【韓国映画】殺人の追憶〜自首しなければ四肢が腐って死ぬ〜
2004年4月8日 洋画全般
今日、紹介するのは「ほえる犬は噛まない」のボン・ジュノの最新作「殺人の追憶」。前作のブラックコメディとうって変わり、今作は実際に韓国で起こった連続殺人事件(華城連続殺人事件)を題材に取ったサスペンスです。前回でも少し触れましたが今作は韓国にて2003年度の興行収入のナンバー1を獲得する大ヒットになりました。主演は韓国を代表する俳優のソン・ガンホ。「JSA」「反則王」での好演が大変よかったです。今作でもメチャクチャな田舎刑事を気持ちよく演じています。
1986年。軍事政権下の韓国。ある農村地帯の田舎町で若い女性の死体が発見された。手足を拘束され、頭部にガードルを被せられたまま、用水路に放置されていた。地元の刑事のパクは相棒のチョと共に捜査を開始するがまもなく、同様の手口による殺人事件が発生する。残っていた足跡をトラクターにつぶされるなどの不運もあり、何も手がかりがつかめなかった。パクは元看護婦のソリョンから被害にあった女性がベクという男にしつこくつきまとわれていたという情報を得る。ベクは顔に焼けどがあって、少し頭に障害があった。気の弱いベクを拷問して(傷がついたら問題なので靴に布を巻いての足蹴)嘘の証拠まででっちあげて、吐かせようとするがどうにもうまく行かない。殺人の手口はこと細かく話すのだが、それ以上のところになると話が混乱してわけがわからなくなってしまう。
犯行現場を調査していたパクは怪しげな男にドロップキックをかまして、逮捕するがそれはソウルから派遣された刑事のソだった。ソは、手に障害のあるベクが人を紐で縛るのはムリだと異を唱えるがパクとチョはベクを現場検証に駆り出すが、大失敗に終わる。ベクは釈放されて、署長は解任されてしまう。
新たに赴任した捜査課長は改めて現場検証を行い、少ない証拠と犯人の殺人パターンから犯人を割り出そうとする。「書類は嘘をつかない」と冷静に書類から犯人像を導き出そうとするソ刑事と「捜査の基本は足」と信じるバク、チョの間はうまく行かず、激しい口論が絶えることがなかった。二つの事件に共通するものは何か。また一人、女性が殺された。全ての事件の共通項はいずれも雨の日に赤い服を着た独身の女性が狙われていたことだった。課長は婦人警官のギオクに赤い服を着せておとり捜査を開始するが、その日に殺されたのは別の女性であった。証拠は何も無かった。女性には強姦されたあとがあったが、精液も陰毛も見つからなかった。バクは犯人は無毛症であると銭湯で捜査を始まるが徒労に終わる。(当たり前だ。)
ギオクは事件当日にFM局で「憂鬱な手紙」という辛気臭い歌が流れていることを指摘する。ソはラジオ局にリクエスト葉書を探しに行くが、既に捨てられたあとだった。パクとチョは夜半に犯行現場で女性の下着で自涜にふける工員を逮捕する。が、これもただの変態で空振り。それでも強引に自白させようとするパクは反対するソと大喧嘩になる。その時、ちょうどラジオから「憂鬱な手紙」が流れ始めた。外は雨だった。犯行が起こるに違いないと課長は機動隊に出動を要請するが、機動隊は学生デモの鎮圧に出ていたのだった。果たして、またもや殺人事件が発生する。。。
犯罪というものはその時代の一つの象徴で犯罪を語るということは、社会を語るということにつながる。監督のボン・ジュノはそのことをよくわかっているのだと思います。世間を騒がせた犯罪というのは、その時代の一つの縮図になります。この映画のモデルとなった殺人事件は80年代を最も騒がせた連続殺人事件でした。ソウルの片田舎で10人の女が同じような手口で次々に殺害された。韓国政府はのべ180万人の捜査官を事件に投入しましたが、犯人は結局見つかることが無かったのです。事件は長期化し、誤認逮捕も続出しました。社会はパニックになり、模倣犯も現れた。警察の強引な捜査方法に対するデモが起こった。そしてそれから15年。次々と事件が時効を迎える中でこの映画は公開されたのです。
日本で言うと少し趣きは違いますが、グリコ森永事件のようなものだとわかりやすいでしょう。映画は犯人に重点をおかず、犯罪を捜査する刑事達を主人公に当時の社会を切り取っています。「自白しないと四肢が腐って死ぬ」と書かれた、何とも不気味な案山子やストッキングにさるぐつわを噛ませて殺すという手法なども全て実話です。
犯罪を題材に取っているのに序盤は軽すぎるほどのかろやかなテンポで進みます。強引な捜査を続ける刑事たちもひでえ奴らなんですが、割と好感が持てます。新聞記事用に記念写真を撮るシーンが面白い。ここに次々と犯人に関する情報が挟み込まれていく。徐々にサスペンス調になってきて、それでいてテンポよくストーリーが進んでぐいぐいと引き込んでいく。クライマックスは犯人と思われる工員を追い詰めるシーン。このトンネルでのシーンが何とも美しく、思わずため息がもれてしまう。うっとりするほど、映画を撮るのに長けている。シーンの積み重ねでできている映画が多い昨今、脚本の流れで見せてくれる映画は少なくて、2時間10分という時間も全く、苦にはなりませんでした。最近、歯ごたえのある映画を見てねえなあと思う映画ファンにオススメです。
1986年。軍事政権下の韓国。ある農村地帯の田舎町で若い女性の死体が発見された。手足を拘束され、頭部にガードルを被せられたまま、用水路に放置されていた。地元の刑事のパクは相棒のチョと共に捜査を開始するがまもなく、同様の手口による殺人事件が発生する。残っていた足跡をトラクターにつぶされるなどの不運もあり、何も手がかりがつかめなかった。パクは元看護婦のソリョンから被害にあった女性がベクという男にしつこくつきまとわれていたという情報を得る。ベクは顔に焼けどがあって、少し頭に障害があった。気の弱いベクを拷問して(傷がついたら問題なので靴に布を巻いての足蹴)嘘の証拠まででっちあげて、吐かせようとするがどうにもうまく行かない。殺人の手口はこと細かく話すのだが、それ以上のところになると話が混乱してわけがわからなくなってしまう。
犯行現場を調査していたパクは怪しげな男にドロップキックをかまして、逮捕するがそれはソウルから派遣された刑事のソだった。ソは、手に障害のあるベクが人を紐で縛るのはムリだと異を唱えるがパクとチョはベクを現場検証に駆り出すが、大失敗に終わる。ベクは釈放されて、署長は解任されてしまう。
新たに赴任した捜査課長は改めて現場検証を行い、少ない証拠と犯人の殺人パターンから犯人を割り出そうとする。「書類は嘘をつかない」と冷静に書類から犯人像を導き出そうとするソ刑事と「捜査の基本は足」と信じるバク、チョの間はうまく行かず、激しい口論が絶えることがなかった。二つの事件に共通するものは何か。また一人、女性が殺された。全ての事件の共通項はいずれも雨の日に赤い服を着た独身の女性が狙われていたことだった。課長は婦人警官のギオクに赤い服を着せておとり捜査を開始するが、その日に殺されたのは別の女性であった。証拠は何も無かった。女性には強姦されたあとがあったが、精液も陰毛も見つからなかった。バクは犯人は無毛症であると銭湯で捜査を始まるが徒労に終わる。(当たり前だ。)
ギオクは事件当日にFM局で「憂鬱な手紙」という辛気臭い歌が流れていることを指摘する。ソはラジオ局にリクエスト葉書を探しに行くが、既に捨てられたあとだった。パクとチョは夜半に犯行現場で女性の下着で自涜にふける工員を逮捕する。が、これもただの変態で空振り。それでも強引に自白させようとするパクは反対するソと大喧嘩になる。その時、ちょうどラジオから「憂鬱な手紙」が流れ始めた。外は雨だった。犯行が起こるに違いないと課長は機動隊に出動を要請するが、機動隊は学生デモの鎮圧に出ていたのだった。果たして、またもや殺人事件が発生する。。。
犯罪というものはその時代の一つの象徴で犯罪を語るということは、社会を語るということにつながる。監督のボン・ジュノはそのことをよくわかっているのだと思います。世間を騒がせた犯罪というのは、その時代の一つの縮図になります。この映画のモデルとなった殺人事件は80年代を最も騒がせた連続殺人事件でした。ソウルの片田舎で10人の女が同じような手口で次々に殺害された。韓国政府はのべ180万人の捜査官を事件に投入しましたが、犯人は結局見つかることが無かったのです。事件は長期化し、誤認逮捕も続出しました。社会はパニックになり、模倣犯も現れた。警察の強引な捜査方法に対するデモが起こった。そしてそれから15年。次々と事件が時効を迎える中でこの映画は公開されたのです。
日本で言うと少し趣きは違いますが、グリコ森永事件のようなものだとわかりやすいでしょう。映画は犯人に重点をおかず、犯罪を捜査する刑事達を主人公に当時の社会を切り取っています。「自白しないと四肢が腐って死ぬ」と書かれた、何とも不気味な案山子やストッキングにさるぐつわを噛ませて殺すという手法なども全て実話です。
犯罪を題材に取っているのに序盤は軽すぎるほどのかろやかなテンポで進みます。強引な捜査を続ける刑事たちもひでえ奴らなんですが、割と好感が持てます。新聞記事用に記念写真を撮るシーンが面白い。ここに次々と犯人に関する情報が挟み込まれていく。徐々にサスペンス調になってきて、それでいてテンポよくストーリーが進んでぐいぐいと引き込んでいく。クライマックスは犯人と思われる工員を追い詰めるシーン。このトンネルでのシーンが何とも美しく、思わずため息がもれてしまう。うっとりするほど、映画を撮るのに長けている。シーンの積み重ねでできている映画が多い昨今、脚本の流れで見せてくれる映画は少なくて、2時間10分という時間も全く、苦にはなりませんでした。最近、歯ごたえのある映画を見てねえなあと思う映画ファンにオススメです。
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