今日紹介するのは「新・仁義なき戦い/謀殺」。主演は今や日本を代表する俳優になった渡辺謙と「竜二Forever」で演技ができることを披露した高橋克典。監督は東映としては10年ぶりになる社員出身の橋本一。これがデビュー作品になりました。この作品、当初はVシネとして作られたようですが、東映が一昨年の東京国際映画祭に劇場公開作品として紹介してしまったんで全国公開されることになったらしい。東映さんもなんか出してくれと言われたけど、何にもなかったんでできあがったばかりのこの作品を出したという話も残っています。京都でも昨年の2月に公開。湯布院映画祭でも上映されています。
湯布院の際に監督とお話する機会がありました。銃撃されるシーンでの花屋の娘が花子という名前なのは面白すぎませんかと聞いたところ、あれは花屋の主人をやった大部屋俳優のベテラン(つまり福本清三先生のお仲間)のアドリブだったこととか、志賀勝と小林稔持が握手するシーンがあったけどカットしたこととか聞きました。気さくでええ人でした。
舞台は大阪。西日本最大の暴力団である佐橋組傘下の尾田組には二人の対照的な幹部がいた。ビジネス界に通じ、組の財政を支える矢萩(高橋克典)と武闘派の藤巻(渡辺謙)の二人の若頭補佐である。藤巻は若頭を殺した寺田組を壊滅。自他ともに認める二代目候補であった。が、本家若頭の杉浦(隆大介)の意向は自らのビジネスパートナーである矢萩であった。一方、杉浦より引退を勧告された尾田(小林稔持)は引退するつもりはなく、二人を牽制。三番手の佐奈田(高知東生)を次期組長に指名し、内紛を助長させた。
矢萩の本心はどうだったか。矢萩の本心は自分が若頭として藤巻を支えることだった。「なんやかんや言うたかてヤクザは暴力です。兄貴をおいて跡目はありません。」藤巻は名古屋に進出し、相当に荒っぽいシノギをしていたために関東最大組織の道明会系の竜紋会より襲撃を受ける。道明会理事長の渡会(石橋蓮司)と杉浦は秘密裏に結んでおり、この事件をきっかけに竜紋会と尾田組の解散を狙っていたのだ。矢萩は竜紋会組長の前田(志賀勝)を引退させ、抗争を終結させる。復讐を誓っていた藤巻は怒りを爆発させ、矢萩と絶縁してしまう。。
脚本が本当によく出来てて、最近のヤクザ映画の中では傑作の部類に入る作品だと思います。今のヤクザ映画ってのは任侠映画ばかりでもう面白くないのですが、この作品はドラマの骨子ができてて、そこに東映実録路線風味と現代のヤクザ事情などを加えてなかなか見ごたえのある作品になっています。あんまりお金はかかってないし、アクションシーンにやや不満はあるものの冒頭の襲撃シーンや30秒ぐらいしかありませんが坂口憲二が出てくるシーンとかはスタイリッシュでかっこいい。
「暴力団から暴力とってみいや、、もうカスみたいなもんやで」と言い切る藤巻は今時、珍しい武闘派バリバリのヤクザ。やられたらやり返す、という暴力の基本を決して忘れていない「ラストヤクザ」です。一方、株式に通じて近代やくざの見本である矢萩が藤巻に憧れるという設定が面白い。暴力こそが力。矢萩はそれを体現する藤巻に憧れていた。しかし藤巻にもやはり時代にあった生き方をしている矢萩にどこかコンプレックスがあった。そこを老獪な組長に付け狙われてしまう。
藤巻、矢萩、尾田という三者三様がしっかり描かれているし、またきっちり期待どおりに演じてくれる渡辺謙、高橋克典、小林稔持を見てると嬉しくなる。鎧をぶん投げる渡辺謙の荒々しいヤクザっぷりも堂に入ってたし、克典のどこか抑えたような演技もいい。小林稔持はどこかとぼけたようで老獪なヤクザを気持ちよく演じていました。若手では山田純大、榊英雄、伊原剛志が出演。山田純大はいい役者になりますね。他に志賀勝、石橋蓮司、夏木マリ、隆大介とキャストはえらく豪華ですな。近頃、ヤクザ映画見てないなと思う人にはぜひお薦めの一本です。スカパラの音楽もかっこええです。
監督:橋本一 脚本:成島出、我妻正義 企画:黒澤満 撮影:山本英夫
出演:渡辺謙、高橋克典、石橋蓮司、福本清三、小林稔持、隆大介、高知東生、坂口憲二、志賀勝、鹿内孝、山田純大、榊英雄、伊原剛志、南野陽子、小林健、薬師寺保栄、誠直也、滝沢沙織、遠野凪子
湯布院の際に監督とお話する機会がありました。銃撃されるシーンでの花屋の娘が花子という名前なのは面白すぎませんかと聞いたところ、あれは花屋の主人をやった大部屋俳優のベテラン(つまり福本清三先生のお仲間)のアドリブだったこととか、志賀勝と小林稔持が握手するシーンがあったけどカットしたこととか聞きました。気さくでええ人でした。
舞台は大阪。西日本最大の暴力団である佐橋組傘下の尾田組には二人の対照的な幹部がいた。ビジネス界に通じ、組の財政を支える矢萩(高橋克典)と武闘派の藤巻(渡辺謙)の二人の若頭補佐である。藤巻は若頭を殺した寺田組を壊滅。自他ともに認める二代目候補であった。が、本家若頭の杉浦(隆大介)の意向は自らのビジネスパートナーである矢萩であった。一方、杉浦より引退を勧告された尾田(小林稔持)は引退するつもりはなく、二人を牽制。三番手の佐奈田(高知東生)を次期組長に指名し、内紛を助長させた。
矢萩の本心はどうだったか。矢萩の本心は自分が若頭として藤巻を支えることだった。「なんやかんや言うたかてヤクザは暴力です。兄貴をおいて跡目はありません。」藤巻は名古屋に進出し、相当に荒っぽいシノギをしていたために関東最大組織の道明会系の竜紋会より襲撃を受ける。道明会理事長の渡会(石橋蓮司)と杉浦は秘密裏に結んでおり、この事件をきっかけに竜紋会と尾田組の解散を狙っていたのだ。矢萩は竜紋会組長の前田(志賀勝)を引退させ、抗争を終結させる。復讐を誓っていた藤巻は怒りを爆発させ、矢萩と絶縁してしまう。。
脚本が本当によく出来てて、最近のヤクザ映画の中では傑作の部類に入る作品だと思います。今のヤクザ映画ってのは任侠映画ばかりでもう面白くないのですが、この作品はドラマの骨子ができてて、そこに東映実録路線風味と現代のヤクザ事情などを加えてなかなか見ごたえのある作品になっています。あんまりお金はかかってないし、アクションシーンにやや不満はあるものの冒頭の襲撃シーンや30秒ぐらいしかありませんが坂口憲二が出てくるシーンとかはスタイリッシュでかっこいい。
「暴力団から暴力とってみいや、、もうカスみたいなもんやで」と言い切る藤巻は今時、珍しい武闘派バリバリのヤクザ。やられたらやり返す、という暴力の基本を決して忘れていない「ラストヤクザ」です。一方、株式に通じて近代やくざの見本である矢萩が藤巻に憧れるという設定が面白い。暴力こそが力。矢萩はそれを体現する藤巻に憧れていた。しかし藤巻にもやはり時代にあった生き方をしている矢萩にどこかコンプレックスがあった。そこを老獪な組長に付け狙われてしまう。
藤巻、矢萩、尾田という三者三様がしっかり描かれているし、またきっちり期待どおりに演じてくれる渡辺謙、高橋克典、小林稔持を見てると嬉しくなる。鎧をぶん投げる渡辺謙の荒々しいヤクザっぷりも堂に入ってたし、克典のどこか抑えたような演技もいい。小林稔持はどこかとぼけたようで老獪なヤクザを気持ちよく演じていました。若手では山田純大、榊英雄、伊原剛志が出演。山田純大はいい役者になりますね。他に志賀勝、石橋蓮司、夏木マリ、隆大介とキャストはえらく豪華ですな。近頃、ヤクザ映画見てないなと思う人にはぜひお薦めの一本です。スカパラの音楽もかっこええです。
監督:橋本一 脚本:成島出、我妻正義 企画:黒澤満 撮影:山本英夫
出演:渡辺謙、高橋克典、石橋蓮司、福本清三、小林稔持、隆大介、高知東生、坂口憲二、志賀勝、鹿内孝、山田純大、榊英雄、伊原剛志、南野陽子、小林健、薬師寺保栄、誠直也、滝沢沙織、遠野凪子
コメント