深作まつり第四十五夜〜必殺4 恨みはらします〜そんなのありかよ!
2004年3月25日 深作まつり
今日の深作まつりは「必殺4 恨みはらします」。藤田まことの代表作「必殺仕置人」の映画化です。あまり知られていないことですが、深作監督は「必殺仕置人」の前作で「必殺」シリーズの始まりとなった「必殺仕掛人」の演出をしています。第一話と第二話、第二十四話を撮っていますが、第一話には撮影に一ヶ月も費やしたそうです。なお、「必殺仕置人」の制作にも参加し、主演を藤田まことに決めて主人公のキャラクター設定も行っています。(第一話を監督する予定だったそうですが「仁義なき戦い」でブレイクしていたあとで映画作るのに忙しすぎて監督はしなかったようです。)必殺シリーズと言うと貞永監督のイメージが強いですけどね。
深作が演出したドラマシリーズとして最も有名なのは「傷だらけの天使」でしょうが、他にも「アイフル大作戦」「キイハンター」「バーディ大作戦」「Gメン75’」などのヒットシリーズがたくさんあります。キャラクター設定やどんな役者を使うかということを考えて、一作か二作を監督してドラマの流れを作る、あとは後任に任せてしまうというやり方で全てを監修していたわけではないみたいです。私のようにリアルタイムで深作を見てない、遅れた深作ファンには映画をおっかけるだけで精一杯なんですが、深作監督の仕事の幅は実に広い。ドラマ以外にも舞台の演出とかラジオドラマの演出もやってましたし、晩年にはゲームの演出もやってました。「キイハンター」なんてやはりその世代にとっては特別な思いがありますし、またその人たちから見る深作監督も私とは違ったもんなんでしょう。興味が尽きない人でございます。トコトン行くで、ホンマ。
80年代、角川映画の出現や洋画が邦画を圧倒するなど映画業界は大きく変わりました。それはドラマと映画の関係をも、変えつつありました。大映が倒産し、日活が映画を作らなくなるなど70年代に映画業界は縮小しつつありました。そのスタッフ達がどこに流れた、というとドラマに流れた。大映のエースであった増村保造も晩年は大映ドラマを演出しています。東映、松竹、東宝でも多くのスタッフがドラマに流れた。それまでドラマと言うと撮影所の片隅でこっそり撮っているという感じだったのですが徐々に質的にも本編(映画)と肩を並べるようになってきて、会社の屋台骨を背負うようになっていく。そうなるとヒットしたドラマが映画化されるということも起こってきます。今では当たり前のことなんですが。当時、ドラマの現場にいた三池崇史の「監督中毒」なんかを読むと当時の撮影所の様子が知れて面白い。
「必殺」シリーズも高視聴率番組だったからドラマから映画になった例でこの「必殺4」もテレビシリーズで並行して撮られていた。つまり藤田まこと以下の仕事人はテレビと掛け持ち(「テッパリ」と言うらしい)だったので映画の撮影につきっきりと言うわけにはいかない。でも深作監督はテストばっかりで終わる日があるぐらいで撮影に時間がかかる監督です。「映画監督・深作欣二」によると仕事人(藤田まこと含む)の登場シーンはほとんど吹替えだったそうです。だから出てくるシーンが夜ばっかり。そこを必殺シリーズの常連である撮影の石原興、照明の中島利男コンビがうまく撮る。彼らは「忠臣蔵外伝四谷怪談」「阿部一族」でも撮影、照明を担当しています。
映画でも藤田まことはある程度出てきますが他の仕事人はほとんど出てこない。藤田まことのライバルである、千葉真一が主役みたいなもんです。独楽をあやつりながら、子連れで敵をしとめる仕事人なんですが、これがなかなかかっこいい。藤田まことはターゲットである、旗本愚連隊を狙いますが、千葉真一に先を越されてしまう。そこに町奉行である真田広之がからんでくる、というストーリーになっていきます。真田広之は何故か前髪を残しており、うっすら化粧をしています。「柳生一族の陰謀」の白塗り公家はもう強烈でしたが、この映画の旗本愚連隊ももう髪をたてたり、ド派手な羽織をつけたりもう好きなようにしています。悪役に如何にも悪そうな扮装をさせたりするのは歌舞伎みたいで面白いです。ただやりすぎるとあほらしいですがこれくらいは許容範囲でしょう。
圧巻はおけら長屋の連中と旗本愚連隊の決闘から続く一連のシーン。ラストの千葉真一と蟹江敬三の決闘は圧巻です。舞台となるのはスラムと思われるおけら長屋でセットが作られたのが下鴨神社の境内です。このロケーションもまたいいのだ。隣に森があって、荒地にごちゃごちゃした長屋が広がっている。このシーンがあまりにもよすぎて、最後の仕事人の活躍があんまり目立たない。「必殺」ファンにとっては、待ってました!なんでしょうけど、なんか付け足しみたいになってる。真田広之のやられ方もねえ、本人自体が「そんなの、ありかよ」って言ってますけど(笑)。
長屋の住人に常連の室田日出男。今作が深作映画出演の最後になりました。この頃から髭を生やし始めて風格のある役柄が多くなりました。オープニングの刃傷騒動を起こす侍に石橋蓮司。長屋の影がある浪人に本田博太郎などが見えます。千葉ちゃんの娘を演じた相楽ハル子はもう明らかに時代劇の芝居じゃないんですが、そこが新鮮で可愛い。千葉ちゃんに噛み付いて、ニッと笑うシーンは思わず、ゾクッと来ます。スタッフには深作組の若頭・原田徹氏の名前が見えます。少し長いのでややだれ場もありますが、楽しんでみてください。
監督:深作欣二 脚本:深作欣二、中原朗、野上龍雄 撮影:石原興 照明:中島利男 音楽:平尾昌晃 美術:太田誠一 助監督:原田徹
出演:千葉真一、岸田今日子、相楽ハル子、石橋蓮司、真田広之、笹野高史、室田日出男、成田三樹夫、本田博太郎、古舘ゆき、藤木孝、蟹江敬三、村上弘明、菅井きん、三田村邦彦、かとうかずこ、ひかる一平、白木万理、倍賞美津子、堤大二郎、藤田まこと
深作が演出したドラマシリーズとして最も有名なのは「傷だらけの天使」でしょうが、他にも「アイフル大作戦」「キイハンター」「バーディ大作戦」「Gメン75’」などのヒットシリーズがたくさんあります。キャラクター設定やどんな役者を使うかということを考えて、一作か二作を監督してドラマの流れを作る、あとは後任に任せてしまうというやり方で全てを監修していたわけではないみたいです。私のようにリアルタイムで深作を見てない、遅れた深作ファンには映画をおっかけるだけで精一杯なんですが、深作監督の仕事の幅は実に広い。ドラマ以外にも舞台の演出とかラジオドラマの演出もやってましたし、晩年にはゲームの演出もやってました。「キイハンター」なんてやはりその世代にとっては特別な思いがありますし、またその人たちから見る深作監督も私とは違ったもんなんでしょう。興味が尽きない人でございます。トコトン行くで、ホンマ。
80年代、角川映画の出現や洋画が邦画を圧倒するなど映画業界は大きく変わりました。それはドラマと映画の関係をも、変えつつありました。大映が倒産し、日活が映画を作らなくなるなど70年代に映画業界は縮小しつつありました。そのスタッフ達がどこに流れた、というとドラマに流れた。大映のエースであった増村保造も晩年は大映ドラマを演出しています。東映、松竹、東宝でも多くのスタッフがドラマに流れた。それまでドラマと言うと撮影所の片隅でこっそり撮っているという感じだったのですが徐々に質的にも本編(映画)と肩を並べるようになってきて、会社の屋台骨を背負うようになっていく。そうなるとヒットしたドラマが映画化されるということも起こってきます。今では当たり前のことなんですが。当時、ドラマの現場にいた三池崇史の「監督中毒」なんかを読むと当時の撮影所の様子が知れて面白い。
「必殺」シリーズも高視聴率番組だったからドラマから映画になった例でこの「必殺4」もテレビシリーズで並行して撮られていた。つまり藤田まこと以下の仕事人はテレビと掛け持ち(「テッパリ」と言うらしい)だったので映画の撮影につきっきりと言うわけにはいかない。でも深作監督はテストばっかりで終わる日があるぐらいで撮影に時間がかかる監督です。「映画監督・深作欣二」によると仕事人(藤田まこと含む)の登場シーンはほとんど吹替えだったそうです。だから出てくるシーンが夜ばっかり。そこを必殺シリーズの常連である撮影の石原興、照明の中島利男コンビがうまく撮る。彼らは「忠臣蔵外伝四谷怪談」「阿部一族」でも撮影、照明を担当しています。
映画でも藤田まことはある程度出てきますが他の仕事人はほとんど出てこない。藤田まことのライバルである、千葉真一が主役みたいなもんです。独楽をあやつりながら、子連れで敵をしとめる仕事人なんですが、これがなかなかかっこいい。藤田まことはターゲットである、旗本愚連隊を狙いますが、千葉真一に先を越されてしまう。そこに町奉行である真田広之がからんでくる、というストーリーになっていきます。真田広之は何故か前髪を残しており、うっすら化粧をしています。「柳生一族の陰謀」の白塗り公家はもう強烈でしたが、この映画の旗本愚連隊ももう髪をたてたり、ド派手な羽織をつけたりもう好きなようにしています。悪役に如何にも悪そうな扮装をさせたりするのは歌舞伎みたいで面白いです。ただやりすぎるとあほらしいですがこれくらいは許容範囲でしょう。
圧巻はおけら長屋の連中と旗本愚連隊の決闘から続く一連のシーン。ラストの千葉真一と蟹江敬三の決闘は圧巻です。舞台となるのはスラムと思われるおけら長屋でセットが作られたのが下鴨神社の境内です。このロケーションもまたいいのだ。隣に森があって、荒地にごちゃごちゃした長屋が広がっている。このシーンがあまりにもよすぎて、最後の仕事人の活躍があんまり目立たない。「必殺」ファンにとっては、待ってました!なんでしょうけど、なんか付け足しみたいになってる。真田広之のやられ方もねえ、本人自体が「そんなの、ありかよ」って言ってますけど(笑)。
長屋の住人に常連の室田日出男。今作が深作映画出演の最後になりました。この頃から髭を生やし始めて風格のある役柄が多くなりました。オープニングの刃傷騒動を起こす侍に石橋蓮司。長屋の影がある浪人に本田博太郎などが見えます。千葉ちゃんの娘を演じた相楽ハル子はもう明らかに時代劇の芝居じゃないんですが、そこが新鮮で可愛い。千葉ちゃんに噛み付いて、ニッと笑うシーンは思わず、ゾクッと来ます。スタッフには深作組の若頭・原田徹氏の名前が見えます。少し長いのでややだれ場もありますが、楽しんでみてください。
監督:深作欣二 脚本:深作欣二、中原朗、野上龍雄 撮影:石原興 照明:中島利男 音楽:平尾昌晃 美術:太田誠一 助監督:原田徹
出演:千葉真一、岸田今日子、相楽ハル子、石橋蓮司、真田広之、笹野高史、室田日出男、成田三樹夫、本田博太郎、古舘ゆき、藤木孝、蟹江敬三、村上弘明、菅井きん、三田村邦彦、かとうかずこ、ひかる一平、白木万理、倍賞美津子、堤大二郎、藤田まこと
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