今日、紹介するのは関西では十三の第七藝術劇場で22日より公開の「問題のない私たち」。封切の日には主演の黒川芽衣の舞台挨拶もあったそうです。いつもなら、のそのそと整理券を取りに行くのですが、おそらくひでえ混雑だろうし、アイドルオタクばかりで埋め尽くされてる映画館を思い浮かべてやめた。共演は美波、沢尻エリカ、大塚寧々、勝村政信、野波麻帆。(この人が来てたならどんな混雑であろうとも行ってたな)

 (多分、私立の)女子校に通う笹岡澪(黒川芽衣)はクラスのリーダー格で仲間と一緒にイジメをしていた。イジメのターゲットは真莉愛(美波)という大人しい女の子。彼女には罪悪感などなかった。「あの子が私達を不愉快にするのが悪い」と思い、イジメを苦に自殺した中学生のニュースにも「死ぬ気になれば、何だってできる」と全くその心情も理解できなかった。が、転校生の麻綺(沢尻エリカ)で彼女の境遇は逆転する。おしゃれで明るい麻綺をイジメの対象にしようとするが、失敗。クラスの大部分は大人しい真莉愛をいじめる澪を快く思っておらず、人気は急落。親友だと思ってた瑞希(森絵梨佳)にも裏切られ、麻綺をリーダーとしたグループのイジメの対象になってしまう。教科書への落書き、放課後のリンチ(足蹴)、挙句の果てには葬式ごっこまでやられてしまう。

 真莉愛へのイジメも見てみぬ振りした加藤先生(野波麻帆)は頼りにならない。たった一人の肉親である父親(勝村政信)は桃花(大塚寧々)との再婚に夢中で彼女の異変に気づこうともしない。全てに絶望した彼女は学校の屋上から身を投げようとするが、真莉愛に止められる。澪の味方は彼女一人だった。やがて、イジメの対象は瑞希に移る。イジメからは解放されたが、どうにも麻綺が気に入らない澪は遂に激突。イジメの対象は今度は麻綺に向く。またもやイジメグループのリーダーにたった澪だったが。。

 小学校、中学校とイジメに遭う子どもってのは大体、大人しいか運動音痴かと相場が決まっております。両者ともに見事に当たっていました私でしたが、イジメには遭いませんでした。だからと言って、学校にイジメ自体が全くなかったかと言えばやはりあった。そこにはイジメに遭わないようにする、私の防衛もやはりあったわけです。それは似た者同志で派閥を組むということだったのです。昼休みは校庭を駆け巡るよりも図書館で「三国志」を読んでる方が楽しいタイプ同士で徒党を組んでしまう。数の暴力にはやはり数で対抗していくしかないのだ。そうした権謀術数ってのが子どもの世界にもあった。小学校、中学校といい思い出も多数あるけど、それ以上に厭な思い出もいっぱいだった。

 ただ、イジメってのははっきり言ってかっこ悪いからね。うちは共学だったから、やはり女の子の目というものがあった。女の子はまた事情が違うんでしょうが、イジメをしてる人ってのはみんな、口には出さないけど、「こいつ、最悪」と思われている。映画の中ではイジメグループのリーダーがあっさりとイジメの対象になっちゃう。グループにいる連中にしてしまえば、誰が対象でもいいのだ。要は面白きゃ、いいのだ。罪の意識なんてもんはないだろう。ただ、イジメられている者にとってはそれは塗炭の苦しみである。自分がその立場になって、初めてわかるのだ。想像力が足りないのだ。

 ただこの映画で一番最低なのはオトナ連中だろう。口では娘を心配しながら、自分が一番可愛い、”いい父親”に逃げ込もうとする父親にしても、自分の万引きシーンを見た生徒を狡猾に追い込んでいく先生にしても最悪な人間である。特に生徒が先生と戦うのは正直、めちゃくちゃしんどい。私の田舎は閉鎖的で日教組の力が強かったせいか、私立中学に進学する生徒を平気で妨害する教師がいた。私の担任は理解のある人だった。が、私の兄弟は私立中学に進学した兄貴について他の先生に散々、嫌味を言われたらしい。何でも彼らが妄信する平等の姿勢に反するらしい。あほか。

 父親にしても先生にしても悪人ではない。が、子どもは〜だという思い込みに飲み込まれて、対話がないままに全てを判断してしまう。日垣隆の言うように対話がない教育などありえないのだ。父親は娘が再婚相手を気に入ってくれるか、ということにだけに夢中で何も気づかない。波風立てずに”良い夫”、”良い父”でいたいのだ。そんなの、無理に決まってるのに。葛藤なしに家族の再編なんか無理に決まってる。父の再婚の相手にしても、”娘”が弁当を食べずに帰ってきたというだけで、この子とは仲良くなれないと判断してしまう。その日、彼女にどんな事情があったとも知らずに。先生は最悪というか哀れでさえもある。自分が作り続けた澪の像におびえ、深みにはまりこんでいく。澪に泥棒の濡れ衣をかけようとして生徒のボイコットに遭うシーンは圧巻。

 この原作を書いたのは当時、中学生だった少女で漫画化もされました。少女漫画なんで読んだことないけど。そのせいか、会場には学校帰りと思われる女子中学生の姿もチラホラ。現役のアイドルが多数出ているアイドル映画なんですが、扱っている内容は圧倒的に重くて気が抜けない。全編にわたって女の子がきゃぴきゃぴ(死語)してる映画なんですが、足蹴にしたりするシーンもあります。途中、海水浴のシーンぐらいか?胸休まるシーンは。後半の先生との対決の方が圧倒的に面白い。主演の黒川芽衣はぽっちゃりしすぎだと思うがなかなか可愛い。ビビるほどの美人ぶりを発揮する沢尻エリカは狡猾でクールな少女を見事に演じている。美波はヒュー・グラントに似すぎだと思うが、目がくりっとして可愛い。「バトルロワイアル」で山本太郎の恋人役やった子なんね。あの時の方が大人っぽく見えるんだが。。女の子も割りと可愛く撮れてるし、映画としてもなかなか見応えのある作品です。原作のファンやアイドルファンでなくても、十分にお薦めできる作品です。

監督、脚本:森岡利行 音楽:奥野敦士 原作:木村文、牛田麻希
キャスト:沢尻エリカ、美波、勝村政信、野波麻帆、大塚寧々、岡元夕紀子、森絵梨佳、小松愛、小松愛唯、小貫華子、黒川芽衣、浜田晃、安間里恵

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