なかなか忙しくて更新できませぬ。深作まつりももう随分止まってるし。。書く気が失せたわけではないのですが、作品自体が見れておりません。まあもう少しお待ちを。。いずれ、どこかで帳尻は合わせるつもりです。

 で今日ご紹介するのは遅くなりましたが釣りバカ日誌シリーズ最新作「釣りバカ日誌14 お遍路大パニック」。監督は「サラリーマン専科」シリーズの朝原雄三。山田洋次のお弟子さんで「男はつらいよ」「学校」「たそがれ清兵衛」の助監督をやっています。そのせいか、今回の「釣りバカ」は「男はつらいよ」にそっくり。まあ脚本は山田洋次、朝間義隆のコンビなのもあると思うけどね。

 「釣りバカ日誌」シリーズは元々「男はつらいよ」シリーズの併映作品として平成元年からスタートしました。「男はつらいよ」は最後まで松竹最大のドル箱でピンでお客を呼べた(質的に素晴らしかったわけではない)のですが、少しさびしい。おまけもつけてやれ、と。「1」「2」がそこそこ評判がよかったのでシリーズ化が決定、「7」まで「男はつらいよ」の併映作品として「釣りバカ」は製作されています。いずれ来る「?デー」に備えて「男はつらいよ」の後釜を作ろうと考えていたのだと思います。

 「男はつらいよ」終了後、森崎東の「スペシャル」と「さすらいのトラブルバスター」(井筒和幸の失敗作)との併映を経て「釣りバカ日誌」は「9」より松竹の夏の顔としてピンで公開されます。「花のお江戸の釣りバカ日誌」まで栗山富夫がメガホンを取り、「11」「12」「13」は松竹若手のホープ本木克英がメガホンを取りました。今では松竹の目玉になっているのは皆様、ご存知のとおりです。何しろ週刊文春によると高知県にロケ代として6000万を請求したとか。えらくなったもんです。

 釣りバカ日誌の醍醐味とはぐうたら社員のハマちゃんに仕事一筋で趣味などに見向きもしなかったスーさんが憧れて釣りに興味を抱いていくところにあります。仕事においてハマちゃんはさっぱりですが、本人はいたって楽しそうです。今までのサラリーマン喜劇において、その笑いを誘うものは出世に憧れるあまり、たいこ持ち状態の課長さんに奥さんの目を盗んでの浮気(スナックに入り浸る程度のもの)、嫁さんに頭があがらない旦那の奮闘劇です。社長シリーズがその典型と言えますね。

 それに対し、会社での出世ばかりが幸せじゃないよ、という問いかけをしたのが「釣りバカ」シリーズだったのです。バブルの狂騒を経て、今まで身を粉にして働いてきた会社からあっさりとクビ飛ばされる時代。ハマちゃんのような生き方もいいかも?と思う人が多く出てきたのです。まあはっきり言うと私もそうです。映画観る金を稼ぐ為に働いてるみたいなところはあります。ごめんね。

 ただ、この時代においてハマちゃんみたいな社員はリアルに存在するのだろうか?ハマちゃんは本当に遊んでばっかりなのか?鈴木建設は今一番厳しいと言われる中堅ゼネコンじゃないか、ハマちゃんみたいな社員がいる余裕があるのか?本木監督がメガホンを取った「12」「13」が従来より、やや趣きを変えるのはこの問題に挑戦したからです。

 従来のシリーズに全くなかったとは言いませんがハマちゃんにサラリーマンっぽいところを持たせてみたのです。例えば「12」では仕事中に釣具のメンテナンスをする超駄目社員ですが釣り仲間のネットワークを使って大きな仕事を取ってきます。続く「13」では大仕事を一人で取ってくる”敏腕”営業マンで美人の同僚を得意先のドラ息子の見合いに連れて行こうとする”狡猾”なところも見せています。これは恐らく、当時ドラマでヒットしてた「明日があるさ」の影響が大きいと思われます。サラリーマンのつらさ、きびしさみたいなものがないと見ている人がシラけると。

 ただこの路線も「明日があるさ MOVIE」の大コケもあったので映画にして見に来る人がいるのか、という疑問も残ります。

 それに対し、今度の朝原演出は前作のそうした部分を一部残しながらも従来の路線にもう一度戻っています。始めに書いたとおり、「男はつらいよ」にそっくりで脚本も従来の焼き直しです。正直、今回の脚本はひどい。引きこもりの子供がハマちゃんと一緒に釣りに行くことで元気になるというのは前作と全く同じだし、母親がトラック運転手という設定は「学校?」と全く同じです。山田洋次も朝間義隆もこんな手抜き仕事するぐらいならもう降りたらどうかね?はっきり言ってもう限界で?

 今回の作品はつまらんとは言わないが、ありがちだし、これが松竹の目玉となるとちとしんどいし、さびしい。皮肉ながら1000円という額は適正なのかもしれない。それから「釣りバカ」が迎える危機は三国さんの問題だろう。前作もそうだったのだが、出番がほとんどなかった。やがて三国さんが引退したら、スーさん役はどうするんだ?「釣りバカ」自体が続くのか?松竹という会社はまた同じことを繰り返すのか?今回の「釣りバカ」はそうした様々な課題が浮き彫りになった作品になったと思います。朝原監督、大変やぞ。ただ、三宅祐司と西田敏行のミュージカルシーン(谷啓が出てます。)は面白かったし、しっかりとした映画を作れる人だと思うので山田洋次に遠慮しないでのびのびと撮ってください。期待してます。

監督:朝原雄三 脚本:山田洋次、朝間義隆 美術:須江大輔
出演:西田敏行、三国連太郎、三宅祐司、笑福亭仁鶴、間寛平、斉藤洋介、加藤武、さとう珠緒、濱口優、國村準、鶴田忍、笹野高史、中本賢、西田尚美、奈良岡朋子、松村邦洋、浅田美代子、高島礼子、谷啓

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