本日はアキ・カウリスマキの「過去のない男」。この作品、実はカンヌ映画祭のグランプリ作品でアキ・カウリスマキもめちゃくちゃ有名な監督らしいですが、全然知りませんでした。だってカンヌが推す作品って大多数がつまらん。「ダンサーインザダーク」とか言うクソ映画に賞をやった時点でグランプリ=素晴らしい作品、ではないことを知りました。アカデミー賞もそうなんですがグランプリの作品って5年後に忘れられてる作品ばっかりですもん。「恋に落ちたシェイクスピア」とか皆さん、覚えてますか?

 深夜のヘルシンキ。駅のベンチで座っていた男は暴漢に襲われて、瀕死の重傷を負う。医師も匙を投げてしまうが、奇跡的に蘇生。しかしその代償なのか、彼は記憶を失ってしまう。九九とか物の名前とか日常茶飯事のことは大丈夫なのだが、過去の記憶がさっぱりない。自分の名前も住所もわからない。

 彼を介抱してくれたニーミネンは「人生は前にしか進まない」と彼を励まし、空いているコンテナを紹介してくれる。彼自身も警備員をやりながらコンテナで妻と子供2人の4人で細々と暮らしているのだ。金曜日の夕方、おめかししたニーミネンが彼を食事に誘う。救世軍が無料で食事を振舞ってくれるのだ。そこで彼は救世軍に勤める孤独な中年女のイルマと出会う。

 コンテナにも家賃がある。家賃を稼ぐ為には働かねばならない。職安に向うが、住所も名前も書けない為に職員に「なめるな、ヴォケが」と受付を拒否される。疲れ果て喫茶店に入るが客だと思われず、食事まで恵んでもらう。困り果てた彼はイルマにもらった名刺を頼りに救世軍に助けを求める。イルマは彼のために小奇麗な洋服と仕事を斡旋してくれた。貧しいながらも人生は前に進みかけていた。やがて二人は恋仲になり。。

 監督のカウリマスキは小津の大ファンで自らの墓碑に「生まれては見たけれど」と刻みたいと公言しているそうです。変な奴。何故か映画のワンシーンで日本のナツメロが使われるシーンがあります。なんか水原弘みたいな歌なんですが、これ実はクレイジーケンバンドの「ハワイの夜」と言う歌で最近の歌らしいです。少し、ハマリました。

 溢れる失業者にコンテナで暮らす人々、そのコンテナの元締めを警官がやっているというめちゃくちゃ世界観が楽しい。まあ日本も遅かれ早かれ、こうなるんでしょうが。かなり悲惨な日常なんですが、不思議にそこに悲壮感はない。なんか突き抜けてしまった、あっけらかんな日常がそこにはある。なんか「ぼくんち」に似てる。

 実はとても真面目な映画なのかもしれませんが、救世軍のおエライさんが大真面目に皆の前で歌ったり、汚職警官と男のやり取りとか、「ハワイの夜」が流れるシーンとか笑えるシーンが多かったです。少し、ウルっと来るのは銀行強盗のシーンぐらいか。ストーリーはダラダラと進み、演出にキレはないですが、このヌルい感じが割りに癖になるかも。

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