野沢尚自殺。。

2004年6月29日 映画
☆脚本家の野沢尚が自殺。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040629-00000001-sks-ent

何故?

仕事は順調そのものだったし、大きな仕事も待機してたのに。。何よりまだ44歳なのに。。

「破線のマリス」は主演女優が大根でまた演出がまずかったために、名作にはならなかったが脚本はよくできてたと思う。ドラマはほとんど見ないのだが、NHKで見た「喪服のランデブー」ってのがよかった。私はこのドラマで麻生久美子を知った。麻生久美子を起用したのがポイントだ。先ごろ、病気で亡くなった篠田氏と言い、最前線で頑張ってる仕事人の死を聞くのはとても悲しい。

☆やっとというか、今度12月にできる京都シネマのプレミアム会員を申し込む。ずっと前から知ってたんですが、忙しさにかまけておりました。会費が1万ってのに尻込みしたってのもあるけど、京都の映画界に投資する意味もこめて振り込んでまいりました。。ってたかが1万で何をえらそうに。実はすげえ楽しみなんです。

http://www.kyoto-np.co.jp/kp/topics/2003oct/21/W20031021MWG2K100000036.html

問い合わせは如月社 075(781)6310  kisaragi@jeans.ocn.ne.jp

宣伝してしもた。。
必殺仕掛人・春雪仕掛針 12/1 高槻松竹セントラル
★★★★★
→緒方拳主演の必殺仕掛人シリーズ。ドキドキさせる展開にテンポのよさで気持ちよく見ることができた。林与一が演じた浪人が印象的。

修羅雪姫 12/1 高槻松竹セントラル
★★★★
→「キルビル」の元ネタになった梶芽衣子主演の映画。ものすごく暗い話で梶芽衣子がずっとテンパったような顔で人を殺すだけの映画なんだがぶっとびまくってて面白い。ただ黒沢年男が恋人なのは如何なものか。

キル・ビルVol. 1 12/4 MOVIX京都シアター4
★★★
→二回目を見てきたんだが、なんか欠点ばかり目に付いてしまった。まず何と言っても千葉ちゃんの扱われ方は可哀想だ。それからこの人、一対一の決闘シーンは下手ね。GOGOとの決闘はもっと面白くなったと思うんだけど。でも青葉屋の大乱闘は相当にお金がかかってて、これは目のご馳走でスクリーンでの一見の価値あり。

東京ゴッドファーザーズ 12/4 みなみ会館
★★★★★
→久々に肩肘張らない楽しい映画を見せてもらったような気がする。映画というのはもっと楽しくていいんだと思った。

シャンハイ・ナイト 12/5 MOVIX京都シアター7
★★★
→ジャッキーの映画は邪心なく楽しめる。前作を見て無くても楽しめます。

えびボクサー 12/5 MOVIX京都シアター6

→ストーリー云々よりもえびがキモイ。ラメ服のオヤジもなんだかなー。

月曜日に乾杯! 12/9 みなみ会館
★★
→「過去の無い男」のような映画を期待してたんだが少しオフビートすぎてのりきれなかった。

座頭市物語 12/13 シネ・ヌーヴォ
★★★★
→座頭市シリーズの一本目になった作品。あんまなれど博打好きで滅法、腕がきれるヤクザ者というアンチヒーローを勝新が演じている。この映画では座頭市よりも敵役の天知茂の方が目立っている。最後の一喝が印象的で初期の座頭市はまだ任侠的な精神を持っていたのだ。

続・座頭市物語 12/13 シネ・ヌーヴォ
★★★
→勝新の兄貴、若山富三郎が市の兄貴役で出演しているという凄い作品。市はこの兄貴に女を取られるなどトラウマまみれの主人公になっている。ラストの共同戦線は面白いがそれまでがやや退屈。

悪名 12/13 シネ・ヌーヴォ
★★★★★
→監督の田中徳三を迎えての上映会。この人はもっと評価されていい。勝新、田宮次郎とも生き生きしてて非常に面白い。脚本をしっかり練れてるし、展開もスピーディーでいい。このシリーズを現在進行形で見れた人が羨ましいよ、本当に。

小早川家の秋 12/14 みなみ会館
★★
→俺は小津の映画のよさがよくわからんのだが、やっぱりこの映画もあわなかった。テンポが遅くてイライラしてしまった。俺の好きな遠藤辰雄と内田朝雄がなんであんなにいい人なんだ。ちごうとる、ちごうとる。

ファインディング・ニモ(日本語吹替版) 12/18 MOVIX京都シアター1
★★★
→ピクサスの映画にハズレなし。子どもだけでなく大人も目頭をあつくできる映画作りには感心します。今回は吹替えが失敗。木梨と室井の顔がちらつきすぎ。

ラストサムライ 12/18 MOVIX京都シアター3
★★★★
→細かいところでは注文が多いのですが、聖林でしかできない豪腕映画だと思います。日本じゃこんなの作れんのだから、やはり楽しまないと。

やくざ絶唱 12/20 シネ・ヌーヴォ
★★★★
→若い頃の大谷直子が息がのむほど可愛いのだが太地喜和子と勝新の喧嘩がすさまじすぎる。田村正和はそういや大映だったのね。

座頭市逆手斬り 12/20 シネ・ヌーヴォ
★★★
→偽座頭市役に藤山寛美が出演。セコイ小悪党を好演しています。

酔いどれ博士 12/20 シネ・ヌーヴォ
★★★
→正体不明なれど医術の腕を持つ男がスラム街の医者になるという話はやや型はまりなれど、楽しめた。小林幸子(少女時代)、江波杏子、東野英治郎、藤岡琢也、ミヤコ蝶々と豪華キャスト。三隅研二流のテンポも心地よい。

兵隊やくざ★強奪 12/20 シネ・ヌーヴォ
★★★★
→兵隊やくざシリーズの一応の完結編。監督は「悪名」の田中徳三。ラストの夏八木勲と勝新太郎との決闘は息を飲むほど美しい。

兵隊やくざ 12/20 シネ・ヌーヴォ
★★★★★
→喧嘩っぱやい勝新太郎と冷静な上等兵、田村高廣のコンビが最高に面白い。勝の天衣無縫な魅力もさることながら、田村の真面目くさった演技もいい。

まらそん侍 12/25 シネ・ヌーヴォ
★★
→勝新デビューしたての頃の映画。題材は面白いが、あんまり面白くなかった。瑳峨三智子がかわいい。

続・兵隊やくざ 12/25 シネ・ヌーヴォ
★★★★
→前作のヒットを受けて監督も増村保造から田中徳三に。森一生、増村保造、田中徳三、三隅研二と勝新は大映の一流の監督に恵まれてますな。今作では脱走に失敗して二人は全く未知の部隊に配属されています。敵役の芦屋兄弟も面白いし、小山明子が可愛い。

とむらい師たち 12/25 シネ・ヌーヴォ
★★★★★
→野坂昭如原作を三隅研二が映画化。勝新演じるデスマスク屋が始める、革命的な葬儀屋の話。前半はすごくバカらしいのだが後半になるにつれて、社会派に転じていく不思議な映画。悪ふざけギリギリの危ない世界なんだが、芸達者な俳優が力いっぱいに演じてくれて楽しめる。伊藤雄之助、藤村有弘、藤岡琢也、財津一郎、遠藤辰雄とよくもまあ、こんな曲者ばかり集めたもんだ。舞台は大阪だからか、脚本は藤本義一。

座頭市血煙り街道 12/25 シネ・ヌーヴォ
★★★★★
→ちゃんばら界を代表する両スターの激突を見るだけでも、もう十分にお金を払う価値がある。ラストの勝新vs近衛十四郎の決闘は映画界に残る名シーン。脚本もよくこなれてて、ラストまで展開が読めなかった。監督は三隅研二で脚本は社長シリーズの笠原良三。これで勝新映画祭は終わり。スクリーンで見る勝新はめちゃくちゃかっこいい。現在進行形で見れた人が羨ましい。

ジョゼと虎と魚たち 12/29 みなみ会館
★★★★★
→池脇千鶴の真骨頂とも言える作品でおそらく代表作になるやろうね。

壬生義士伝 12/31 祇園会館
★★★★
→2003年はこの映画で打ち止め。佐藤浩市がとにかくいい。
まずは拙サイトの過去ログをご覧あれ。

http://diary.note.ne.jp/d/28556/20031207.html

え?見るのが面倒くさいですか。

引用しませふ。



☆子連れ狼・地獄へ行くぞ!大五郎 11/26 高槻松竹セントラル

★★★★

→勝プロ最後の子連れ狼だけあってアクションもド派手。というかはっきり言ってやりすぎ。以前からうわさは聞いていたが乳母車にマシンガンがついているというのは60「へえ〜」ぐらいもらえるんじゃないか?さらに雪の上での決闘では乳母車がそりになり、忍者軍団がスキー板に刀を握って襲撃してくる。大木実が老人メイクでそりに大砲を備え付けて襲ってくる。木村功は妹を犯すわ、石橋蓮司は地にもぐり、一刀を狙う。もうめちゃくちゃ。富さんも雪の上で宙返りするわでノリノリで収拾つかないまま、映画は終わる。いいのか?




おそらく、昨日見られた方もいるでしょう。

勝手な引用、申し訳ない。

http://trivia.web.infoseek.co.jp/trivia/trivialist0402.htm



2月11日放送分

No.343 子連れ狼で大五郎が乗っている乳母車はソリにもなる。




65へぇ











俺が出したんじゃねえぞ。



出しときゃよかった。



6万だぞ、6万。



6万あれば何ができた?



とりあえず雄琴は二回逝けるぞ



もしかして俺のサイト見て出した?



まさかね。。いやいいんですけどね。


*画像は「はつ恋」でございます。なんか無いと寂しい
 今日は「ドラッグストガール」昨日、「ドラッグストアガール」と「美しい夏 キリシマ」をMOVIX京都で見てまいりました。そういやレディースディだったんですね。めちゃくちゃいっぱいで劇場の外にまで行列ができておりました。それに加えて昨日は今週末から封切の「王の帰還」のチケットも販売していたのでそちらの方でも夕方まで長い行列が続いておりました。

 日曜日の券(MOVIX京都は座席指定制で一週間前から座席指定券を買える。最近、つとに混み具合がひどくなってきたので私は週末に映画を見るときには仕事帰りに電車賃を使ってMOVIXまで座席指定券を買いにいっている。便利なんだが当日に風邪、寝坊、急用、呼び出し、車大破、嫁さんに殴られるなどの不測の事態が起こった場合は悲惨。両刃の剣。素人にはオススメできない。)を買うつもりだったんですが、諦めました。春休みまでには見たいな。。とにかく昨日は凄かった。というか最近、こんなんばっかりや。ご勘弁ください。

 京都の人しか参考になんないけど、一つだけ教えとこ。20分前ぐらいに劇場に行ったら行列がズラリ。こら、あかんわと思われるかもしれませんが並んでる人のほとんどは「ニモ」か「ラストサムライ」で他の映画はガラガラだったりすることもあります。時間ギリギリになるとスタッフが専用のチケ売り場を作ってくれるのでそこに逝きましょう。ただ時間ギリギリなんでトイレに行く時間がない。何にせよ、朝早く逝くのが一番いいと思う。ということですのでMOVIX京都の封切初日に「王の帰還」を見ようと考えている人、無理です。しばらく待ちましょう。

 さて話が思いっきり横道にそれたところで映画の感想逝きましょう。えっと「ドラッグストアガール」でございますね。脚本は今をときめく、宮藤官九郎で監督は「釣りバカ」の本木克英。宮沢りえと一度噂になりましたね。主演は「がんばっていきまっしょい」の田中麗奈。京都でも少し前に舞台挨拶がありました。奈良の劇場とかでも舞台挨拶があったようなので、結構こまめに劇場を回っているようですね。本人の写真満載のガイドブックも出てるし、ラジオにゲスト出演なんかもしてるみたい。田中麗奈もその演技力と可愛さについてはピカイチでコマーシャルなんかもいいんだが、(アロエヨーグルトのCMがよかったなあ)どうもデビュー作の「がんばっていきまっしょい」を超える代表作がない。デビュー作の印象があまりにも強すぎたせいか、他の映画が印象に残らないのね。一時期、ドラマに出たこともありましたが、仕事を映画とCMに絞ってしまった。今のアイドルの中で唯一、処女性を感じさせる稀有な女優なんだが今の日本で映画だけで活動するのはややしんどいと思う。自分の殻を破るというか、思い切った挑戦ということでコメディに挑戦してみたんだと思う。その意気はまずはよし。

 まずはじめに言ってしまうとこの作品は大変面白いです。田中麗奈というアイドルを中心に据えて彼女を巡ってのドタバタコメディに仕立て上げてその舞台にラクロスというマイナーなんだかメジャーなんだかビミョーなスポーツを持ってきたのはいいアイディアです。そういやラクロス部の女の子って大学にいたなあ。学生時代を思い出してごらんな、あの変なラケットを持って歩いてる女の子を一度くらい見たことあるでしょ?女子ラクロスは知ってましたが男子ラクロスがあるってのは知りませんでした。だってあんなラケット持ってる野郎なんか見たことなかったもん。ただ眼中に入らなかっただけかもしれませんが。

 舞台はクドカンお得意の首都圏の郊外にある摩狭尾(まさお)という架空のさいたまさいたまな町。田舎なんだけど少し都会。でもやっぱり田舎という、まあ木更津もそうです。駅前からはぽつんとシャッターだらけの「バンブーロード商店街」が延びている。薬科大学の3年生である大林慶子(田中麗奈)は授業が休講になったので帰宅すると彼氏が見知らぬ女性とお風呂に入っていた。ショックのあまり、もう何がなんだかわからずに電車に飛び乗る。めそめそ泣きながら、いつのまにか眠っていた。でついたのがここ。商店街の先には大きな複合型ドラッグストア「ハッスルドラッグ」があった。彼女はひょんなことからここでアルバイトをすることになる。

 4時に営業を終了してしまい商店街のオッサンどもはパンまで売るドラッグストアの出現にびびっていた。リーゼントの薬局店主(柄本明)、やもめのパン屋(三宅裕司)、ズラのコンビニ店主(伊武雅刀)、エロ本大好きのクソ坊主(六平直政)、ホームレスのジェロニモ(徳井優)は商売敵を襲撃しようと「ハッスルドラッグ」に出向く。がここでオカマの薬剤師(篠井英介&山吹トオル)に化粧されてすっかり綺麗になった慶子に一目ぼれしてしまう。誰が?この親父たちがですよ。オッサンたちは彼女に気に入られようと彼女がやっていたラクロスを見よう見まねで始め出す。

 いつものようにふんだんに変なキャラクターを出して、それを動かすことでストーリーにしていくクドカンの脚本は面白い。ただ、このオンビートのストーリーに乗り切れたら面白いんだが乗れなかったら最後まで見るのはしんどいと思う。それから、致命的な弱点を言うと。。これ多分ね、ドラマになった方が絶対に面白い。この5人のオッサンの昔話とかドラッグストアのオカマ薬剤師のキャラクターを膨らませたら面白くなると思う。でもだったら映画でやんなきゃいいじゃん、ということになるのね。。これはスクリーンでのヒットをねらったもんじゃなく、DVDでの売上で儲けようとしてると思うのね。まあそれも一つの手だし、珍しくないのですが。。何にしても日本でコメディ映画は難しいですよ。

監督:本木克英 脚本:宮藤官九郎 撮影:花田三史 音楽:周防義和
キャスト:田中麗奈、杉浦直樹、柄本明、荒川良々、山吹トオル、篠井英介、永澤俊矢、三宅裕司、三田佳子、伊武雅刀、六平直政、徳井優、藤田弓子、根岸季衣、蛭子能収、角替和枝、余貴美子
 今日の深作まつりは「トラ・トラ・トラ!」。この作品を深作監督作品に加えるのも変なんだがおそらく深作が監督しなかったら私も多分、見ておらんと思うので一応入れておきます。日本映画がお好きな方ならご存知だと思いますが、当作品の日本パートを監督する予定だったのは黒澤明でした。が、68年の12月にクランクインして一ヵ月の間に黒澤は中断と再開を繰り返し、翌年の1月に黒澤は体調の悪化を理由に降板しています。表向きは降板ですが事実上の更迭。書き忘れてましたが当作品は聖林が製作した戦争映画。舞台は太平洋戦争の発端となった真珠湾攻撃です。製作は「史上最大の作戦」で大ヒットを叩き出した20世紀フォックス。アメリカ部分はアメリカの監督が担当し、日本のパートは日本を代表する黒澤明に任せようとしていた。言っちゃあ悪いですが明らかに日本の観客を意識した登用だとは思います。

 黒澤も東宝とうまくいってない時期でスタジオを東映京都に写して撮影の準備をしていた。黒澤は役者をあえて使わずに山本五十六以下全員を素人を起用した。これはまあ、役者への面当てでしょう。三船敏郎が黒澤の完璧主義を批判したりしていた。あの東映京都で素人が足並み合わせて海軍の真似なんかやってるもんだから、仁侠映画の大部屋俳優がからかう。怒った黒澤はヤクザなんか撮影所に入れるな、と怒鳴ったりなど色々あったようです。このことがあったからか黒澤は翌年に低俗映画(この中にはヤクザ映画も入る)に反対する「四騎の会」をたちあげています。とにかく撮影はうまく行かなかった。夜中にセットの窓ガラスを木刀で叩き割る、とか尾崎豊みたいなことまでしてます。

 解任の理由としては黒澤の完璧主義を20世紀フォックスが嫌ったとか、黒澤がスタッフをうまくまとめられなかったとか色々囁かれてますが、要は黒澤の撮影スタイルが時代にそぐわなくなってきていたということなのでしょう。「影武者」、「乱」の製作過程に起こった諸問題から見てもやはりそういうことだったのではないか、と。「トラ!トラ!トラ!」降板後の黒澤は「どですかでん」の興行的な失敗で東宝から三行半を叩きつけられるなど悲惨の極み。遂には自殺未遂まで起こしています。

 話がそれましたね。黒澤解任後の監督は日活の舛田利雄になった。この人は後年、笠原和夫と組んで「二百三高地」とか「大日本帝国」などの戦争映画を撮ることになります。舛田さんより共同監督になってくれ、との申し入れがあったので深作監督が引き受けた。深作は真珠湾攻撃直前の戦艦赤城のシーンと空中戦を担当したのです。深作にしてもアメリカの最高のセットで空中戦が撮れるのが楽しみだったようです。それからギャラもよかった。ところが、この最高のセットこと”フロントプロジェクション”ってのが、もう欠陥商品で全然使えない。見ればわかるのですが、空中戦の部分はほとんどが顔のアップ(ほとんどが田村高廣)でごまかすこととなった。深作監督はやる気がなくなってしまい、「プレミア試写も行く気がなかった(笑)」。

 映画自身は日本パートとアメリカパートを別々に撮影してそれを交互に編集してるからなんかちぐはぐ。アメリカ海軍の動きと山本五十六の動きと日本政府の動きが並行に進んでいく。まあ言うほどは惨くないです。ただ、面白くないのだ。最もこれはリアルタイムに見ていたら見方が変わったかもしれない。時はベトナム戦争で同じ年にアメリカンニューシネマの傑作である「イージーライダー」が封切りされています。後世になって「パールハーバー」と比較して見るのでは随分、印象も変わってくると思います。

 真珠湾ってのは言わば日本の奇襲が成功しただけでアメリカ人にしてみればそんなに面白い話ではない。ラストで山本五十六に「結果的に騙まし討ちになってしまった。アメリカ人を本気で怒らせてしまった」とつぶやかせてはいますが基本的には日本ばっかりが舞台になってる映画です。それならばやはり日本の俳優を充実させて欲しかった。山村聰以外は言っちゃあ悪いが二線級でインパクトに欠ける。日活の俳優さんばっかりです。田村高廣、藤田進、東野英治郎とか好きな俳優は出てますけどね。脚本も雑です。やはり観客が等身大で感情移入できるような人物を出すべきだったと思う。田村高廣、三橋達也なんかがそれなんだがほとんど出番がなかった。深作監督が連れてきた室田日出男ももう少し、出番が欲しかった。それから「トラ」に合わせてか渥美清がチョイ役で出演しています。

 深作監督はこの映画で描かれる山本五十六善人説に全く同意できなかったようです。山本五十六、米内光政が早期講和を当初より唱えていたことから出された説でしょうが、結局は東条英機の陸軍=悪、という単純な図式から出ているようにしか見えない。それから近衛文麿、木戸、野村駐米大使の書き方にも不満が残る。脚本家は政治をこの映画に取りいれたかったのでしょうが資料不足か全く説得力がないのだ。イメージ先行のような。深作監督の「戦争ってそんなもんじゃねえだろう」という思いは「軍旗はためく下に」に受け継がれていきます。

製作総指揮:ダリル・F・ザナック 監督:深作欣二、舛田利雄、リチャード・フライシャー 脚色:ラリー・フォレスター、小國英雄、菊島隆三 音楽:ジェリー・ゴールドスミス 美術:村木与四郎 他 撮影:姫田真佐久 他
出演:北村和夫、渥美清、室田日出男、岡崎二朗、松山英太郎、内田朝雄、葉山良二、藤田進、東野英治郎、田村高廣、三橋達也、山村聰、島田正吾、阿部徹、井川比佐志、芥川比呂志、十朱久雄(日本人キャストのみ)
2月の中旬に東京行ってきます。理由はナイショ。あ、吉原逝くんとちゃうぞ。

 今日の深作まつりは第二作の「風来坊探偵 岬を渡る黒い風」。これも60分程度のSP、中篇映画。前作と並行して撮影されたらしく、最初の撮影はこの映画の冒頭の探偵事務所のシーンだったそうです。出ている役者もほとんど同じで役柄も変わりません。曽根晴美演じる殺し屋が「スペードの鉄」から「ジョーカーの鉄」になっていますがキャラクターは何も変わってません。併映が深作のライバル石井輝男の「花と嵐とギャング」。石井輝男は新東宝でデビューして東映に来た監督。後に「網走番外地」を撮ります。「直撃!地獄拳 大逆転」なんか見るとテンポがよくて、とっても面白い。

 ニュー東映という会社は東映が面白いほどお客の入ってた時代でだったらもう一系統作ったら二倍儲かるんじゃないか、と始められましたが経営は行き詰まり、61年の11月には解散しています。所謂大スターは東映で映画を撮っているのでニュー東映はデビューしたばかりの新人や二線級のスターなんかが出ていたようです。松方の親父である近衛十四郎主演の「柳生武芸帳」とか子役の山城新伍が出てた「白馬童子」、それから里見浩太郎の名前も見えます。ただほとんどの作品が残っていません。深作のデビュー作もよくフィルム残ってたなと思います。なお、「北陸代理戦争」のホンを書いた高田宏治のデビューもこのニュー東映。東映のトレードマークち言えば、義理欠く、人情欠く、お金欠くの三”欠く”マークが荒れ狂う波の中からニューッと出てきますが、ニュー東映はこの三”欠く”が火山口から出てきます。

 ニュー東映が倒産したあたりから東映も怪しくなってきます。もっとも東映だけでなく、新東宝が映画製作を止めるなど、映画界全体が徐々に衰退していきます。信じられんでしょうがこの頃は邦画のシェアが圧倒的で75年までは邦画の方が公開本数が多かった。まだまだ日本映画が元気だった、娯楽の中心だった、映画界のそうした時期に深作欣二はデビューしました。日本映画が本当に危機を迎えるのはまだまだ先でこの頃は東映、東宝、松竹、日活、大映が競って映画を作っていた。。黒澤明はこの年に「椿三十郎」「用心棒」を発表。作品の評価、興行成績ともに絶頂期を迎えています。深作は日本映画の黄金期の尻尾でデビューを迎えたのです。

 作品の方ですが前作よりかは面白くなってますが基本的に同じ感じです。こんな、何本立てかの一本でも特撮とか使ってお金をちゃんとかけているのを見てこの頃の映画界ってのはまだお金持ってたんだなあと思う。
 今日の深作まつりはデビュー作の「風来坊探偵 赤い谷の惨劇」。当時の東映の拡大路線に乗ったデビューでした。この頃、東映は興行成績がダントツトップで儲かって仕方なかった。もっと儲けようと考えた大川博は1960年3月にもう一つの封切り系統の「第二東映」を発足させます。翌年、ニュー東映と改称されてその年の6月に深作監督デビューを果たします。今まで毎週二本ずつ104本作っててそれだけでも大変だったのに、倍の208本を製作。もうスタッフもキャストも足りないってんで若手が登用されます。

 で、監督が深作欣二、主演が「警視庁物語 不在証明」で映画デビューを果たしたばかりの千葉真一ということになります。千葉真一と深作欣二の友情はここから始まったのです。きっちりは数えていませんが深作映画の出演作品の数で言うとおそらくこの人が一番だと思う。映画だけじゃなくて、テレビで「柳生一族の陰謀」とか「影の軍団」もやってるしね。

 有名な話ですが「仁義なき戦い 広島死闘編」の山中役は当初、千葉真一に予定でした。千葉はこの役に入れ込み、セリフも頭に入っていた。が、クランクイン一週間前に突然、山中を北大路欣也に譲って敵役の大友をやってくれ、と言われた。北大路欣也は”東映のプリンス”で山中をやりたいと言われればどうしようもなかった。千葉はずいぶんごねましたが結局は深作監督の説得で大友役を引き受けます。

 実際、千葉ちゃんの大友はカラをぶち破るような演技でとっても印象に残っています。が、つらかったでしょうね。深作にしてみても千葉だから頼めたことだろうし、千葉にしても深作だから呑めた話だったと思います。深作は実録路線、千葉は空手映画路線で70年代に二人の映画はあまりありませんが。80年代の時代劇にまた千葉真一は戻ってきます。二人の友情は死ぬまで続き、千葉真一は「バトルロワイアル?」にも出演しています。

 映画は60分程度の所謂中篇映画。次作「風来坊探偵 岬を渡る黒い風」とセットになっており、登場人物も話もほとんど同じでスケジュールも予算も二本まとめてとなっていました。千葉真一演じるは私立探偵の西園寺五郎、これに敵役に雇われた殺し屋の「スペードの鉄」こと曽根晴美。突然、馬に乗った千葉ちゃんが出てきて鉄砲ぶっ放す無国籍アクションです。

 デビューしたての千葉真一はとにかく爽やか。曽根晴美と軽快な立て便のやり取りがなんとも楽しいです。脚本にこれまた深作と長く組むことになる神波史男の名前が見えます。深作に指名されて脚本を一から書き直しました。とにかくストーリーは単純なんでテンポで押し切っちゃえという感じで全体的にスピードが速いんで、スルスルと見てられます。ラストがなかなか、粋でかっこいい。

監督:深作欣二 脚本:神波史男、松原佳成 音楽:池田正義
出演:千葉真一、曽根晴美、北原しげみ、小林裕子、故里やよい、須藤健
先に12月から更新しろと自分でも思いますが。。

☆暴れん坊兄弟 1/4 大津京町滋賀会館シネマホール
★★★★
→RCS名物・覆面上映会が滋賀会館にやってきた、ということで今年の年明けはこれで迎えてみました。東映時代劇にはなんか苦手意識があったのですがこれは面白かった。東千代之介演じる主人公の呑気さがほほえましい。監督は沢島忠。湯布院映画祭にもこられてましたがお元気でした。

☆プロデューサーズ 1/4 大津京町滋賀会館シネマホール
★★★
→これも覆面上映。日本では知る人ぞ知るメル・ブルックスのデビュー作にしてアカデミー脚本賞を受賞したとんでもねえ作品。メル・ブルックスと言えば「スペースボール」というすっごいバカな作品がありましたな。今から30年以上も前の作品ですがテンポがよく、笑い転げてるうちに映画は終わり。いい年明けになりました。

☆学生野郎と娘たち 1/11 シネ・ヌーヴォ
★★★★
→中平康監督作品。等身大の大学生を巡る群像劇。長門裕之、中原早苗、芦川いづみなんかが出ています。今から40年以上も前の話なれど、学生事情は今も変わりませんなあ。。実質の主演は中原早苗。最後の「うるせえぞ、ロッキード!」って叫ぶシーンが印象的でした。

☆あした晴れるか 1/11 シネ・ヌーヴォ
★★★
→中平が石原裕次郎を迎えて作ったドタバタコメディ。テンポがめちゃくちゃいい。最近、裕次郎の魅力がわかってきた。

半落ち 1/12 大宮東映
★★
→寺尾聡の辛気臭い顔を見てるだけでも気分が暗くなってくるのだが、曲者の俳優をうまく使った日本映画らしい日本映画だと思います。國村準が好演。原田美枝子さんはすっかり老けてしまってがっかり。

新・刑事まつり 一発大逆転 1/15 みなみ会館
★★★
→長く続いた刑事まつりシリーズも4作で完結。え?今、新作を製作中ですか?第一作の「刑事まつり」はこれまた惨い作品だったんだが、4作も続くとだんだん面白くなってくるし、役者も揃ってくる。大森南朋監督作品がえらく面白かった。光石研と阿部サダヲが光っている。とにかく俳優が監督やってるせいか、キャストが妙に豪華。え、あの人が?という俳優さんも出てるので見れる機会があったら日本映画好きは見ておきましょうね。井筒和幸、北村龍平がなかなかおもろい。

☆竜馬暗殺 1/17 美松劇場
★★★
→この日が美松劇場の最後になった。やっぱり映画館がなくなるというのは寂しい。

☆不知火検校 1/17 京都文化博物館映像ホール
★★★★
→勝新ブレイクのきっかけになった作品。悪の限りを尽くす按摩を好演している。遠慮が一切ない悪役でこの時代によくこんな役をやったなと思う。思うに勝負に出たんだろう。映画内では自慢の三味線を披露するシーンもあります。玉緒を脅すシーンが凄い。旦那の目を盗んで金を借りに来た玉緒に対して、これから毎日来いと脅す。「今日だって、大変な苦労をしてきて出てきたのです。毎日来るなんて無理です」と泣き崩れる玉緒の前で「苦労すれば、ここまで来れるんじゃないですか」と言い放つ。極悪。

着信アリ 1/18 三番街シネマ1
★★★
→とにかく後ろの中学生がうるせえのなんの。昼一番に北野劇場で見ようと思ったら満員で入れなかったんで仕方なく、ここで見たがやっぱりここ最悪。客席とスクリーンが離れすぎで後ろに座ると何にも見えない。ガラガラだったので移動してことなきを得たがこんなん、詐欺みたいなもんやで。映画は「CURE」みたいな雰囲気を持ってましたが業界の毒まんじゅうこと秋元康らしい、癒し系のお話でした。そこさえ、無視すればまあ楽しめる。

☆危いことなら銭になる 1/18 シネ・ヌーヴォ
★★★★
→「やばいことならぜにになる」に呼びます、為念。中平監督の最高傑作とも言えるギャングコメディ。ガラスのジョー(このあだ名のゆわれはご自分の目でお確かめを!)こと宍戸さんに、口ひげにシルクハットにステッキと人を食った長門裕之が役柄にぴったりで見ているだけで楽しめる。浅丘ルリ子のおてんばも面白い。奇想天外でブレーキの取れた車同然で映画は客を置いてきぼりにしてぐんぐん走り出して、最後に藤村有弘(ガバチョ)までからんできてどう終わるのか、と思いきや、案外あっさりと終わるのもまた楽し。

☆喜劇 大風呂敷 シネ・ヌーヴォ
★★★
→突然、ベトナム戦線から始まるアホアホコメディ。四国独立を狙う円楽さん、四国買収を本気で考える藤田まこと、女に稼がせることは天才的な田中邦衛でもおなかいっぱいなれど、荒井注、加藤茶、高木ブーに小松政雄も出るのだ!落語芸術協会会長・桂歌丸師匠も登場だ!どうだ、おそれいったか!見てて疲れます。芦川いづみが出てきた時にはほっとした。

ミスティック・リバー 1/25 MOVIX京都シアター2
★★★
→さほど悪いとは思わんかったがそんなにいいとは思わんかった。いつものイーストウッドだな。キャッチコピーの「スタンドバイミーが。。」は意味不明。そんなにいい話じゃねえだろう。ショーン・ペンのヤクザっぷりは外国人にしとくのがもったいない。広島に来い。

☆その壁を砕け 1/29 シネ・ヌーヴォ
★★★★★
→中平作品ではこれが一番好きだな。長門裕之もかっこいいし、芦川いづみがホロリと涙をこぼすシーンもいい。それから渡辺美佐子ってこんなにエロかったんですね!

☆地図のない町 1/29 シネ・ヌーヴォ
★★
→ちと物語が暗すぎる。脚本が橋本忍ってのもびっくりだが、滝沢修とか葉山良二、宇野重吉が出てるのもびっくりだ。南田洋子一人に感情移入できる。

☆月曜日のユカ 1/29 シネ・ヌーヴォ
★★
→代表作だが俺はそれほど面白くなかった。俺が男だからだろうか。加賀まりこさんってこんなに可愛かったんですね。でも俺は渡辺美佐子の方がいいなあ。加藤武はこんな役ばっかりですね。それからボーイフレンド役の中尾彬ってあの中尾彬なんですか?

☆座頭市 1/31 大津京町滋賀会館シネマホール
★★★★★
→二度見たが面白さを再認識した。今までの芸術臭さをやや薄くしてコメディ部分を強くしたのがよかったんだと思う。いつも思うことだがお笑い芸人は年をとると本当にいい縁起をするようになる。石倉三郎しかりガダルカナルタカ然り。岸部一徳の背筋が伸びた悪役ぶりが爽快。この人しかできねえよ、こんな演技。ラストのタップダンスは背筋に汗が流れるほどの見事な出来栄え。このシーンを見るだけでも金を払う価値がある。

 今日はシネヌーヴォで1月末までやってた中平康レトロスペクティブより「その壁を砕け」。中平康って人はデビュー作の「狂った果実」で嵐のようにデビューしていろんな作品を撮って風のように去っていきました。生前、その作品の評価は決して芳しくありませんでしたが、死後25年たった今、早すぎた天才として見直されています。いつも思うことですが、凄い映画というのは平然と時代を越えていく。彼が映画に重視したものはまずスタイルであり、スピード。如何に映画をかっこよく、飽きずにお客さんに見てもらうか、に尽きます。スピーディな展開、テンポのいいドラマ、そして歯切れのよい台詞回しで1時間半をあっという間に見せてしまう。深作欣二は中平が「狂った果実」を発表したその5年後の1961年にデビューしていますが、その初期作品は明らかに中平康の影響を受けています。中平康の作品に最もよく出ているのが後に深作夫人となる中原早苗で中平の「大学野郎と娘たち」で彼女を気に入った深作は後年、「狼と豚と人間」に出演させています。この映画で使われた、時代状況を当時の新聞の切り抜きで紹介していくという手法は「仁義なき戦い」でも使われています。

 中平監督と言えばやはり「狂った果実」「月曜日のユカ」などが代表作になるのですがこの監督の面白さは実にいろいろな映画を撮ってるということです。「狂った果実」「月曜日のユカ」のように前衛的で実験映画みたいな作品があると思えば「あした晴れるか」「危いことなら銭になる」「喜劇 大風呂敷」のようなコメディもある。また「学生野郎と娘たち」のような群像劇もありますし、裕次郎、吉永小百合のアイドル映画もある。私はまだ8本しか中平作品を知らないのですがどの映画も個性的で雰囲気も違って面白い。「その壁を砕け」は中平作品の中ではやや異色なサスペンスにしあがっています。

 自動車修理工の渡辺三郎(小高雄二)は夜を徹して車を走らせていた。彼の行き先は新潟、そこには美しき婚約者、とし江(芦川いづみ)がいた。3年前、結婚の約束をした三郎は東京で一心不乱に働き続けた。そして、遂に彼女を迎えに行くのだ。喜び勇んでいた三郎だが、彼は群馬の村で突如警察によって拘束されてしまう。村で殺人事件が起こった。かけつけた巡査の森山(長門裕之)はその犯人が車で逃げたことを知り、いち早く車を手配。その時間に車で村を通過していた三郎が疑われたのだ。老夫婦はナタで襲われ、15万円を奪われた。旦那は死亡し、妻・民子(北林谷栄)は頭に傷を負っていた。次男夫婦は出かけており、家の中は老夫婦と長男の未亡人である咲子(渡辺美佐子)だけであった。金ももっておらず、物的証拠もなかった三郎であったが、民子の証言が証拠と認定されて逮捕されてしまう。三郎は村で一人の男を車に乗せた、と主張したが証拠は何もなかった。とし江は事件を知り、泣き崩れるが弁護士を雇って彼の無実のために戦う。

 このたびの手柄で刑事に昇進した森山は本署に移動した。彼は咲子に惚れており、離縁された咲子の実家に赴く。しかし、咲子は既に再婚してそこにはいなかった。諦めきれない気持ちを抱えたまま、森山は佐渡の婚家を訪ねると彼女の再婚相手は出稼ぎで村に来ていた石工であった。咲子の様子が何かおかしい。もしかして咲子は事件のことを何か知っているのではないか。村に帰った森山は河原で怪しげな男を見つける。東京の上野のアパートに消えていく男。森山はアパートに踏み込むが、そこには男の死体が転がっていた。もしかしてこの男が三郎が乗せたという男ではないだろうか。。果たしてアパートからは15万円が出てきた。捜査のやり直しを主張する森山に刑事部長(西村晃)、警察署長(清水将夫)は困惑するが。。

 新藤兼人の脚本がよくできている。息詰まる展開で思わず夢中になる。一体、この事件の犯人は誰かと最後まで展開が読めない。リアルだなと思ったのは実地調査。裁判官立会いのもとで事件を再現するのだが、どことなくぎこちない。しかし次々と新事実が浮かんできて、証人が今までの証言をひっくり返してしまう。緊張感いっぱいのシーンなんだが、クスクス笑えるシーンが随所に忍ばせています。

 車の使い方がうまい。三郎が給料の全てをつぎ込んだ車。オープニング、この車はこれからの新生活のようにピカピカで希望の象徴でした。ところが彼が逮捕されている間、車はタイヤがパンクしてしまい警察署の片隅にゴミのように置かれている。ラスト、車にゆっくり空気が入っていくシーンは思わず涙がこぼれそうになった。長門裕之、芦川いづみの二人がとてもいいです。

監督:中平康 脚本:新藤兼人 撮影:姫田真佐久 音楽:伊福部昭
キャスト:長門裕之、小高雄二、芦川いづみ、沢井保男、二木草之助、北林谷栄、渡辺美佐子、木浦佑三、峯品子、清水将夫、 西村晃、菅井一郎、大滝秀治、鈴木瑞穂、三崎千恵子、下条正巳、下元勉、青木富夫
 本日は大ヒット上映中の「ラストサムライ」。出ている俳優がほとんど日本人で主演がトムクルーズで舞台が日本と日本市場で売れることを明確に狙った作品で実際に大ヒットをしております。ただ製作側としても日本での大ヒットまでは計算に入ってたんでしょうがアメリカでのヒットは読みきれんかったんじゃないかと思う。

 この正月は子供はニモで大人はラストサムライでカップルが「ジョゼ・・」(この映画をカップルで見てどうするんだろうか)「木更津キャッツアイ」でございましたな。最近の傾向なんですが、京都ではMOVIX京都だけが満員で他の劇場(スカラ座含む)は閑古鳥でございました。今年の年末にはMOVIXのスクリーンも増えるし、ますますこの傾向は強くなるでしょう。観客100万人突破で23日は1000円で映画を見せたとか。休日なんぞ券買えませんもん。おかげで少し遠ざかってはおりますが。

 さて「ラストサムライ」でございます。いい映画だと思います。私も2003年度ランキングの5位に挙げています。聖林ってのは恐ろしいところで日本を舞台にした、日本人が喜ぶような映画を作っちゃう。正直、今の日本映画界でこんな映画は撮れない。時代劇というのはただでさえ、お金がかかる。特に戦争シーンでは金がかかるので「壬生義士伝」のように市街戦を撮るのが日本映画では精一杯。あれだけ、エキストラの衣装をそろえて、馬もそろえて。。となるといくら金がかかるのか、もう想像がつかない。それだけの金を集めるプロデューサーもいませんし、またそのような環境で撮った映画監督も一線を退いていますし、全くの経験不足です。それで仕方ないから外国のアクションを参考にするんだけど、「ホワイトアウト」とか「バトルロワイアル?」みたいな惨い作品ができちゃうわけだ。このシーンだけでもこの映画はすごいと言えるんです。日本人が見てみたかった日本映画、「七人の侍」「影武者」みたいな大掛かりな時代劇と言えるでしょう。でも本来ならね、こんな映画は日本が作らないけんよ。

 日本映画はそれだけじゃねえよ、と思う人もいるでしょう。私もその一人だが聖林とタイマン張れるような映画はもう作れないという事実はやはり認めねばならないのです。金をどっさりかける正攻法では駄目で手法や脚本の巧みさで客の気を引くゲリラ的戦法を強いられています。ただ、そのやり方も聖林はご存知でそちらの方面でも掃討作戦を進めています。今の日本映画界にはもう行き先がなくて、一部アニメ、ホラーにしか逃げ道を見出せないというきわめてヤバイ状態となっています。その状況にこの「ラストサムライ」のヒットです。日本映画界がもっとも挑戦せねばならない分野で聖林に映画作られてヒットさらわれて悔しくないのか?聖林はこの分野でさらに二の矢、三の矢を放ってくるでしょう。そしてそれに日本映画界は沈黙し続けねばならないのか。配給会社、製作会社から何の声も聞こえてこない。

 というのがまあ日本の事情なんですが聖林から見てみれば別になんともない映画です。よくある外国を舞台にして、外国の風習に戸惑うアメリカ人と反目しながらも現地の人と友情を深めていくっての。所謂インディアンムービーって奴で大昔からあります。「アンナと王様」ってあったでしょ?要はあれです。日本も007で舞台になってますし、「ミスターベースボール」とか「ブラックレイン」もあるしね。ただ、日本のお家芸である時代劇に踏み込んだのが始めてだというだけで。ですからどうしても日本人から見ると首をかしげざるをえないところもたくさんあります。

 外国人にとってのサムライは葉隠の書く「武士道は死ぬところを見つけたり」を貫く戦士なんですが、我々日本人は実際の武士が士の身分を町民に売却していたことや、慢性的な貧乏で鎧兜はそっくり質に入ってたことや切捨て御免が実行された例がほとんどなかったことなどを知ってます。幕末の一時期に武士道がもてはやされましたが、武士の実像はアメリカ人の考えるものとは違う。幕末の活躍した志士のほとんどが町民出身とか田舎の郷士とかばっかりなのから見てもこんな厳しい戒律(違和感あるだろうけど、外国の理解は多分こうだ)を武士が守ってたとは到底思えない。やはり時代劇は「たそがれ清兵衛」とか「壬生義士伝」の方がしっくりきます。

 しかしこの映画は凡百のインディアンムービーに比べるとよくできています。どうせ、アメリカ人の作るもんやからええ加減やろとかどうせプロパガンダムービー(映画に思想があって何が悪い)やろ、との狭量な考えからは何も生まれてきません。私も知らんかったのですが、刀しか使わないという士族の叛乱は本当にあったようです。熊本で起こった神風連の乱というのがそれです。廃刀令への不満から出た蜂起でした。おそらくモデルはこの事件だと思います。西南戦争や佐賀の乱は政治闘争ですがこの事件はやや意を変えます。ただすぐに征伐されてます。勝元のモデルはやはり西郷でしょう。実際の西郷はこんないい人じゃなくて策士なんですがまあいいか。大村のモデルは大久保利通か三井の番頭と呼ばれた井上馨あたりでしょうが、これも明治の政治家の総称と思う方がわかりやすい。

 日本からの使節に軍人が武器のセールスをしているシーンで大村がそっとつぶやく一言があります。「ここはあきんどの国だよ。」そして日本もアメリカにならって「サムライの国」より「商人の国」に転身を遂げていきます。その過程で勝元やオールグレンのような生粋の「サムライ」は姿を消していきます。その過程を情緒たっぷりに日本の役者を使って描いていきます。ただ私は大村にもう少し重きをおいて欲しかったと思う。ただの悪役になっちゃったのがやや残念。

監督:脚本:エドワード・ズウィック 脚本:マーシャル・ハーコスピッツ、ジョン・ローガン 美術:リリー・キルバート
出演:菅田俊、真田広之、福本清三、鶴見辰吾、渡辺謙、小雪、中村七之助、小山田シン、原田眞人、トニー・ゴールドウィン、ビリー・コノリー、ティモシー・スポール、トム・クルーズ

開口一番

2002年11月5日 映画
 これから、毎週水曜日に映画の感想を更新していこうと思います。コンセプトとしては、なるべくネタバレすることなく、権威におもねることなく、自分の感想を素直に書こうと考えています。
 私はどんな映画であろうとも(一部の邦画は除きますが)とりあえず見てみることを薦める淀長主義者ですので、評論は致しません。映画の感想というのは千差万別で、たとえば私は「ダンサーインザダーク」のよさがさっぱりわかりませんが、この映画を「心の映画」に選ぶ方もいらっしゃいます。よかろうが悪かろうが興味を抱いたならとりあえず見てみることをお薦めします。1800円と言えども二回、メシを抜けば充分補填できる金ではありませんか。
私はここ数年、映画を年に50本以上見ていますが時には自分の趣味ではない映画を見ることもあります。「あかん」と思うと見てみると意外に当たりがでることがあります。(そんなことは10回に1回も無いですが)また反対に「絶対いい」と思いながら見て「なんじゃい、こりゃ」と思う作品もございます。(特に邦画に多いです。)
 当ホームページの目的は映画ファンの層を広げ、映画界の繁栄を促すことです。映画は娯楽であり、国の金で保護される藝術ではないのです。二度と「京都朝日シネマ」のような悲劇を起こさない為にも。それと私自身がこうした映画の感想を読むのが好きなので、こうしたサイトが他にできるといいなあ、と思います。私の映画プロフィールに関してはぼちぼち書いて行きたいと思います。詳しいことはホームページでも見てください。(宣伝)
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