深作まつり第三十三夜「忠臣蔵外伝 四谷怪談」〜どこまで行くの〜
2003年10月20日 今日の深作まつりは1994年の「忠臣蔵外伝 四谷怪談」。私と同じ70年代後半から80年代に生まれた深作ファンの方の中ではこの作品が初めて見た作品という人も多いんじゃないでしょうか。私もこれと「いつかギラギラする日」はテレビで見た思い出があります。私が映画を見出したのは98年でスクリーンでリアルタイムで見たのは「バトルロワイアル」だけです。(「おもちゃ」公開時に深作監督の名前は知ってましたが見に行かなかった。)この年、東宝は市川昆監督で「四十七人の刺客」を公開。原作の権利を取られた松竹は深作監督で「忠臣蔵外伝 四谷怪談」をほぼ同日の公開でぶつけました。言わば東宝と松竹の「忠臣蔵対決」が行われたわけですが、興行成績は両者共々、大ヒットには至りませんでした。興行成績は「四十七人の刺客」に負けたようですがキネマ旬報ベストテン二位を獲得し、日本アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚本賞とほぼ独占しました。
詳しくは下記のアドレスを見ていただきたいのですが
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/fiesta/friends/cinema/sakuhin2/sakuhin465.html
忠臣蔵と四谷怪談を組み合わせるというのは奇抜な印象を受けますが、江戸時代に遡りますとこの二つの物語は全く無関係ではなかったようです。この芝居は昔から交互に上映されることが多く、それから鶴屋南北の書いた「東海道四谷怪談」では伊右衛門は判官の家来でお岩さんの父親も判官の家来という設定になっています。当時、忠臣蔵は人気抜群のお芝居でその人気にあやかろうというものもあったと思います。「血煙高田馬場」なんかも後に討ち入りに参加した堀部安兵衛が主人公だからあんなに人気出たんだろうし。何にしても四谷怪談と忠臣蔵の合体というのは全くのデタラメというわけでもなく、深作監督ももちろんそのことを意識していた。
元禄14年。江戸城松の廊下で刃傷騒ぎを起こした浅野内匠頭(真田広之)は切腹、赤穂藩はお取り潰しとなった。いくらなんでも横暴。喧嘩両成敗ではないのか、殿のご無念は如何ばかりか。赤穂城において血気を口走る堀部安兵衛(渡瀬恒彦)らを迎えての会議で城代家老・大石内蔵助(津川雅彦)は反対し、「仇討ちはしたくない。今は」と言い放つのだった。かくして赤穂藩は断絶。侍は浪人となった。大石は京都の山科に転居して妻を離縁しての芸者遊び三昧。浪士達は方々に散っていった。赤穂藩に召抱えられたばかりの民家伊右衛門(佐藤浩市)もまた、父親より受け継いだ琵琶をかきならしての門付けに立つ毎日であった。ある日、湯女のお岩さん(高岡早紀)が彼に興味を持った。やがて二人は恋に落ち、一緒に暮らし始める。やがて、大石より決起の知らせが入るが伊右衛門はお岩さんと所帯を持つことを選ぶ。しかしそれは長く続かなかった。。。彼は吉良家の重臣伊藤喜兵衛(石橋蓮司)の娘・梅(荻野目慶子)に惚れられており、婿入りすることで仕官することを考えていた。。
初めてテレビで見た時にはキーキー騒ぎまくる荻野目慶子とか石橋蓮司の「あたし、死んじゃうっ」とか渡辺えり子のお歯黒とか(゜∀゜)アヒャな蟹江敬三とかが目について変な映画だなと思ったもんですが、何回か見ると深作監督が何をやりたかったのかが見えてくる。やはり深作がやりたかったのは「赤穂城断絶」と同じでやはり「仇討ちできなかった男」の悲しみでしょう。浅野の殿様が切腹した当時、多くの家来が仇討ちを心に誓いました。が、結局集まったのは47人。その47人に入れなかった者の中には忠義と義理の間に苦しみ、泣きながら逃亡した者もいますし、また現実に直面して考えを改める者もいました。伊右衛門もそんな一人だったのです。「赤穂城断絶」では困窮のうちに大石に恨み言を残して死んでいく橋本平左衛門という浪士が印象的でした。これが伊右衛門のモデルです。そして「赤穂城断絶」で橋本を演じた近藤正臣が伊右衛門の父を演じています。
津川雅彦演じる大石内蔵助は従来の忠義の志というより、策謀家として描かれています。当時、江戸の町はいつ赤穂の侍が仇討ちを果たすかの話題で持ちきりで吉良家の方も相当に用心をしていました。勢いで果たせるものではなかったのです。失敗は許されない仇討ちだったのですから。
見せ場は高岡早紀の「やーっ!!!」じゃなくて、やはりお岩さんが毒を飲むシーンと赤穂浪士の決起の宴と伊右衛門の婚礼が同時間軸で進むあのシーンでしょう。当初、ここは「東海道四谷怪談」の芝居を伊右衛門とお岩さんが一緒に客席に座って、自分たちのドラマが舞台の上で進行していくのを見るという設定にする予定だったようです。深作監督自身も「できていたら、すごいことを考えたなとお客は見てくれたと思うんですけど、ただのカットバックでやらなきゃなんないというときに、本当に泣きたくなくなった」と述べています。でもこのカットバックも充分、見応えがある。この映画ね、すごい複雑で登場人物もたくさん出てくるんですがテンポがすごく良くてぐいぐい引き込まれる。
そしてあのラスト。吉良の首が落ちた時、生と死の間をさまよっていた伊右衛門は黄泉の世界に旅立つ。やはり彼の人生は討ち入りと共にあったのだ。お岩さんを連れて歩いていくシーンには自らの希望通りに生きれなかった男の悲しみを見たようで泣きそうになった。
監督:深作欣二 脚本:深作欣二、古田求 音楽:和田薫 美術:西岡善信
出演:荻野目慶子、高岡早紀、津川雅彦、石橋蓮司、六平直政、近藤正臣、渡瀬恒彦、名取裕子、真田広之、蟹江敬三、渡辺えり子、火野正平、佐藤浩市
詳しくは下記のアドレスを見ていただきたいのですが
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/fiesta/friends/cinema/sakuhin2/sakuhin465.html
忠臣蔵と四谷怪談を組み合わせるというのは奇抜な印象を受けますが、江戸時代に遡りますとこの二つの物語は全く無関係ではなかったようです。この芝居は昔から交互に上映されることが多く、それから鶴屋南北の書いた「東海道四谷怪談」では伊右衛門は判官の家来でお岩さんの父親も判官の家来という設定になっています。当時、忠臣蔵は人気抜群のお芝居でその人気にあやかろうというものもあったと思います。「血煙高田馬場」なんかも後に討ち入りに参加した堀部安兵衛が主人公だからあんなに人気出たんだろうし。何にしても四谷怪談と忠臣蔵の合体というのは全くのデタラメというわけでもなく、深作監督ももちろんそのことを意識していた。
元禄14年。江戸城松の廊下で刃傷騒ぎを起こした浅野内匠頭(真田広之)は切腹、赤穂藩はお取り潰しとなった。いくらなんでも横暴。喧嘩両成敗ではないのか、殿のご無念は如何ばかりか。赤穂城において血気を口走る堀部安兵衛(渡瀬恒彦)らを迎えての会議で城代家老・大石内蔵助(津川雅彦)は反対し、「仇討ちはしたくない。今は」と言い放つのだった。かくして赤穂藩は断絶。侍は浪人となった。大石は京都の山科に転居して妻を離縁しての芸者遊び三昧。浪士達は方々に散っていった。赤穂藩に召抱えられたばかりの民家伊右衛門(佐藤浩市)もまた、父親より受け継いだ琵琶をかきならしての門付けに立つ毎日であった。ある日、湯女のお岩さん(高岡早紀)が彼に興味を持った。やがて二人は恋に落ち、一緒に暮らし始める。やがて、大石より決起の知らせが入るが伊右衛門はお岩さんと所帯を持つことを選ぶ。しかしそれは長く続かなかった。。。彼は吉良家の重臣伊藤喜兵衛(石橋蓮司)の娘・梅(荻野目慶子)に惚れられており、婿入りすることで仕官することを考えていた。。
初めてテレビで見た時にはキーキー騒ぎまくる荻野目慶子とか石橋蓮司の「あたし、死んじゃうっ」とか渡辺えり子のお歯黒とか(゜∀゜)アヒャな蟹江敬三とかが目について変な映画だなと思ったもんですが、何回か見ると深作監督が何をやりたかったのかが見えてくる。やはり深作がやりたかったのは「赤穂城断絶」と同じでやはり「仇討ちできなかった男」の悲しみでしょう。浅野の殿様が切腹した当時、多くの家来が仇討ちを心に誓いました。が、結局集まったのは47人。その47人に入れなかった者の中には忠義と義理の間に苦しみ、泣きながら逃亡した者もいますし、また現実に直面して考えを改める者もいました。伊右衛門もそんな一人だったのです。「赤穂城断絶」では困窮のうちに大石に恨み言を残して死んでいく橋本平左衛門という浪士が印象的でした。これが伊右衛門のモデルです。そして「赤穂城断絶」で橋本を演じた近藤正臣が伊右衛門の父を演じています。
津川雅彦演じる大石内蔵助は従来の忠義の志というより、策謀家として描かれています。当時、江戸の町はいつ赤穂の侍が仇討ちを果たすかの話題で持ちきりで吉良家の方も相当に用心をしていました。勢いで果たせるものではなかったのです。失敗は許されない仇討ちだったのですから。
見せ場は高岡早紀の「やーっ!!!」じゃなくて、やはりお岩さんが毒を飲むシーンと赤穂浪士の決起の宴と伊右衛門の婚礼が同時間軸で進むあのシーンでしょう。当初、ここは「東海道四谷怪談」の芝居を伊右衛門とお岩さんが一緒に客席に座って、自分たちのドラマが舞台の上で進行していくのを見るという設定にする予定だったようです。深作監督自身も「できていたら、すごいことを考えたなとお客は見てくれたと思うんですけど、ただのカットバックでやらなきゃなんないというときに、本当に泣きたくなくなった」と述べています。でもこのカットバックも充分、見応えがある。この映画ね、すごい複雑で登場人物もたくさん出てくるんですがテンポがすごく良くてぐいぐい引き込まれる。
そしてあのラスト。吉良の首が落ちた時、生と死の間をさまよっていた伊右衛門は黄泉の世界に旅立つ。やはり彼の人生は討ち入りと共にあったのだ。お岩さんを連れて歩いていくシーンには自らの希望通りに生きれなかった男の悲しみを見たようで泣きそうになった。
監督:深作欣二 脚本:深作欣二、古田求 音楽:和田薫 美術:西岡善信
出演:荻野目慶子、高岡早紀、津川雅彦、石橋蓮司、六平直政、近藤正臣、渡瀬恒彦、名取裕子、真田広之、蟹江敬三、渡辺えり子、火野正平、佐藤浩市
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