このページを見ている方はご存知でしょうが、映画芸術403号は深作と笠原の特集となっとります。他の雑誌は主に深作と関係の深かった俳優へのインタビューが多いのですが、この雑誌は脚本家とか監督が深作監督の思い出を語る、という男泣きな本になっています。緒方明に金子修介(もっとがんがれ)、望月六郎、阪本順治に森達也。(!)さらに深作×笠原の幻の企画「実録・共産党」まで載ってるぞ!(これがまた凄い内容)こういう雑誌がキアヌしか表紙に出さんバカ映画出版界に残ってるだけでも感動やぞ!みんな、買おう!

 今日は「暴走パニック 大激突」。「仁義無き戦い」シリーズを撮り終わった深作監督が渡瀬恒彦とピラニア軍団を率いて作った、アクション映画です。ピラニア軍団というのは大部屋俳優を中心にした、威勢のええ集団で室田日出男や川谷拓三、野口貴史、志賀勝、小林稔持なんかが入ってたようです。まあ、実際のところは誰がピラニアというのはよくわかりませんが(1977年に「殺られてたまるか ピラニアの唄」という本が室田日出男と川谷拓三の二人の共著で出版されています。)深作の映画で威勢よく死んでる人と思えばわかりやすいと思います。深作の映画で出るたびに様々な死に方で我々を楽しませてくれる小林稔持が今回もトラックに轢かれて死ぬ壮絶な死にっぷりを見せております。もちろん拓ボンも日出男も志賀勝も出演じゃ。

 気のいいバーテンのツネ(渡瀬恒彦)には銀行強盗という裏の顔を持っていた。相棒(小林稔持)に金の使い道について聞かれた彼は何気なく「ブラジルでも行くわ」と答えるのだった。彼にはミチ(杉本美樹)という女がいた。酒屋でイカれた元公務員(三谷昇)に付きまとわれていたのを助けに入ったのが縁になった。毛皮を万引きする困った女だが、どこか可愛いところがある。ツネはこの映画で幾度も彼女を棄てようとしますが彼女は健気にも彼を追っかけてきます。

 これが最後と決めた銀行強盗だが相棒がトラックに轢かれてしまった。何とか逃げおおせて高飛びしようと思うツネの前に一人の男が現れた。相棒の兄貴を名乗る男(室田日出男)は「死んだ弟の分け前をよこせ」と襲ってきたからさあ大変。ついでに警官(川谷拓三)に顔を見られてしまうが、その警官が興奮状態でちっともモンタージュができあがらない。

 ストーリーはこんなもんで最後はひたすら、カーチェイス。渡瀬恒彦、川谷拓三、室田日出男、志賀勝が画面狭しと暴れまくります。本当にそれだけの映画ですがアクションシーンは大変面白い。特に右翼が流す軍歌で非常ベルが鳴ってるのに気付かないというアイディアはよくできていると思います。逃げる渡瀬を追っかける室田のトラックと拓ボンのパトカー。こいつらが引き起こす騒動がめちゃくちゃ面白い。ホモに犯されそうになって人殺しを敢行した青年がパトカーに轢かれて宙を舞う。

 NHKの暴走族の取材中に室田のトラックに轢かれた仲間の仇を討つ為に追っかけるバイク達。拓ボンのパトカーに当てられた志賀勝、片桐竜二も「ポリ公が当て逃げしてええんかい!」とおっかける。なんかよくわからんけどヤクザの車も追っかける。拓ボンのライバル・曽根晴美も追っかける。途中で取材に切り替えて「キチガイ」を連呼しながらNHKも追っかける。もう大混乱。特に「てめえら!国営放送なめんなよ!」とアタックしまくるNHKのアナウンサーは絶品。もうわけわからん。

 実は同時期に全く同じメンバーで京都を舞台にした「狂った野獣」という同じくカーチェイスを売り物にした、同じような作品があります。監督の中島貞夫は深作監督と仲が良く、実録ヤクザ映画を多く撮った人ですがアクションを撮るのが大変うまかった。アクション自体は「狂った野獣」の方がずっとよく出来てるのですが、深作監督特有の味のある脇役(特に三谷昇と室田日出男がよかった!)が大活躍で印象に残る娯楽作品になったと思います。「狂った野獣」でもスタント無しで渡瀬恒彦がひたすらバスで京都の町を走り回る作品で室田日出男の立ち往生など笑えるシーンも満載です。こちらもお見逃し無きよう。

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