ヒットするだろうと思いました。そしてこの「ローレライ」もヒットしている。
亀山千広は「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」や「ローレライ」のような大作路線と並行して「レイクサイドマーダーケース」(この映画はフジテレビが完全出資)や「スウィングガールズ」のような作品を手がけいます。「踊る大捜査線」以降、同じような大作映画は作られていますがほとんどコケています。そうした中でこの人の活躍は興味を持たせます。日本映画のキーパーソンの一人であることには間違いないでしょう。
本日をもって当ブログの更新は終了します。活動は二年と5ヶ月ですか。よくもまあ続いたものです。長らくのご愛読ありがとうございました。今後もhttp://d.hatena.ne.jp/tetorapot/で変わらず、活動は続けますのでよろしくお願いいたしますです。
原作は「亡国のイージス」の福井晴敏ですが、実は本作は映画のための書き下ろしで樋口監督に「亡国のイージス」みたいな話を作ってくれ、と頼まれて書いたものです。「第二次大戦」「日本軍最後の潜水艦」「女の子」の3つをテーマにリアルよりもファンタジーに振り切った方向で福井氏は書いたそうです。確かにローレライシステムなど無理ありすぎですし、最後の吶喊を含めて「んな、アホな!」なところが多かったです。が、それは狙いであって彼らが作ろうとしてたのはアニメが最も得意とするファンタジー戦記ものだったのです。
はっきり言いますとこの映画はそんなに面白くありません。登場人物が多い分、一人一人の書き込みが薄い。ストーリーの背景が見えてこないので、共感できるキャラクターが少ないのだ。鶴見辰吾がやった諜報主任などもう少しクローズアップしてもよかったと思う。役所広司の演説シーンが泣かせ所なんだろうが、何回もやるのでしらけてしまうのだ。あんたはアル・パチーノかと思ってしまうのだ。
大味で物足りない作品ですが、「なんか面白そう」と思わせる娯楽映画の水準は保っています。これこそが亀山千広の映画作りではないのかと思うのです。「踊る大捜査線」も犯罪解決よりも組織の一員としての刑事を扱ったドラマでした。さおの従来と違ったドラマ作りに「なんか面白そう」と思った観客が足を運び、その等身大の刑事に共感を抱いた観客によってあの「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」の大ヒットが作られました。私はあんまり面白いとは思いませんが、ヒットするだろうと思いました。そしてこの「ローレライ」もヒットしている。
亀山千広は「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」や「ローレライ」のような大作路線と並行して「レイクサイドマーダーケース」(この映画はフジテレビが完全出資)や「スウィングガールズ」のような作品を手がけいます。「踊る大捜査線」以降、同じような大作映画は作られていますがほとんどコケています。そうした中でこの人の活躍は興味を持たせます。日本映画のキーパーソンの一人であることには間違いないでしょう。
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今年も多くの有名人が亡くなったが、中島らもの死は本当に突然であった。関西ローカルで「最後の晩餐」という深夜番組があって笑福亭釣瓶やキダ・タロー、浜村純に混じって中島らももそのレギュラーだったのだが、この中から誰が一番早く死ぬかと言えば還暦を過ぎた浜村先生、キダさんよりもらもだと俺は思っていた。それぐらい、顔色が悪くて死にそうに見えたのだ。死ぬとしても、すさまじい闘病生活(もちろん肝臓ガンで)か自殺かシャブによる中毒死などの派手な死に方だろうと勝手に思っていたのだが。しかし、死は案外にあっけないものである。ちなみに番組の中で自分の臨終を語る、という企画があってらもは病院で「またババもれた」を遺言にして朽ち果てるつもりだった。
今日、紹介するのは中島らも原作の映画化作品である「お父さんのバックドロップ」。この作品ははらもが1989年に学研で子供向けに書いた短編で今まで何回か映画化が試みられてきた作品です。らも原作の映画化は「Lie Lie Lie 」に続いてこれが二作目。監督はテレビの人で「投稿!トクホウ王国」「神出鬼没タケシムケン」などのバラエティや「明日があるさ」などのドラマを手がけた李闘士男(今年は在日の監督が多かったなあ)で脚本はどんな素材でも見事に映像化させる稀有な脚本家、鄭義信。今年、この人は「血と骨」「レディ・ジョーカー」もあったし、大忙しだっただろう。
時は1980年の大阪。コリアンタウンの小さなアパートに新世界プロレスの看板レスラー下田牛之助(宇梶剛)が息子の一雄(神木隆之介)が祖父の松之助(南方英二)を頼って引っ越してきた。大勢のプロレスラーが荷物を運ぶさまを同じアパートに住む哲夫(田中優貴)はびっくりしながら眺めていた。彼は母親と二人暮し。焼肉屋を切り盛りしていた母の英恵(南果歩)は牛之助の幼馴染。羨望の目で牛之助を眺める哲夫と対照的に一雄はさめた目で父を眺めていた。クラスメイトになった二人だったが一雄は哲夫に父がプロレスラーであることを固く口止めするのだった。
牛之助は彼の所属する小プロレス団体の「新世界プロレス」の看板レスラーであった。だが、彼も40歳を過ぎた中年レスラー。経営者の菅原(生瀬勝久)に頼まれて、不本意ながら悪役(ヒール)をやっていた。そんな父を一雄は憎んでいた。母親が病気で亡くなるときに父は試合のために立ち会えなかった。一雄は母親が恋しくて毎晩、VHSで録画した家族のビデオを見て涙ぐんでいた。牛之助も息子のことをかまってやりたいのだが、時間的には難しい。髪を金髪に染めた悪役に転向してから一雄はますます父のことを皆に隠すようになった。親子の溝は深まる一方であった。。。
例によって映画をみてから原作を読んだ。まず驚いたのは原作は50ページに足らない短編であること。よくこれを98分の映画にしたものだ。原作では牛之助は大きなプロレス団体の悪役レスラーでジャイアント馬場をモデルにしたと思われる選手の敵役となっています。映画では引退寸前のレスラーが素人に「プロレスなんて八百長なんだろ」と言われて激怒するシーンがありますが原作はもっとすごい台詞がある。「俺が悪役レスラーをやっているのは、人が嫌がる誰かがやらなくちゃいけない役割をやっているからなんだ。小学校でも花のせわをする当番の子もいれば、便所そうじの子もいるだろう。世の中なんて、みんなそれぞれの役割でなりたつんだ」と説明する牛之助に対して一雄は「お父さんがプロレスに行ったのはほんとうの勝ち負けのある世界にいるのがこわかったんだ。お父さんは逃げたんだ。ぼくはそうやって、花の当番ばかりしているお父さんみたいにはなりたくない」と言い捨てる。私はプロレスファンではないが、中島らもが書きたかったことはわかる。なかなかこんなことを書けやしない。
映画ではこうしたプロレスへの言及をばっさりと落としてこの台詞も出てこない。映画で最も重心がおかれているのは親子の絆である。ラストの格闘家への挑戦も家庭で居場所がない親父が息子に「分かって欲しいやないか。お父さんはお父さんで頑張ってるって」という思いを届けるための挑戦とされています。泥臭いと言えば泥臭いんだが、シンプルにまとまってよかったと思う。李監督が目指したのはイタリア映画。地味ながら庶民の暮らしを丁寧に描いて笑わせながら泣かせる。関西人は昔からイタリア人に気性が似ていると言われるので大阪の下町を舞台にしたのは成功。
丁寧に描いていた大阪の下町がいい。ごちゃごちゃしてて、貧乏だけど底抜けに明るいみたいな感じ。李監督は大阪生まれで下町(多分、鶴橋か天王寺あたりだろう)で過ごしてその雰囲気を再現してみたかったらしい。この監督なら「じゃりン子チエ」の映像化ができるかもしれない。細かいところもきっちり描いています。焼肉屋の騒然とした感じもよい。
らもは試写でこの作品を見ており、感動して大泣きしていたそうです。「父と息子のつながり、憎悪を描いた感動の名作である。俺はこの作品の原作者で脚本も先に読ませてもらっていたがラストになると滂沱の涙を流した。これは監督の力量だろう」という最大限の賛辞を送っています。映画でも散髪屋の役でちょっぴりだけ出演しています。2004年7月26日永眠。享年52歳。中学生の頃から積極的なファンではなかったですが常に気になっていた有名人でした。早い、早すぎる。合掌。
監督:李闘士男 脚本:鄭義信 プロデューサー:原田泉 エグゼグティブプロデューサー:李鳳宇 原作:中島らも 撮影:金谷宏二 美術:佐々木記貴 音楽:cobaキャスト:神木隆之助、宇梶剛士、南方英二、南果歩、生瀬勝久、田中優貴、奥貫薫、AKIRA、コング桑田、荒谷清水、新屋英子、清水哲郎、エヴェルトン・テイシェイラ、笑福亭釣瓶、中島らも
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時は1980年の大阪。コリアンタウンの小さなアパートに新世界プロレスの看板レスラー下田牛之助(宇梶剛)が息子の一雄(神木隆之介)が祖父の松之助(南方英二)を頼って引っ越してきた。大勢のプロレスラーが荷物を運ぶさまを同じアパートに住む哲夫(田中優貴)はびっくりしながら眺めていた。彼は母親と二人暮し。焼肉屋を切り盛りしていた母の英恵(南果歩)は牛之助の幼馴染。羨望の目で牛之助を眺める哲夫と対照的に一雄はさめた目で父を眺めていた。クラスメイトになった二人だったが一雄は哲夫に父がプロレスラーであることを固く口止めするのだった。
牛之助は彼の所属する小プロレス団体の「新世界プロレス」の看板レスラーであった。だが、彼も40歳を過ぎた中年レスラー。経営者の菅原(生瀬勝久)に頼まれて、不本意ながら悪役(ヒール)をやっていた。そんな父を一雄は憎んでいた。母親が病気で亡くなるときに父は試合のために立ち会えなかった。一雄は母親が恋しくて毎晩、VHSで録画した家族のビデオを見て涙ぐんでいた。牛之助も息子のことをかまってやりたいのだが、時間的には難しい。髪を金髪に染めた悪役に転向してから一雄はますます父のことを皆に隠すようになった。親子の溝は深まる一方であった。。。
例によって映画をみてから原作を読んだ。まず驚いたのは原作は50ページに足らない短編であること。よくこれを98分の映画にしたものだ。原作では牛之助は大きなプロレス団体の悪役レスラーでジャイアント馬場をモデルにしたと思われる選手の敵役となっています。映画では引退寸前のレスラーが素人に「プロレスなんて八百長なんだろ」と言われて激怒するシーンがありますが原作はもっとすごい台詞がある。「俺が悪役レスラーをやっているのは、人が嫌がる誰かがやらなくちゃいけない役割をやっているからなんだ。小学校でも花のせわをする当番の子もいれば、便所そうじの子もいるだろう。世の中なんて、みんなそれぞれの役割でなりたつんだ」と説明する牛之助に対して一雄は「お父さんがプロレスに行ったのはほんとうの勝ち負けのある世界にいるのがこわかったんだ。お父さんは逃げたんだ。ぼくはそうやって、花の当番ばかりしているお父さんみたいにはなりたくない」と言い捨てる。私はプロレスファンではないが、中島らもが書きたかったことはわかる。なかなかこんなことを書けやしない。
映画ではこうしたプロレスへの言及をばっさりと落としてこの台詞も出てこない。映画で最も重心がおかれているのは親子の絆である。ラストの格闘家への挑戦も家庭で居場所がない親父が息子に「分かって欲しいやないか。お父さんはお父さんで頑張ってるって」という思いを届けるための挑戦とされています。泥臭いと言えば泥臭いんだが、シンプルにまとまってよかったと思う。李監督が目指したのはイタリア映画。地味ながら庶民の暮らしを丁寧に描いて笑わせながら泣かせる。関西人は昔からイタリア人に気性が似ていると言われるので大阪の下町を舞台にしたのは成功。
丁寧に描いていた大阪の下町がいい。ごちゃごちゃしてて、貧乏だけど底抜けに明るいみたいな感じ。李監督は大阪生まれで下町(多分、鶴橋か天王寺あたりだろう)で過ごしてその雰囲気を再現してみたかったらしい。この監督なら「じゃりン子チエ」の映像化ができるかもしれない。細かいところもきっちり描いています。焼肉屋の騒然とした感じもよい。
らもは試写でこの作品を見ており、感動して大泣きしていたそうです。「父と息子のつながり、憎悪を描いた感動の名作である。俺はこの作品の原作者で脚本も先に読ませてもらっていたがラストになると滂沱の涙を流した。これは監督の力量だろう」という最大限の賛辞を送っています。映画でも散髪屋の役でちょっぴりだけ出演しています。2004年7月26日永眠。享年52歳。中学生の頃から積極的なファンではなかったですが常に気になっていた有名人でした。早い、早すぎる。合掌。
監督:李闘士男 脚本:鄭義信 プロデューサー:原田泉 エグゼグティブプロデューサー:李鳳宇 原作:中島らも 撮影:金谷宏二 美術:佐々木記貴 音楽:cobaキャスト:神木隆之助、宇梶剛士、南方英二、南果歩、生瀬勝久、田中優貴、奥貫薫、AKIRA、コング桑田、荒谷清水、新屋英子、清水哲郎、エヴェルトン・テイシェイラ、笑福亭釣瓶、中島らも
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【平山秀幸+鄭義信+高村薫】レディ・ジョーカー〜流されるままに生きてきた人間たち〜
2004年12月21日 封切日本映画
映画と原作とは別物、この言葉は映画ファンなら常に心に忍ばせておかねばならない言葉だ。原作を見てから映画を見る場合、映画を見ながら「ああ、あの場面はこうしたか」と映画を楽しめることができる。しかし、その楽しさ以上に「ここが原作と違う!」「あーわかってねえな」と思う危険性がある。私はそれが厭なので有名な原作が映画化されるときにその原作を読むということをしない。角川映画の昔懐かしのフレーズ「読んでから見るか、見てから読むか」なら私は後者を選ぶ。本日、紹介する「レディ・ジョーカー」はこの典型でその世界観の大きさから映像化は困難と考えられていた高村薫の社会派サスペンス。もちろん、ベストセラーであります。高村薫の本はまだ読んだことないけど、当作品は私が大好きなグリコ森永事件を題材にした小説。いつか読もうと思ってましたが、映画化される話を聞いて映画を見てから読むことに決めた。
監督は「魔界転生」「笑う蛙」の平山秀幸で脚本は「血と骨」「お父さんのバックドロップ」「刑務所の中」と安打製造機の鄭義信。この組み合わせでああ、と思ったあなたは日本映画が好きな人。2002年、平山と鄭は「OUT」という作品を撮っています。この作品も桐野夏生の犯罪小説が原作になっています。不安と失望を抱える不幸な女が犯罪に巻き込まれていくハードボイルドな小説だったのですが、平山は中盤までストーリーを変えずにまったく別物にしてしまいます。死体をばらすという行為を通して徐々に道を踏み外していくさまをあえて、非日常を経験することで雄雄しく立ち上がって一人で生きていく女性の物語にしてしまったのです。
結果は、原作ファンからはそっぽを向かれ、配給した20世紀フォックス宣伝部長のクビを飛ばすほどの不評でした。が、私には大変に面白い映画で私はスクリーンでその年に三回見ています。例によって映画を見てから原作を読んだのですが、これが地味臭い変態小説でちっとも面白くない。これをよくあれだけ面白い映画したもんだ。原作を忠実に映画化することではなく、面白い映画を作る。この当たり前の命題を忠実に実行したのが「OUT」でした。長々とわき道にそれておりますが、映画をけなす理由でよく挙げられる「原作と違う」にあえて反論してみたわけです。そしてこの映画も同じような理由でけなされております。私は原作を読んでないので反論は致しません。だけどそんなこたあ、映画にとっちゃどうでもいいことなんだ。
この映画は登場人物が大変に多く、犯罪者グループの”レディ・ジョーカー”と脅迫された日の出ビールと警察の捜査本部のストーリーが並行的に描かれていきます。犯罪をベースにした映画ですからサスペンスだと思って見ていると思わぬ肩透かし。鄭義信は町の薬局主人、在日の信用金庫職員、零細工場の旋盤工、重度の障害を持つ娘がいるトラック運転手、そして世の中を斜にかまえた刑事という犯人グループが個々人の背景は印象的な台詞で描き出すのですが、はっきりとした動機とそして何故彼らが出会ったのかを描いていません。そこがこの映画のわかりにくいところなのですが、私は確信的に書かなかったのではないかと思います。映画をサスペンスにしたくなかったからです。
鄭義信が描いたのは人間ドラマ。この映画に出てくる登場人物は犯罪グループだけでなく、警察にしても日の出ビール社員にしても重い背景を持って生きています。序盤に出てきた被差別部落出身の歯医者が印象的でしたが、そこで描かれる日の出ビール社長にしても会社と自分の思いに押しつぶされそうになりながら生きている個人に過ぎません。そこには、物井清三の言う「流されるままに生きてきた人間」が懸命に生きています。そしてそこに横たわっているのは昭和という時代であったと思います。
本来なら映画の主人公であるはずの合田刑事だけが異質で同僚の刑事が言うように「浮いている存在」です。一人だけ汚れていないかのように白いスニーカーを履く彼と刑事でありながら犯罪に加担している半田の対比が面白い。合田を演じたのはこれが映画初出演になる徳重聡。芸達者揃いの出演者の中では、はっきり言って恥ずかしくなるほどの棒読み演技ですが、監督はそれを回りから浮いている刑事との役と重ね合わせてうまく使っています。
53年テープ、社長誘拐事件、グリコ終結宣言、刑事の自殺という実際に起こった事件をうまくからませています。犯罪グループの中に韓国の影(金大中事件との関連も言われた)、現職の刑事、北陸の方言を話す男がいたという噂もありましたし、株式操作や総会屋との関連も言われていました。大杉漣が演じるトラックの運転手も犯人に京都の道に詳しい男がいるとの記事もありましたしね。詳しくは一橋文哉の「闇に消えた怪人」を参考に。この本は何回も読み返したなあ。
俳優陣は抑えた演技で実にいい。地味ながら、外波山正行、國村準、綾田俊樹が大変に素晴らしい。綾田俊樹が淡々と手紙を読み上げるシーンが印象的です。それから総会屋を演じた松重豊は今までで一番いい演技だった。人を食った感じで目に何の色もともっていない、何を考えているかわからない男。凄い俳優になった。吉川晃司もよかったなあ。
全体を通して色質を落とした感じで淡々と映画は進んでいきます。確かに説明不足のところもありますし、なんと言っても地味です。この正月映画戦線では苦戦を強いられるでしょうし、シネコンでは早くも上映回数が激減しています。しかし不作続きだった今年の日本映画界の最後にやっと、じっくりと大人の鑑賞に堪えうる映画が出てきました。
監督:平山秀幸 脚本:鄭義信 製作総指揮:中村雅哉 原作:高村薫 撮影:柴崎幸三 特別協力:石原プロ
キャスト:渡哲也、吉川晃司、國村準、大杉漣、吹越満、加藤晴彦、矢島健一、菅田俊、阿南健治、外波山文明、光石研、山本浩司、康すおん、永岡佑、松重豊、綾田俊樹、斉藤千晃、菅野美穂、谷津勲、辰巳琢郎、岸部一徳、清水?治
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結果は、原作ファンからはそっぽを向かれ、配給した20世紀フォックス宣伝部長のクビを飛ばすほどの不評でした。が、私には大変に面白い映画で私はスクリーンでその年に三回見ています。例によって映画を見てから原作を読んだのですが、これが地味臭い変態小説でちっとも面白くない。これをよくあれだけ面白い映画したもんだ。原作を忠実に映画化することではなく、面白い映画を作る。この当たり前の命題を忠実に実行したのが「OUT」でした。長々とわき道にそれておりますが、映画をけなす理由でよく挙げられる「原作と違う」にあえて反論してみたわけです。そしてこの映画も同じような理由でけなされております。私は原作を読んでないので反論は致しません。だけどそんなこたあ、映画にとっちゃどうでもいいことなんだ。
この映画は登場人物が大変に多く、犯罪者グループの”レディ・ジョーカー”と脅迫された日の出ビールと警察の捜査本部のストーリーが並行的に描かれていきます。犯罪をベースにした映画ですからサスペンスだと思って見ていると思わぬ肩透かし。鄭義信は町の薬局主人、在日の信用金庫職員、零細工場の旋盤工、重度の障害を持つ娘がいるトラック運転手、そして世の中を斜にかまえた刑事という犯人グループが個々人の背景は印象的な台詞で描き出すのですが、はっきりとした動機とそして何故彼らが出会ったのかを描いていません。そこがこの映画のわかりにくいところなのですが、私は確信的に書かなかったのではないかと思います。映画をサスペンスにしたくなかったからです。
鄭義信が描いたのは人間ドラマ。この映画に出てくる登場人物は犯罪グループだけでなく、警察にしても日の出ビール社員にしても重い背景を持って生きています。序盤に出てきた被差別部落出身の歯医者が印象的でしたが、そこで描かれる日の出ビール社長にしても会社と自分の思いに押しつぶされそうになりながら生きている個人に過ぎません。そこには、物井清三の言う「流されるままに生きてきた人間」が懸命に生きています。そしてそこに横たわっているのは昭和という時代であったと思います。
本来なら映画の主人公であるはずの合田刑事だけが異質で同僚の刑事が言うように「浮いている存在」です。一人だけ汚れていないかのように白いスニーカーを履く彼と刑事でありながら犯罪に加担している半田の対比が面白い。合田を演じたのはこれが映画初出演になる徳重聡。芸達者揃いの出演者の中では、はっきり言って恥ずかしくなるほどの棒読み演技ですが、監督はそれを回りから浮いている刑事との役と重ね合わせてうまく使っています。
53年テープ、社長誘拐事件、グリコ終結宣言、刑事の自殺という実際に起こった事件をうまくからませています。犯罪グループの中に韓国の影(金大中事件との関連も言われた)、現職の刑事、北陸の方言を話す男がいたという噂もありましたし、株式操作や総会屋との関連も言われていました。大杉漣が演じるトラックの運転手も犯人に京都の道に詳しい男がいるとの記事もありましたしね。詳しくは一橋文哉の「闇に消えた怪人」を参考に。この本は何回も読み返したなあ。
俳優陣は抑えた演技で実にいい。地味ながら、外波山正行、國村準、綾田俊樹が大変に素晴らしい。綾田俊樹が淡々と手紙を読み上げるシーンが印象的です。それから総会屋を演じた松重豊は今までで一番いい演技だった。人を食った感じで目に何の色もともっていない、何を考えているかわからない男。凄い俳優になった。吉川晃司もよかったなあ。
全体を通して色質を落とした感じで淡々と映画は進んでいきます。確かに説明不足のところもありますし、なんと言っても地味です。この正月映画戦線では苦戦を強いられるでしょうし、シネコンでは早くも上映回数が激減しています。しかし不作続きだった今年の日本映画界の最後にやっと、じっくりと大人の鑑賞に堪えうる映画が出てきました。
監督:平山秀幸 脚本:鄭義信 製作総指揮:中村雅哉 原作:高村薫 撮影:柴崎幸三 特別協力:石原プロ
キャスト:渡哲也、吉川晃司、國村準、大杉漣、吹越満、加藤晴彦、矢島健一、菅田俊、阿南健治、外波山文明、光石研、山本浩司、康すおん、永岡佑、松重豊、綾田俊樹、斉藤千晃、菅野美穂、谷津勲、辰巳琢郎、岸部一徳、清水?治
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日曜日は「ゴジラFINAL WARS」と「ニュースの天才」をTOHOシネマズ高槻で見てきました。「ハウルの動く城」に「Mr.インクレディブル」が公開となったからか映画館内は子供だらけで極めて珍しいことに混んでいました(!)ここの映画館は映画館の列に三人以上いたら、「混んでる」とスタッフが表現するような映画館なので1/4も入れば大混雑ですわ。
実は長らく映画ファンをやってますが、「ゴジラ」を劇場で見たことがない。特撮にさほど興味がないというのも理由ですが、一番の理由はやはり「ゴジラを見に行くとひ必然的に変な小動物のアニメを見せられるから」でございました。アニメは嫌いじゃないし、子供向けのアニメにも「クレヨンしんちゃん」シリーズのような発見があったりします。が、これはあまりにも。。いや見たことないですよ。でも「デビルマン」と一緒で見なくてもわかります。私も人生五十年の後半に入った男ですから、想像力ってのがありますしね。どう見てもあれは可愛くない。怖い。プレデターやチャッキーより怖い。2mのアレに追いかけられたら、チビる。
今日、私の職場の近くにカピパラが出ました。めっちゃ気色悪いです。でも、はむたろうよりはマシだと思いました。
あれと二本立てなら、私は生涯、京都宝塚(京都でゴジラをやってる劇場)には行かない、と今まで見る機会がなかったわけです。で、少し冷静に考えてみた。最近のゴジラシリーズが変な小動物のアニメと二本立てだったのはゴジラファンにとっても不評であったろうし、プロデューサーにしても厭だったろう。しかし、ジャリの人気でリスクヘッジしないと駄目なくらい、ゴジラってのは社内で肩身の狭い映画シリーズだったってことなんだろう。東宝にしたらゴジラよりもチャッキーの方が重要で今度は犬夜叉と一緒になるらしい。。。まあ犬夜叉は見に行く気しないからいいや。でも同じ理由で犬夜叉見に行かない人もいるだろね。東宝に映画会社としての良心を問うのは無意味です。東宝は映画会社でなくて、不動産屋ですから。桑田と一緒だネ!まあゴジラを見に行ったのはチャッキーの呪縛も離れたことだし、一度見に行くことにするか、とそういうことです。
で、映画の感想ですが私はゴジラが何か、ということもよくわからんズブの素人ですがまあまあ面白かったです。北村龍平のあの日本人離れした絵作りは好き嫌いは抜きにしても凄いと思います。三隅研次以来じゃないかな、こんだけアクション映像に力を入れてるのは。ただ「キャシャーン」もそうなんだが、絵作りの段階で終わってしまっている。北村監督の大きな勘違いは聖林のアクション映画みたいな映画を作るには絵作りに力を入れればいいと思ってるところだ。「ディ・アフター・トゥモロー」を見ればわかるんだが聖林のアクション映画って迫力のある映像ももちろん魅力なんだが、それだけの映像を乗せても崩れない脚本があるのだ。その部分が非常に惰弱なので映像は凄いが、心に残るものが何もないのだ。ラストが特にひどい。思わず「REX」を思い出したぞ。それからこの人は役者の演技にカットを出さんのか?ひどいシーンがいくらもあるぞ。要は映像は派手なんだが、凡百の日本映画とかわらんのだ。日本映画専門チャンネルで「あずみ」を見ましたけど感想は同じ。こんな雑な映画でよく二時間半も撮ったな。
俳優では松岡はまあ合格だが、菊川怜は足が綺麗なだけで全然駄目。ケインはミスキャストだろう。確かに身体能力は高いが、クールなキャラには程遠い。素晴らしかったのは北村一輝。クールなキャラだと思いきや、次々と怪獣を繰り出し、興奮している姿は残虐ながらも茶目っ気がある愛すべき悪役だった。でもとっても悪いんだけど。ドン・フライはどっしりと落ち着いてて頑固一徹な隊長役を好演していた。それを支える國村準にはもう少し活躍が欲しかった。中尾彬先生の登場は嬉しかったぞ。坂口拓と一戸奈未が密かに出てました。一戸奈未ってやっぱり可愛いね。
ドラマ部分よりも戦闘シーンが多くて割と飽きずに楽しめる。ただドラマ部分がもう少し、練りこめたら楽しめたと思う。主人公がミュータントという設定がもう少し生かせなかったんだろうか。宇宙人ブームに狂喜乱舞するシーン(「TVタックル」のパロディとか小橋賢児のあほっぷり)が面白かった。もっとこういう地に足が付いたシーンを撮れば映画は変わってたんだろうけど。
ゴジラが終わるということは、東宝はもう映画製作を完全に辞める気なんだろうね。まあ70年代から実質の製作はほとんどしてなかった会社だけど。。。少し寂しいな。
監督:北村龍平 特殊技術:浅田英一 製作:富山省吾 脚本:三村渉、桐山勲 撮影:古谷巧
キャスト:中尾彬、北村龍平、小橋賢児、篠原ともえ、韮澤潤一郎、マイケル富岡、大槻義彦、木村大作、松尾貴史、角田信朗、佐野史郎、上田耕一、榊英雄、谷原章介、さとう珠緒、松岡昌宏、菊川怜、ドン・フライ、水野真紀、北村一輝、坂口拓、國村準、宝田明、田中要次、伊武雅刀、泉谷しげる、長澤まさみ、大塚ちひろ、ケイン・コスギ、水野久美、佐原雄二、舩木誠勝、須賀健太、一戸奈未
☆今週末の京都検定の勉強があっぷあっぷでやってます。今週は更新が滞ります。やばい、ほんまにやばい。
実は長らく映画ファンをやってますが、「ゴジラ」を劇場で見たことがない。特撮にさほど興味がないというのも理由ですが、一番の理由はやはり「ゴジラを見に行くとひ必然的に変な小動物のアニメを見せられるから」でございました。アニメは嫌いじゃないし、子供向けのアニメにも「クレヨンしんちゃん」シリーズのような発見があったりします。が、これはあまりにも。。いや見たことないですよ。でも「デビルマン」と一緒で見なくてもわかります。私も人生五十年の後半に入った男ですから、想像力ってのがありますしね。どう見てもあれは可愛くない。怖い。プレデターやチャッキーより怖い。2mのアレに追いかけられたら、チビる。
今日、私の職場の近くにカピパラが出ました。めっちゃ気色悪いです。でも、はむたろうよりはマシだと思いました。
あれと二本立てなら、私は生涯、京都宝塚(京都でゴジラをやってる劇場)には行かない、と今まで見る機会がなかったわけです。で、少し冷静に考えてみた。最近のゴジラシリーズが変な小動物のアニメと二本立てだったのはゴジラファンにとっても不評であったろうし、プロデューサーにしても厭だったろう。しかし、ジャリの人気でリスクヘッジしないと駄目なくらい、ゴジラってのは社内で肩身の狭い映画シリーズだったってことなんだろう。東宝にしたらゴジラよりもチャッキーの方が重要で今度は犬夜叉と一緒になるらしい。。。まあ犬夜叉は見に行く気しないからいいや。でも同じ理由で犬夜叉見に行かない人もいるだろね。東宝に映画会社としての良心を問うのは無意味です。東宝は映画会社でなくて、不動産屋ですから。桑田と一緒だネ!まあゴジラを見に行ったのはチャッキーの呪縛も離れたことだし、一度見に行くことにするか、とそういうことです。
で、映画の感想ですが私はゴジラが何か、ということもよくわからんズブの素人ですがまあまあ面白かったです。北村龍平のあの日本人離れした絵作りは好き嫌いは抜きにしても凄いと思います。三隅研次以来じゃないかな、こんだけアクション映像に力を入れてるのは。ただ「キャシャーン」もそうなんだが、絵作りの段階で終わってしまっている。北村監督の大きな勘違いは聖林のアクション映画みたいな映画を作るには絵作りに力を入れればいいと思ってるところだ。「ディ・アフター・トゥモロー」を見ればわかるんだが聖林のアクション映画って迫力のある映像ももちろん魅力なんだが、それだけの映像を乗せても崩れない脚本があるのだ。その部分が非常に惰弱なので映像は凄いが、心に残るものが何もないのだ。ラストが特にひどい。思わず「REX」を思い出したぞ。それからこの人は役者の演技にカットを出さんのか?ひどいシーンがいくらもあるぞ。要は映像は派手なんだが、凡百の日本映画とかわらんのだ。日本映画専門チャンネルで「あずみ」を見ましたけど感想は同じ。こんな雑な映画でよく二時間半も撮ったな。
俳優では松岡はまあ合格だが、菊川怜は足が綺麗なだけで全然駄目。ケインはミスキャストだろう。確かに身体能力は高いが、クールなキャラには程遠い。素晴らしかったのは北村一輝。クールなキャラだと思いきや、次々と怪獣を繰り出し、興奮している姿は残虐ながらも茶目っ気がある愛すべき悪役だった。でもとっても悪いんだけど。ドン・フライはどっしりと落ち着いてて頑固一徹な隊長役を好演していた。それを支える國村準にはもう少し活躍が欲しかった。中尾彬先生の登場は嬉しかったぞ。坂口拓と一戸奈未が密かに出てました。一戸奈未ってやっぱり可愛いね。
ドラマ部分よりも戦闘シーンが多くて割と飽きずに楽しめる。ただドラマ部分がもう少し、練りこめたら楽しめたと思う。主人公がミュータントという設定がもう少し生かせなかったんだろうか。宇宙人ブームに狂喜乱舞するシーン(「TVタックル」のパロディとか小橋賢児のあほっぷり)が面白かった。もっとこういう地に足が付いたシーンを撮れば映画は変わってたんだろうけど。
ゴジラが終わるということは、東宝はもう映画製作を完全に辞める気なんだろうね。まあ70年代から実質の製作はほとんどしてなかった会社だけど。。。少し寂しいな。
監督:北村龍平 特殊技術:浅田英一 製作:富山省吾 脚本:三村渉、桐山勲 撮影:古谷巧
キャスト:中尾彬、北村龍平、小橋賢児、篠原ともえ、韮澤潤一郎、マイケル富岡、大槻義彦、木村大作、松尾貴史、角田信朗、佐野史郎、上田耕一、榊英雄、谷原章介、さとう珠緒、松岡昌宏、菊川怜、ドン・フライ、水野真紀、北村一輝、坂口拓、國村準、宝田明、田中要次、伊武雅刀、泉谷しげる、長澤まさみ、大塚ちひろ、ケイン・コスギ、水野久美、佐原雄二、舩木誠勝、須賀健太、一戸奈未
☆今週末の京都検定の勉強があっぷあっぷでやってます。今週は更新が滞ります。やばい、ほんまにやばい。
←右の男性が津田寛治サン。お酒のCMにでも出てます。。。こんな映画も出てたんだ。
今日の映画は先月に見た映画番長オールナイト「映画番長vs刺客オールナイトッ!」で見た「ラブキルキル」。「映画番長」は、同型のDVカメラで同一予算という条件の中でベテランの映画監督と新人が作品の出来を争うという企画(人気投票とかもやってたらしい)で渋谷のユーロスペースで続けられた企画で「コメディ」「エロス」「ホラー」で作品が発表されています。「ラブキルキル」はエロス番長で発表された作品で監督は新人の西村晋也。
海岸沿いのさびれた田舎町。皆川聡(津田寛治)はハローワークに勤める青年。見た目は普通だが、洋ピンオタクで部屋はビデオでいっぱい。仕事が終わってからもポルノショップでたむろしたり、コンビニで長時間立ち読みするぐらいしか趣味のない孤独な若者だった。性格も悪いので友達もいない。が、最近、ポルノショップで知り合ったナオ(愛葉るび)と言う女の子が彼の何を気に入ったのか、彼の部屋に出入りしている。
ある日、聡は就職相談にやってきたサユリ(街田しおん)に一目惚れしてしまう。書類で住所を確かめると(注・公僕が職務上の情報を私的に利用すると罰せられます)早速、彼女を調査し始める。彼女は、高校生の弟、耕(松田祥一)と二人っきりで住んでおり、男関係も派手なようだった。そして弟とも怪しい。裸で弟を抱きしめたりしてる。
聡の妄想ではサユリは「自分の妻」になっており、何とかきっかけをつかもうとするが、彼女は就職相談にもやってこない。困った聡はナオに彼女のことを探るように頼む。耕がカツアゲされているのを助けたナオはサユリの家に出入りしはじめ、バイト先や趣味を探り出す。偶然を装い、彼女と再会する聡。幾度かのデートをして仲良くなりはじめる二人であったが、聡の前に強敵が立ちはだかった。何と、ナオがサユリに惚れてしまっていたのだ。困った人たちだらけの恋の迷い道は続いていく。。
テンポもよかったし、行方が見えない映画運びもドキドキさせられて、すっごく面白い映画でした。主要キャストを絞りきって、隙のない脚本に仕上がってます。主演の津田寛治がとても素晴らしい。最近の日本映画によく出ている俳優さんです。「模倣犯」では主要キャストでしたが、「きょうのできごと」の消防士役とか、「昭和歌謡大全集」のヘリの運転手役とか小さな役でもすごく印象的で気にしてた俳優さんでした。今回はポルノオタクで妄想癖のあるストーカーを嬉々として演じてました。完全に間違ってるのに強引に自分のペースに持っていくところが笑えた。変態でどうにもならない男なんだがどこか憎めない愛らしさももっている。
男にだらしない、スレンダー美人を好演した街田しおんもよかった。街田しおんの濡れ場も相当にエロかったが、やはり一番は愛葉るび。裸でトレーニングするシーンとか女の子とバイブでふざけあうシーンは必見。アブノーマルな方向に惹かれていく少女を好演していました。パンフによるとナオの役はなかなか見つからず、ネットで彼女を見て決めたらしいです。愛嬌はないのですが、聡と腕相撲する演技なんか、非凡なものを感じました。AVやポルノ映画で活躍中で今度はお芝居(よりによって「家畜人ヤプー」)にも挑戦してるみたいです。注目していきたい女優さんですね。
公式サイトありました。→http://rubyred.muw.jp/
この企画は自主制作作品を商業分野で公開するという企画らしく、新人監督もたくさん撮っています。東京の方では割りと盛り上がったようですが、関西ではオールナイトの入りを見てる感じではもう一つのような。。DVD化は多分されると思うんですが現時点ではほとんどのところで上映が終了。すぐには見れませんが、根気強く待ってればどこかで見れると思います。日本映画専門チャンネルが噛んでるみたいだし、スカパーにも来るかも。この手の企画は多いに盛り上がって欲しいですね。
監督、脚本:西村晋也 プロデューサー:堀越謙三、大野敦子 撮影:鈴木一博
キャスト:津田寛治、愛葉るび、街田しおん、松田祥一
映画番長公式サイト→http://www.eigabancho.com/index.html
エロス番長トークイベント→http://www.nihon-eiga.com/cineerotics/eros/index.html
映画番長応援団!→http://www.nona.dti.ne.jp/~aaa/
☆昨日は京都シネマの開業日。色々あって外にでれへんかった。当日は大入り満員で立ち見も出たとか。来週に行く予定です。
☆今日はゴジラとニュースの天才を見てきます。今年のゴジラは気持ち悪い小動物の映画との二本立てではないんですね。それだけでも期待持てます。
今日の映画は先月に見た映画番長オールナイト「映画番長vs刺客オールナイトッ!」で見た「ラブキルキル」。「映画番長」は、同型のDVカメラで同一予算という条件の中でベテランの映画監督と新人が作品の出来を争うという企画(人気投票とかもやってたらしい)で渋谷のユーロスペースで続けられた企画で「コメディ」「エロス」「ホラー」で作品が発表されています。「ラブキルキル」はエロス番長で発表された作品で監督は新人の西村晋也。
海岸沿いのさびれた田舎町。皆川聡(津田寛治)はハローワークに勤める青年。見た目は普通だが、洋ピンオタクで部屋はビデオでいっぱい。仕事が終わってからもポルノショップでたむろしたり、コンビニで長時間立ち読みするぐらいしか趣味のない孤独な若者だった。性格も悪いので友達もいない。が、最近、ポルノショップで知り合ったナオ(愛葉るび)と言う女の子が彼の何を気に入ったのか、彼の部屋に出入りしている。
ある日、聡は就職相談にやってきたサユリ(街田しおん)に一目惚れしてしまう。書類で住所を確かめると(注・公僕が職務上の情報を私的に利用すると罰せられます)早速、彼女を調査し始める。彼女は、高校生の弟、耕(松田祥一)と二人っきりで住んでおり、男関係も派手なようだった。そして弟とも怪しい。裸で弟を抱きしめたりしてる。
聡の妄想ではサユリは「自分の妻」になっており、何とかきっかけをつかもうとするが、彼女は就職相談にもやってこない。困った聡はナオに彼女のことを探るように頼む。耕がカツアゲされているのを助けたナオはサユリの家に出入りしはじめ、バイト先や趣味を探り出す。偶然を装い、彼女と再会する聡。幾度かのデートをして仲良くなりはじめる二人であったが、聡の前に強敵が立ちはだかった。何と、ナオがサユリに惚れてしまっていたのだ。困った人たちだらけの恋の迷い道は続いていく。。
テンポもよかったし、行方が見えない映画運びもドキドキさせられて、すっごく面白い映画でした。主要キャストを絞りきって、隙のない脚本に仕上がってます。主演の津田寛治がとても素晴らしい。最近の日本映画によく出ている俳優さんです。「模倣犯」では主要キャストでしたが、「きょうのできごと」の消防士役とか、「昭和歌謡大全集」のヘリの運転手役とか小さな役でもすごく印象的で気にしてた俳優さんでした。今回はポルノオタクで妄想癖のあるストーカーを嬉々として演じてました。完全に間違ってるのに強引に自分のペースに持っていくところが笑えた。変態でどうにもならない男なんだがどこか憎めない愛らしさももっている。
男にだらしない、スレンダー美人を好演した街田しおんもよかった。街田しおんの濡れ場も相当にエロかったが、やはり一番は愛葉るび。裸でトレーニングするシーンとか女の子とバイブでふざけあうシーンは必見。アブノーマルな方向に惹かれていく少女を好演していました。パンフによるとナオの役はなかなか見つからず、ネットで彼女を見て決めたらしいです。愛嬌はないのですが、聡と腕相撲する演技なんか、非凡なものを感じました。AVやポルノ映画で活躍中で今度はお芝居(よりによって「家畜人ヤプー」)にも挑戦してるみたいです。注目していきたい女優さんですね。
公式サイトありました。→http://rubyred.muw.jp/
この企画は自主制作作品を商業分野で公開するという企画らしく、新人監督もたくさん撮っています。東京の方では割りと盛り上がったようですが、関西ではオールナイトの入りを見てる感じではもう一つのような。。DVD化は多分されると思うんですが現時点ではほとんどのところで上映が終了。すぐには見れませんが、根気強く待ってればどこかで見れると思います。日本映画専門チャンネルが噛んでるみたいだし、スカパーにも来るかも。この手の企画は多いに盛り上がって欲しいですね。
監督、脚本:西村晋也 プロデューサー:堀越謙三、大野敦子 撮影:鈴木一博
キャスト:津田寛治、愛葉るび、街田しおん、松田祥一
映画番長公式サイト→http://www.eigabancho.com/index.html
エロス番長トークイベント→http://www.nihon-eiga.com/cineerotics/eros/index.html
映画番長応援団!→http://www.nona.dti.ne.jp/~aaa/
☆昨日は京都シネマの開業日。色々あって外にでれへんかった。当日は大入り満員で立ち見も出たとか。来週に行く予定です。
☆今日はゴジラとニュースの天才を見てきます。今年のゴジラは気持ち悪い小動物の映画との二本立てではないんですね。それだけでも期待持てます。
今日、紹介するのは梁石日の自伝小説の映画化である「血と骨」。監督は「刑務所の中」の崔洋一で脚本は「OUT」の鄭義信。この組み合わせは93年の「月はどっちに出ている」以来で11年ぶり。「月はどっちに出ている」は93年のキネ旬ランキングで二位の「お引越し」に大差をつけて一位を奪取しました。在日という言葉がまだタブーワードに近かった時代に在日朝鮮人の生き様をあざやかに描き出したこの作品は、この年の代表作になったのです。この作品にはユーモアたっぷりに動き回る人間が描かれていました。
1920年代。多くの朝鮮人が一旗挙げようと日本に渡ってきていた。済州島出身の金俊平(ビートたけし)だった。大阪の朝鮮人集落に住んだ彼は並外れた暴力を頼りにヤクザにすら、一目置かれる存在になっていく。やがて彼は金正雄(新井浩文)の母となる李英姫(鈴木京香)と出会う。幼い娘を女手一つで育てながら飲み屋で働く彼女を気に入った俊平は暴力で彼女を自分のものにしてしまう。そして花子(田畑智子)と正雄が生まれた。しかし、その生活は円満とは程遠く、俊平の暴力に母と子は怯えるだけであった。家は荒れ放題で地獄のような毎日であった。
戦争が終わると俊平は子分の高信義(松重豊)、元山(北村一輝)を従えてかまぼこ工場を始める。事業は成功し、巨万の富を得る俊平。そこに俊平の息子と名乗る朴武(オダギリジョー)が突然現れる。俊平が済州島で犯した人妻の子供であった。武は愛人の早苗(中村麻美)を呼び寄せ、好き勝手に暮らし始めた。正雄は颯爽とした武に憧れる。武は俊平に金を要求するが、俊平は拒絶して大喧嘩になる。
やがて俊平は家を出て同じ町内に愛人を囲う。戦争未亡人の清子(中村優子)だ。英姫は昼間からセックスに狂う二人に怒りを覚えるが、俊平が家にいないことで安堵も覚えるのだった。。。
この映画の主人公である金俊平は並外れた暴力で相手を叩きのめし、女を犯し、金を握る男で圧倒的な存在感も持ちます。家族にしてみればこれほど迷惑な男もおらんし、知り合いにも欲しくないタイプです。だが、たけしが語るように見方を変えると「この人は強烈に悪いけど純真な」男なのだ。自分の体だけを信じて、自分の思うように酒を飲み、女を抱き、金を稼いだ。関西の在日社会では俊平は伝説になっており、たけしも「血と骨」を知る前から金俊平の存在を知っていたらしい。友達にはなりたくないタイプだし、「あたまのおかしなオッサン」なのかもしれません。ただ、そのすさまじい人間力には何か惹かれるものがあるのだ。
金俊平の凄かったところは誰にも頼らなかったところだ。韓国は同族社会で一族の結びつきが強い。狭い在日の社会では在日同士が助け合っていきていたし、固まって過ごしていた。が、俊平は同胞をこき使い、甥っ子からも銭を取った。そして家族を奴隷のようにこきつかった。彼が信じたのは自分の肉体だけであった。それだけに、彼が脳溢血のために倒れた時にはじめて「たたれへん。。」と不安げな顔で呟くシーンが印象的だった。
俊平を演じたのはビートたけし。自分の監督作品以外での主演は久しぶり。「御法度」での共演(近藤を崔、土方をたけしがやった)が有名ですが崔洋一のデビュー作「十階のモスキート」にもチョイ役(予想屋)で出演していました。役者としてのたけしは演技はあんまりうまくありませんが、「バトルロワイアル」の先生役のように圧倒的な存在感を持っている。金俊平の得体の知れなさ、怖さみたいなものをよく体現していた。ただ惜しむらくは肉体がついていってないので、暴力シーンに説得力がないのだ。「コミック雑誌なんかいらない!」をやってた頃のたけしなら、怖いほどの迫力になっていたと思う。それから老人メイクはやはりコントのイメージが強すぎる。
もし時代が10年前なら俊平を誰が演じていただろうか。
緒形拳、原田芳雄、萩原健一、菅原文太と名前は何個でも挙がるが、もし彼が生きていたなら絶対に手を挙げていた。
松田優作である。
祖国の血を誇りにしていた彼なら、嬉々として金俊平になりきっただろう。
いずれにせよ、仮定の話である。
今の40代の俳優で金俊平を演じきれる俳優は少し考え難い。佐藤浩市、豊川悦司、岸谷五朗、中井貴一と俳優の名前を思い浮かべるが、しっくり来ない。崔がたけしを指名したのは賢明だったと思う。
パンフによると阪本順治がこの映画を撮りたがっていたらしい。「KT」や「新・仁義なき戦い」と在日社会にこだわってきた彼ならば、そうだろうなと思う。彼が撮ったならばどんな作品になっていただろうか。彼ならば在日を通した”昭和史”の側面を強調した芸術映画になっていただろう。しかし私はそうした”昭和史”を映画の彩りにとどめて、あくまでも俊平の生き様に焦点を定めた、この描き方がよかったと思う。賛否両論な作品ですが、映画の醍醐味をたっぷり味わえた作品だった。俳優では高を演じた松重豊、ヌードも披露した濱田マリ、借金で追い詰められる國村準がよかったです。
監督:崔洋一 脚本:崔洋一、鄭義信 原作:梁石日 撮影:浜田毅 美術:磯見俊裕 音楽:岩代太郎
キャスト:ビートたけし、田畑智子、國村準、オダギリジョー、中村麻美、鈴木京香、濱田マリ、松重豊、北村一輝、新井浩文、中村優子、柏原収史、寺島進、伊藤淳史、唯野未歩子、平岩紙、トミーズ雅、仁科貴、斎藤歩、佐藤貢三、三浦誠己、伊藤洋三郎、塩見三省
1920年代。多くの朝鮮人が一旗挙げようと日本に渡ってきていた。済州島出身の金俊平(ビートたけし)だった。大阪の朝鮮人集落に住んだ彼は並外れた暴力を頼りにヤクザにすら、一目置かれる存在になっていく。やがて彼は金正雄(新井浩文)の母となる李英姫(鈴木京香)と出会う。幼い娘を女手一つで育てながら飲み屋で働く彼女を気に入った俊平は暴力で彼女を自分のものにしてしまう。そして花子(田畑智子)と正雄が生まれた。しかし、その生活は円満とは程遠く、俊平の暴力に母と子は怯えるだけであった。家は荒れ放題で地獄のような毎日であった。
戦争が終わると俊平は子分の高信義(松重豊)、元山(北村一輝)を従えてかまぼこ工場を始める。事業は成功し、巨万の富を得る俊平。そこに俊平の息子と名乗る朴武(オダギリジョー)が突然現れる。俊平が済州島で犯した人妻の子供であった。武は愛人の早苗(中村麻美)を呼び寄せ、好き勝手に暮らし始めた。正雄は颯爽とした武に憧れる。武は俊平に金を要求するが、俊平は拒絶して大喧嘩になる。
やがて俊平は家を出て同じ町内に愛人を囲う。戦争未亡人の清子(中村優子)だ。英姫は昼間からセックスに狂う二人に怒りを覚えるが、俊平が家にいないことで安堵も覚えるのだった。。。
この映画の主人公である金俊平は並外れた暴力で相手を叩きのめし、女を犯し、金を握る男で圧倒的な存在感も持ちます。家族にしてみればこれほど迷惑な男もおらんし、知り合いにも欲しくないタイプです。だが、たけしが語るように見方を変えると「この人は強烈に悪いけど純真な」男なのだ。自分の体だけを信じて、自分の思うように酒を飲み、女を抱き、金を稼いだ。関西の在日社会では俊平は伝説になっており、たけしも「血と骨」を知る前から金俊平の存在を知っていたらしい。友達にはなりたくないタイプだし、「あたまのおかしなオッサン」なのかもしれません。ただ、そのすさまじい人間力には何か惹かれるものがあるのだ。
金俊平の凄かったところは誰にも頼らなかったところだ。韓国は同族社会で一族の結びつきが強い。狭い在日の社会では在日同士が助け合っていきていたし、固まって過ごしていた。が、俊平は同胞をこき使い、甥っ子からも銭を取った。そして家族を奴隷のようにこきつかった。彼が信じたのは自分の肉体だけであった。それだけに、彼が脳溢血のために倒れた時にはじめて「たたれへん。。」と不安げな顔で呟くシーンが印象的だった。
俊平を演じたのはビートたけし。自分の監督作品以外での主演は久しぶり。「御法度」での共演(近藤を崔、土方をたけしがやった)が有名ですが崔洋一のデビュー作「十階のモスキート」にもチョイ役(予想屋)で出演していました。役者としてのたけしは演技はあんまりうまくありませんが、「バトルロワイアル」の先生役のように圧倒的な存在感を持っている。金俊平の得体の知れなさ、怖さみたいなものをよく体現していた。ただ惜しむらくは肉体がついていってないので、暴力シーンに説得力がないのだ。「コミック雑誌なんかいらない!」をやってた頃のたけしなら、怖いほどの迫力になっていたと思う。それから老人メイクはやはりコントのイメージが強すぎる。
もし時代が10年前なら俊平を誰が演じていただろうか。
緒形拳、原田芳雄、萩原健一、菅原文太と名前は何個でも挙がるが、もし彼が生きていたなら絶対に手を挙げていた。
松田優作である。
祖国の血を誇りにしていた彼なら、嬉々として金俊平になりきっただろう。
いずれにせよ、仮定の話である。
今の40代の俳優で金俊平を演じきれる俳優は少し考え難い。佐藤浩市、豊川悦司、岸谷五朗、中井貴一と俳優の名前を思い浮かべるが、しっくり来ない。崔がたけしを指名したのは賢明だったと思う。
パンフによると阪本順治がこの映画を撮りたがっていたらしい。「KT」や「新・仁義なき戦い」と在日社会にこだわってきた彼ならば、そうだろうなと思う。彼が撮ったならばどんな作品になっていただろうか。彼ならば在日を通した”昭和史”の側面を強調した芸術映画になっていただろう。しかし私はそうした”昭和史”を映画の彩りにとどめて、あくまでも俊平の生き様に焦点を定めた、この描き方がよかったと思う。賛否両論な作品ですが、映画の醍醐味をたっぷり味わえた作品だった。俳優では高を演じた松重豊、ヌードも披露した濱田マリ、借金で追い詰められる國村準がよかったです。
監督:崔洋一 脚本:崔洋一、鄭義信 原作:梁石日 撮影:浜田毅 美術:磯見俊裕 音楽:岩代太郎
キャスト:ビートたけし、田畑智子、國村準、オダギリジョー、中村麻美、鈴木京香、濱田マリ、松重豊、北村一輝、新井浩文、中村優子、柏原収史、寺島進、伊藤淳史、唯野未歩子、平岩紙、トミーズ雅、仁科貴、斎藤歩、佐藤貢三、三浦誠己、伊藤洋三郎、塩見三省
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【坂口憲二主演作品】機関車先生〜先生は銀色の王子様なの。〜
2004年8月17日 封切日本映画
今日は「機関車先生」。主演はドラマで活躍中の坂口憲二。映画は「新・仁義なき戦い/謀殺」でチョイ役のみ。立小便のあとに鼻歌交じりに単身、事務所に突っ込んで拳銃をぶっ放す鉄砲玉で出演時間は1分もないのですが、その暴れっぷりがなかなかよかった。で、映画の二本目は何と主演。しかも、口が聞けないという、難しい役です。無茶しよる。
時代設定は一昔前になります。瀬戸内海に浮かぶ小島に一人の青年がやってきた。代用教員としてやってきた吉岡誠吾(坂口憲二)だ。彼の母親(寺島しのぶ)はこの島の出身だった。彼女の友人であり、島にたった一つしかない小学校の校長である佐古(堺正章)が呼んだのだ。
島に新しい先生がやってくる。島は新しい先生の噂で持ちきりであった。生徒達も期待と不安でいっぱいであった。やがて校長と共に吉岡先生が現れた。吉岡先生は黙って一礼すると黒板に「ぼくは話すことができません」と書いた。吉岡先生は剣道の試合の事故で声を失ったのだ。それ以来、彼は教師を休んでいた。佐古に呼ばれた時、彼はこれを最後に教職から去るつもりだったのだ。驚く子供達だったが、先生の大きくて強そうな雰囲気から「機関車先生」というあだ名をつけた。「口をきかん」という意味もあるあだ名だった。こうして機関車先生と7人の子供達の生活が始まった。。
当初は戸惑った子供達だったが、吉岡先生の人柄に打たれて徐々に絆を作っていく子供達。島の実力者である網元の美作(伊武雅刀)は「口のきけん先生をよこすとは、島を馬鹿にしとる」と怒るのだが、島での吉岡先生の評判も悪くなかった。しかし、ある日悲しい事件が島を襲う。突然起こった嵐で漁師が遭難したのだ。遭難した漁師の息子は生徒の修平だった。自暴自棄になる修平を吉岡は何とか慰めようとするのだが。。
私はあんまり映画を見て号泣するということはないのですが、この映画は本当にボロボロと涙を流してしまった。本当に素直にいい話なのである。そりゃ、少しはベタすぎると思うよ。でも3回ぐらい、本当に泣いてしまった。割りと長い映画なんだが、もう少し長くてもよかったと思うほど、どっぷりとハマってしまった。
子供達の演技がいいのである。少し、オーバーアクションなきらいはあるが、演技に素直に感情をぶつけているところに非常に好感が持てた。修平の「親がおらん子でも立派に育つということを思いしらせてやってくれ」というシーンで一番泣いた。絵が好きな少女もよかったな。子供達が先生を慕っているところがよく出ていた。坂口憲二は口が聞けない設定なので、感情を表情や仕草で表せねばならない。芝居も受けが中心で、難しかったと思う。ただ、彼の見た目もあるだろうが、吉岡先生の素直で実直そうな性格がよく出てた。本当によく頑張りました。
マチャアキは演技うまいとは思ってたが想像以上に素晴らしい演技でびっくりした。植木等、いかりや長助を引くまでもなく、エノケン、伴淳の時代からお笑いから入った人がびっくりするような演技を披露することがある。マチャアキもやはりそうで、しみじみとしたいい演技である。おもむろに戦地に旅立った自分の教え子の話しを始めるシーンが印象的だった。それから短い出番だったが、笑福亭松之助も味わい深い。
監督は「ヴァイブレータ」で新境地を開いた廣木隆一。廣木がこんな作品を撮るなんて思わなかった。「不貞の季節」「理髪店主の悲しみ」「美脚迷路」(DVDで早く出て欲しい!)とアブノーマルな映画ばかり撮っている印象があったのだが、やはりこの人も職人。大塚寧々をきっちりとエロ満開で撮りあげてくれたけどね。マニアックな作品から泣かせる映画まできっちり撮って幅の広さを見せ付けました。寺島しのぶの使い方もいい。
監督:廣木隆一 脚本:及川章太郎、加藤正人 撮影:鈴木一博 美術:重田重盛 音楽:国吉良一 主題歌:林明日香
出演:坂口憲二、倍賞美津子、堺正章、笑福亭松之助、伊武雅刀、大塚寧々、千原靖史、徳井優、逸見太郎、佐藤匡美、吉谷彩子、迫英雄、鶴田さやか、小村裕次郎、森田直幸、中山麻聖、小市慢太郎、真由子、野上正義、岡崎礼、神保悟志、寺島しのぶ、石田晃一、友川文絵、小井沼愛、石川眞吾、太田琴音、松田昴大、杉山りん、高橋勝男
☆「誰も知らない」ですが、どうも書き足りない、もやもやしたもんがあるんで後日、追記いたします。
☆私信 浜乙女様
どうもはじめまして。「チームアメリカ」は私も期待しております。「サウスパーク」は大ファンで全部見ております。日本ではひっそりとミニシアターのみの公開になりそうですが、今から楽しみです。
「AIKI」は脚本がよかったですね。ラストの爽やかな終わり方は拍手ものでございました。割りと深刻なテーマを取り扱った映画ですが加藤晴彦の軽い感じが生きてました。勃起して大喜びするシーンとかよかったです。
これからもよろしく。
時代設定は一昔前になります。瀬戸内海に浮かぶ小島に一人の青年がやってきた。代用教員としてやってきた吉岡誠吾(坂口憲二)だ。彼の母親(寺島しのぶ)はこの島の出身だった。彼女の友人であり、島にたった一つしかない小学校の校長である佐古(堺正章)が呼んだのだ。
島に新しい先生がやってくる。島は新しい先生の噂で持ちきりであった。生徒達も期待と不安でいっぱいであった。やがて校長と共に吉岡先生が現れた。吉岡先生は黙って一礼すると黒板に「ぼくは話すことができません」と書いた。吉岡先生は剣道の試合の事故で声を失ったのだ。それ以来、彼は教師を休んでいた。佐古に呼ばれた時、彼はこれを最後に教職から去るつもりだったのだ。驚く子供達だったが、先生の大きくて強そうな雰囲気から「機関車先生」というあだ名をつけた。「口をきかん」という意味もあるあだ名だった。こうして機関車先生と7人の子供達の生活が始まった。。
当初は戸惑った子供達だったが、吉岡先生の人柄に打たれて徐々に絆を作っていく子供達。島の実力者である網元の美作(伊武雅刀)は「口のきけん先生をよこすとは、島を馬鹿にしとる」と怒るのだが、島での吉岡先生の評判も悪くなかった。しかし、ある日悲しい事件が島を襲う。突然起こった嵐で漁師が遭難したのだ。遭難した漁師の息子は生徒の修平だった。自暴自棄になる修平を吉岡は何とか慰めようとするのだが。。
私はあんまり映画を見て号泣するということはないのですが、この映画は本当にボロボロと涙を流してしまった。本当に素直にいい話なのである。そりゃ、少しはベタすぎると思うよ。でも3回ぐらい、本当に泣いてしまった。割りと長い映画なんだが、もう少し長くてもよかったと思うほど、どっぷりとハマってしまった。
子供達の演技がいいのである。少し、オーバーアクションなきらいはあるが、演技に素直に感情をぶつけているところに非常に好感が持てた。修平の「親がおらん子でも立派に育つということを思いしらせてやってくれ」というシーンで一番泣いた。絵が好きな少女もよかったな。子供達が先生を慕っているところがよく出ていた。坂口憲二は口が聞けない設定なので、感情を表情や仕草で表せねばならない。芝居も受けが中心で、難しかったと思う。ただ、彼の見た目もあるだろうが、吉岡先生の素直で実直そうな性格がよく出てた。本当によく頑張りました。
マチャアキは演技うまいとは思ってたが想像以上に素晴らしい演技でびっくりした。植木等、いかりや長助を引くまでもなく、エノケン、伴淳の時代からお笑いから入った人がびっくりするような演技を披露することがある。マチャアキもやはりそうで、しみじみとしたいい演技である。おもむろに戦地に旅立った自分の教え子の話しを始めるシーンが印象的だった。それから短い出番だったが、笑福亭松之助も味わい深い。
監督は「ヴァイブレータ」で新境地を開いた廣木隆一。廣木がこんな作品を撮るなんて思わなかった。「不貞の季節」「理髪店主の悲しみ」「美脚迷路」(DVDで早く出て欲しい!)とアブノーマルな映画ばかり撮っている印象があったのだが、やはりこの人も職人。大塚寧々をきっちりとエロ満開で撮りあげてくれたけどね。マニアックな作品から泣かせる映画まできっちり撮って幅の広さを見せ付けました。寺島しのぶの使い方もいい。
監督:廣木隆一 脚本:及川章太郎、加藤正人 撮影:鈴木一博 美術:重田重盛 音楽:国吉良一 主題歌:林明日香
出演:坂口憲二、倍賞美津子、堺正章、笑福亭松之助、伊武雅刀、大塚寧々、千原靖史、徳井優、逸見太郎、佐藤匡美、吉谷彩子、迫英雄、鶴田さやか、小村裕次郎、森田直幸、中山麻聖、小市慢太郎、真由子、野上正義、岡崎礼、神保悟志、寺島しのぶ、石田晃一、友川文絵、小井沼愛、石川眞吾、太田琴音、松田昴大、杉山りん、高橋勝男
☆「誰も知らない」ですが、どうも書き足りない、もやもやしたもんがあるんで後日、追記いたします。
☆私信 浜乙女様
どうもはじめまして。「チームアメリカ」は私も期待しております。「サウスパーク」は大ファンで全部見ております。日本ではひっそりとミニシアターのみの公開になりそうですが、今から楽しみです。
「AIKI」は脚本がよかったですね。ラストの爽やかな終わり方は拍手ものでございました。割りと深刻なテーマを取り扱った映画ですが加藤晴彦の軽い感じが生きてました。勃起して大喜びするシーンとかよかったです。
これからもよろしく。
今日、紹介するのは「誰も知らない」。「ワンダフルライフ」「ディスタンス」とドキュメンタリータッチの作風で知られる是枝裕和。監督の知名度とそのヘビーな題材からミニシアターでひっそりと公開される予定の映画でしたが、主演の柳楽優弥がカンヌ映画祭で至上最年少でトム・ハンクス(「レディ・キラーズ」)トニー・レオン(多分、「2046」)をはじめとする強豪を押しのけ、主演男優賞を獲得する快挙を成し遂げて大きく新聞に取り上げられて話題になりました。
最も賞を取ったことよりも、その後のインタビューの柳楽君の天然っぷり(「尊敬する役者は押尾学」などのピンボケ発言も笑えた)が人に愛されたことが大きかったと思います。8月7日の封切以来、映画館はどこも大入り満員。京都では、あの閑古鳥が住むという京極弥生座も満員になったというのだから驚きだ。大阪ではガーデンシネマ、パラダイススクエア、シネフェスタに加えてブルク7での拡大公開が決定。京都でも来週からMOVIX京都での上映が始まりました。私は一番客が少ないと思われる、上映中にジェットコースターの轟音が鳴り響く動物園前シネフェスタで見てきたのですが、ここでも220人入る一番大きな劇場で見事に満員。いや、恐れ入りました。
この事件のモチーフとなったのは1988年に起こった「西巣鴨子供4人置き去り事件」という事件です。
いたるところで紹介されてますが、詳しくは下記のサイトをご参照に。
↓↓
http://www8.ocn.ne.jp/~moonston/family.htm
この手の事件が起こると非難されるのはやはり母親で当時のマスコミも母親を強く非難したものが多かったと言います。が、是枝監督が興味を抱いたのは母親がいなくなっても黙々と兄弟の面倒を見続けた長男でした。当初、友人と共に兄弟を虐待したと伝えられた長男でしたが、裁判が進むに連れて長男は兄弟の面倒をよく見ていたことがわかります。それどころか、彼らを言わば”置き去り”にした母親に対して、期待にこたえられなかった自分の無力を詫びたと言う。「僕はこの少年がいとおしくてたまらなくなってしまったのである」と言う思いから是枝監督はこの年に事件を脚本化。つまり、事件直後から長くあたためてきた企画だったのです。
この事件が誰が悪いのか、と言う命題はこの映画に関しては無意味だと思います。そりゃ一番悪いのはやっぱり母親なのでしょうけど。蛭子が言う「母親がもっと悪い人間でないと少年たちが可哀想に見えない」という意見も一つの見方だと思う。だけど、母親一人の責任におっかぶせるのは違うと思う。彼女に”置き去り”にした意識は薄かったでしょうし、「私が幸せになっちゃいけないの」という言葉の重みにはぞっとする。社会にはまだまだ非嫡子、片親に対する差別はありますしね。マンションなんかまず、借りられないでしょう。曲がりなりにも4人の子供を生み、育ててきたという事実はやはり無視できない。そもそも、彼女に子供を押し付けていった男たちはどうなんだ。こいつらが一番最悪だ。
この母親を演じたのは映画は初出演になるYOU。一つ間違えば、母親が全部悪いと理解されてしまうこの映画において、この役を演じるというのは非常にリスキーだったと思う。いい加減でもうどうしようもないなんだが、子供達に対してはいい母親だったんだろうなあ、、と思わせるような母親を好演。ラストの金を送ってくるシーンなんか、彼女しか出来ないだろう。長男に本気で子供を預けてしまっているのだ。
井筒和幸は「YOUはええ子やからミスキャスト。ここは泉ピン子がいいと思う」と語っていたが、泉ピン子だったら母親が主人公の女の悲劇を強調するだけの映画になっていただろう。是枝監督は母親を悪人と描いていないので、ここは見解の違いでどうにもなんない。YOUは演技経験が少なかった(「ごっつええ感じ」ぐらいか?)ので、ほとんど素でこの役を演じていると思う。YOUにはこれからドラマの仕事が舞い込むと思うけど、この成功は是枝監督の演技指導とYOUの天性のものだから、多分これっきりだろう。YOUだけに限らず、この映画のキャストは所謂、小芝居を強調する俳優はいない。木村祐一、タテタカコなどの演技未経験者も多いしね。これはリアリズムを徹底する手法の一つで是枝監督のスタイル。
私はこの映画を見て全然泣けなかったのです。横で泣きまくってる母親らしき人を見ながら、心が急激に冷えていくのを感じていました。ただ、映画終わってからいろいろと考えた。一番印象的だったのは、やはりこんな絶望的な状況でも笑みを忘れることなく、たくましく生きていく子供達だったのではないか、と。母親が向こうの家庭で楽しくやっていることがわかって、もう母親に頼ることはできないと決断する。それは諦めというよりも、人生の選択である。金がなくなっても彼は行政にも大人にも頼ることはなかった。兄弟4人で生きていく決意を固めたからである。それが一つの悲劇につながるのだが、その決意からは悲壮感よりも”生命力”が強く匂う。あのラストから見てもこれは決して悲劇としてだけ描いているのではないことがわかる。ただ、長男がそこまでの決意をするまでに至った背景は俺にはとうとう理解できなかった。
映画はテンポものろく、淡々としたペースで進んでいく。リアルだなと思ったのは大変な状況におかれてるとは言え、子供達が一歩外に出れば世間からは普通の子供達だと思われているところ。長男の明君にもゲーセンで友達を作ったり、通りがかった公園で野球に混ぜてもらったりしています。またそうしたシーンでの明君は全く普通の少年で素直に楽しんでいる。そういう少年らしさも、ちゃんと描いています。
キャストでの出色はやはりYOUと柳楽君。他の子供達も特に末の少女の愛らしさは見ててホッとした。茂君は映画の始めとラストで全く顔が変わっていてびっくりした。順撮りで一年間かけて撮ったおかげだろう。大人ではコンビニの店員をやった加瀬亮がよかった。子供達の事情をうすうす感じ取りながらも、黙々とロス商品を子供達に与え続ける。同じくコンビニ店員のタテタカコ(カツノリに似ていると思ったのは俺だけか)も優しそうでどこか芯のありそうな感じが出ていた。
様々な感想が出てくる映画だと思います。色々と考えさせる作品でもありました。パンフには色々と詳しく載っていますのでパンフも購われることをお薦めします。ゴンチチの音楽もよかったです。
監督、脚本、編集:是枝裕和 撮影:山崎裕 美術:磯見俊裕、三ツ松けいこ 音楽:ゴンチチ
出演:岡元夕紀子、平泉成、YOU、串田和美、加瀬亮、タテタカコ、木村祐一、遠藤憲一、寺島進、韓英恵、清水萌々子、木村飛影、北浦愛、柳楽優弥
最も賞を取ったことよりも、その後のインタビューの柳楽君の天然っぷり(「尊敬する役者は押尾学」などのピンボケ発言も笑えた)が人に愛されたことが大きかったと思います。8月7日の封切以来、映画館はどこも大入り満員。京都では、あの閑古鳥が住むという京極弥生座も満員になったというのだから驚きだ。大阪ではガーデンシネマ、パラダイススクエア、シネフェスタに加えてブルク7での拡大公開が決定。京都でも来週からMOVIX京都での上映が始まりました。私は一番客が少ないと思われる、上映中にジェットコースターの轟音が鳴り響く動物園前シネフェスタで見てきたのですが、ここでも220人入る一番大きな劇場で見事に満員。いや、恐れ入りました。
この事件のモチーフとなったのは1988年に起こった「西巣鴨子供4人置き去り事件」という事件です。
いたるところで紹介されてますが、詳しくは下記のサイトをご参照に。
↓↓
http://www8.ocn.ne.jp/~moonston/family.htm
この手の事件が起こると非難されるのはやはり母親で当時のマスコミも母親を強く非難したものが多かったと言います。が、是枝監督が興味を抱いたのは母親がいなくなっても黙々と兄弟の面倒を見続けた長男でした。当初、友人と共に兄弟を虐待したと伝えられた長男でしたが、裁判が進むに連れて長男は兄弟の面倒をよく見ていたことがわかります。それどころか、彼らを言わば”置き去り”にした母親に対して、期待にこたえられなかった自分の無力を詫びたと言う。「僕はこの少年がいとおしくてたまらなくなってしまったのである」と言う思いから是枝監督はこの年に事件を脚本化。つまり、事件直後から長くあたためてきた企画だったのです。
この事件が誰が悪いのか、と言う命題はこの映画に関しては無意味だと思います。そりゃ一番悪いのはやっぱり母親なのでしょうけど。蛭子が言う「母親がもっと悪い人間でないと少年たちが可哀想に見えない」という意見も一つの見方だと思う。だけど、母親一人の責任におっかぶせるのは違うと思う。彼女に”置き去り”にした意識は薄かったでしょうし、「私が幸せになっちゃいけないの」という言葉の重みにはぞっとする。社会にはまだまだ非嫡子、片親に対する差別はありますしね。マンションなんかまず、借りられないでしょう。曲がりなりにも4人の子供を生み、育ててきたという事実はやはり無視できない。そもそも、彼女に子供を押し付けていった男たちはどうなんだ。こいつらが一番最悪だ。
この母親を演じたのは映画は初出演になるYOU。一つ間違えば、母親が全部悪いと理解されてしまうこの映画において、この役を演じるというのは非常にリスキーだったと思う。いい加減でもうどうしようもないなんだが、子供達に対してはいい母親だったんだろうなあ、、と思わせるような母親を好演。ラストの金を送ってくるシーンなんか、彼女しか出来ないだろう。長男に本気で子供を預けてしまっているのだ。
井筒和幸は「YOUはええ子やからミスキャスト。ここは泉ピン子がいいと思う」と語っていたが、泉ピン子だったら母親が主人公の女の悲劇を強調するだけの映画になっていただろう。是枝監督は母親を悪人と描いていないので、ここは見解の違いでどうにもなんない。YOUは演技経験が少なかった(「ごっつええ感じ」ぐらいか?)ので、ほとんど素でこの役を演じていると思う。YOUにはこれからドラマの仕事が舞い込むと思うけど、この成功は是枝監督の演技指導とYOUの天性のものだから、多分これっきりだろう。YOUだけに限らず、この映画のキャストは所謂、小芝居を強調する俳優はいない。木村祐一、タテタカコなどの演技未経験者も多いしね。これはリアリズムを徹底する手法の一つで是枝監督のスタイル。
私はこの映画を見て全然泣けなかったのです。横で泣きまくってる母親らしき人を見ながら、心が急激に冷えていくのを感じていました。ただ、映画終わってからいろいろと考えた。一番印象的だったのは、やはりこんな絶望的な状況でも笑みを忘れることなく、たくましく生きていく子供達だったのではないか、と。母親が向こうの家庭で楽しくやっていることがわかって、もう母親に頼ることはできないと決断する。それは諦めというよりも、人生の選択である。金がなくなっても彼は行政にも大人にも頼ることはなかった。兄弟4人で生きていく決意を固めたからである。それが一つの悲劇につながるのだが、その決意からは悲壮感よりも”生命力”が強く匂う。あのラストから見てもこれは決して悲劇としてだけ描いているのではないことがわかる。ただ、長男がそこまでの決意をするまでに至った背景は俺にはとうとう理解できなかった。
映画はテンポものろく、淡々としたペースで進んでいく。リアルだなと思ったのは大変な状況におかれてるとは言え、子供達が一歩外に出れば世間からは普通の子供達だと思われているところ。長男の明君にもゲーセンで友達を作ったり、通りがかった公園で野球に混ぜてもらったりしています。またそうしたシーンでの明君は全く普通の少年で素直に楽しんでいる。そういう少年らしさも、ちゃんと描いています。
キャストでの出色はやはりYOUと柳楽君。他の子供達も特に末の少女の愛らしさは見ててホッとした。茂君は映画の始めとラストで全く顔が変わっていてびっくりした。順撮りで一年間かけて撮ったおかげだろう。大人ではコンビニの店員をやった加瀬亮がよかった。子供達の事情をうすうす感じ取りながらも、黙々とロス商品を子供達に与え続ける。同じくコンビニ店員のタテタカコ(カツノリに似ていると思ったのは俺だけか)も優しそうでどこか芯のありそうな感じが出ていた。
様々な感想が出てくる映画だと思います。色々と考えさせる作品でもありました。パンフには色々と詳しく載っていますのでパンフも購われることをお薦めします。ゴンチチの音楽もよかったです。
監督、脚本、編集:是枝裕和 撮影:山崎裕 美術:磯見俊裕、三ツ松けいこ 音楽:ゴンチチ
出演:岡元夕紀子、平泉成、YOU、串田和美、加瀬亮、タテタカコ、木村祐一、遠藤憲一、寺島進、韓英恵、清水萌々子、木村飛影、北浦愛、柳楽優弥
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【山下敦弘監督作品】「リアリズムの宿」〜え?オレらに会うため〜
2004年7月21日 封切日本映画
今日、紹介するのは「リアリズムの宿」。つげ義春の漫画を「ばかのハコ船」の山下敦弘が監督。出演は山下敦弘の盟友の山本浩司、長塚京三の息子にして俳優から自主映画の監督まで幅広い分野で活躍する長塚圭史、「萌の朱雀」でデビューした尾野真千子。
ある冬の日。片田舎の小さな駅の前に二人の男がたっていた。自主映画出身の映画監督木下(山本浩司)と脚本家の坪井(長塚圭史)は共通の知人である船木(山本剛史)に誘われて、このさびれきった温泉街にやってきたのだ。二人は全く知らないというわけではないが、顔を知っているという程度でほとんど面識がない。無言で船木を待ち続ける二人。でも船木は来ない。寝坊してしまったのだ。仕方なく、歩き出す二人。
二人は船木に聞いていた宿屋に向かうがその宿屋はつぶれていた。ようやく民宿を見つけた二人は相変わらず会話がない。映画についての話を一通りしてしまうともう話題が無い。宿屋の主人(外人)に魚を売りつけられたり、こっそり持ち込んだ酒を飲まれてしまったり、露天風呂(?)で変な話をされたりしてますます気分が落ち込む二人。実はこの旅は船木の主演映画の構想を練る旅だったのだが、船木がいないことと木下と坪井が全く気乗りしないことで何がなんだかわからない旅になっていた。
次の日、海岸でしゃがみこんで、だらだらと話す二人。これだけ長い時間、二人でいてもまるで話題が盛り上がらない。そこに突然、裸当然の少女(尾野真千子)がびしょぬれで泣きそうな顔して走ってきた。海岸沿いにいた彼女は着替えもお金も全部流されてしまい、この冬の日に水着姿だった。彼女の名前は敦子で東京(住んでるとこは。。原宿)から来た21歳。女の子が加わったことで、俄然話題が盛り上がり始める二人。女の子を加えた三人は見得を張って”温泉旅館”に泊まる。楽しく一夜を飲み明かす三人だったが、次の日に敦子は忽然と姿を消してしまう。また二人の旅になった。昨日、金を使いすぎて泊まる金もない。喫茶店で出会った変なオッサン(康すおん)に家に泊まればいいと言われるのだが。。
思いがけず、二人で旅をすることになった。相手は全く知らないことはないが仲良しでもない。共通の話題もほとんど無い。こういう状態というのはとてもつらい。で、実際に話してみるとやはり友人になれない人なんだな。木下が電話で船木と「坪井さんって俺より上?あ?下?オッケーオッケー」と話すシーンはリアルだと思った。初めての相手ってとりあえず、年齢聞くもんね。
木下は童貞で女に対する強烈なコンプレックスがある。それに対して坪井は6年間、女と同棲した経験がある。木下の坪井に対する妬みが時々、出てくるのが面白い。坪井だって酔っ払って昔の女の名前をつぶやいたり、女がしてたマフラーをしてるような、そういう人なんだけどな。坪井と敦子が同棲について話し出して話題にのれなくなった木下が「異邦人」を歌いだすシーンは爆笑。
敦子を演じるのは尾野真千子。デビュー作の「萌の朱雀」も見てるはずなんですが、どうも思い出せない。「世界の中心で愛を叫ぶ」にも出てたらしいんですが、印象に残ってない。少ない出番でも津田寛治の坊さんは覚えてるんだが。何とも正体がつかめない、ふわふわとした少女を好演。ラストの手を振るシーンはとっても可愛かった。脇役では「ばかのハコ船」で尾崎をやった山本剛史(本業はサラリーマン)はワンカットのみ出演。旅先で出会う、妙に気前のいい怪しいオッサンが面白かった。「おまえ、写真ばらまくぞお」が妙に耳に残った。
キレのある演出ではないですが、のったりとしたオフビートで映画は進んでいく。大爆笑の連続ではなくて、何気ないシーンでクスクス笑えるような映画であとあと思い出し笑いできるような映画です。パンフに載っていた脚本を読むと細かいネタが結構、仕込まれている。(「竹内ちから」とかね。)ただ、「ばかのハコ船」「どんてん生活」を最近、DVDで見て思ったんだが、この人の映画は映画館でじっくり見るのに向いてる。早いテンポの映画が好きな人にはやや、とっつきが悪いと思う。どうしても気が散るビデオとかで見てるとしんどいと思う。でも慣れてしまうと何ともこのぬるいテンポが心地よくなる。24日からみなみ会館でスタートです。お見逃し無きように。
監督:山下敦弘 脚本:山下敦弘、向井康介 音楽:くるり 配給・宣伝:ビターズ・エンド 特別協力:中島貞夫
出演:長塚圭史、山本浩司、尾野真千子、サニー・フランシス、瀬川浩司、康すおん、山下敦弘、山本剛史
ある冬の日。片田舎の小さな駅の前に二人の男がたっていた。自主映画出身の映画監督木下(山本浩司)と脚本家の坪井(長塚圭史)は共通の知人である船木(山本剛史)に誘われて、このさびれきった温泉街にやってきたのだ。二人は全く知らないというわけではないが、顔を知っているという程度でほとんど面識がない。無言で船木を待ち続ける二人。でも船木は来ない。寝坊してしまったのだ。仕方なく、歩き出す二人。
二人は船木に聞いていた宿屋に向かうがその宿屋はつぶれていた。ようやく民宿を見つけた二人は相変わらず会話がない。映画についての話を一通りしてしまうともう話題が無い。宿屋の主人(外人)に魚を売りつけられたり、こっそり持ち込んだ酒を飲まれてしまったり、露天風呂(?)で変な話をされたりしてますます気分が落ち込む二人。実はこの旅は船木の主演映画の構想を練る旅だったのだが、船木がいないことと木下と坪井が全く気乗りしないことで何がなんだかわからない旅になっていた。
次の日、海岸でしゃがみこんで、だらだらと話す二人。これだけ長い時間、二人でいてもまるで話題が盛り上がらない。そこに突然、裸当然の少女(尾野真千子)がびしょぬれで泣きそうな顔して走ってきた。海岸沿いにいた彼女は着替えもお金も全部流されてしまい、この冬の日に水着姿だった。彼女の名前は敦子で東京(住んでるとこは。。原宿)から来た21歳。女の子が加わったことで、俄然話題が盛り上がり始める二人。女の子を加えた三人は見得を張って”温泉旅館”に泊まる。楽しく一夜を飲み明かす三人だったが、次の日に敦子は忽然と姿を消してしまう。また二人の旅になった。昨日、金を使いすぎて泊まる金もない。喫茶店で出会った変なオッサン(康すおん)に家に泊まればいいと言われるのだが。。
思いがけず、二人で旅をすることになった。相手は全く知らないことはないが仲良しでもない。共通の話題もほとんど無い。こういう状態というのはとてもつらい。で、実際に話してみるとやはり友人になれない人なんだな。木下が電話で船木と「坪井さんって俺より上?あ?下?オッケーオッケー」と話すシーンはリアルだと思った。初めての相手ってとりあえず、年齢聞くもんね。
木下は童貞で女に対する強烈なコンプレックスがある。それに対して坪井は6年間、女と同棲した経験がある。木下の坪井に対する妬みが時々、出てくるのが面白い。坪井だって酔っ払って昔の女の名前をつぶやいたり、女がしてたマフラーをしてるような、そういう人なんだけどな。坪井と敦子が同棲について話し出して話題にのれなくなった木下が「異邦人」を歌いだすシーンは爆笑。
敦子を演じるのは尾野真千子。デビュー作の「萌の朱雀」も見てるはずなんですが、どうも思い出せない。「世界の中心で愛を叫ぶ」にも出てたらしいんですが、印象に残ってない。少ない出番でも津田寛治の坊さんは覚えてるんだが。何とも正体がつかめない、ふわふわとした少女を好演。ラストの手を振るシーンはとっても可愛かった。脇役では「ばかのハコ船」で尾崎をやった山本剛史(本業はサラリーマン)はワンカットのみ出演。旅先で出会う、妙に気前のいい怪しいオッサンが面白かった。「おまえ、写真ばらまくぞお」が妙に耳に残った。
キレのある演出ではないですが、のったりとしたオフビートで映画は進んでいく。大爆笑の連続ではなくて、何気ないシーンでクスクス笑えるような映画であとあと思い出し笑いできるような映画です。パンフに載っていた脚本を読むと細かいネタが結構、仕込まれている。(「竹内ちから」とかね。)ただ、「ばかのハコ船」「どんてん生活」を最近、DVDで見て思ったんだが、この人の映画は映画館でじっくり見るのに向いてる。早いテンポの映画が好きな人にはやや、とっつきが悪いと思う。どうしても気が散るビデオとかで見てるとしんどいと思う。でも慣れてしまうと何ともこのぬるいテンポが心地よくなる。24日からみなみ会館でスタートです。お見逃し無きように。
監督:山下敦弘 脚本:山下敦弘、向井康介 音楽:くるり 配給・宣伝:ビターズ・エンド 特別協力:中島貞夫
出演:長塚圭史、山本浩司、尾野真千子、サニー・フランシス、瀬川浩司、康すおん、山下敦弘、山本剛史
今日、紹介するのは10日から東映系で公開された「69 sixty nine」。村上龍の自伝小説の映画化です。主演は妻夫木聡で監督は「BORDER LINE」の李相日で脚本は宮藤官九郎です。
この映画は1969年の佐世保が舞台になっています。69年というのは今から35年前という、大昔ですがこの年は実に様々なことが起こってます。パンフと昭和・平成家庭史年表を参考にしますと。。
・奥崎謙三が皇居でパチンコ玉を打つ
・PLO議長にアラファトが就任
・永山則夫の逮捕
・ド・ゴール、フランス大統領を辞任
・柏戸が引退
・市川雷蔵が死去
・ロマン・ポランスキーの嫁さんが惨殺される
・カダフィ大佐、革命成就
・ソニー、ビクターが共にビデオを発売
・プロ野球の八百長事件発覚
・ドリフの「全員集合」がスタート
・「男はつらいよ」公開
・シンナー、大流行
と挙げれば、もうキリがないわけです。なお、この年には安田講堂事件があり、東大の受験が中止されました。翌年の70年は安保の切り替わりの年で運動が最高潮になると思われていたのですが、この事件をきっかけに学生運動は低調となり、内ゲバに明け暮れます。とまあ、そういう時代だったのです。佐世保はこの前年、アメリカの原子力空母のエンタープライズの入港を巡って学生と機動隊が衝突する「エンタープライズ事件」が起こっています。映画にもエンタープライズ事件の生き残りを称する大学生が出てきますが、まだまだ町全体がピリピリしておったのでしょう。
高校生のケン(妻夫木聡)は「楽しく生きる」が信条のハッタリ野郎。ハッタリをかます時に標準語で喋る。彼は友人のアダマ(安藤政信)、岩瀬(金井勇太)と共に映画、演劇、ロックが一体となった「フェスティバル」を開催しようとする。彼には夢があった。映画を撮る名目で北高のレディ・ジェーンこと松井和子(太田莉菜)に近づこうとしていたのだ。早速、中学時代の親友である大滝(加瀬亮)に8mを借りに行く。が、大滝は学生運動に没頭しており、革命的な題材を取らねばビデオは貸せないと言い出す。行きがかり上、突然高校のバリケード封を言い出してしまうケン。大滝、成島(三浦哲郎)、指紋がない中村(星野源)、ハゲのマスガキ(柄本佑)を連れて、バリ封を敢行するケン達。ケンやアダマにすれば、「楽しいから」でやったバリ封だが学校、警察を巻き込む大騒動になってしまう。。。
映画のテンポもいいし、ストーリーもすごく面白い。展開も早いし、キャストも凄く多いんだが一人一人を生き生きと描く宮藤官九郎の脚本はさすがだと思う。楽観的なケンに慎重なアダマの対比も面白い。脇役では校長室で○ン○をしてしまう中村と200円しか持ってないアダチさん(演じるのは和製ブシェーミとの評価も高い森下能幸!)と全力で生徒と戦う相原先生@帝都大戦が笑えた。ただ、後半がやや弱い。そこが無ければもっといい映画になった。ラストはいいけどね。
キャストが凄いのだ。妻夫木に安藤政信はもちろんのこと、金井勇太(「学校?」「さよなら、クロ」)、加瀬亮(「ロックンロールミシン」)、柄本佑(柄本明の息子「美しい夏キリシマ」)と主演経験ありの日本映画の星ばっか出ておるのだ。池脇千鶴と同棲中の新井浩文まで出ている。妻夫木とは「さよなら、クロ」「ジョゼと虎と魚たち」に引き続いて3回目の共演ですな。シリアスな役柄からこういった、笑える役と実に幅広いですな。まあ、不良役がすごく多いけど。マドンナを演じたのはこれが映画デビューとなる太田莉菜。全校の憧れの的にしてはやや、役不足と思えたが笑顔が可愛いのでまあよしとしよう。しかし、その友人の揺れる胸が魅力の佐藤ユミが三津谷葉子というのは不足なしだが、なんか勿体無いような気がする。
「半落ち」で映画に回帰した柴田恭平は出番が少ない割には飄々とした親父を好演。國村準、岸部一徳、小日向文世、豊原功輔もそれぞれ出番は少ないが、一人一人が当時の社会状況を代表するような役柄で映画に深みを出している。特にホームランバーアイスを片手にケンを追い込んでいく國村準はめちゃくちゃいい。それから「キューティーハニー」では全然だった村上淳がとっても正しい使われ方をされている。「トマトジュースがノメナインデス」と弱気に呟く番長を「ああん?」と怒鳴って、黙り込ませるシーンはこの人でなきゃ、成立せんだろ。最後に、井川遥だな。これは見てのお楽しみ。
この映画の監督、脚本、主演は共に70年代以降の生まれで69年という時代を知りません。映画にはリアリティが重要になってきますので、69年当時の風俗が多く映画に盛り込まれていますが、69年当時の再現は目的になっていません。監督は「69年をリアルに再現するのではなく、この時代を借りながら今を生きる感じで書いていた」
と語っています。当時の17歳にも青春があったように今の17歳にも青春はあるのです。時代が変わってもその青春に違いはないだろう、と監督のこの映画に対する思いはここから出発しています。
映画の中でケンの行動をきっかけにして全校にマスゲーム訓練と放課後の校庭掃除の廃止を訴える声があがるシーンがあります。このシーンは映画の中でもやや異質ですが、監督の中に学生運動に対する考えが出ていると思います。後に悲惨な内ゲバばかりがイメージとなった学生運動ですが、その背景には当時の学校側の高圧的な管理教育もやはりありました。そもそもの学生運動は学費値上げ反対から始まっています。そうしたものをわずかでも扱っているところはやはり誠実だと思う。
オープニングが非常に日本映画らしくないポップな感じで非常にいい。映画全体の雰囲気は「スナッチ」みたいな感じ。妻夫木人気で若い女性客が中心の入りになりそうですが、なかなか見応えのある作品になっています。安藤政信の高校生役はもういくら何でも限界はありますが、妻夫木もかなり無理があると思います。ラストのケミストリーの歌ですが、最初は山下達郎の歌かと思いました。
監督:李相日 脚本:宮藤官九郎 製作:黒澤満 原作:村上龍 美術:種田陽平
キャスト:妻夫木聡、安藤政信、金井勇太、水川あさみ、太田莉菜、三津谷葉子、星野源、加瀬亮、三浦哲郎、井川遥、森下能幸、柴田恭兵、國村準、柄本佑、岸部一徳、小日向文世、原日出子、新井浩文、豊原功輔、嶋田久作、峯村リエ
この映画は1969年の佐世保が舞台になっています。69年というのは今から35年前という、大昔ですがこの年は実に様々なことが起こってます。パンフと昭和・平成家庭史年表を参考にしますと。。
・奥崎謙三が皇居でパチンコ玉を打つ
・PLO議長にアラファトが就任
・永山則夫の逮捕
・ド・ゴール、フランス大統領を辞任
・柏戸が引退
・市川雷蔵が死去
・ロマン・ポランスキーの嫁さんが惨殺される
・カダフィ大佐、革命成就
・ソニー、ビクターが共にビデオを発売
・プロ野球の八百長事件発覚
・ドリフの「全員集合」がスタート
・「男はつらいよ」公開
・シンナー、大流行
と挙げれば、もうキリがないわけです。なお、この年には安田講堂事件があり、東大の受験が中止されました。翌年の70年は安保の切り替わりの年で運動が最高潮になると思われていたのですが、この事件をきっかけに学生運動は低調となり、内ゲバに明け暮れます。とまあ、そういう時代だったのです。佐世保はこの前年、アメリカの原子力空母のエンタープライズの入港を巡って学生と機動隊が衝突する「エンタープライズ事件」が起こっています。映画にもエンタープライズ事件の生き残りを称する大学生が出てきますが、まだまだ町全体がピリピリしておったのでしょう。
高校生のケン(妻夫木聡)は「楽しく生きる」が信条のハッタリ野郎。ハッタリをかます時に標準語で喋る。彼は友人のアダマ(安藤政信)、岩瀬(金井勇太)と共に映画、演劇、ロックが一体となった「フェスティバル」を開催しようとする。彼には夢があった。映画を撮る名目で北高のレディ・ジェーンこと松井和子(太田莉菜)に近づこうとしていたのだ。早速、中学時代の親友である大滝(加瀬亮)に8mを借りに行く。が、大滝は学生運動に没頭しており、革命的な題材を取らねばビデオは貸せないと言い出す。行きがかり上、突然高校のバリケード封を言い出してしまうケン。大滝、成島(三浦哲郎)、指紋がない中村(星野源)、ハゲのマスガキ(柄本佑)を連れて、バリ封を敢行するケン達。ケンやアダマにすれば、「楽しいから」でやったバリ封だが学校、警察を巻き込む大騒動になってしまう。。。
映画のテンポもいいし、ストーリーもすごく面白い。展開も早いし、キャストも凄く多いんだが一人一人を生き生きと描く宮藤官九郎の脚本はさすがだと思う。楽観的なケンに慎重なアダマの対比も面白い。脇役では校長室で○ン○をしてしまう中村と200円しか持ってないアダチさん(演じるのは和製ブシェーミとの評価も高い森下能幸!)と全力で生徒と戦う相原先生@帝都大戦が笑えた。ただ、後半がやや弱い。そこが無ければもっといい映画になった。ラストはいいけどね。
キャストが凄いのだ。妻夫木に安藤政信はもちろんのこと、金井勇太(「学校?」「さよなら、クロ」)、加瀬亮(「ロックンロールミシン」)、柄本佑(柄本明の息子「美しい夏キリシマ」)と主演経験ありの日本映画の星ばっか出ておるのだ。池脇千鶴と同棲中の新井浩文まで出ている。妻夫木とは「さよなら、クロ」「ジョゼと虎と魚たち」に引き続いて3回目の共演ですな。シリアスな役柄からこういった、笑える役と実に幅広いですな。まあ、不良役がすごく多いけど。マドンナを演じたのはこれが映画デビューとなる太田莉菜。全校の憧れの的にしてはやや、役不足と思えたが笑顔が可愛いのでまあよしとしよう。しかし、その友人の揺れる胸が魅力の佐藤ユミが三津谷葉子というのは不足なしだが、なんか勿体無いような気がする。
「半落ち」で映画に回帰した柴田恭平は出番が少ない割には飄々とした親父を好演。國村準、岸部一徳、小日向文世、豊原功輔もそれぞれ出番は少ないが、一人一人が当時の社会状況を代表するような役柄で映画に深みを出している。特にホームランバーアイスを片手にケンを追い込んでいく國村準はめちゃくちゃいい。それから「キューティーハニー」では全然だった村上淳がとっても正しい使われ方をされている。「トマトジュースがノメナインデス」と弱気に呟く番長を「ああん?」と怒鳴って、黙り込ませるシーンはこの人でなきゃ、成立せんだろ。最後に、井川遥だな。これは見てのお楽しみ。
この映画の監督、脚本、主演は共に70年代以降の生まれで69年という時代を知りません。映画にはリアリティが重要になってきますので、69年当時の風俗が多く映画に盛り込まれていますが、69年当時の再現は目的になっていません。監督は「69年をリアルに再現するのではなく、この時代を借りながら今を生きる感じで書いていた」
と語っています。当時の17歳にも青春があったように今の17歳にも青春はあるのです。時代が変わってもその青春に違いはないだろう、と監督のこの映画に対する思いはここから出発しています。
映画の中でケンの行動をきっかけにして全校にマスゲーム訓練と放課後の校庭掃除の廃止を訴える声があがるシーンがあります。このシーンは映画の中でもやや異質ですが、監督の中に学生運動に対する考えが出ていると思います。後に悲惨な内ゲバばかりがイメージとなった学生運動ですが、その背景には当時の学校側の高圧的な管理教育もやはりありました。そもそもの学生運動は学費値上げ反対から始まっています。そうしたものをわずかでも扱っているところはやはり誠実だと思う。
オープニングが非常に日本映画らしくないポップな感じで非常にいい。映画全体の雰囲気は「スナッチ」みたいな感じ。妻夫木人気で若い女性客が中心の入りになりそうですが、なかなか見応えのある作品になっています。安藤政信の高校生役はもういくら何でも限界はありますが、妻夫木もかなり無理があると思います。ラストのケミストリーの歌ですが、最初は山下達郎の歌かと思いました。
監督:李相日 脚本:宮藤官九郎 製作:黒澤満 原作:村上龍 美術:種田陽平
キャスト:妻夫木聡、安藤政信、金井勇太、水川あさみ、太田莉菜、三津谷葉子、星野源、加瀬亮、三浦哲郎、井川遥、森下能幸、柴田恭兵、國村準、柄本佑、岸部一徳、小日向文世、原日出子、新井浩文、豊原功輔、嶋田久作、峯村リエ
今日、紹介するのは「世界の中心で愛を叫ぶ」。見に行こうか、行くまいか悩んでいたのですが、日曜日のお昼にこっそりと行って来ました。常にガラガラの映画館なんですが、半分ほどの入りで女子中学生で館内はきゃぴきゃぴ(死語)しておりました。で、映画の感想なんですが、まあ及第点です。劇場で見ても損はないと思います。これはやはり監督の行定勲による力ってのが大きい。師匠の岩井俊二に似たような作品ばかり撮ってた監督ですが「GO」で軽さを覚えてから、「ロックンロールミシン」「きょうのできごと」を経て、面白い映画を撮れるようになったと思う。そういう作品の質ってのは割りと高いと思います。しかし、俺には面白くなかった。というのも、ディテールがボロボロでリアリティが全く無い。お話としては面白いんだが、全く人の心を打たないんである。
この日は続けて、「21グラム」を見たのだが、日米の差というものをまざまざと感じてしまった。私は一応、日本映画ファンなので日本映画を擁護したいとは思う。が、今年の前半で私が満点をつけられる作品って「下妻物語」だけである。それに比べて外国映画の方はどうか。「21グラム」「ラブ・アクチュアリー」「スクール・オブ・ロック」「ビッグ・フィッシュ」「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」と名作揃いである。ドイツにも「グッバイ!レーニン」あり、香港に「ツインズ・エフェクト」そして韓国に「殺人の追憶」「シルミド」あり、である。日本映画だけ、完全に遅れをとっておる。外国で公開されるようなその国で大ヒットを記録した映画である、という事情を差し引いても、日本映画の貧弱さは感じてしまう。ややこしいので、ここでは「21グラム」だけを例にとる。ドラッグ中毒からよき夫を得て、今は子育てに熱中する女、心臓病を患い、移植手術を待つだけの人生に飽きた大学教授、昔はヤクザだったが今はキリスト教に目覚め、酒もドラッグもやらずに真面目に生きているトラック運転手。主人公の様々な背景について、ナレーションで説明することなく、丁寧に細かいカットを積み上げて説明していくのである。そこから、リアリティもでてくるし、後で起こる感情の葛藤も理解できるのである。それに比べて「世界の中心で愛を叫ぶ」というのは病気の為に引き裂かれる男女を描いた、しんどい映画なのに、まるでリアリティがないのだ。大体、白血病で死にそうな少女がぽちゃぽちゃしてるのだぞ。「21グラム」のレベルまで持っていけとは言わん。キャリアもギャラも全然違う。元気な頃と病気になってからがまるで同じ体形、いやむしろ太ってないか?頭を坊主にしますた、ってそういう問題じゃないぞ。
実は主演の長澤まさみはこの時期に「深呼吸の必要」という映画を掛け持ちしていた。ロケ地は沖縄で、実際に作業なんかもやってたらしいからしっかり日焼けして、しかもご飯がおいしいからと太ってしまったらしい。当然ながら監督は激怒。シーンがつながらんのだから、怒るのは当然だろう。思うに頭を剃ったのは、反省の意味からだろう。大体、坊主にする意味ってこの映画であんまりなかったと思う。一部の尼さんマニアが喜んだだけ。やる気を見せたってそれより前にやることあんだろ、と思ってしまう。
それからもう一つ。大沢たかおが過去のことを思い出しながら高校を歩き回るシーンがあるんだが、どうやって学校に入ったんだ?休日の学校をこんな風に自由にうろうろできんのか?卒業生なら、学校には入れてくれるだろうが、教室に入ったり、土足で体育館とやりたい放題ってのはどんな学校なんだと思ってしまう。普通はこの学校には警備員おらんのか?細かいことかもしれんが、神経質なほどこの手のディテールにこだわらんと感動作なんか作れんぞ。ただでさえ、あざとすぎる物語なんだから。しらけるんです。あともう一つ挙げておくと、86年という具体的な年が舞台になってる割には、時代性を感じさせるものがほとんどなかった。佐野元春と渡辺美里にウォークマンだけってねえあなた。別に若王子さん誘拐とか土井書記長とか出せとは言わんが、あまりにも寂しいではないか。
結局、脚本がチープなんである。まるで練りこまれてないし、シーンごとの組み立てしか頭にないから、全体を通して見るとまるでちぐはぐ。原作は読んでないから知らんのだが、何でもよく売れてるらしいですな。それだけで客が来るから、脚本はエエ加減でもいいと言うわけですか。いい商売だな。大体、このパンフも出演者、スタッフにしつこく原作読んだか、と聞きまくってるがそれがそんなに重要か?映画で勝負するんじゃなくて、原作の知名度で勝負かけてるのが見え見えだぞ。
ここまで悪口ばかり書いてきたが、行定と撮影の篠田昇の几帳面なまでの画面作りは実に素晴らしい。それとキャストの熱演が救い。長澤まさみはボロカスに書いたが、まあ演技自体はよかったです。何ともいえずにのんびりとした口調で普通の女の子らしさが出てたと思う。その普通の女の子が難病にかかるというからドラマなんだから、ここはこれでいいのだ。全然知らんで全く注目してなかった森山未來もよかったねえ。深刻すぎることもなく、軽い感じで演技を楽しんでた。要所要所ではビシリと決めてたしね。山崎努が出てなかったらこの映画はどうなってただろうと思う。彼が出るだけで画面がしまるのだ。仏頂面の男に何か囁き、大笑いさせるシーンは彼でなかったらできないシーンだろう。
長澤まさみにしても、この映画は勝負の映画だったと思います。第5回東宝シンデレラに選ばれて、映画出演本数もそこそこの数になった割には世間的な知名度は非常に低い。ドラマにあんまり出さずに映画女優に育てようというのが東宝の考えだろうが、第4回東宝シンデレラの野波麻帆も立派な映画女優だが知名度は低い。映画女優というのが死語になりつつある現在、その方針はしんどいだろうね。東宝にしても、この映画で長澤まさみを主演させるのは勝負だったんだろう。原作に柴咲コウ、大沢たかお、平井堅でリスクヘッジはしての勝負だけどね。ただ本当にしんどいのはこれからだろう。次の作品が彼女の価値を決めるだろう。可愛さでは石原さとみに劣るし、演技では宮崎あおいに遠く及ばん。ただ。。この映画まで気づかなかったが。。すげえ巨乳じゃねえか。それだけでもスクリーンで確かめろ。(そんなオチかい)
監督:行定勲 脚本:坂元裕二、伊藤ちひろ、行定勲 撮影:篠田昇 美術:山口修
キャスト:森山未來、長澤まさみ、宮藤官九郎、杉本哲太、マギー、尾野真千子、岡元夕紀子、近藤芳正、木内みどり、森田芳光、渡辺美里、田中美里、ダンディ坂野、大森南朋、山崎努、柴咲コウ、大沢たかお、津田寛治
この日は続けて、「21グラム」を見たのだが、日米の差というものをまざまざと感じてしまった。私は一応、日本映画ファンなので日本映画を擁護したいとは思う。が、今年の前半で私が満点をつけられる作品って「下妻物語」だけである。それに比べて外国映画の方はどうか。「21グラム」「ラブ・アクチュアリー」「スクール・オブ・ロック」「ビッグ・フィッシュ」「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」と名作揃いである。ドイツにも「グッバイ!レーニン」あり、香港に「ツインズ・エフェクト」そして韓国に「殺人の追憶」「シルミド」あり、である。日本映画だけ、完全に遅れをとっておる。外国で公開されるようなその国で大ヒットを記録した映画である、という事情を差し引いても、日本映画の貧弱さは感じてしまう。ややこしいので、ここでは「21グラム」だけを例にとる。ドラッグ中毒からよき夫を得て、今は子育てに熱中する女、心臓病を患い、移植手術を待つだけの人生に飽きた大学教授、昔はヤクザだったが今はキリスト教に目覚め、酒もドラッグもやらずに真面目に生きているトラック運転手。主人公の様々な背景について、ナレーションで説明することなく、丁寧に細かいカットを積み上げて説明していくのである。そこから、リアリティもでてくるし、後で起こる感情の葛藤も理解できるのである。それに比べて「世界の中心で愛を叫ぶ」というのは病気の為に引き裂かれる男女を描いた、しんどい映画なのに、まるでリアリティがないのだ。大体、白血病で死にそうな少女がぽちゃぽちゃしてるのだぞ。「21グラム」のレベルまで持っていけとは言わん。キャリアもギャラも全然違う。元気な頃と病気になってからがまるで同じ体形、いやむしろ太ってないか?頭を坊主にしますた、ってそういう問題じゃないぞ。
実は主演の長澤まさみはこの時期に「深呼吸の必要」という映画を掛け持ちしていた。ロケ地は沖縄で、実際に作業なんかもやってたらしいからしっかり日焼けして、しかもご飯がおいしいからと太ってしまったらしい。当然ながら監督は激怒。シーンがつながらんのだから、怒るのは当然だろう。思うに頭を剃ったのは、反省の意味からだろう。大体、坊主にする意味ってこの映画であんまりなかったと思う。一部の尼さんマニアが喜んだだけ。やる気を見せたってそれより前にやることあんだろ、と思ってしまう。
それからもう一つ。大沢たかおが過去のことを思い出しながら高校を歩き回るシーンがあるんだが、どうやって学校に入ったんだ?休日の学校をこんな風に自由にうろうろできんのか?卒業生なら、学校には入れてくれるだろうが、教室に入ったり、土足で体育館とやりたい放題ってのはどんな学校なんだと思ってしまう。普通はこの学校には警備員おらんのか?細かいことかもしれんが、神経質なほどこの手のディテールにこだわらんと感動作なんか作れんぞ。ただでさえ、あざとすぎる物語なんだから。しらけるんです。あともう一つ挙げておくと、86年という具体的な年が舞台になってる割には、時代性を感じさせるものがほとんどなかった。佐野元春と渡辺美里にウォークマンだけってねえあなた。別に若王子さん誘拐とか土井書記長とか出せとは言わんが、あまりにも寂しいではないか。
結局、脚本がチープなんである。まるで練りこまれてないし、シーンごとの組み立てしか頭にないから、全体を通して見るとまるでちぐはぐ。原作は読んでないから知らんのだが、何でもよく売れてるらしいですな。それだけで客が来るから、脚本はエエ加減でもいいと言うわけですか。いい商売だな。大体、このパンフも出演者、スタッフにしつこく原作読んだか、と聞きまくってるがそれがそんなに重要か?映画で勝負するんじゃなくて、原作の知名度で勝負かけてるのが見え見えだぞ。
ここまで悪口ばかり書いてきたが、行定と撮影の篠田昇の几帳面なまでの画面作りは実に素晴らしい。それとキャストの熱演が救い。長澤まさみはボロカスに書いたが、まあ演技自体はよかったです。何ともいえずにのんびりとした口調で普通の女の子らしさが出てたと思う。その普通の女の子が難病にかかるというからドラマなんだから、ここはこれでいいのだ。全然知らんで全く注目してなかった森山未來もよかったねえ。深刻すぎることもなく、軽い感じで演技を楽しんでた。要所要所ではビシリと決めてたしね。山崎努が出てなかったらこの映画はどうなってただろうと思う。彼が出るだけで画面がしまるのだ。仏頂面の男に何か囁き、大笑いさせるシーンは彼でなかったらできないシーンだろう。
長澤まさみにしても、この映画は勝負の映画だったと思います。第5回東宝シンデレラに選ばれて、映画出演本数もそこそこの数になった割には世間的な知名度は非常に低い。ドラマにあんまり出さずに映画女優に育てようというのが東宝の考えだろうが、第4回東宝シンデレラの野波麻帆も立派な映画女優だが知名度は低い。映画女優というのが死語になりつつある現在、その方針はしんどいだろうね。東宝にしても、この映画で長澤まさみを主演させるのは勝負だったんだろう。原作に柴咲コウ、大沢たかお、平井堅でリスクヘッジはしての勝負だけどね。ただ本当にしんどいのはこれからだろう。次の作品が彼女の価値を決めるだろう。可愛さでは石原さとみに劣るし、演技では宮崎あおいに遠く及ばん。ただ。。この映画まで気づかなかったが。。すげえ巨乳じゃねえか。それだけでもスクリーンで確かめろ。(そんなオチかい)
監督:行定勲 脚本:坂元裕二、伊藤ちひろ、行定勲 撮影:篠田昇 美術:山口修
キャスト:森山未來、長澤まさみ、宮藤官九郎、杉本哲太、マギー、尾野真千子、岡元夕紀子、近藤芳正、木内みどり、森田芳光、渡辺美里、田中美里、ダンディ坂野、大森南朋、山崎努、柴咲コウ、大沢たかお、津田寛治
今日紹介するのは「キューティー・ハニー」。先週の金曜日に有休などを取りあそばして、見に行ってきたわけでございます。監督は「ふしぎの海のナディア」「新世紀エヴァンゲリオン」の監督にして安野モヨコ(正直、吃驚したぞ)を嫁にした庵野秀明。「新世紀エヴァンゲリオン」と言えば一昔前にアニメファンに留まることなく、多くの映画ファン、いや多くの青少年を魅了した作品で当時、高校から大学に上がろうとしていた私もやはりその一人でした。当時、映画を見に行く習慣など持ちえなかった私でしたが、熱狂するファンでごった返す、今は無き京都朝日シネマで立ち見で見ておりました。(ちなみにこれが朝日シネマデビューになった)「ふしぎの海のナディア」は私が小学生6年生の時にやっていた作品ですが、実はこれも大好きな作品で毎週見てましたね。私が熱心に見てたアニメというのはこれとあとは「魔神英雄伝ワタル」ぐらいでございます。
「新世紀エヴァンゲリオン」って言う作品は本当に様々な作品にインスピレーションを与えてその影響というのは計り知れないもんで「キャシャーン」とか「バトルロワイアル?」みたいな作品もその影響を受けている。「THE END OF EVANGELION」(当時は夏エヴァって言い方していた)は人間の内面の踏み込みたくないところまで踏み込んで描ききった、見ようによってはすっごく悪趣味で厭な作品なんだが、上映時間通してドキドキさせるような作品でもうただただ、圧倒された。アニメファンには評判が悪かったんだよね、これ。でもアニメをあんまり見てないような人には圧倒的に支持された。深作欣二も夢中になった一人で、ちょっとの出番で死んでしまうような登場人物のその心象風景を丁寧に(ある意味、必要以上に)描いて見せた。「エヴァ」の声優だった宮村優子を出演させたのもその一つ。
が、当の庵野秀明自身はテレビで全ての力を使いきり、立て直るのに半年ほどかかったらしい。テレビの「エヴァ」は低視聴率で終わり、放送終了後に口コミで流行りだしていた。私も見たのは放送終了後に友人から借りたビデオでした。18話が過ぎたあたりから、セックスシーンは描くわ、残虐シーンのオンパレードでメチャクチャなストーリーになってわけのわからん終わり方したのだ。このラストがなかったらこれほどこの作品は持ち上げられずに、ただのアニメファンの作品に終わってただろう。当時、私はラジオで庵野秀明のインタビュー(林原めぐみのラジオだったと思う)を聞いているが「別のラストを考えるつもりはない。」「アニメファンってのは他者との接触をしたがらない、世の中から逃げている人たちなんです。だからもっと世の中に出ようと。僕が言いたかったのはそういうことなんです」みたいなことを言っていた。(うろ覚えなんで、少しニュアンスは違うと思うがこんな感じだった。本人曰く、この時期は壊れてたらしい)その監督の久々の新作が「キューティー・ハニー」。原作のファンでもない私にとっては庵野秀明がどんな映画を撮るのか、それが興味であった。
はじめに書いてしまうとお粗末な作品だし、見てて恥ずかしくなるシーンも多い。が、とにかく面白い。「キューティー・ハニー」も他の永井豪の作品の例に漏れず、実は複雑で一筋縄には行かない題材なんだが、そこを勢いとテンポのよさですっ飛ばしてしまう爽快感がある。庵野監督が「エンターテインメントに徹した作品」に語ったように非常に口当たりがよくて、楽しんで見ていられる作品になっている。73年にテレビで放送されたアニメの主題歌を映画の主題歌に使って、「ファイナルファンタジー」の主題歌を歌った倖田來未に歌わせたのも成功だった。番組を知らない私でもあの歌は何となく知っていたし、また耳に残るのだ。倖田來未もよくやったと思う。
ハニーを演じたのは佐藤江梨子、サトエリである。この人も割りと息が長い。バラエティとかのお仕事もしっかりこなしているが、NHKの映画の番組なんかもやってる。小津特集では大杉漣と対談までしてた。なんでサトエリなんかさっぱりわからんかったが割りとそつなくこなしていた。実はとっても器用なアイドルなんかもしれん。この映画でも様々なコスプレをこなして、相当にアホアホなことをやらされてるがよく頑張ってる。本人が作品を楽しんでいるのがわかって、微笑ましい気分になる。ただ、あんまりエロくはない。胸をゆさゆさ揺らして、相当にセクシーなコスプレもあるのだが、(入浴シーンとかもあるし、冒頭にすんげえシーンもあるけど)エロさというのは感じない。健康的すぎるんだな。そこがまあ彼女の魅力の一つなんだと思うけど。
友人役に「すいか」の市川実日子。事件を追う、プライドの高い刑事を演じているのがこの人はもうめちゃくちゃ演技がうまいのでケチのつけようがない。ふとした時に見せる可愛い仕草も大いにグーだ。逆に全然だったのは村上淳。この人の真骨頂は「心優しい不良」にあるので、こういう調子のいい男の役はもう違うのだ。登場が多い割にはちっともストーリーにかめずに終わってしまった。友情出演で出た(誰への友情だ)松田龍平も然りである。
特撮の醍醐味はやはり「赤影」の汐路章を例に出すまでもなく、悪役である。悪の組織である「パンサークロー」のキャスト陣はもう素晴らしすぎる。まず「キャシャーン」でも断然目立っていた及川光博のハマリ具合は最高であった。槍に仕込んだマイクで一曲歌ってから戦いに挑むのはもう、アホらしすぎて完全にギャグなんだが彼がやるとビシッと決まるのだ。彼以外にはできない役である。片桐はいり、小日向しえ、新谷真弓、手塚とおる、篠井英介もよくこんな役やったなーと思う奮闘ぶり。片桐はいりは特撮向きやな。ハマリすぎ。それから台詞が一つもねえ京本政樹なんだが、また爆笑もんだ。これはまあ見てのお楽しみ。
少し前だったが、ジプリの新作を庵野が撮るという噂があった。彼は「風の谷のナウシカ」の製作にも参加しているし、宮崎駿が後継者に考えているという噂もあった。とにかく、目が離せない人で今後はアニメに行くのか、実写に行くのか、よくわからん。この映画もアニメと特撮がちゃんぽんになってて、そうした問いをはぐらかせてるようにも見える。素直に楽しみのが一番だろうね。あ、子どもに見せたら喜ぶだろうし、親子でも十分にOKですよ。では、じゃっ。(この仕草が一番かわいかった)
監督:庵野秀明 脚本:庵野秀明、高橋留美 原作:永井豪 主題歌:倖田來未 監督補:尾上克郎、摩砂雪 撮影:松島孝助 美術:佐々木尚 キャラクターデザイン:寺田克也、安野モヨコ、出渕裕、すぎむらしんいち、貞本義行 特殊メイク:原口智生 特撮監督:神谷誠
キャスト:佐藤江梨子、市川実日子、村上淳、京本政樹、片桐はいり、小日向しえ、及川光博、新谷真弓、手塚とおる、篠井英介、永井豪、加瀬亮、松尾スズキ、岩松了、吉田日出子、嶋田久作、佐藤佐吉、しりあがり寿、田中要次、森下能幸、倖田來未
「新世紀エヴァンゲリオン」って言う作品は本当に様々な作品にインスピレーションを与えてその影響というのは計り知れないもんで「キャシャーン」とか「バトルロワイアル?」みたいな作品もその影響を受けている。「THE END OF EVANGELION」(当時は夏エヴァって言い方していた)は人間の内面の踏み込みたくないところまで踏み込んで描ききった、見ようによってはすっごく悪趣味で厭な作品なんだが、上映時間通してドキドキさせるような作品でもうただただ、圧倒された。アニメファンには評判が悪かったんだよね、これ。でもアニメをあんまり見てないような人には圧倒的に支持された。深作欣二も夢中になった一人で、ちょっとの出番で死んでしまうような登場人物のその心象風景を丁寧に(ある意味、必要以上に)描いて見せた。「エヴァ」の声優だった宮村優子を出演させたのもその一つ。
が、当の庵野秀明自身はテレビで全ての力を使いきり、立て直るのに半年ほどかかったらしい。テレビの「エヴァ」は低視聴率で終わり、放送終了後に口コミで流行りだしていた。私も見たのは放送終了後に友人から借りたビデオでした。18話が過ぎたあたりから、セックスシーンは描くわ、残虐シーンのオンパレードでメチャクチャなストーリーになってわけのわからん終わり方したのだ。このラストがなかったらこれほどこの作品は持ち上げられずに、ただのアニメファンの作品に終わってただろう。当時、私はラジオで庵野秀明のインタビュー(林原めぐみのラジオだったと思う)を聞いているが「別のラストを考えるつもりはない。」「アニメファンってのは他者との接触をしたがらない、世の中から逃げている人たちなんです。だからもっと世の中に出ようと。僕が言いたかったのはそういうことなんです」みたいなことを言っていた。(うろ覚えなんで、少しニュアンスは違うと思うがこんな感じだった。本人曰く、この時期は壊れてたらしい)その監督の久々の新作が「キューティー・ハニー」。原作のファンでもない私にとっては庵野秀明がどんな映画を撮るのか、それが興味であった。
はじめに書いてしまうとお粗末な作品だし、見てて恥ずかしくなるシーンも多い。が、とにかく面白い。「キューティー・ハニー」も他の永井豪の作品の例に漏れず、実は複雑で一筋縄には行かない題材なんだが、そこを勢いとテンポのよさですっ飛ばしてしまう爽快感がある。庵野監督が「エンターテインメントに徹した作品」に語ったように非常に口当たりがよくて、楽しんで見ていられる作品になっている。73年にテレビで放送されたアニメの主題歌を映画の主題歌に使って、「ファイナルファンタジー」の主題歌を歌った倖田來未に歌わせたのも成功だった。番組を知らない私でもあの歌は何となく知っていたし、また耳に残るのだ。倖田來未もよくやったと思う。
ハニーを演じたのは佐藤江梨子、サトエリである。この人も割りと息が長い。バラエティとかのお仕事もしっかりこなしているが、NHKの映画の番組なんかもやってる。小津特集では大杉漣と対談までしてた。なんでサトエリなんかさっぱりわからんかったが割りとそつなくこなしていた。実はとっても器用なアイドルなんかもしれん。この映画でも様々なコスプレをこなして、相当にアホアホなことをやらされてるがよく頑張ってる。本人が作品を楽しんでいるのがわかって、微笑ましい気分になる。ただ、あんまりエロくはない。胸をゆさゆさ揺らして、相当にセクシーなコスプレもあるのだが、(入浴シーンとかもあるし、冒頭にすんげえシーンもあるけど)エロさというのは感じない。健康的すぎるんだな。そこがまあ彼女の魅力の一つなんだと思うけど。
友人役に「すいか」の市川実日子。事件を追う、プライドの高い刑事を演じているのがこの人はもうめちゃくちゃ演技がうまいのでケチのつけようがない。ふとした時に見せる可愛い仕草も大いにグーだ。逆に全然だったのは村上淳。この人の真骨頂は「心優しい不良」にあるので、こういう調子のいい男の役はもう違うのだ。登場が多い割にはちっともストーリーにかめずに終わってしまった。友情出演で出た(誰への友情だ)松田龍平も然りである。
特撮の醍醐味はやはり「赤影」の汐路章を例に出すまでもなく、悪役である。悪の組織である「パンサークロー」のキャスト陣はもう素晴らしすぎる。まず「キャシャーン」でも断然目立っていた及川光博のハマリ具合は最高であった。槍に仕込んだマイクで一曲歌ってから戦いに挑むのはもう、アホらしすぎて完全にギャグなんだが彼がやるとビシッと決まるのだ。彼以外にはできない役である。片桐はいり、小日向しえ、新谷真弓、手塚とおる、篠井英介もよくこんな役やったなーと思う奮闘ぶり。片桐はいりは特撮向きやな。ハマリすぎ。それから台詞が一つもねえ京本政樹なんだが、また爆笑もんだ。これはまあ見てのお楽しみ。
少し前だったが、ジプリの新作を庵野が撮るという噂があった。彼は「風の谷のナウシカ」の製作にも参加しているし、宮崎駿が後継者に考えているという噂もあった。とにかく、目が離せない人で今後はアニメに行くのか、実写に行くのか、よくわからん。この映画もアニメと特撮がちゃんぽんになってて、そうした問いをはぐらかせてるようにも見える。素直に楽しみのが一番だろうね。あ、子どもに見せたら喜ぶだろうし、親子でも十分にOKですよ。では、じゃっ。(この仕草が一番かわいかった)
監督:庵野秀明 脚本:庵野秀明、高橋留美 原作:永井豪 主題歌:倖田來未 監督補:尾上克郎、摩砂雪 撮影:松島孝助 美術:佐々木尚 キャラクターデザイン:寺田克也、安野モヨコ、出渕裕、すぎむらしんいち、貞本義行 特殊メイク:原口智生 特撮監督:神谷誠
キャスト:佐藤江梨子、市川実日子、村上淳、京本政樹、片桐はいり、小日向しえ、及川光博、新谷真弓、手塚とおる、篠井英介、永井豪、加瀬亮、松尾スズキ、岩松了、吉田日出子、嶋田久作、佐藤佐吉、しりあがり寿、田中要次、森下能幸、倖田來未
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少女漫画の映画化「問題のない私たち」〜次はあんたの番だよ〜
2004年5月24日 封切日本映画
今日、紹介するのは関西では十三の第七藝術劇場で22日より公開の「問題のない私たち」。封切の日には主演の黒川芽衣の舞台挨拶もあったそうです。いつもなら、のそのそと整理券を取りに行くのですが、おそらくひでえ混雑だろうし、アイドルオタクばかりで埋め尽くされてる映画館を思い浮かべてやめた。共演は美波、沢尻エリカ、大塚寧々、勝村政信、野波麻帆。(この人が来てたならどんな混雑であろうとも行ってたな)
(多分、私立の)女子校に通う笹岡澪(黒川芽衣)はクラスのリーダー格で仲間と一緒にイジメをしていた。イジメのターゲットは真莉愛(美波)という大人しい女の子。彼女には罪悪感などなかった。「あの子が私達を不愉快にするのが悪い」と思い、イジメを苦に自殺した中学生のニュースにも「死ぬ気になれば、何だってできる」と全くその心情も理解できなかった。が、転校生の麻綺(沢尻エリカ)で彼女の境遇は逆転する。おしゃれで明るい麻綺をイジメの対象にしようとするが、失敗。クラスの大部分は大人しい真莉愛をいじめる澪を快く思っておらず、人気は急落。親友だと思ってた瑞希(森絵梨佳)にも裏切られ、麻綺をリーダーとしたグループのイジメの対象になってしまう。教科書への落書き、放課後のリンチ(足蹴)、挙句の果てには葬式ごっこまでやられてしまう。
真莉愛へのイジメも見てみぬ振りした加藤先生(野波麻帆)は頼りにならない。たった一人の肉親である父親(勝村政信)は桃花(大塚寧々)との再婚に夢中で彼女の異変に気づこうともしない。全てに絶望した彼女は学校の屋上から身を投げようとするが、真莉愛に止められる。澪の味方は彼女一人だった。やがて、イジメの対象は瑞希に移る。イジメからは解放されたが、どうにも麻綺が気に入らない澪は遂に激突。イジメの対象は今度は麻綺に向く。またもやイジメグループのリーダーにたった澪だったが。。
小学校、中学校とイジメに遭う子どもってのは大体、大人しいか運動音痴かと相場が決まっております。両者ともに見事に当たっていました私でしたが、イジメには遭いませんでした。だからと言って、学校にイジメ自体が全くなかったかと言えばやはりあった。そこにはイジメに遭わないようにする、私の防衛もやはりあったわけです。それは似た者同志で派閥を組むということだったのです。昼休みは校庭を駆け巡るよりも図書館で「三国志」を読んでる方が楽しいタイプ同士で徒党を組んでしまう。数の暴力にはやはり数で対抗していくしかないのだ。そうした権謀術数ってのが子どもの世界にもあった。小学校、中学校といい思い出も多数あるけど、それ以上に厭な思い出もいっぱいだった。
ただ、イジメってのははっきり言ってかっこ悪いからね。うちは共学だったから、やはり女の子の目というものがあった。女の子はまた事情が違うんでしょうが、イジメをしてる人ってのはみんな、口には出さないけど、「こいつ、最悪」と思われている。映画の中ではイジメグループのリーダーがあっさりとイジメの対象になっちゃう。グループにいる連中にしてしまえば、誰が対象でもいいのだ。要は面白きゃ、いいのだ。罪の意識なんてもんはないだろう。ただ、イジメられている者にとってはそれは塗炭の苦しみである。自分がその立場になって、初めてわかるのだ。想像力が足りないのだ。
ただこの映画で一番最低なのはオトナ連中だろう。口では娘を心配しながら、自分が一番可愛い、”いい父親”に逃げ込もうとする父親にしても、自分の万引きシーンを見た生徒を狡猾に追い込んでいく先生にしても最悪な人間である。特に生徒が先生と戦うのは正直、めちゃくちゃしんどい。私の田舎は閉鎖的で日教組の力が強かったせいか、私立中学に進学する生徒を平気で妨害する教師がいた。私の担任は理解のある人だった。が、私の兄弟は私立中学に進学した兄貴について他の先生に散々、嫌味を言われたらしい。何でも彼らが妄信する平等の姿勢に反するらしい。あほか。
父親にしても先生にしても悪人ではない。が、子どもは〜だという思い込みに飲み込まれて、対話がないままに全てを判断してしまう。日垣隆の言うように対話がない教育などありえないのだ。父親は娘が再婚相手を気に入ってくれるか、ということにだけに夢中で何も気づかない。波風立てずに”良い夫”、”良い父”でいたいのだ。そんなの、無理に決まってるのに。葛藤なしに家族の再編なんか無理に決まってる。父の再婚の相手にしても、”娘”が弁当を食べずに帰ってきたというだけで、この子とは仲良くなれないと判断してしまう。その日、彼女にどんな事情があったとも知らずに。先生は最悪というか哀れでさえもある。自分が作り続けた澪の像におびえ、深みにはまりこんでいく。澪に泥棒の濡れ衣をかけようとして生徒のボイコットに遭うシーンは圧巻。
この原作を書いたのは当時、中学生だった少女で漫画化もされました。少女漫画なんで読んだことないけど。そのせいか、会場には学校帰りと思われる女子中学生の姿もチラホラ。現役のアイドルが多数出ているアイドル映画なんですが、扱っている内容は圧倒的に重くて気が抜けない。全編にわたって女の子がきゃぴきゃぴ(死語)してる映画なんですが、足蹴にしたりするシーンもあります。途中、海水浴のシーンぐらいか?胸休まるシーンは。後半の先生との対決の方が圧倒的に面白い。主演の黒川芽衣はぽっちゃりしすぎだと思うがなかなか可愛い。ビビるほどの美人ぶりを発揮する沢尻エリカは狡猾でクールな少女を見事に演じている。美波はヒュー・グラントに似すぎだと思うが、目がくりっとして可愛い。「バトルロワイアル」で山本太郎の恋人役やった子なんね。あの時の方が大人っぽく見えるんだが。。女の子も割りと可愛く撮れてるし、映画としてもなかなか見応えのある作品です。原作のファンやアイドルファンでなくても、十分にお薦めできる作品です。
監督、脚本:森岡利行 音楽:奥野敦士 原作:木村文、牛田麻希
キャスト:沢尻エリカ、美波、勝村政信、野波麻帆、大塚寧々、岡元夕紀子、森絵梨佳、小松愛、小松愛唯、小貫華子、黒川芽衣、浜田晃、安間里恵
(多分、私立の)女子校に通う笹岡澪(黒川芽衣)はクラスのリーダー格で仲間と一緒にイジメをしていた。イジメのターゲットは真莉愛(美波)という大人しい女の子。彼女には罪悪感などなかった。「あの子が私達を不愉快にするのが悪い」と思い、イジメを苦に自殺した中学生のニュースにも「死ぬ気になれば、何だってできる」と全くその心情も理解できなかった。が、転校生の麻綺(沢尻エリカ)で彼女の境遇は逆転する。おしゃれで明るい麻綺をイジメの対象にしようとするが、失敗。クラスの大部分は大人しい真莉愛をいじめる澪を快く思っておらず、人気は急落。親友だと思ってた瑞希(森絵梨佳)にも裏切られ、麻綺をリーダーとしたグループのイジメの対象になってしまう。教科書への落書き、放課後のリンチ(足蹴)、挙句の果てには葬式ごっこまでやられてしまう。
真莉愛へのイジメも見てみぬ振りした加藤先生(野波麻帆)は頼りにならない。たった一人の肉親である父親(勝村政信)は桃花(大塚寧々)との再婚に夢中で彼女の異変に気づこうともしない。全てに絶望した彼女は学校の屋上から身を投げようとするが、真莉愛に止められる。澪の味方は彼女一人だった。やがて、イジメの対象は瑞希に移る。イジメからは解放されたが、どうにも麻綺が気に入らない澪は遂に激突。イジメの対象は今度は麻綺に向く。またもやイジメグループのリーダーにたった澪だったが。。
小学校、中学校とイジメに遭う子どもってのは大体、大人しいか運動音痴かと相場が決まっております。両者ともに見事に当たっていました私でしたが、イジメには遭いませんでした。だからと言って、学校にイジメ自体が全くなかったかと言えばやはりあった。そこにはイジメに遭わないようにする、私の防衛もやはりあったわけです。それは似た者同志で派閥を組むということだったのです。昼休みは校庭を駆け巡るよりも図書館で「三国志」を読んでる方が楽しいタイプ同士で徒党を組んでしまう。数の暴力にはやはり数で対抗していくしかないのだ。そうした権謀術数ってのが子どもの世界にもあった。小学校、中学校といい思い出も多数あるけど、それ以上に厭な思い出もいっぱいだった。
ただ、イジメってのははっきり言ってかっこ悪いからね。うちは共学だったから、やはり女の子の目というものがあった。女の子はまた事情が違うんでしょうが、イジメをしてる人ってのはみんな、口には出さないけど、「こいつ、最悪」と思われている。映画の中ではイジメグループのリーダーがあっさりとイジメの対象になっちゃう。グループにいる連中にしてしまえば、誰が対象でもいいのだ。要は面白きゃ、いいのだ。罪の意識なんてもんはないだろう。ただ、イジメられている者にとってはそれは塗炭の苦しみである。自分がその立場になって、初めてわかるのだ。想像力が足りないのだ。
ただこの映画で一番最低なのはオトナ連中だろう。口では娘を心配しながら、自分が一番可愛い、”いい父親”に逃げ込もうとする父親にしても、自分の万引きシーンを見た生徒を狡猾に追い込んでいく先生にしても最悪な人間である。特に生徒が先生と戦うのは正直、めちゃくちゃしんどい。私の田舎は閉鎖的で日教組の力が強かったせいか、私立中学に進学する生徒を平気で妨害する教師がいた。私の担任は理解のある人だった。が、私の兄弟は私立中学に進学した兄貴について他の先生に散々、嫌味を言われたらしい。何でも彼らが妄信する平等の姿勢に反するらしい。あほか。
父親にしても先生にしても悪人ではない。が、子どもは〜だという思い込みに飲み込まれて、対話がないままに全てを判断してしまう。日垣隆の言うように対話がない教育などありえないのだ。父親は娘が再婚相手を気に入ってくれるか、ということにだけに夢中で何も気づかない。波風立てずに”良い夫”、”良い父”でいたいのだ。そんなの、無理に決まってるのに。葛藤なしに家族の再編なんか無理に決まってる。父の再婚の相手にしても、”娘”が弁当を食べずに帰ってきたというだけで、この子とは仲良くなれないと判断してしまう。その日、彼女にどんな事情があったとも知らずに。先生は最悪というか哀れでさえもある。自分が作り続けた澪の像におびえ、深みにはまりこんでいく。澪に泥棒の濡れ衣をかけようとして生徒のボイコットに遭うシーンは圧巻。
この原作を書いたのは当時、中学生だった少女で漫画化もされました。少女漫画なんで読んだことないけど。そのせいか、会場には学校帰りと思われる女子中学生の姿もチラホラ。現役のアイドルが多数出ているアイドル映画なんですが、扱っている内容は圧倒的に重くて気が抜けない。全編にわたって女の子がきゃぴきゃぴ(死語)してる映画なんですが、足蹴にしたりするシーンもあります。途中、海水浴のシーンぐらいか?胸休まるシーンは。後半の先生との対決の方が圧倒的に面白い。主演の黒川芽衣はぽっちゃりしすぎだと思うがなかなか可愛い。ビビるほどの美人ぶりを発揮する沢尻エリカは狡猾でクールな少女を見事に演じている。美波はヒュー・グラントに似すぎだと思うが、目がくりっとして可愛い。「バトルロワイアル」で山本太郎の恋人役やった子なんね。あの時の方が大人っぽく見えるんだが。。女の子も割りと可愛く撮れてるし、映画としてもなかなか見応えのある作品です。原作のファンやアイドルファンでなくても、十分にお薦めできる作品です。
監督、脚本:森岡利行 音楽:奥野敦士 原作:木村文、牛田麻希
キャスト:沢尻エリカ、美波、勝村政信、野波麻帆、大塚寧々、岡元夕紀子、森絵梨佳、小松愛、小松愛唯、小貫華子、黒川芽衣、浜田晃、安間里恵
宇多田サン全面支援「キャシャーン」〜キリヤがやらなきゃ誰がやる(2)〜
2004年4月27日 封切日本映画
先日、竹中労の「エライ人を切る」を再読した。流れるような文体、見事な皮肉、毒舌で汚い言葉を使いながらもちっとも下品さを感じさせない見事な文章だ。数年前に図書館でアルバイト中に何気なく読んで舌をまいたんだが、やっぱり本物だ。このような洒脱な文章に半歩でも近づきたい、と文章をこねくり回してますがちっとも上達しねえ。毒舌ってすんげえ難しいの。しかし軽く書くつもりだった「キャシャーン」の感想ですが5000字はもう書いてるぞ。タダのクソ映画ならば、「スパイゾルゲ」なんて「つまらん」で終わりだもんね。実は私は予告を見て大変期待しておったのですよ。それがたった10分で砕かれた。冒頭にルビー(宇野重吉の倅)が演説してるシーンでなんかもう帰りたくなった。
肝心の映像も高く買いなさる向きがあるようじゃが、わしゃ、どうもいけんよう。映像効果ってのは効果が必要な時だけ使えばいいんじゃ。こんなレトロフィーチャーな映画によう、そがいに全部の映像いじくり回してどうするんじゃ。本人は本職じゃからそれが楽しゅうんじゃろうが、見てるこちらはしんどくて仕方ない。確かに凄くないとは言わんよ。でも30分ほどで飽きる。決定的なのはアクションがめちゃくちゃ下手クソで紙芝居にしかみえへんのや。何か普通に撮った映像にそがいに自信ないんか?強迫神経症か?それよりも前にあの駄文というか、場末のポルノ映画以下の脚本を直すことは考えんかったんか?すまんがその程度の映像なら「ドラゴンヘッド」で達成しとる。
役者は伊勢谷、麻生久美子、西島、小日向、ミッチー、大滝はんあたりは合格。宮迫はうまいんだがお笑い芸人があんな役やったらコントの延長にしか見えないんだな。佐田と要はもう全然あかん。特に佐田真由美はもう出なくてもいい、役者やめろ。唐沢も線がごつすぎて完全にミスキャストだろ。それでも役者はいいと思う。よくがんばったと思う。特にミッチーはよかった。誉めちゃる。唯一、いいと思ったのは大滝はんがクーデターで政権を奪還したところのカット。息子の西島に電話するシーンだな。あそこだけだな、本当に。あそこだけ。
でもこの映画はヒットするでしょうね。隣の兄ちゃん、ないとったもん。こんな映画に金はらわせやがって!ちくしょう!という感じでもなかったけんね。わしはそれで泣きはいってたけど。(つд∩) ウエーン
嫁が頑張ってるけんね、一生懸命に宣伝しとる。あたしゃ、涙が出たよ。今のニッポン低国映画界、出来が悪くても話題性があればヒットする、世界一チョロイ業界でございます。「バトルロワイアル?」もヒットしちゃったしね、もうなんか若い奴ら、イラネ。楽しかね。どこ行く鳥よ、阿呆鳥。今年はこれだけじゃなくて、漫画を原作にした映画が怒涛のように公開されやんす。その先陣を「キャシャーンがやらねば誰がやる!」と切ったわけですがこれ、最低。多分、後に続くのも考えるだに。。ございます。確かに「キリなんとかがやらねば誰がやる!」だわね。誰もそんな先陣切りとうないよ。なんぼうにもとおりゃんせ、とおりゃんせ、もうあたしゃ、知らんぷり。
ただ一つ危惧するんはこんなクソ映画見て「邦画はクソじゃ」と思い込む若衆のことよ。わしゃ、若衆のことを思うと悲しゅうて悲しゅうて。。その気持ち、おまいらにはわかるまい。(「仁義なき戦い」のパロです。為念)日本映画にゃ、「アイデン&ティティ」とか「きょうのできごと」みたいないい映画もあるでよ、と言いましても、お聞き届けございませぬ。だから、あなたが行かなくても大丈夫!絶対にヒットするから!
最後に旦那のための嫁の歌ですが声も出てねえし、ありがちでつまらねえ歌。おーい、宇多田さんよ。如何に自分を綺麗に魅せるか(如何に自分の胸を大きく魅せると言い換えませふか?)だけに気を使いすぎで歌作るのがおろそかになっておらんか?そのために雇うた旦那じゃ。映像を綺麗綺麗に仕上げるだけが取り得だもんね。似たもの夫婦なのよ。水は低きに流れる、キリなんとかの才能なんかにゃ興味ないが、ヒカルはんはチトオシイ。おとっつあんから逃げたくての結婚だってのことだが、欲ボケ半ボケのおとっつあんの方がまだマシじゃないかい?
まあ映画の感想ってものは、どれだけ否定的なものを見ても最後は自分の感覚が全てみたいなんがあるので行かれる方は行くでしょう。別に止めや、しません。ただ2時間20分という時間、この「タイムイズマネー」のせちがらい世の中、「あの時間で何ができたか」と後で考えてみたくなるでしょう。私は結局、一日つぶれてしまい、見たかった増村保造の「赤い天使」を見れなかった。皆さんは2時間で何ができますか?
監督、撮影監督、脚本、編集:紀里谷和明 バトルシーンコンテ:樋口真嗣 アクションディレクター:諸鍛冶裕太 オリジナルサウンドトラック:東芝EMI テーマンソング:宇多田ヒカル
キャスト:伊勢谷友介、麻生久美子、鶴田真由、及川光博、西島秀俊、寺尾聰、樋口可南子、小日向文世、宮迫博之、佐田真由美、要潤、寺島進、大滝秀治、三橋達也、唐沢寿明
肝心の映像も高く買いなさる向きがあるようじゃが、わしゃ、どうもいけんよう。映像効果ってのは効果が必要な時だけ使えばいいんじゃ。こんなレトロフィーチャーな映画によう、そがいに全部の映像いじくり回してどうするんじゃ。本人は本職じゃからそれが楽しゅうんじゃろうが、見てるこちらはしんどくて仕方ない。確かに凄くないとは言わんよ。でも30分ほどで飽きる。決定的なのはアクションがめちゃくちゃ下手クソで紙芝居にしかみえへんのや。何か普通に撮った映像にそがいに自信ないんか?強迫神経症か?それよりも前にあの駄文というか、場末のポルノ映画以下の脚本を直すことは考えんかったんか?すまんがその程度の映像なら「ドラゴンヘッド」で達成しとる。
役者は伊勢谷、麻生久美子、西島、小日向、ミッチー、大滝はんあたりは合格。宮迫はうまいんだがお笑い芸人があんな役やったらコントの延長にしか見えないんだな。佐田と要はもう全然あかん。特に佐田真由美はもう出なくてもいい、役者やめろ。唐沢も線がごつすぎて完全にミスキャストだろ。それでも役者はいいと思う。よくがんばったと思う。特にミッチーはよかった。誉めちゃる。唯一、いいと思ったのは大滝はんがクーデターで政権を奪還したところのカット。息子の西島に電話するシーンだな。あそこだけだな、本当に。あそこだけ。
でもこの映画はヒットするでしょうね。隣の兄ちゃん、ないとったもん。こんな映画に金はらわせやがって!ちくしょう!という感じでもなかったけんね。わしはそれで泣きはいってたけど。(つд∩) ウエーン
嫁が頑張ってるけんね、一生懸命に宣伝しとる。あたしゃ、涙が出たよ。今のニッポン低国映画界、出来が悪くても話題性があればヒットする、世界一チョロイ業界でございます。「バトルロワイアル?」もヒットしちゃったしね、もうなんか若い奴ら、イラネ。楽しかね。どこ行く鳥よ、阿呆鳥。今年はこれだけじゃなくて、漫画を原作にした映画が怒涛のように公開されやんす。その先陣を「キャシャーンがやらねば誰がやる!」と切ったわけですがこれ、最低。多分、後に続くのも考えるだに。。ございます。確かに「キリなんとかがやらねば誰がやる!」だわね。誰もそんな先陣切りとうないよ。なんぼうにもとおりゃんせ、とおりゃんせ、もうあたしゃ、知らんぷり。
ただ一つ危惧するんはこんなクソ映画見て「邦画はクソじゃ」と思い込む若衆のことよ。わしゃ、若衆のことを思うと悲しゅうて悲しゅうて。。その気持ち、おまいらにはわかるまい。(「仁義なき戦い」のパロです。為念)日本映画にゃ、「アイデン&ティティ」とか「きょうのできごと」みたいないい映画もあるでよ、と言いましても、お聞き届けございませぬ。だから、あなたが行かなくても大丈夫!絶対にヒットするから!
最後に旦那のための嫁の歌ですが声も出てねえし、ありがちでつまらねえ歌。おーい、宇多田さんよ。如何に自分を綺麗に魅せるか(如何に自分の胸を大きく魅せると言い換えませふか?)だけに気を使いすぎで歌作るのがおろそかになっておらんか?そのために雇うた旦那じゃ。映像を綺麗綺麗に仕上げるだけが取り得だもんね。似たもの夫婦なのよ。水は低きに流れる、キリなんとかの才能なんかにゃ興味ないが、ヒカルはんはチトオシイ。おとっつあんから逃げたくての結婚だってのことだが、欲ボケ半ボケのおとっつあんの方がまだマシじゃないかい?
まあ映画の感想ってものは、どれだけ否定的なものを見ても最後は自分の感覚が全てみたいなんがあるので行かれる方は行くでしょう。別に止めや、しません。ただ2時間20分という時間、この「タイムイズマネー」のせちがらい世の中、「あの時間で何ができたか」と後で考えてみたくなるでしょう。私は結局、一日つぶれてしまい、見たかった増村保造の「赤い天使」を見れなかった。皆さんは2時間で何ができますか?
監督、撮影監督、脚本、編集:紀里谷和明 バトルシーンコンテ:樋口真嗣 アクションディレクター:諸鍛冶裕太 オリジナルサウンドトラック:東芝EMI テーマンソング:宇多田ヒカル
キャスト:伊勢谷友介、麻生久美子、鶴田真由、及川光博、西島秀俊、寺尾聰、樋口可南子、小日向文世、宮迫博之、佐田真由美、要潤、寺島進、大滝秀治、三橋達也、唐沢寿明
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宇多田の旦那監督作品「キャシャーン」〜キャシャーンがやらねば誰がやる(1)〜
2004年4月25日 封切日本映画
今日は毒舌モードでございます。芸風としては実はこっちのほうが正しいし、書いてても楽しい。ただ為念として一言申し上げますと毒舌は愛がなければできませぬ。このたびの悪口も「キャシャーン」という「名作になれたかもしれない」日本映画(そんなこたあ、これっぽっちも思ってない)に対する私のラブレターでございます。めちゃくちゃ長くなったので、二回にわけてお送りします。
この映画、あかんやろうなあと思う映画ってのは見終わると大体、ああやっぱ自分の勘を信じるべきだったと思うものである。たまに、ごくたまに冷害、否例外があるから映画鑑賞はやめられんが滅多に無いからこそおもしろひ。本日、見てきた「キャシャーン」(え?英語の題?日本映画で英語なんか使うな!)もまさにそんな映画で冒頭の30分ほどで飽きてしまい、時間中に腕時計眺めてため息つくこと数回。2時間21分、新手の拷問かと思うほどひでえ映画でございました。ここではボロカスに言うことはあんまりやっとらんのですが、私としてもこれは日本映画界に対する警告として問いたい、問い詰めたい、小一時間ほど問い詰めたいという気持ちでいっぱいでございます。
一言で言うと昨今、日本映画を撮るのは非常に難しくなってきており、有能な監督でも映画の現場から数年、遠ざかっておられることも多数ございます。井筒和幸が暴力評論と人に嫉妬することしかやっとらんのも彼に映画をとらさなかったからであります。一番、脂の乗り切った時期に会社をコカしてしまい、不幸な事故の後始末をしているうちに彼の”最もよかった時期”は終わってしまい、スカみたいなオッサンになってしまったのです。こういう例が数えるといっぱいある。そういう時代において、フォトグラファーか加工屋かフリーライターか越後獅子か知らんが映画界とは何の関係もない、嫁さんだけが有名な男に別に撮らさなくてもいいわけです。別に本人もどうしても撮りたいわけでもないでしょ。映画見たら十分にわかります。
私、アニメの「キャシャーン」が放送されている時にはいまだ生まれておりませんでしたので、どのようなアニメか知りませんが、こんな理屈っぽいアニメを昔はやっておったのですか。古老に聞くと全くの別物だ、と。私、ホッとしました。昔の子どもがこんなのを見て楽しんでてたのか、とそりゃ歪むぞ。ロクな人間にゃならねーな。とにかくストーリーがわかりにくいし、登場人物も多いし、敵が誰かもわからんし、テーマもわからんし、わからんだらけで理解しようにも映像がぐちゃぐちゃで理解しようという気持ちも薄れる。大体、何でいくらかの金を払って難しい思いせな、あかんのだ。このキリなんとかという男はそんなにドえらい男なんやろうか。なんかインタビューとか見ると難しいことを言うとるんですよ、何がなんだかさっぱりわからん。学生時代に友人にやたらカタカナ言葉(リテラシーとかね)を使って相手をはぐらかすことで自分の地位を高めていた男がいましたが、要はこのキリなんとかもその一種か。ここで前言撤回、テーマはありました!それは「ぶっしゅさんはわるいひとでえす。ぼ、ぼ、ぼくは、せ、せ、せんそうはんたいなんだな、おむすびはすきなんだな」です。
親子問題とか新造人間とか様々なテーマをにやすことなく、ほとんど生煮えのまんま、皿に盛ってるのがこの映画なんだがその中で「せんそうはんたあい」というテーマがもう生のまんま、ゴロンとほりこんでごたる。思わず、じっと見つめてため息一つに愚痴ポロリ。皿ごとゴミ箱にポイ、と致しました。そりゃ、戦争反対は結構なことです。が、声高に叫ばれてもねえ。そんなの、あんたあ、有楽町でやっときなはれや、わしゃ付き合いきれんわい。イデオロギーをもたれるのは結構なことですし、映画に盛り込むのもOKでしょう。ただ下手クソなのは「バトルロワイアル?」を例にひくまでもなく、もう興醒め。場を白けさせるだけです。わかったことはそうか、嫁の奇妙奇天烈な思想はこの旦那あってのことか、と思っただけ。ジョン・レノンにでもなりたいのかねえ。。しの、、なんとかとか言う監督と一緒でイマジン流せたらよかったのにね!でも「キャシャーン」でやんなくていいよね。(つづく)
この映画、あかんやろうなあと思う映画ってのは見終わると大体、ああやっぱ自分の勘を信じるべきだったと思うものである。たまに、ごくたまに冷害、否例外があるから映画鑑賞はやめられんが滅多に無いからこそおもしろひ。本日、見てきた「キャシャーン」(え?英語の題?日本映画で英語なんか使うな!)もまさにそんな映画で冒頭の30分ほどで飽きてしまい、時間中に腕時計眺めてため息つくこと数回。2時間21分、新手の拷問かと思うほどひでえ映画でございました。ここではボロカスに言うことはあんまりやっとらんのですが、私としてもこれは日本映画界に対する警告として問いたい、問い詰めたい、小一時間ほど問い詰めたいという気持ちでいっぱいでございます。
一言で言うと昨今、日本映画を撮るのは非常に難しくなってきており、有能な監督でも映画の現場から数年、遠ざかっておられることも多数ございます。井筒和幸が暴力評論と人に嫉妬することしかやっとらんのも彼に映画をとらさなかったからであります。一番、脂の乗り切った時期に会社をコカしてしまい、不幸な事故の後始末をしているうちに彼の”最もよかった時期”は終わってしまい、スカみたいなオッサンになってしまったのです。こういう例が数えるといっぱいある。そういう時代において、フォトグラファーか加工屋かフリーライターか越後獅子か知らんが映画界とは何の関係もない、嫁さんだけが有名な男に別に撮らさなくてもいいわけです。別に本人もどうしても撮りたいわけでもないでしょ。映画見たら十分にわかります。
私、アニメの「キャシャーン」が放送されている時にはいまだ生まれておりませんでしたので、どのようなアニメか知りませんが、こんな理屈っぽいアニメを昔はやっておったのですか。古老に聞くと全くの別物だ、と。私、ホッとしました。昔の子どもがこんなのを見て楽しんでてたのか、とそりゃ歪むぞ。ロクな人間にゃならねーな。とにかくストーリーがわかりにくいし、登場人物も多いし、敵が誰かもわからんし、テーマもわからんし、わからんだらけで理解しようにも映像がぐちゃぐちゃで理解しようという気持ちも薄れる。大体、何でいくらかの金を払って難しい思いせな、あかんのだ。このキリなんとかという男はそんなにドえらい男なんやろうか。なんかインタビューとか見ると難しいことを言うとるんですよ、何がなんだかさっぱりわからん。学生時代に友人にやたらカタカナ言葉(リテラシーとかね)を使って相手をはぐらかすことで自分の地位を高めていた男がいましたが、要はこのキリなんとかもその一種か。ここで前言撤回、テーマはありました!それは「ぶっしゅさんはわるいひとでえす。ぼ、ぼ、ぼくは、せ、せ、せんそうはんたいなんだな、おむすびはすきなんだな」です。
親子問題とか新造人間とか様々なテーマをにやすことなく、ほとんど生煮えのまんま、皿に盛ってるのがこの映画なんだがその中で「せんそうはんたあい」というテーマがもう生のまんま、ゴロンとほりこんでごたる。思わず、じっと見つめてため息一つに愚痴ポロリ。皿ごとゴミ箱にポイ、と致しました。そりゃ、戦争反対は結構なことです。が、声高に叫ばれてもねえ。そんなの、あんたあ、有楽町でやっときなはれや、わしゃ付き合いきれんわい。イデオロギーをもたれるのは結構なことですし、映画に盛り込むのもOKでしょう。ただ下手クソなのは「バトルロワイアル?」を例にひくまでもなく、もう興醒め。場を白けさせるだけです。わかったことはそうか、嫁の奇妙奇天烈な思想はこの旦那あってのことか、と思っただけ。ジョン・レノンにでもなりたいのかねえ。。しの、、なんとかとか言う監督と一緒でイマジン流せたらよかったのにね!でも「キャシャーン」でやんなくていいよね。(つづく)
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今週末見た映画〜きょうのできごと、赤目四十八瀧心中未遂、クイール〜
2004年4月11日 封切日本映画
☆4月10日。先週は休みがなかったので、いそいそと朝早くから外に出る。うちの町内は共産党が強い為かやたらにイラクがどうとか、撤退がどうとか聞こえる。人質の問題と自衛隊の撤退は完全に別問題だろうに。問題のすり替えだな、テログループに屈するなどという判断は始めから存在しない。俺は基本的に自衛隊の派遣には反対だが、こういう姑息な手段を使うような政党には今後100年間は投票しない。
☆十三の第七藝術劇場にて「赤目四十八瀧心中未遂」。2時間40分という大変長い映画だったので、見るかどうか悩んでいたのだが逝ってきた。今が旬の寺島しのぶが主演である。昨年の湯布院映画祭で間近で見た時にはそんなに綺麗とは思わんかったがやはりスクリーンで見えると映えるねえ、この人は。俺は「ヴァイブレータ」をそんなには買わないし、この映画も大絶賛しないがこの人は確かに映画女優だと思うし、この人抜きでこの二本は考えられなかっただろう。尼崎をアンダーワールドとして童話的な映画になっており、あくまでも架空ですよという説明がついているんだろう。が、関西人にとっての尼崎という町は、こんな町だと言われてたら納得してしまうような雰囲気を持った町なのだ。多分、金髪で総髪の彫り師もアパートの一室で臓物を串に刺して生計をたてている若者もいるのだろう。ダウンタウンの松本は「尼崎には”アマー”という貨幣がある」と言っていたが、多分本当だろう。(んなわけない。)ということで文芸作品なんだが私は過分にもコメディとして楽しんでしまった。
☆十三の印度屋というカレー屋で腹を膨らませて、特急で京都にトンボ返り。六曜館で休息後、MOVIX京都で「クイール」「きょうのできごと」を連続で見る。「クイール」は私が犬を飼ったことないためか、ちっとも感激しないままおわった。犬を飼っている人はまた違う感想なんだろう。寺島しのぶがまた出ていたが彼女はいい役をもらっているなと思った。「ごめん」でデビューした櫻谷由貴花ちゃんがでていた。椎名桔平は意外に演技の幅が広い。崔監督の職人技がたっぷり楽しめる作品であった。「きょうのできごと」は繊細な映画作りが評価される行定勲が監督。この人はクソ真面目でやや抹香くさいところがあるんだが、演出に軽さが出てきてテンポで見せてくれる作品になっていた。群像劇にしては登場人物の描き方に濃紺がありすぎで、雑な脚本なんだが、カットを丁寧に割って心地よいテンポで見せてくれる。何より、登場人物の関西弁が自然でちっとも引っかからない。うまい。脇役では津田寛治がいい。派谷恵美はもっと映画に出て欲しい。かなり可愛いんだし。本日、見た三本ではこれが一番よかった。
☆4月11日。一夜明ければあっさりと開放。当たり前だが、政府はそれなりの金を山賊を通じてこの山賊に送っておる。中東のテロリストを純粋だと思いすぎ。梅田にてミスチルの「シフクノオト」をゲット。友人と造幣局の桜を見に行く。あまりの人の多さに辟易してもうどうでもよくなる。桜なんて覚えちゃいねえ。高槻でカラオケして帰る。明日は声が出ない。
☆十三の第七藝術劇場にて「赤目四十八瀧心中未遂」。2時間40分という大変長い映画だったので、見るかどうか悩んでいたのだが逝ってきた。今が旬の寺島しのぶが主演である。昨年の湯布院映画祭で間近で見た時にはそんなに綺麗とは思わんかったがやはりスクリーンで見えると映えるねえ、この人は。俺は「ヴァイブレータ」をそんなには買わないし、この映画も大絶賛しないがこの人は確かに映画女優だと思うし、この人抜きでこの二本は考えられなかっただろう。尼崎をアンダーワールドとして童話的な映画になっており、あくまでも架空ですよという説明がついているんだろう。が、関西人にとっての尼崎という町は、こんな町だと言われてたら納得してしまうような雰囲気を持った町なのだ。多分、金髪で総髪の彫り師もアパートの一室で臓物を串に刺して生計をたてている若者もいるのだろう。ダウンタウンの松本は「尼崎には”アマー”という貨幣がある」と言っていたが、多分本当だろう。(んなわけない。)ということで文芸作品なんだが私は過分にもコメディとして楽しんでしまった。
☆十三の印度屋というカレー屋で腹を膨らませて、特急で京都にトンボ返り。六曜館で休息後、MOVIX京都で「クイール」「きょうのできごと」を連続で見る。「クイール」は私が犬を飼ったことないためか、ちっとも感激しないままおわった。犬を飼っている人はまた違う感想なんだろう。寺島しのぶがまた出ていたが彼女はいい役をもらっているなと思った。「ごめん」でデビューした櫻谷由貴花ちゃんがでていた。椎名桔平は意外に演技の幅が広い。崔監督の職人技がたっぷり楽しめる作品であった。「きょうのできごと」は繊細な映画作りが評価される行定勲が監督。この人はクソ真面目でやや抹香くさいところがあるんだが、演出に軽さが出てきてテンポで見せてくれる作品になっていた。群像劇にしては登場人物の描き方に濃紺がありすぎで、雑な脚本なんだが、カットを丁寧に割って心地よいテンポで見せてくれる。何より、登場人物の関西弁が自然でちっとも引っかからない。うまい。脇役では津田寛治がいい。派谷恵美はもっと映画に出て欲しい。かなり可愛いんだし。本日、見た三本ではこれが一番よかった。
☆4月11日。一夜明ければあっさりと開放。当たり前だが、政府はそれなりの金を山賊を通じてこの山賊に送っておる。中東のテロリストを純粋だと思いすぎ。梅田にてミスチルの「シフクノオト」をゲット。友人と造幣局の桜を見に行く。あまりの人の多さに辟易してもうどうでもよくなる。桜なんて覚えちゃいねえ。高槻でカラオケして帰る。明日は声が出ない。
【押井守監督作品】イノセンス〜イノセンス、それは(以下略)〜
2004年3月13日 封切日本映画
今日、紹介するのは押井守監督作品の「イノセンス」。95年に公開された「攻殻機動隊」って作品はそれまで「うる星やつら ビューティフル・ドリーマー」「機動警察バトレイバー」の監督として日本アニメ界で一部有名であった押井守の名を海外に広めました。海外でも公開されて、「マトリックス」にも影響を与えたという話も有名ですね。今作はその「攻殻機動隊」の続編で主人公は前作でも登場したサイボーグのバトー。
実はジャパニメーションはあんまり詳しくなくて押井さんの作品も「アヴァロン」と脚本を担当した「人狼」しか見てませんでした。「アヴァロン」はゲームを映画化するとこうなるのか、という感じで映像は凄かったですね。ストーリーはあんまり覚えていませんが劇中に出てくるスクランブルエッグが大層おいしそうに見えたのを覚えてます。「攻殻機動隊」も知らなかったのですが、日本映画専門チャンネルでやっと見ました。95年という時点でハッカーやネット社会を扱っているところが画期的ですね。人とサイボーグとロボットが共存している近未来を舞台にしたストーリーで”少佐”と呼ばれていた草薙素子という公安九課所属のサイボーグが主人公です。バトーはその仲間で彼女と同じく、彼も体のほとんどを機械化したサイボーグです。サイボーグはゴーストと呼ばれる、個を限定する因子を持っています。この作品ではこのゴーストがキーワードになります。ゴーストと脳みそ以外は政府の持ち物だった彼女はラストで”人形使い”というプログラムと融合してバトーの前から姿を消します。それから3年後、バトーはいまだ公安九課にいた。
アンドロイドは人間のために作られたロボットでサイボーグと違ってゴースト、脳みそでなくてA.Iという人工頭脳が搭載されている。そのアンドロイドの一つであるガイノイドが暴走を起こして所有者を殺し、初期化するという事件が連続で起こっていた。滅多に起こらないことが頻発したことを憂慮して、公安九課は調査を開始する。ガンノイドメーカーの検査官が惨殺された事件より、暴力団との抗争の影を感じ取るバトー。今では珍しくなった、身体のほとんどが生身であるトグサと共に調査を開始するバトーであったが電子頭脳を何者かにハッキングされて街中で銃を乱射する不祥事を起こす。二人は事件の真相を確かめるべく、北の果てにある犯罪都市の択捉に向かうのだが。。
「ずっと人形が好きで、いつか映画にしたいと思っていた」と押井監督自身が語るようにこの映画はお人形さんの映画です。孔子やデカルトとか聞いたことない学者の言葉とか引っ張ってきて難しゅう難しゅうしてますが言わば、そういうことです。よく考えてみればガイノイドってパンフには「少女型アンドロイド」とごまかしてますが、言わば少女型ダッチワイフでしょ?きわどいところを描いてますね。そこに生身の少女が出てくるのですから子どもに見せられる映画じゃないですね。映像の凄さと小難しさに隠れて無茶しますな。「千と千尋の神隠し」で少女を遊郭で働かせた宮崎駿よりはマシですが。このガイノイドが何といいましょうか、元モーニング娘。の福田明日香似と申しましょうか、小倉優子とかほしのあきみたいな記号としてのロリではなく、リアルな少女にそっくりでこれが顔バラバラになって次々と壊れていくシーンは正直、背筋が寒くなりました。プロデューサーの石川光久が「本当に狂ってる」と突き放しているのは一般人の感覚と言えましょう。東京都現代美術館で押井さん監修の人形展とかやってはるようなんで、共鳴する人は行かれてはどうでしょうか。
択捉がアジア文化圏の最北端で高度に都市化しているという設定も面白い。生はげが踊るし、町では京劇が上演されているわけのわからない汎アジア的な雰囲気がいい。確かに無いこととは思うが鈴木宗男が10年後くらいに外務大臣になって札束で択捉を買い取ったりしたらここに多額の金が投入されて、一気に都市化する可能性はある。でも開発は失敗しちゃって犯罪都市化しちゃうの。今の沖縄じゃねえか。
山寺宏一さんの声を久しぶりに聞いた。やはりこの人の声は渋すぎる。竹中直人はまああんなもんでしょう。映像は相変わらず凄い。やはりこれは映画館で見たい映像ですな。「攻殻機動隊」もやはりスクリーンで見たかった。今の日本映画には珍しいですが、アニメはスクリーンで見た方が絶対いい。とにかく、評価が分かれる作品だと思います。映像見るだけでも時間とお金を使う価値はあります。これの宣伝をジプリがやってるんですね。まあこれだけ、内容をさっぱり見せないで、”らしい”予告を作ったもんです。
監督、脚本:押井守 製作:石川光久 原作:士郎正宗 音楽:川井憲次 キャラクターデザイナー:沖浦啓之
声優:大塚明夫、山寺宏一、田中敦子、榊原良子、竹中直人
実はジャパニメーションはあんまり詳しくなくて押井さんの作品も「アヴァロン」と脚本を担当した「人狼」しか見てませんでした。「アヴァロン」はゲームを映画化するとこうなるのか、という感じで映像は凄かったですね。ストーリーはあんまり覚えていませんが劇中に出てくるスクランブルエッグが大層おいしそうに見えたのを覚えてます。「攻殻機動隊」も知らなかったのですが、日本映画専門チャンネルでやっと見ました。95年という時点でハッカーやネット社会を扱っているところが画期的ですね。人とサイボーグとロボットが共存している近未来を舞台にしたストーリーで”少佐”と呼ばれていた草薙素子という公安九課所属のサイボーグが主人公です。バトーはその仲間で彼女と同じく、彼も体のほとんどを機械化したサイボーグです。サイボーグはゴーストと呼ばれる、個を限定する因子を持っています。この作品ではこのゴーストがキーワードになります。ゴーストと脳みそ以外は政府の持ち物だった彼女はラストで”人形使い”というプログラムと融合してバトーの前から姿を消します。それから3年後、バトーはいまだ公安九課にいた。
アンドロイドは人間のために作られたロボットでサイボーグと違ってゴースト、脳みそでなくてA.Iという人工頭脳が搭載されている。そのアンドロイドの一つであるガイノイドが暴走を起こして所有者を殺し、初期化するという事件が連続で起こっていた。滅多に起こらないことが頻発したことを憂慮して、公安九課は調査を開始する。ガンノイドメーカーの検査官が惨殺された事件より、暴力団との抗争の影を感じ取るバトー。今では珍しくなった、身体のほとんどが生身であるトグサと共に調査を開始するバトーであったが電子頭脳を何者かにハッキングされて街中で銃を乱射する不祥事を起こす。二人は事件の真相を確かめるべく、北の果てにある犯罪都市の択捉に向かうのだが。。
「ずっと人形が好きで、いつか映画にしたいと思っていた」と押井監督自身が語るようにこの映画はお人形さんの映画です。孔子やデカルトとか聞いたことない学者の言葉とか引っ張ってきて難しゅう難しゅうしてますが言わば、そういうことです。よく考えてみればガイノイドってパンフには「少女型アンドロイド」とごまかしてますが、言わば少女型ダッチワイフでしょ?きわどいところを描いてますね。そこに生身の少女が出てくるのですから子どもに見せられる映画じゃないですね。映像の凄さと小難しさに隠れて無茶しますな。「千と千尋の神隠し」で少女を遊郭で働かせた宮崎駿よりはマシですが。このガイノイドが何といいましょうか、元モーニング娘。の福田明日香似と申しましょうか、小倉優子とかほしのあきみたいな記号としてのロリではなく、リアルな少女にそっくりでこれが顔バラバラになって次々と壊れていくシーンは正直、背筋が寒くなりました。プロデューサーの石川光久が「本当に狂ってる」と突き放しているのは一般人の感覚と言えましょう。東京都現代美術館で押井さん監修の人形展とかやってはるようなんで、共鳴する人は行かれてはどうでしょうか。
択捉がアジア文化圏の最北端で高度に都市化しているという設定も面白い。生はげが踊るし、町では京劇が上演されているわけのわからない汎アジア的な雰囲気がいい。確かに無いこととは思うが鈴木宗男が10年後くらいに外務大臣になって札束で択捉を買い取ったりしたらここに多額の金が投入されて、一気に都市化する可能性はある。でも開発は失敗しちゃって犯罪都市化しちゃうの。今の沖縄じゃねえか。
山寺宏一さんの声を久しぶりに聞いた。やはりこの人の声は渋すぎる。竹中直人はまああんなもんでしょう。映像は相変わらず凄い。やはりこれは映画館で見たい映像ですな。「攻殻機動隊」もやはりスクリーンで見たかった。今の日本映画には珍しいですが、アニメはスクリーンで見た方が絶対いい。とにかく、評価が分かれる作品だと思います。映像見るだけでも時間とお金を使う価値はあります。これの宣伝をジプリがやってるんですね。まあこれだけ、内容をさっぱり見せないで、”らしい”予告を作ったもんです。
監督、脚本:押井守 製作:石川光久 原作:士郎正宗 音楽:川井憲次 キャラクターデザイナー:沖浦啓之
声優:大塚明夫、山寺宏一、田中敦子、榊原良子、竹中直人
【新藤兼人最新作】ふくろう〜大竹しのぶ、大爆発〜
2004年2月26日 封切日本映画
今日は東京で見てきた現役最長老の新藤兼人、最新作の「ふくろう」。映画監督って年をとるとどうしても守りに入ってしまい、”芸術”の映画を撮ってしまうんですが(黒澤明も晩年もそうだったし、市川昆もその傾向が顕著だ。それどころか年とってない阪本までもが守りにはいっとる。アホかと言いたい)御年91歳になる新藤監督にすれば、そのような傾向はちゃんちゃらおかしい。「生きたい」や「午後の遺言状」みたいな作品を期待して劇場に足を運んだ人はそれこそ、ふくろうみたいに目をキョトキョトさせてしまうんじゃないだろうか。1950年で独立プロを立ち上げて半世紀以上も新藤監督は自分の家を抵当に入れながら、自分が作りたい映画を作ってきた。それはいくつになってもかわらない。ただそれだけなのだ。俺もこんな年寄りになりたい。
時は1980年頃のことである。東北の山奥に希望ヶ丘開拓村という村落があった。そこには故郷を棄てて新天地を目指した人たちの夢があった。が、その村が地上の楽園になることはなかった。そこは不毛の地で作物が育つことはなかったのだ。村民は次々と村を離れて今やたった一軒に母と娘がひっそりと暮らしていた。
そこには食べ物は何もなかった。ネズミ、木の根まで食い尽くした母娘は生き延びるための手段を考えついた。母親のユミエ(大竹しのぶ)と娘のエミコ(伊藤歩)は葬式の時に使う幕や開拓団の旗を使ってワンピースとタンクトップをミシンで縫った。何年ぶりかの化粧をして、なけなしの金で勧誘の電話をかける。
電話を受けて、山向こうのダム工事で働いている男(木場勝巳)がやってきた。酒を飲みながら世間への愚痴をひとしきりこぼしたあとにユミエに2万円を払って久しぶりのセックスを楽しんだ。上機嫌の男はエミコがついだ「特別サービス」の酒をぐいと飲み干した。男は飲んだ直後に蟹のように泡をふいてくるくる回って倒れた。特別サービスの”ネコイラズ”がよくきいた。「よかった」と言い残した男を手押し車に乗せて裏に運び出す二人。ユミエは晴れ晴れとした声で「花」を歌っていた。
止まっていた電気をつけるためにやってきた電気屋(六坂直政)もやっぱりくるくる回って「油断大敵」とつぶやいた。ダム男(柄本明)、水道屋(田口トモロヲ)、電気屋上司(魁三太郎)、現場監督(原田大二郎)と次々と男がやってきて泡吹いてくるくる回って倒れた。この村から脱出するための目標額に近づいてきた。が、そこに尋ねてきたのが失踪事件に不審をいだいた麓の巡査(池内万作)。何とか追い返してしまうと今度は県の福祉に勤める若者(蟹江一平)がやってきて。。
開拓村と聞くと満州開拓団を思い出しますが、戦前に東北の寒村から満州に移り住んだ人々の末路は実に悲惨でした。タダで広大な土地が手に入ると故郷の田畑を売り払い、移り住んだ30万人の人々。戦後、帰ってこれたのは約半分であったと言います。行き場のないその人々達を政府は東北の山奥の”開拓村”に住まわせた。「ふくろう」のモデルになったのはこうした”開拓村”であったといいます。パンフによると最後まで残った母と娘が売春で生計をたてていた。が、噂になって突然、母と娘は逃げてしまった。こうしたことが本当にあったんですなあ。
主人公は売春で男を誘い出して殺してしまう、とんでもない女なんですが不思議に応援したくなる。酒を呑む男に愛嬌たっぷりに媚を売り、売春に持ち込んでしまうシーンなんか思わず笑ってしまう。テーマはきわめて重いんですがどこか大仰なブラックユーモアでくるんでいるので、口当たりがやわらかくなっています。大竹しのぶが何より素晴らしい。新藤監督もこの役ができるのは彼女しかいないとまで彼女に惚れこみ、出演が決まってから脚本を書き出したらしい。「黒い家」以降、何かがはじけたかのようにいろんな役に挑戦しつづけています。今や日本一の女優と言ってもいいでしょう。ただ、怖すぎる。最後に吼えるシーンがあるんですが背筋が寒くなった。
当事者以外にしたら、もう終わってしまった村であろうともユミエとエミコにとってはこの村は希望の象徴だった。誰もが忘れてしまった中でも彼女たちはまだその夢を信じていたのだ。電気屋は言う。「この村のために何本、電信棒を立てたか」水道屋も言う。「あんたらだけのために水をひかなきゃならない。」極めつけは開拓村を作った役人の息子が言うせりふだ。「ここは大失敗でした。父に代わってお詫びいたします!」何を今更。。である。彼女たちに対する後ろめたさか、警察も行政も一番怪しい彼女たちを全く疑うことができない、というラストは笑ってしまうと同時にすごく悲しくなった。
映画はほとんど一つのセットで進行。母と娘が住む家のセットです。やや単調になりがちですが、ベテラン俳優同士の密室劇は見ごたえがあります。大竹しのぶもよかったですが、池内万作とか柄本明も面白かった。それから伊藤歩も着々と映画女優への道を歩んでいますな。「スワロウテイル」よりは「のど自慢」、「さよなら、クロ」が印象に残ってます。「リリイ・シュシュのすべて」は見てないけど。ドラマの「リップスティック」もよかったしね。あ、ヌードシーンもあるよ。
監督、脚本、美術:新藤兼人 音楽:林光 撮影:三宅義行 製作:新藤次郎
出演:大竹しのぶ、柄本明、木場克己、蟹江一平、大地泰仁、池内万作、原田大二郎、伊藤歩、田口トモロヲ、六坂直政、魁三太郎、松重豊、塩野谷正幸、上田耕一、松波寛、加地健太郎
時は1980年頃のことである。東北の山奥に希望ヶ丘開拓村という村落があった。そこには故郷を棄てて新天地を目指した人たちの夢があった。が、その村が地上の楽園になることはなかった。そこは不毛の地で作物が育つことはなかったのだ。村民は次々と村を離れて今やたった一軒に母と娘がひっそりと暮らしていた。
そこには食べ物は何もなかった。ネズミ、木の根まで食い尽くした母娘は生き延びるための手段を考えついた。母親のユミエ(大竹しのぶ)と娘のエミコ(伊藤歩)は葬式の時に使う幕や開拓団の旗を使ってワンピースとタンクトップをミシンで縫った。何年ぶりかの化粧をして、なけなしの金で勧誘の電話をかける。
電話を受けて、山向こうのダム工事で働いている男(木場勝巳)がやってきた。酒を飲みながら世間への愚痴をひとしきりこぼしたあとにユミエに2万円を払って久しぶりのセックスを楽しんだ。上機嫌の男はエミコがついだ「特別サービス」の酒をぐいと飲み干した。男は飲んだ直後に蟹のように泡をふいてくるくる回って倒れた。特別サービスの”ネコイラズ”がよくきいた。「よかった」と言い残した男を手押し車に乗せて裏に運び出す二人。ユミエは晴れ晴れとした声で「花」を歌っていた。
止まっていた電気をつけるためにやってきた電気屋(六坂直政)もやっぱりくるくる回って「油断大敵」とつぶやいた。ダム男(柄本明)、水道屋(田口トモロヲ)、電気屋上司(魁三太郎)、現場監督(原田大二郎)と次々と男がやってきて泡吹いてくるくる回って倒れた。この村から脱出するための目標額に近づいてきた。が、そこに尋ねてきたのが失踪事件に不審をいだいた麓の巡査(池内万作)。何とか追い返してしまうと今度は県の福祉に勤める若者(蟹江一平)がやってきて。。
開拓村と聞くと満州開拓団を思い出しますが、戦前に東北の寒村から満州に移り住んだ人々の末路は実に悲惨でした。タダで広大な土地が手に入ると故郷の田畑を売り払い、移り住んだ30万人の人々。戦後、帰ってこれたのは約半分であったと言います。行き場のないその人々達を政府は東北の山奥の”開拓村”に住まわせた。「ふくろう」のモデルになったのはこうした”開拓村”であったといいます。パンフによると最後まで残った母と娘が売春で生計をたてていた。が、噂になって突然、母と娘は逃げてしまった。こうしたことが本当にあったんですなあ。
主人公は売春で男を誘い出して殺してしまう、とんでもない女なんですが不思議に応援したくなる。酒を呑む男に愛嬌たっぷりに媚を売り、売春に持ち込んでしまうシーンなんか思わず笑ってしまう。テーマはきわめて重いんですがどこか大仰なブラックユーモアでくるんでいるので、口当たりがやわらかくなっています。大竹しのぶが何より素晴らしい。新藤監督もこの役ができるのは彼女しかいないとまで彼女に惚れこみ、出演が決まってから脚本を書き出したらしい。「黒い家」以降、何かがはじけたかのようにいろんな役に挑戦しつづけています。今や日本一の女優と言ってもいいでしょう。ただ、怖すぎる。最後に吼えるシーンがあるんですが背筋が寒くなった。
当事者以外にしたら、もう終わってしまった村であろうともユミエとエミコにとってはこの村は希望の象徴だった。誰もが忘れてしまった中でも彼女たちはまだその夢を信じていたのだ。電気屋は言う。「この村のために何本、電信棒を立てたか」水道屋も言う。「あんたらだけのために水をひかなきゃならない。」極めつけは開拓村を作った役人の息子が言うせりふだ。「ここは大失敗でした。父に代わってお詫びいたします!」何を今更。。である。彼女たちに対する後ろめたさか、警察も行政も一番怪しい彼女たちを全く疑うことができない、というラストは笑ってしまうと同時にすごく悲しくなった。
映画はほとんど一つのセットで進行。母と娘が住む家のセットです。やや単調になりがちですが、ベテラン俳優同士の密室劇は見ごたえがあります。大竹しのぶもよかったですが、池内万作とか柄本明も面白かった。それから伊藤歩も着々と映画女優への道を歩んでいますな。「スワロウテイル」よりは「のど自慢」、「さよなら、クロ」が印象に残ってます。「リリイ・シュシュのすべて」は見てないけど。ドラマの「リップスティック」もよかったしね。あ、ヌードシーンもあるよ。
監督、脚本、美術:新藤兼人 音楽:林光 撮影:三宅義行 製作:新藤次郎
出演:大竹しのぶ、柄本明、木場克己、蟹江一平、大地泰仁、池内万作、原田大二郎、伊藤歩、田口トモロヲ、六坂直政、魁三太郎、松重豊、塩野谷正幸、上田耕一、松波寛、加地健太郎
今日紹介しますのは三池崇史監督作品の「ゼブラーマン」でございます。まず、始めに言っておきますとこの映画はコメディではなく、特撮ドラマです。ストーリーは一見、バカっぽく見えますので私も見るまでは特撮をパロディにしたコメディだと思ってました。が、スタイルはバカでもストーリーはかなり硬派でございます。
ご存知のとおり、この作品は哀川翔にとって100本目の主演作品になります。もっと出ているような気がするのは私だけではございますまい。あくまで主演作品でございます。出演作品を数えると200本を超えると思います。主演としての哀川翔もいいんですが脇役にも黒沢清の映画なんかにいい作品が結構あります。翔さんは100本目の主演作品の監督として三池崇史を指名。やっぱり100本目なんだから、ヤクザ映画は避けたい。子どもを大切にしている人だから子どもに見せられるような作品がいい。三池崇史の「監督中毒」によると脚本の宮藤官九郎を指名したのは口からでまかせだったらしい。変身もので行こうということで官九郎がプロットを書いてきたのが「ゼブラーマン」。なんかこのエピソードもドラマ的なんですがエエ加減と言えばエエ加減でこれで映画ができてしまうのが凄い。
近未来の2010年。大量のゴマアザラシが押し寄せたり、UFOが落ちたりなどのオカルトな人気いっぱいのサウスパークみたいな町、横浜の八千代区が舞台になります。哀川翔演じるのは冴えない小学校教師の市川新市。真面目なんだが性格が暗く、子どもを叱ることができない。妻は不倫、娘は援助交際、息子はイジメにあってるらしい。そんな彼にも人に言えない趣味があった。
今から30年以上前に放送された「ゼブラーマン」。白黒のコスチュームをつけたゼブラーマンが怪人を倒していく特撮ヒーローものである。が、「なんでカラー放送始まったのに白黒なんだよ」とか「地味だ」と言われるなどあまりにも不人気だった為に7話で打ち切られてしまった。市川はこの特撮が大好きで手製のコスチュームを作ってこっそりと着るほどの大ファンだったのだ。ある日、彼は転校してきた車椅子の浅野少年が同志であることを知る。遂に理解者を見つけた。「浅野さんと呼んでいいですか?」浅野さんにコスチュームを見せたい!今までこっそりと家でしかつけてなかったゼブラーマンのコスチュームを着てこっそりと夜中に飛び出す市川だが道に迷ってしまう。こんな姿が見つかったら、教師をクビになる。びくびくしながら歩いていた市川だったが連続切り裂き魔の犯行現場を目撃してしまう。なんとその男は「ゼブラーマン」に登場したカニ男(柄本明)だったのだ!鋏を振り回し、襲ってくるカニ男。市川はゼブラーマンとして戦うのだが。。
ゼブラーマンは従来のヒーローとは違い、ビームや魔法で怪人を倒していくんじゃなくて、自分の肉体で怪人を叩きのめしていくのだ。ここがなかなかかっこいい。しかもコスチュームも自前だから戦いのたびにボロボロになっていく。そして最後の戦い、宇宙人との戦いを迎えていくのだ。シャマランの「サイン」を見た時と同じような感じかな。まさか、こんな話になっていくとはねえ。なんか「ムー」まで飛び出してくるし。そういやこの宇宙人も緑っぽくて「サイン」の宇宙人を意識してますね。「マーズアタック!」の宇宙人にも少し似てたけど。
一番爆笑したのが「ゼブラーマン」の放送。子どもの頃に見たような記憶のある、いなたいテレビ特撮もの。私も子どもの頃に見たなあ、こういうの。私が見たのは谷隼人なんかが隊長役で出演してた。クドカンは私より8歳上なんで世代はまた違いますが。こういうのを流してたのがまた東映だったりするのだ。東映の大部屋俳優とかが悪役で出演してたりしたのだ。ギター弾きながら生徒と戯れるシーンで笑ってしまった。
出演陣でよかったのは私生活でも翔さんと仲がいい渡部篤郎。この人は基本的に何をやっても大体、一緒なんだが今回の役は面白かった。黄金町のピンサロをこよなく愛する防衛庁のノンキャリで八千代区の調査にやってくる。ぶっきらぼうでいっつもいらついてる様子が何とも言えずにいい。いい奴か悪い奴かわからん大杉漣もたっぷり芝居を見せてくれます。柄本明は最近、こんなんばっかですな。それから鈴木京香はよくやった。
この映画を見に来る人は翔さんのファンとか三池のファンだったりするんだろうが私としては子どもにやっぱ見て欲しいと思う。肩肘はらずに翔さんを知らない人にでも楽しんでもらいたい。これはそういう映画です。三池監督が始めて子どもに向けて撮った特撮ヒーローものである。MOVIX京都では二日目にしてパンフレットが売り切れるなどの好評な滑り出しだったようですが「王の帰還」を相手にどこまで健闘できるかな。。でも私はライバルは「ニモ」だと思うてるのよ。子どもに3時間を超える映画はキツイんで「王の帰還」に行く親子連れは少ないかと。「ニモ」が早く終わっちゃえばなあ。。んで何で大宮東映では「ゼブラーマン」やらんと「聖戦士星矢」やっとんのよ。東映の編成方針は本当によくわからん。
監督:三池崇史 脚本:宮藤官九郎 企画:黒澤満 撮影:田中一成
出演:哀川翔、鈴木京香、内村光良、徳井優、麻生久美子、袴田吉彦、古田新太、柄本明、渡部篤郎、田中要次、大杉漣、渡辺真起子、市川由衣、近藤公園
ご存知のとおり、この作品は哀川翔にとって100本目の主演作品になります。もっと出ているような気がするのは私だけではございますまい。あくまで主演作品でございます。出演作品を数えると200本を超えると思います。主演としての哀川翔もいいんですが脇役にも黒沢清の映画なんかにいい作品が結構あります。翔さんは100本目の主演作品の監督として三池崇史を指名。やっぱり100本目なんだから、ヤクザ映画は避けたい。子どもを大切にしている人だから子どもに見せられるような作品がいい。三池崇史の「監督中毒」によると脚本の宮藤官九郎を指名したのは口からでまかせだったらしい。変身もので行こうということで官九郎がプロットを書いてきたのが「ゼブラーマン」。なんかこのエピソードもドラマ的なんですがエエ加減と言えばエエ加減でこれで映画ができてしまうのが凄い。
近未来の2010年。大量のゴマアザラシが押し寄せたり、UFOが落ちたりなどのオカルトな人気いっぱいのサウスパークみたいな町、横浜の八千代区が舞台になります。哀川翔演じるのは冴えない小学校教師の市川新市。真面目なんだが性格が暗く、子どもを叱ることができない。妻は不倫、娘は援助交際、息子はイジメにあってるらしい。そんな彼にも人に言えない趣味があった。
今から30年以上前に放送された「ゼブラーマン」。白黒のコスチュームをつけたゼブラーマンが怪人を倒していく特撮ヒーローものである。が、「なんでカラー放送始まったのに白黒なんだよ」とか「地味だ」と言われるなどあまりにも不人気だった為に7話で打ち切られてしまった。市川はこの特撮が大好きで手製のコスチュームを作ってこっそりと着るほどの大ファンだったのだ。ある日、彼は転校してきた車椅子の浅野少年が同志であることを知る。遂に理解者を見つけた。「浅野さんと呼んでいいですか?」浅野さんにコスチュームを見せたい!今までこっそりと家でしかつけてなかったゼブラーマンのコスチュームを着てこっそりと夜中に飛び出す市川だが道に迷ってしまう。こんな姿が見つかったら、教師をクビになる。びくびくしながら歩いていた市川だったが連続切り裂き魔の犯行現場を目撃してしまう。なんとその男は「ゼブラーマン」に登場したカニ男(柄本明)だったのだ!鋏を振り回し、襲ってくるカニ男。市川はゼブラーマンとして戦うのだが。。
ゼブラーマンは従来のヒーローとは違い、ビームや魔法で怪人を倒していくんじゃなくて、自分の肉体で怪人を叩きのめしていくのだ。ここがなかなかかっこいい。しかもコスチュームも自前だから戦いのたびにボロボロになっていく。そして最後の戦い、宇宙人との戦いを迎えていくのだ。シャマランの「サイン」を見た時と同じような感じかな。まさか、こんな話になっていくとはねえ。なんか「ムー」まで飛び出してくるし。そういやこの宇宙人も緑っぽくて「サイン」の宇宙人を意識してますね。「マーズアタック!」の宇宙人にも少し似てたけど。
一番爆笑したのが「ゼブラーマン」の放送。子どもの頃に見たような記憶のある、いなたいテレビ特撮もの。私も子どもの頃に見たなあ、こういうの。私が見たのは谷隼人なんかが隊長役で出演してた。クドカンは私より8歳上なんで世代はまた違いますが。こういうのを流してたのがまた東映だったりするのだ。東映の大部屋俳優とかが悪役で出演してたりしたのだ。ギター弾きながら生徒と戯れるシーンで笑ってしまった。
出演陣でよかったのは私生活でも翔さんと仲がいい渡部篤郎。この人は基本的に何をやっても大体、一緒なんだが今回の役は面白かった。黄金町のピンサロをこよなく愛する防衛庁のノンキャリで八千代区の調査にやってくる。ぶっきらぼうでいっつもいらついてる様子が何とも言えずにいい。いい奴か悪い奴かわからん大杉漣もたっぷり芝居を見せてくれます。柄本明は最近、こんなんばっかですな。それから鈴木京香はよくやった。
この映画を見に来る人は翔さんのファンとか三池のファンだったりするんだろうが私としては子どもにやっぱ見て欲しいと思う。肩肘はらずに翔さんを知らない人にでも楽しんでもらいたい。これはそういう映画です。三池監督が始めて子どもに向けて撮った特撮ヒーローものである。MOVIX京都では二日目にしてパンフレットが売り切れるなどの好評な滑り出しだったようですが「王の帰還」を相手にどこまで健闘できるかな。。でも私はライバルは「ニモ」だと思うてるのよ。子どもに3時間を超える映画はキツイんで「王の帰還」に行く親子連れは少ないかと。「ニモ」が早く終わっちゃえばなあ。。んで何で大宮東映では「ゼブラーマン」やらんと「聖戦士星矢」やっとんのよ。東映の編成方針は本当によくわからん。
監督:三池崇史 脚本:宮藤官九郎 企画:黒澤満 撮影:田中一成
出演:哀川翔、鈴木京香、内村光良、徳井優、麻生久美子、袴田吉彦、古田新太、柄本明、渡部篤郎、田中要次、大杉漣、渡辺真起子、市川由衣、近藤公園
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