すごい映画というのは時代を超えて人の心を打つ。「白い巨塔」は正にそんな映画だと言えると思う。二時間半という長さに関わらず、全く飽きることがありませんでした。この映画は1966年に田宮二郎で撮られましたが、この12年後の1978年にもフジテレビで同じく田宮二郎で作られています。なお、このドラマは田宮二郎にとっては最後の作品になりました。「白い巨塔」放送期間中に彼は命を絶ってしまったのです。

 主人公は名門浪速大学第一外科の助教授である財前五郎。(田宮二郎)彼は幼い頃に父を無くし、母一人子一人で苦学しながら医学部を卒業した。その後、彼は裕福な開業医の婿養子となり、浪速大学の助教授となります。雑誌に取材されるなど若くして頭脳は聡明で臨床の腕も立つ、たいした男であった。彼の所属する第一外科の東教授(東野英治郎)は今年末での退官が決まっており、後任は財前五郎しか考えられなかった。が、東教授は彼の自信過剰、傲岸不遜のところを嫌っていた。彼は財前に代わる教授候補を日本医師界の重鎮である船尾教授(滝田修)に頼む。

 一方、財前も東がすんなりと教授職を譲るつもりがないことを見抜くと早速に動き始めた。まずは浪速大学の実力者で次期学長候補でもある鵜飼部長(小沢栄太郎)を味方につける。医局は既に彼の手の中にあった。やがて教授会が開かれ、東の後任として船尾教授に推薦された菊川、財前五郎、そして財前の先輩である葛西が候補として選ばれた。一方、財前は友人である里見助教授(田村高廣)が担当していた佐々木の治療を行っていた。助手は手術を主張する彼に転移の可能性から再検査の必要性を訴えるが財前は無視。手術は見事に成功したが患者の容態は戻らなかった。

 が、彼にとってはそれどころでなかった。投票は三人とも、過半数に届かず。菊川と財前の決選投票への持ち越しとなった。財前の義父は金に糸目をつけなかった。一方、菊川サイドも船尾教授が陣頭指揮をとり、激しい根回しが繰り広げられた。が、一人解剖学の権威、大河内教授(加藤嘉)はどちらに転ぶこともなかった。買収しようとした財前サイドはたたき出される。選挙の結果は財前がわずかな差で勝利。泥試合は遂に終わった。が、彼の担当した佐々木の容態が急変して、死んでしまう。

 選挙後、東は引退。遂に財前は教授となる。が、新聞に彼の名前がおどった。何と佐々木の遺族が彼を医療ミスで訴えたのだった。鵜飼部長は進退伺いを出すことを要求するが、彼は拒否。徹底的に裁判で争うことを選択したのだった。

 山崎豊子の原作を橋本忍が脚本化。戦後、一貫して左翼映画を撮り続けてきた山本薩夫が大映でメガホンを握りました。この映画は1966年のキネマ旬報最優秀作品賞を受賞しています。テンポはそんなによくないのですが、話が進むに連れて展開が読めなくなってくる。ふと気づくと映画にどっぷり入り込んでいました。自信たっぷりの中にもどこかさびしさを漂わせる田宮二郎がいい。脇役には東野英治郎、滝沢修、加藤武、加藤嘉などの曲者が揃っています。特に加藤武は両者を手玉にとる教授として登場。憎たらしいがどこか小気味いい。東野さんは教授をやるには少し品がないのですが、そこがまた一筋縄には行かない曲者っぷりをうまく出せていたと思う。

 田村高廣が少し、弱かったような気がする。この人と田宮を対立軸で出せていけたらよかったのだろうが、田村の印象が薄くて東野と田宮の対立が軸になっている。そう見るとあまり田宮二郎って悪く見えないんですよね。むしろ彼が学長選挙に勝つところでは爽快感さえあるのだ。悪い奴ばかりの医学界で唯一、気を吐いたのが加藤嘉。どこか、飄々とした人ですがテコでも動かん頑固者ぶりが、カッコよくてどこか微笑ましい。少し安心する。

 今から数十年前の映画ですが扱われている問題は決して古くはありません。医療ミスの問題は今も大きな問題になっています。どの病院がいいのか、というのも人々の大きな関心ごとですしね。冒頭に行われる大名行列さながらの「教授の回診」は今も大学病院ではおなじみの光景で病院内の権威主義、事大主義は昔の話ではありません。昨今、医療界の問題を題材にした漫画がめちゃくちゃ売れてて、またそれのドラマ化が高視聴率を叩き出したのも記憶の新しいところです。

 この10月よりドラマ版「白い巨塔」をフジでリメイクするようです。フジでなあ。。TBSなら安心なんだけど。。出演陣はまあがんばったかなと思うが(かたせ梨乃、及川光博を選ぶセンスはわからんが)、脚本は井上由美子だからそんな酷いことにはならんと思うけど。。

参考→http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/report/030819.html

監督:山本薩夫 製作:永田雅一 原作;山崎豊子 脚本:橋本忍 音楽:池野成
出演:田宮二郎、加藤嘉、藤村志保、滝沢修、田村高廣、下条正巳、鈴木瑞穂、石山健二郎、船越英二、加藤武、小川真由美、東野英治郎

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