今日は阪本順治の「新・仁義なき戦い」。実はこの作品のエキストラに参加したんですよ。まだ私が大学生で就職活動が終わって暇にしてた時でした。シーンはどこかというと序盤の親分の葬式のところです。喪服に身を包んだ屈強な組員を乗せた黒塗りの車が、田舎のあぜ道を疾走する。農作業中の耕運機がエンストを起こしてしまい、あぜ道をふさいでしまう。親分の遺骨を抱いた姐さんを始めとした組員が続々と車から降りて歩き始める。。園部の山奥で朝の7時過ぎから撮影が始まって終わったのはもう夕方の6時は回っていたと思います。東映の京都撮影所で喪服を貸してもらい、ぼんやりと車(タクシーだった)に乗り込んでおりました。合図が来たら、車から歩き出す。一番最後尾ですので前で何が起こったか、わからんかった。現場で見た俳優で覚えているのは岸部一徳、豊川悦司、志賀勝。当時はこれぐらいしか、顔がわからなかった。
関西広域暴力団左橋組の三代目組長が急死した。跡目は当然、若頭(織本順吉)であると思われたが高齢を理由に固持。跡目については舎弟頭の宮松(曽根晴美)に預けられた。有力候補として挙げられたのが若頭補佐の粟野岸部一徳)。実力からもネームバリューからも彼に決まりかと思われた。がそれを不満に思う斎木(小沢仁志)は中平(佐藤浩市)を推挙。直系組長(福本清三)を抱きこみ、一気に対立候補の一角を占める。が、粟野はそれでも動かない。「俺は担がれて組長になるんやない。お前らがわしを担げ」。幹部である門谷(豊川悦司)は奔走するが、粟野のやる気のなさに若頭の篠崎(志賀勝)も松田(松重豊)も動かない。門谷は金を集める為に相当、強引な手を使うが、誰もついてこない。中平の兄弟分で長らく獄に入っていた遠山(大和武士)を仲間に引き込もうとするが失敗。粟野を推挙していた舎弟(岩尾正隆、野口貴史)も煮え切らない粟野にイライラして支援を辞めてしまう。
勢いに乗る中平一派は刑事の梶原(佐川満男)の仲立ちでコリアン実業家の栃野(布袋寅泰)と手を結ぼうとする。小さな焼肉屋の主人として振る回っていたが、その実態は夜の街のボスで、北朝鮮に不正送金を行う裏社会の人間であった。腹心の韓(哀川翔)を使って手広く、ビジネスを展開していた。栃野はヤクザと手を結ぶことには消極的だったが、韓の弟(俊藤光利)が不法入国であることから協力を迫られていた。実は栃野と門谷は子どもの頃からの長馴染みで共に大阪の下町に育った。そして二人だけの秘密があった。やがて門谷組の幹部が中平陣営の幹部を殺したことから、門谷は破門、粟野は引退させられる。4代目はほぼ中平に決定だと思われたが。。
阪本監督の演出のうまさはそのテンポのよさにある。登場人物も多いし、ストーリーも複雑なんだが、演出がスピーディーなんで楽しんでみてられる。役者も阪本映画の常連にヤクザ映画の常連を加えて多彩。小沢仁志の策士っぷりも佐藤浩市の人を食った感じも(「俺はお前と同じ血流れとるんや。。。嘘や」のくだりは彼しかできないだろう)松重豊のいい加減な感じも見てて楽しい。岸部一徳の弟を演じた大地義行もよかった。横で騒いでるだけなんだが、その泥臭いキャラクターが凄く印象に残った。布袋はまああんな感じか。とにかく、「この人を怒らせたら大変なことが起こるな」という雰囲気は漂わせていた。阪本さんはどの映画でも必ず、素人を出すけど無難に使いこなしている。大和武士も赤井英和も彼の映画から始まったんだよな。阪本監督のキャスティングは演技云々よりも、その人が持ってる雰囲気で見ているような気がする。
東映が全面的に力を入れたせいか、お金もそこそこかかってます。パンフを見ると当時、「仁義なき戦い」シリーズのセルビデオを発売してた時期でその宣伝という側面もあったんだろう。脚本は「仁義なき戦い 完結編」の高田宏治で松方や千葉ちゃんは出てないけど「仁義なき戦い」に出ていた俳優さんも多数、出演しています。
が、やっぱりヤクザ映画ではないんだよな。どうしてもハードボイルドになっちゃうし、任侠っぽくもなっちゃう。あの感傷的すぎる、とってつけたようなラストもいらなかったと思うしね。「顔」以降の阪本作品は評論家好みというか、なんか芸術くさいシーンが多くなったように思う。初期作品の「トカレフ」とか「鉄拳」なんかは、何でそこでそうなるのかさっぱりわからんのだけど、とにかく凄い勢いで突っ走るような映画ですっごく面白かった。「鉄拳」なんて文太が「くされ○○○が。。」(○○○は関西読み)とつぶやくシーンから始まってた。メチャクチャやん。東映は昔から「芸術みたいなもん、撮ったらあかんでえ」というところなんで結局は阪本に合わなかったのかもしれない。「仁義なき戦い」で無かったらもっと自分流にアレンジして自分で脚本も書いてたでしょうけどどうにも、こりゃ中途半端。「いかなる手段使ってもお客さん喜ばせなあかん」の高田宏治とはそりゃ、あわないと思うよ。結局、この映画もあんまりヒットはしなかったし、阪本もそれ以降は東映で映画は撮っていません。(多分)それから有名な話ですが、この映画のサントラ(作曲は布袋)は「キルビルVol.1」にも使われてました。サントラは買いです。
監督:阪本順治 脚本:高田宏治 企画:黒澤満 音楽監督:布袋寅泰 撮影:笠松則通
出演:福本清三、曽根晴美、野口貴史、岩尾正隆、志賀勝、大地義行、哀川翔、佐川満男、小沢仁志、織本順吉、松重豊、村上淳、豊川悦司、川上泳、俊藤光利、余貴美子、大和武士、佐藤浩市、岸部一徳、早乙女愛、布袋寅泰
関西広域暴力団左橋組の三代目組長が急死した。跡目は当然、若頭(織本順吉)であると思われたが高齢を理由に固持。跡目については舎弟頭の宮松(曽根晴美)に預けられた。有力候補として挙げられたのが若頭補佐の粟野岸部一徳)。実力からもネームバリューからも彼に決まりかと思われた。がそれを不満に思う斎木(小沢仁志)は中平(佐藤浩市)を推挙。直系組長(福本清三)を抱きこみ、一気に対立候補の一角を占める。が、粟野はそれでも動かない。「俺は担がれて組長になるんやない。お前らがわしを担げ」。幹部である門谷(豊川悦司)は奔走するが、粟野のやる気のなさに若頭の篠崎(志賀勝)も松田(松重豊)も動かない。門谷は金を集める為に相当、強引な手を使うが、誰もついてこない。中平の兄弟分で長らく獄に入っていた遠山(大和武士)を仲間に引き込もうとするが失敗。粟野を推挙していた舎弟(岩尾正隆、野口貴史)も煮え切らない粟野にイライラして支援を辞めてしまう。
勢いに乗る中平一派は刑事の梶原(佐川満男)の仲立ちでコリアン実業家の栃野(布袋寅泰)と手を結ぼうとする。小さな焼肉屋の主人として振る回っていたが、その実態は夜の街のボスで、北朝鮮に不正送金を行う裏社会の人間であった。腹心の韓(哀川翔)を使って手広く、ビジネスを展開していた。栃野はヤクザと手を結ぶことには消極的だったが、韓の弟(俊藤光利)が不法入国であることから協力を迫られていた。実は栃野と門谷は子どもの頃からの長馴染みで共に大阪の下町に育った。そして二人だけの秘密があった。やがて門谷組の幹部が中平陣営の幹部を殺したことから、門谷は破門、粟野は引退させられる。4代目はほぼ中平に決定だと思われたが。。
阪本監督の演出のうまさはそのテンポのよさにある。登場人物も多いし、ストーリーも複雑なんだが、演出がスピーディーなんで楽しんでみてられる。役者も阪本映画の常連にヤクザ映画の常連を加えて多彩。小沢仁志の策士っぷりも佐藤浩市の人を食った感じも(「俺はお前と同じ血流れとるんや。。。嘘や」のくだりは彼しかできないだろう)松重豊のいい加減な感じも見てて楽しい。岸部一徳の弟を演じた大地義行もよかった。横で騒いでるだけなんだが、その泥臭いキャラクターが凄く印象に残った。布袋はまああんな感じか。とにかく、「この人を怒らせたら大変なことが起こるな」という雰囲気は漂わせていた。阪本さんはどの映画でも必ず、素人を出すけど無難に使いこなしている。大和武士も赤井英和も彼の映画から始まったんだよな。阪本監督のキャスティングは演技云々よりも、その人が持ってる雰囲気で見ているような気がする。
東映が全面的に力を入れたせいか、お金もそこそこかかってます。パンフを見ると当時、「仁義なき戦い」シリーズのセルビデオを発売してた時期でその宣伝という側面もあったんだろう。脚本は「仁義なき戦い 完結編」の高田宏治で松方や千葉ちゃんは出てないけど「仁義なき戦い」に出ていた俳優さんも多数、出演しています。
が、やっぱりヤクザ映画ではないんだよな。どうしてもハードボイルドになっちゃうし、任侠っぽくもなっちゃう。あの感傷的すぎる、とってつけたようなラストもいらなかったと思うしね。「顔」以降の阪本作品は評論家好みというか、なんか芸術くさいシーンが多くなったように思う。初期作品の「トカレフ」とか「鉄拳」なんかは、何でそこでそうなるのかさっぱりわからんのだけど、とにかく凄い勢いで突っ走るような映画ですっごく面白かった。「鉄拳」なんて文太が「くされ○○○が。。」(○○○は関西読み)とつぶやくシーンから始まってた。メチャクチャやん。東映は昔から「芸術みたいなもん、撮ったらあかんでえ」というところなんで結局は阪本に合わなかったのかもしれない。「仁義なき戦い」で無かったらもっと自分流にアレンジして自分で脚本も書いてたでしょうけどどうにも、こりゃ中途半端。「いかなる手段使ってもお客さん喜ばせなあかん」の高田宏治とはそりゃ、あわないと思うよ。結局、この映画もあんまりヒットはしなかったし、阪本もそれ以降は東映で映画は撮っていません。(多分)それから有名な話ですが、この映画のサントラ(作曲は布袋)は「キルビルVol.1」にも使われてました。サントラは買いです。
監督:阪本順治 脚本:高田宏治 企画:黒澤満 音楽監督:布袋寅泰 撮影:笠松則通
出演:福本清三、曽根晴美、野口貴史、岩尾正隆、志賀勝、大地義行、哀川翔、佐川満男、小沢仁志、織本順吉、松重豊、村上淳、豊川悦司、川上泳、俊藤光利、余貴美子、大和武士、佐藤浩市、岸部一徳、早乙女愛、布袋寅泰
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