さていよいよ本格的な年末に入りました。本日、年賀状も作り終えました。大掃除も終わっております。これほど気が休まる年末はないですな!。。やることないな。

 今後の更新予定ですが12月30日に2003年度映画ランキング、キネ旬方式の洋画、邦画ベストテンとワーストの発表をやります。で、12月31日が「2003年を振り返る」というショートエッセイを更新します。こうやって予定を書くと決まって更新できないジンクスがあるのですが今回は準備進んでますので多分、大丈夫。だと思う。。あー旅行行きてえ。

 さて本日紹介しますのはDVDで見た「竜二」。日本映画の伝説的な作品でみなみ会館でも幾度もリバイバル上映されているのですが見る機会がありませんでした。スカパーで放送していた「竜二 Forever」と続けて見ました。

 「竜二」の脚本と主演をやったのは金子正次。松山より上京し、劇団「東京ザットマン」を脚本家の内田栄一等と旗揚げ。舞台俳優としての評価を得ます。その後、映画の世界に興味を抱き、かつての友人である松田優作、萩原健一の力を得て映画制作に奔走。「竜二」はその彼の初出演作品にあたります。会社の力を使わなかった、完全な自主映画でしたが、湯布院映画祭で高く評価されたことがきっかけになって10月29日より全国公開されて大ヒットしました。しかし、その直後の11月6日に金子正次はガンの為にこの世を去ったのです。享年33歳。

 映画の冒頭、こんなテロップが出る。
「竜二」主演の金子正次は、昭和58年11月6日未明他界しました。金子正次の「竜二」は、永遠に不滅です。

 主人公の竜二はヤクザ。喧嘩も強く、組織の中で一目置かれる存在になっていた。が、彼の心はどこか晴れなかった。彼はもうヤクザの稼業に嫌気がさしていたのだ。妻子はヤクザである彼に愛想をつかして実家に帰っていた。かつてヤクザから足を洗った先輩の店で本音を語る竜二。彼はカタギになることを誓い、妻に報告する。

 足を洗った竜二を妻は暖かく迎えてくれた。彼は酒屋で働き始めた。働き終わってから、家で娘をひざに抱きながら飲むビール。そこには竜二があこがれたカタギの暮らしがあった。しかし、かつて苦楽を友にした友人が覚せい剤に溺れておちぶれていく様を見て、彼の心がまた動き始めた。。

 前半は何気なく見ていたのですが後半になるにつれてぐいぐい引き込む強い力を持っています。ヤクザの世界から足を洗ってカタギになりますが、結局はまたヤクザの世界に帰って行く男の物語。一言で言うとそういう映画で多分、現実にでもよくあることなんでしょう。ラスト、竜二と妻ははにぎわう商店街で一言も声を掛け合わぬまま、目だけで別れを告げる。現実には別れに劇的な場面は用意されていない。現実はいつだって淡々と進むのだ。そこがリアルに表現されていてとても切ない。

 出演は妻役に永島暎子、娘役は金子の愛娘です。それから子分をやるのは北公次と桜金造。桜金造は当時、コメディアンで映画出演はほとんど始めてだったらしいですが、この映画をきっかけにして俳優業に進出します。小さな役ばかりですが「バタアシ金魚」とか「のど自慢」で味のある演技を披露しています。「竜二 Forever」によるとギャラもめちゃくちゃ安かったんですがマネージャーの反対(マネージャーを演じるのは桜金造自身)を押し切って出演したそうです。それから、東映の岩尾正隆や「釣りバカシリーズ」の笹野高史もチョイ役で出演しています。 それから助監督として「顔」の阪本順治の名前が。「竜二 Forever」の中でなかなか進まない撮影にやきもきする助監督が出てきますが、阪本さんがモデルになっていたのかもしれません。

 たとい、それが間違っていたとしても損な道だとしても歩んでしまう人間はいます。時代が変わったとしても今でも「竜二」が輝きを失うこともなく多くの人の心を打ち続けているということは、その竜二の生き方に共感し、また憧れる人がいるということでそうした竜二のような生き方もまた永遠なのでしょう。映画は次元を超えて人の心を打ち続けるということを実証してくれる一本だと言えると思います。
 
企画、プロデューサー:大石忠敏、監督:川島透(大石忠敏のペンネーム)助監督:阪本順治、脚本:鈴木明夫(金子正次のペンネーム)撮影:川越道彦
キャスト:金子正次、永島暎子、モモ(金子正次の娘)、北公次、桜金造、岩尾正隆、笹野高史

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