先週の「深作まつり」を休んでしまったので今週は二つ更新します。やっとのことで山根貞男の「映画監督・深作欣二」も発売されましたので今後、これを参考にしながら書いて行きたいと思います。なお、ホームページの方もですが「深作まつり」を単独コーナーとして独立させました。別に何が変わったわけではありませんが、また見ていただけるとありがたいです。こうやって読み返してみると何個か、書き直したい感想もあるんだけどね。まあ暇を見つけてやります。

http://www.nkyo.net/~tetorapot/fukasaku_all1.htm

 スカパーの東映チャンネルでは今、深作欣二の特集をやっております。なかなかビデオにならない作品をやってくれるのが嬉しい。おかげでどこにあるのか、わからずに入手を諦めかけていた数作品の感想も書けそうです。いよいよ、足がぬけられなくなってきた。一体、いつになったら終わるか、「深作まつり」。一年は続くな。

 さて今週の深作まつり二十三夜目は松方弘樹主演の「恐喝こそはわが人生」。1968年に撮られた作品です。主演が松方で共演は江原真二郎に丹波哲郎、室田日出男、内田良平で脚本はいつもの神波史男と60年代後半の”いつもの深作映画”と思いきや、一つだけ違う。

 この映画を製作したのは東映ではなくて松竹。何しろ併映は野村芳太郎監督の映画です。松方も東映以外の映画に出たのは始めてだったようです。この時期、深作監督は仁侠映画を撮ってみたり、「黒蜥蜴」を撮ってみたり、いろんな映画に挑戦していますが、それは松竹にしても同じで様々な可能性を探る上で東映の監督、脚本、キャストでこういう作品にも進出していたのでしょう。結局は元の鞘に収まるわけですが。

 この作品はチンピラの映画です。松方は仲間のジョー山中、佐藤友美、室田日出男を使って相手の弱みを握り、金を強請って生活しています。強請りと言ってもみみっちいもんで密造酒を扱う酒屋を脅したりする程度の悪党でもない、チンピラ達。こうしたロクでもないチンピラが総裁選にからんだ汚職事件のネタをつかんでしまう。こんなヤマなんて棄ててしまえばいいのに、彼らは徐々に深入りしてとうとう仲間が殺されてしまう、というのが大まかなストーリーになっています。

 松方自身のナレーションやスチール写真で回想シーンを作ってしまうところやにスピード感溢れる演出など「狼と豚と人間」の頃から確立された深作演出も健在。90分ほどでサラリとまとめています。

 深作監督はこの作品について「ある種の欲求不満というものを描きたかった。それを仮託するにはチンピラの方がよかった」と述べています。ここに出てくる欲求不満というのは仁侠映画の義理人情とも違い、正義感とも違う、世の中に対する鬱憤のようなものです。自分に直接、関係なくてもなんか面白くない感情。

 頭も回るし、計算高い松方がどうしてこの事件に深入りしたかというとこの種の欲求不満がこうさせたのでしょう。「俺をなめるな」「テメエら、好きなようにしやがって」というこの鬱憤は暴力になって吐き出されます。「狼と豚と人間」においても見えていた、「行き場のない欲求不満」がこの映画のテーマに置かれています。

 私は松方が好きで私が時代劇に興味を持つようになったのは彼のやっていた「遠山の金さん」でした。めちゃくちゃカッコいいのに、悪役を演じるとピタリとよく合う。深作作品においては「柳生一族の陰謀」の家光とか「仁義無き戦い 完結編」のボケきったヤクザとかの一風変わった役もとっても映えます。

 しかしこの映画ではまだそうした”毒”がなくて、どこか軽い感じでどこか、野暮ったくてバカに見えちゃう。そこもまた魅力で昔、こんな演技してたんだと感心しましたけどね。室田日出男は途中で逃げちゃうのですがどこか食えない感じがいい。佐藤友美もまさかあんなに活躍するとは思わなかったなあ。意外でございました。

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