深作まつり第十九夜「北陸代理戦争」〜越中強盗、加賀乞食、越前詐欺師〜
2003年6月19日 今日、ご紹介するのは「北陸代理戦争」。先ほど出版された「映画監督 深作欣二の軌跡」によると本来、この企画は「新仁義無き戦い」シリーズの一本として立てられたのですが、菅原文太が降板。主役が松方弘樹になったため、急遽この題名に変わりました。
またこの映画はトラブル続きで予告編にも出演していた準主役の渡瀬恒彦が撮影中に事故を起こして瀕死の重傷を負いました。(ちなみに最後のあの場面でジープから落ちたらしい。渡瀬恒彦の役は伊吹五郎がやった。)もちろん、この話も実録もので松方が演じた川田のぼるのモデルとなったヤクザは公開直後に射殺されたそうです。警察からの圧力もあり、大変難産な作だったようです。
福井は富安組の親分、安浦は怒り心頭に発していた。組員の川田である。競輪の権利を譲れ、という川田に逆らった安浦は雪の海岸に首だけ出して埋められた。川田はその横をブンブン、ジープで駆け抜けるのである。びびった安浦は引退に追い込まれた。親に逆らうとはなんちゅう奴じゃ!と安浦は弟分の万谷と相談して川田を抹殺しようとする。
時はヤクザ戦国時代。関西最大暴力団浅田組の急先鋒、金井組は鳥取を制し、北陸に入ろうとしていた。万谷は金井と結んで川田を襲撃。川田は瀕死の重傷を負うが、バーのママ、中井きくの兄弟に匿われる。もちろん、黙ってやられる川田じゃない。回復すると万谷を襲撃。見事に腕をぶった切る。しかし北陸はすっかり、金井組の手に落ちていた。金沢では中井きくの弟である、たかしが親を殺して金井組の一員になっていた。窮地に陥った川田は金井のライバルである岡野と結ぼうとするが。。
冒頭の「雪の海岸に首だけ出して埋める」からとにかく凄惨な話です。松方を含め、どいつもこいつも食えない奴ばっかり。出色だったのは野川由美子かな。自らの保身の為にコロコロ男を変える節操の無さが何とも頼もしい。深作映画に出てくる女で一番たくましいです。これの弟が地井武男。保身の為に実の妹を拉致します。こいつはただの外道。もっと凄いのがさらわれた妹。自分の兄貴を出刃で刺し殺す。この中井兄弟の生き様だけでもおなかいっぱい。
ハナ肇と西村晃も面白い。「仁義無き戦い」で言うとハナ=打本、西村=山守と考えるとわかりやすいです。西村晃は「仁義無き戦い」撮影の始まる時に風邪で寝込んでいた金子信雄の代役として名前があがっていました。ちなみに有名な逸話ですが、金子信雄は西村が候補に上がった話を聞きつけて、病床から這って出演を希望したそうです。この映画では山守を演じられなかった鬱憤を晴らすか、のように(本人がやりたかったか、どうかは知りませんが。)独特の演技を披露してくれます。
松方は深作監督の作品に多く出演していますが主演したのはこれと「恐喝こそわが人生」の二本だけ。(意外)この役は文太よりも松方の方がぴったりだったと思います。腕っぷし一本のように見えても実は策謀家。卑怯なことでも平気でやってのけるヤクザは何か、坂井の鉄っちゃんに共通するものがあります。「仁義無き戦い」から始まった東映実録路線も遂にこの作品で打ち止め。同時に深作監督もこれ以後、一度もヤクザ映画を撮りませんでした。実録路線というのは深作に始まり、深作に終わったというべきでしょう。
衝撃のラストはあえて述べませんので、ぜひぜひビデオでお確かめください。6月21日にDVDも発売されるよ。
今週の素敵過ぎる一言
「北陸とはこういうところなんです。茶碗も盃も関係ない。その気になれば親でも食い殺す。生きるために手段を選ばないのが北陸人です。」
→福井、石川、富山の人はお互いをバカにしあうそうです。福井の人間は「富山、石川と一緒にされたくない」、富山の人間は「福井、石川とは一緒にされたくない」石川の人間も然りです。映画でも「越中強盗、加賀乞食、越前詐欺師」という凄い言葉が出てきます。私は北陸の友人がいないのですが、こんなん言われたら地元の人は怒るぞ。
またこの映画はトラブル続きで予告編にも出演していた準主役の渡瀬恒彦が撮影中に事故を起こして瀕死の重傷を負いました。(ちなみに最後のあの場面でジープから落ちたらしい。渡瀬恒彦の役は伊吹五郎がやった。)もちろん、この話も実録もので松方が演じた川田のぼるのモデルとなったヤクザは公開直後に射殺されたそうです。警察からの圧力もあり、大変難産な作だったようです。
福井は富安組の親分、安浦は怒り心頭に発していた。組員の川田である。競輪の権利を譲れ、という川田に逆らった安浦は雪の海岸に首だけ出して埋められた。川田はその横をブンブン、ジープで駆け抜けるのである。びびった安浦は引退に追い込まれた。親に逆らうとはなんちゅう奴じゃ!と安浦は弟分の万谷と相談して川田を抹殺しようとする。
時はヤクザ戦国時代。関西最大暴力団浅田組の急先鋒、金井組は鳥取を制し、北陸に入ろうとしていた。万谷は金井と結んで川田を襲撃。川田は瀕死の重傷を負うが、バーのママ、中井きくの兄弟に匿われる。もちろん、黙ってやられる川田じゃない。回復すると万谷を襲撃。見事に腕をぶった切る。しかし北陸はすっかり、金井組の手に落ちていた。金沢では中井きくの弟である、たかしが親を殺して金井組の一員になっていた。窮地に陥った川田は金井のライバルである岡野と結ぼうとするが。。
冒頭の「雪の海岸に首だけ出して埋める」からとにかく凄惨な話です。松方を含め、どいつもこいつも食えない奴ばっかり。出色だったのは野川由美子かな。自らの保身の為にコロコロ男を変える節操の無さが何とも頼もしい。深作映画に出てくる女で一番たくましいです。これの弟が地井武男。保身の為に実の妹を拉致します。こいつはただの外道。もっと凄いのがさらわれた妹。自分の兄貴を出刃で刺し殺す。この中井兄弟の生き様だけでもおなかいっぱい。
ハナ肇と西村晃も面白い。「仁義無き戦い」で言うとハナ=打本、西村=山守と考えるとわかりやすいです。西村晃は「仁義無き戦い」撮影の始まる時に風邪で寝込んでいた金子信雄の代役として名前があがっていました。ちなみに有名な逸話ですが、金子信雄は西村が候補に上がった話を聞きつけて、病床から這って出演を希望したそうです。この映画では山守を演じられなかった鬱憤を晴らすか、のように(本人がやりたかったか、どうかは知りませんが。)独特の演技を披露してくれます。
松方は深作監督の作品に多く出演していますが主演したのはこれと「恐喝こそわが人生」の二本だけ。(意外)この役は文太よりも松方の方がぴったりだったと思います。腕っぷし一本のように見えても実は策謀家。卑怯なことでも平気でやってのけるヤクザは何か、坂井の鉄っちゃんに共通するものがあります。「仁義無き戦い」から始まった東映実録路線も遂にこの作品で打ち止め。同時に深作監督もこれ以後、一度もヤクザ映画を撮りませんでした。実録路線というのは深作に始まり、深作に終わったというべきでしょう。
衝撃のラストはあえて述べませんので、ぜひぜひビデオでお確かめください。6月21日にDVDも発売されるよ。
今週の素敵過ぎる一言
「北陸とはこういうところなんです。茶碗も盃も関係ない。その気になれば親でも食い殺す。生きるために手段を選ばないのが北陸人です。」
→福井、石川、富山の人はお互いをバカにしあうそうです。福井の人間は「富山、石川と一緒にされたくない」、富山の人間は「福井、石川とは一緒にされたくない」石川の人間も然りです。映画でも「越中強盗、加賀乞食、越前詐欺師」という凄い言葉が出てきます。私は北陸の友人がいないのですが、こんなん言われたら地元の人は怒るぞ。
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