深作まつり第十五夜「赤穂城断絶」〜「忠臣蔵外伝四谷怪談」への布石〜
2003年5月22日 今日は1978年に公開された「赤穂城断絶」。もう何回も映画化されとる忠臣蔵を萬屋錦之助で撮ったシャシンです。同じ年、深作監督は錦之助を主演にした「柳生一族の陰謀」を撮り、大ヒットさせています。東映にしてみれば、柳の下の泥鰌じゃないが、東映時代劇のプリンス、錦之助がはじめて挑む忠臣蔵としても大ヒットさせたかったのだと思います。ただ、舞台裏はなかなか大変だったようで。。
錦之助は内田吐夢の「宮本武蔵」に名優中の名優ですが、その名前の為に苦労もたくさんしています。特に任侠映画全盛の時代においてはその名前が時代劇復興を望むスタッフに利用されました。任侠映画を多くプロデュースした俊藤浩滋によると高倉健の出世作である「日本侠客伝」は元々、錦之助の主演で考えられたものでしたが、錦之助は「東映俳優労働組合」の代表にされたばかりで、断らざるを得ませんでした。結局、この「日本侠客伝」には他の役で出演し、多くの任侠映画にも出演していますが、東映と折り合いが悪かったのか1966年を最後に東映の作品には出演していません。後に錦之助プロを起こしたり、竹中労の誘いで「祇園祭」に主演したり、いろんなことをしていましたがあんまりうまく行っていたとは思えません。彼の10年ぶり以上の東映復帰作が大ヒットを博した「柳生一族の陰謀」。この後も東映は錦之助主演で何本か撮りますがたいした成績を残さずに終わりました。
この映画が結局、あんまり面白くなかったのは錦之助と深作監督の意見がまるっきり食い違っていたことにあります。錦之助は時代劇の子ですから、忠臣蔵に対する憧れというのがあります。ところが深作監督は錦之助の思うような時代劇を撮るような人じゃない。何と大石のキャスティングに金子信雄を考えていたというのです。当然、二人は対立。結局、大石を彼がやり、金子信雄は吉良をやるという極めてオーソドックスなキャスティングになりました。もし、実現してたら今までになかった忠臣蔵となったやろうになあ。。
忠臣蔵には、浪士達が決して一枚岩ではなく、堀部安兵衛のような急進派も多数いたことが描かれています。何が何でも仇討ち、という人もいればお家再興を第一に考える人もいたのに違いありません。そうした派閥を昼行灯を装いながら一本にまとめていく大石というのは凄い人だったのかもしれません。
深作監督が大石に金子信雄をキャスティングしようとしたのはそうした大石の政治力を描こうとしたのではないでしょうか。当然、大石は山守のイメージで描かれるわけです。しかし深作監督がもっとも主張したいものはそうした大石に翻弄されていき、反主流派に行かざるをえない浪士達。つまり、広能を中心にもってきます。
この映画ではそうした思いを貧乏の中で死んでいく橋本平左衛門に結集しますが対立軸が無い為に中途半端になっています。あまつさえ、錦之助にも「途中で倒れた同志を含め、仲間に恵まれた」と言わせてるし。
消化不良な作品ですが、それでも千葉ちゃんと渡瀬の決闘は時代劇の歴史に残るほどの見事な立ち回りでしたし、吉良をドスに刺し殺す演出もなかなか面白い。
錦之助が悪いというんじゃないけど、映画そのものの感想よりも深作監督が考える映画を見てみたかったなあ、と切に思うわけです。
最後にキャストを並べておきますが、松方、千葉、遠藤、成田、渡瀬などのいつものキャストに加え、三船、丹波などの大物までズラリ。日本映画ファンとしてはマキノ映画の常連だった岡島艶子が出ていることに注目したい。夏樹陽子も出てるし、角川春樹もどこで出てたかわからんが出ています。
監督:深作欣二、製作:日下部五朗、 脚本:高田宏治、撮影:宮島義勇
撮影監督:仲沢半次郎、音楽:津島利章
出演:萬屋錦之介、島英津夫、藤岡琢也、峰岸徹、千葉真一、近藤正臣、森田健作、遠藤太津朗、加藤嘉、和崎俊哉、寺田農、安井昌二、野口貴史、 司裕介、汐路章、織本順吉、 西郷輝彦、丹波哲郎、金子信雄、茂山千五郎、田村亮、芦田伸介、渡瀬恒彦、福本清三、岩尾正隆、大滝秀治、成田三樹夫、若林豪、角川春樹、志賀勝、 藤本義一、 梅津栄、三田佳子、中原早苗、岡田茉莉子、原田美枝子、江波杏子、岡島艶子、 夏樹陽子、松方弘樹、三船敏郎
錦之助は内田吐夢の「宮本武蔵」に名優中の名優ですが、その名前の為に苦労もたくさんしています。特に任侠映画全盛の時代においてはその名前が時代劇復興を望むスタッフに利用されました。任侠映画を多くプロデュースした俊藤浩滋によると高倉健の出世作である「日本侠客伝」は元々、錦之助の主演で考えられたものでしたが、錦之助は「東映俳優労働組合」の代表にされたばかりで、断らざるを得ませんでした。結局、この「日本侠客伝」には他の役で出演し、多くの任侠映画にも出演していますが、東映と折り合いが悪かったのか1966年を最後に東映の作品には出演していません。後に錦之助プロを起こしたり、竹中労の誘いで「祇園祭」に主演したり、いろんなことをしていましたがあんまりうまく行っていたとは思えません。彼の10年ぶり以上の東映復帰作が大ヒットを博した「柳生一族の陰謀」。この後も東映は錦之助主演で何本か撮りますがたいした成績を残さずに終わりました。
この映画が結局、あんまり面白くなかったのは錦之助と深作監督の意見がまるっきり食い違っていたことにあります。錦之助は時代劇の子ですから、忠臣蔵に対する憧れというのがあります。ところが深作監督は錦之助の思うような時代劇を撮るような人じゃない。何と大石のキャスティングに金子信雄を考えていたというのです。当然、二人は対立。結局、大石を彼がやり、金子信雄は吉良をやるという極めてオーソドックスなキャスティングになりました。もし、実現してたら今までになかった忠臣蔵となったやろうになあ。。
忠臣蔵には、浪士達が決して一枚岩ではなく、堀部安兵衛のような急進派も多数いたことが描かれています。何が何でも仇討ち、という人もいればお家再興を第一に考える人もいたのに違いありません。そうした派閥を昼行灯を装いながら一本にまとめていく大石というのは凄い人だったのかもしれません。
深作監督が大石に金子信雄をキャスティングしようとしたのはそうした大石の政治力を描こうとしたのではないでしょうか。当然、大石は山守のイメージで描かれるわけです。しかし深作監督がもっとも主張したいものはそうした大石に翻弄されていき、反主流派に行かざるをえない浪士達。つまり、広能を中心にもってきます。
この映画ではそうした思いを貧乏の中で死んでいく橋本平左衛門に結集しますが対立軸が無い為に中途半端になっています。あまつさえ、錦之助にも「途中で倒れた同志を含め、仲間に恵まれた」と言わせてるし。
消化不良な作品ですが、それでも千葉ちゃんと渡瀬の決闘は時代劇の歴史に残るほどの見事な立ち回りでしたし、吉良をドスに刺し殺す演出もなかなか面白い。
錦之助が悪いというんじゃないけど、映画そのものの感想よりも深作監督が考える映画を見てみたかったなあ、と切に思うわけです。
最後にキャストを並べておきますが、松方、千葉、遠藤、成田、渡瀬などのいつものキャストに加え、三船、丹波などの大物までズラリ。日本映画ファンとしてはマキノ映画の常連だった岡島艶子が出ていることに注目したい。夏樹陽子も出てるし、角川春樹もどこで出てたかわからんが出ています。
監督:深作欣二、製作:日下部五朗、 脚本:高田宏治、撮影:宮島義勇
撮影監督:仲沢半次郎、音楽:津島利章
出演:萬屋錦之介、島英津夫、藤岡琢也、峰岸徹、千葉真一、近藤正臣、森田健作、遠藤太津朗、加藤嘉、和崎俊哉、寺田農、安井昌二、野口貴史、 司裕介、汐路章、織本順吉、 西郷輝彦、丹波哲郎、金子信雄、茂山千五郎、田村亮、芦田伸介、渡瀬恒彦、福本清三、岩尾正隆、大滝秀治、成田三樹夫、若林豪、角川春樹、志賀勝、 藤本義一、 梅津栄、三田佳子、中原早苗、岡田茉莉子、原田美枝子、江波杏子、岡島艶子、 夏樹陽子、松方弘樹、三船敏郎
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