深作まつり第二十四夜「20世紀黙示録 もの食う人びと」〜追憶のチェルノブイリ〜
2003年7月28日 下の原稿は昨日に書きあがってたんですが、サーバーがダウンしてたんで更新できませんでした。更新が遅れまくって申し訳ない。なお、これからますます遅れがちになりそうなんで悩んでおります。
「バトルロワイアル?」が大ヒットのようでございます。京都の大宮東映は相変わらず、ガラガラなんだけどね。しかも「バトルロワイアル?」の小説版もよく売れているようで。あんなスカスカの映画を小説にしたら読めたもんじゃないと思うのですが。グッズもよく売れているみたいで不作続きの東映にしてもホクホクでしょう。前評判も悪く、映画雑誌も出来については否定的に見ているところがほとんどですが、それでも10代を中心にヒットしてしまった、というのはどういうことなんでしょう。携帯と美容整形ばかりに金を突っ込む、今の10代に映画への財布を開かせるのはかなり難しいと思うのですがやはり、我々大人には何かわからない魅力というのが「BR?」にはあるのかもしれません。それか前作がよほど強く、少年少女の心をつかんだか。もはや子供という言葉で表現されることのないほど、年を食ってしまった私には少し羨ましいような気がします。まあ「パールハーバー」がヒットする国ですからな、この国は。何でもありなんかもしれません。
今日、紹介するのは1997年に名古屋テレビで製作された「20世紀黙示録 もの食う人びと」。深作監督が唯一撮ったドキュメンタリー作品です。日曜日の昼下がりに流された放送でビデオ化されておりませんので見るのは極めて困難だと思います。私が見たのは東映チャンネルで今月放送されたものです。原作は辺見庸の書いた「もの食う人びと」。この中より3編を選んで映像化しています。この本はベストセラーになりました。はっきり言って辺見庸って嫌いなんですけどね。大谷昭宏ほどひどくはないけど、夢想無責任左翼の最たるもので発言の一つ一つがアホらしくて相手にしたくない。ブッシュの敵ですか、そらよかった。向こうは君の事を知らないと思うけど。永遠の不服従でも何でもしときなさいって。世間ではそれを思考停止とも呼ぶことを誰か教えてあげなさい。でもこの作品は私も読んでおって大変、面白かったです。ちなみに「赤い橋の下のぬるい水」の原作もこの人。
深作監督は左翼の受けがよく、竹中労なんかとも仲がよかった。辺見庸も深作の大ファンで「チンピラが親分に手をつかれたようなもので、否も応もない」と映像化の権利をあっさりと許してます。最も昔の映画評論というのは、映画の面白さ云々よりも如何に反体制を描いているか、ということを念頭においてる評論家が偉くて、深作が「誇り高き挑戦」、「軍旗はためく下に」とかで左翼が喜ぶような映画を撮った為に左翼映画評論家からは評価がめちゃくちゃ高かった。誰とは言わねえ、篠田とは言わねえが、つまらぬ男がつまらねえ映画を連発しても、映画を撮り続けられたのもまあ結局そういうことなんだろう。
深作監督自身は70年代、やや学生運動に肯定的なことを言ってますがそれはそうしたパワーに興味を持ってただけで思想に惚れていたわけではなかったと思う。ただ、まあ時代が過ぎるに従って、国全体が右に傾いていく中で左翼的な言辞が増えてきたというのはやはりこの人は左翼、というか反米というか、反体制だったんだなあと思う。「映画監督・深作欣二」によるとちょうどこの頃、癌が見つかっており、やりたいことをやっておこうと思ったんだろうか。私は深作監督の作品は好きですが、晩年のテロを褒め称えたりとかするその発言には正直ついていけないし、話半分に聞いています。「バトロワ?」の出来を見てもどこまで本気だか、わからんからね。
映像化されたのは、チェルノブイリ、ウガンダのエイズ、韓国従軍慰安婦の3つ。リポーター役の石橋蓮司が実際に現地に飛んで、色々な人の話を聞いてメシを食う。つまり辺見が体験したことをもう一回やる、というわけ。本来なら、監督自身がレポーター役を兼ねるのが常道なのでしょうが、「自分の声を聞くのが厭だ」ということで石橋蓮司がレポーターになっていました。当然、石橋蓮司は監督から何らかの指示を受けてその部分はやはりフィクションになってるわけですから少し変。石橋蓮司は子役からの非常に器用な役者ですから、そこはうまく演じていたので気にはならなかったですが、そこがやっぱり劇映画監督の限界だったのかもしれません。そういや深作監督の映画で演技未経験の素人ってあんまり出てないもんね。初期の安藤昇ぐらいか、と言うたら失礼にあたりますな。(笑)
一番よかったのはやはりチェルノブイリ。監督自身もチェルノブイリに行きたくてこの企画を立ち上げたぐらいですから、なかなか面白かったです。あの事件が起こってから”死の土地”と化したあの地に数人の老人が住み着いている。”サマーショル”、ロシア語で”強情な人びと”と呼ばれる彼らに出会い、そして現地で取れたジャガイモ、魚(!)をもりもり食べる。もちろん、政府お墨付きの「食うたら死ぬで」の食い物。出された石橋さんは当初は戸惑いますが、腹をくくったか、「うまい、うまい」と食いまくる。別に紫色の芋でもないし、ひん曲がった魚でもないんで最期は結局、想像力の問題になります。スタッフも監督も普通に食事していたそうです。監督曰く「(癌が見つかったんで)もう健康体じゃないからいいんだと。」そりゃ、あんたはいいかもしれんが。。でも石橋蓮司もいまだに元気に仕事してるんでなんともなかったんでしょう。”サマーショル”は年寄りばかりなのですがあの年になると放射能で死ぬのか、老衰で死ぬのかわからん。そういう捨て鉢みたいなもんもあるときっとあるぞ。
それに対してウガンダのエイズ渦は悲惨の一言に尽きます。何でも10人に1人とかそんなレベルの感染率で一朝一夕にどうなるもんでもない。エイズとHIVは厳密に言うと違い、HIVの人でも発症せずに生きる人もいるので必ずしも死ぬわけではない、、というのはやはり気休めとしか思わんわな、感染者には。で、国がエイズ防止の為にコンドームを配るんだが、それを片っ端からカトリックが回収しちゃう。曰く「確かにエイズは怖いが、神はセックスを避妊は神の冒涜だ」と。勝手な言い分だと思うが感染者の世話してるのはこの人達なんで批判ばかりもできない。世界には100の言い分があることをドキュメンタリーは教えてくれる。「従軍慰安婦」の項も然り。
「バトルロワイアル?」が大ヒットのようでございます。京都の大宮東映は相変わらず、ガラガラなんだけどね。しかも「バトルロワイアル?」の小説版もよく売れているようで。あんなスカスカの映画を小説にしたら読めたもんじゃないと思うのですが。グッズもよく売れているみたいで不作続きの東映にしてもホクホクでしょう。前評判も悪く、映画雑誌も出来については否定的に見ているところがほとんどですが、それでも10代を中心にヒットしてしまった、というのはどういうことなんでしょう。携帯と美容整形ばかりに金を突っ込む、今の10代に映画への財布を開かせるのはかなり難しいと思うのですがやはり、我々大人には何かわからない魅力というのが「BR?」にはあるのかもしれません。それか前作がよほど強く、少年少女の心をつかんだか。もはや子供という言葉で表現されることのないほど、年を食ってしまった私には少し羨ましいような気がします。まあ「パールハーバー」がヒットする国ですからな、この国は。何でもありなんかもしれません。
今日、紹介するのは1997年に名古屋テレビで製作された「20世紀黙示録 もの食う人びと」。深作監督が唯一撮ったドキュメンタリー作品です。日曜日の昼下がりに流された放送でビデオ化されておりませんので見るのは極めて困難だと思います。私が見たのは東映チャンネルで今月放送されたものです。原作は辺見庸の書いた「もの食う人びと」。この中より3編を選んで映像化しています。この本はベストセラーになりました。はっきり言って辺見庸って嫌いなんですけどね。大谷昭宏ほどひどくはないけど、夢想無責任左翼の最たるもので発言の一つ一つがアホらしくて相手にしたくない。ブッシュの敵ですか、そらよかった。向こうは君の事を知らないと思うけど。永遠の不服従でも何でもしときなさいって。世間ではそれを思考停止とも呼ぶことを誰か教えてあげなさい。でもこの作品は私も読んでおって大変、面白かったです。ちなみに「赤い橋の下のぬるい水」の原作もこの人。
深作監督は左翼の受けがよく、竹中労なんかとも仲がよかった。辺見庸も深作の大ファンで「チンピラが親分に手をつかれたようなもので、否も応もない」と映像化の権利をあっさりと許してます。最も昔の映画評論というのは、映画の面白さ云々よりも如何に反体制を描いているか、ということを念頭においてる評論家が偉くて、深作が「誇り高き挑戦」、「軍旗はためく下に」とかで左翼が喜ぶような映画を撮った為に左翼映画評論家からは評価がめちゃくちゃ高かった。誰とは言わねえ、篠田とは言わねえが、つまらぬ男がつまらねえ映画を連発しても、映画を撮り続けられたのもまあ結局そういうことなんだろう。
深作監督自身は70年代、やや学生運動に肯定的なことを言ってますがそれはそうしたパワーに興味を持ってただけで思想に惚れていたわけではなかったと思う。ただ、まあ時代が過ぎるに従って、国全体が右に傾いていく中で左翼的な言辞が増えてきたというのはやはりこの人は左翼、というか反米というか、反体制だったんだなあと思う。「映画監督・深作欣二」によるとちょうどこの頃、癌が見つかっており、やりたいことをやっておこうと思ったんだろうか。私は深作監督の作品は好きですが、晩年のテロを褒め称えたりとかするその発言には正直ついていけないし、話半分に聞いています。「バトロワ?」の出来を見てもどこまで本気だか、わからんからね。
映像化されたのは、チェルノブイリ、ウガンダのエイズ、韓国従軍慰安婦の3つ。リポーター役の石橋蓮司が実際に現地に飛んで、色々な人の話を聞いてメシを食う。つまり辺見が体験したことをもう一回やる、というわけ。本来なら、監督自身がレポーター役を兼ねるのが常道なのでしょうが、「自分の声を聞くのが厭だ」ということで石橋蓮司がレポーターになっていました。当然、石橋蓮司は監督から何らかの指示を受けてその部分はやはりフィクションになってるわけですから少し変。石橋蓮司は子役からの非常に器用な役者ですから、そこはうまく演じていたので気にはならなかったですが、そこがやっぱり劇映画監督の限界だったのかもしれません。そういや深作監督の映画で演技未経験の素人ってあんまり出てないもんね。初期の安藤昇ぐらいか、と言うたら失礼にあたりますな。(笑)
一番よかったのはやはりチェルノブイリ。監督自身もチェルノブイリに行きたくてこの企画を立ち上げたぐらいですから、なかなか面白かったです。あの事件が起こってから”死の土地”と化したあの地に数人の老人が住み着いている。”サマーショル”、ロシア語で”強情な人びと”と呼ばれる彼らに出会い、そして現地で取れたジャガイモ、魚(!)をもりもり食べる。もちろん、政府お墨付きの「食うたら死ぬで」の食い物。出された石橋さんは当初は戸惑いますが、腹をくくったか、「うまい、うまい」と食いまくる。別に紫色の芋でもないし、ひん曲がった魚でもないんで最期は結局、想像力の問題になります。スタッフも監督も普通に食事していたそうです。監督曰く「(癌が見つかったんで)もう健康体じゃないからいいんだと。」そりゃ、あんたはいいかもしれんが。。でも石橋蓮司もいまだに元気に仕事してるんでなんともなかったんでしょう。”サマーショル”は年寄りばかりなのですがあの年になると放射能で死ぬのか、老衰で死ぬのかわからん。そういう捨て鉢みたいなもんもあるときっとあるぞ。
それに対してウガンダのエイズ渦は悲惨の一言に尽きます。何でも10人に1人とかそんなレベルの感染率で一朝一夕にどうなるもんでもない。エイズとHIVは厳密に言うと違い、HIVの人でも発症せずに生きる人もいるので必ずしも死ぬわけではない、、というのはやはり気休めとしか思わんわな、感染者には。で、国がエイズ防止の為にコンドームを配るんだが、それを片っ端からカトリックが回収しちゃう。曰く「確かにエイズは怖いが、神はセックスを避妊は神の冒涜だ」と。勝手な言い分だと思うが感染者の世話してるのはこの人達なんで批判ばかりもできない。世界には100の言い分があることをドキュメンタリーは教えてくれる。「従軍慰安婦」の項も然り。
コメント