今日は1999年に撮られた「おもちゃ」。深作と言えば=ヤクザ、アクションという人がほとんどでしょうが、この作品はヤクザも警察もほとんど出てこない、祗園の芸者はんを題材に取った映画です。製作はいつもの東映ながら、脚本は日本インディーズ映画の祖、新藤兼人。新藤さんと深作監督の組み合わせというのも珍しい。撮影は木村大作。美術は西岡善信。なお助監督に深作健太の名前がクレジットされててます。企画を行ったのは深作監督とライジングプロの社長、平哲夫。今や塀の中の人でライジングプロも今やわけのわからん状態になってます。主演の宮本真希もその煽りを食らってか、もう一つパッとしませんなあ。。気の毒に。

 昭和33年3月31日。売春防止法が施行され、全国から赤線の灯が消えました。戦前は遊郭、戦後になって赤線。言わば男の遊び場ですな。全国約3万9千軒の業者と従業員12万人が職を失いました。それ以来、一応売春業者は無くなった、ことになっております。売春防止法が制定されたのが昭和31年の5月24日。この年の1月に赤線で働く人たちによる、売春防止法反対運動が起こっております。この映画はちょうどその頃の京都は祗園のお話。

 祗園の芸子屋、藤ノ屋に奉公するトキコ。藤ノ屋には照千代、君竜、染丸の3人の芸者さんがいます。それを束ねる里江はんは京都の大店の旦那、吉川の援助を受けて何とかやりくりをしています。まあ言わば愛人ですな。トキコはチビちゃん、チビちゃんと可愛がられています。そんなある日、大事件が持ち上がります。照千代が吉川の息子、純一と関係を持ち、怒った吉川に援助を打ち切られてしまったのでした。着物代を含め、色々とお金がかかるこの業界。トキコを芸者にするのも、色々とかかって最低500万円。里江は奔走して、金を集めるのでした。

 古い京都が舞台になっています。京都も西陣当たりにはまだ古い家がたくさん残っております。祗園も大分変わりましたがまだまだ舞子はんもおりますし、お茶屋もあります。私の祖母は京都生まれの京都育ちで子供の時にいろんなことを教えてくれました。「遠慮のかたまり!」という言葉が劇中で出てきますがこの言葉も教えてもらいました。

 トキコは貧しい職人の娘。実家に戻ると失業中の兄貴と学校にも行かず、内職の手伝いをしている妹がいます。彼女も高校にも上がらず、芸者になるための奉公。昔の言葉で言うと身売りということになるのかもしれません。こう書くと不幸に聞こえますが映画の中ではそうは描かれていません。どんな状況においても、自分の楽しみを見出し頑張っていけるのは”イキテクチカラ”だと思うのです。この映画で描かれる女性はそうした”イキテクチカラ”に傑出しています。それに対してか男は弱い。芸者に騙された!と憤る大学講師も自分が駄目なのは世の中のせいだ、と腐る兄貴、女に貢がせた金を奪って逃げる事業家。。何と情けない。。

 最後のシーンについては賛否両論あると思います。何も脱がさないでもよかったんちゃうか、と思いますがあのシーンは芸子、舞子になるというのは余程の覚悟が必要だということを表していると思います。「騙します」という看板を上げて商売している、そういう業界ですからね、やっぱり。しんどい世界だと思います。現在、こうした花柳界はとんと減りましたが、かつてこうした世界があった、ということに思いを馳せるのもいいことだと思います。

監督、企画:深作欣二、 脚本:新藤兼人、撮影:木村大作、 美術:西岡善信
出演:宮本真希、富司純子、津川雅彦、南果歩、野川由美子、岡田茉莉子、喜多嶋舞、魏京子、月亭八光、六坂直正

今週の素敵すぎる一言
「お金の為なら何でもでけます。うちはおかあちゃんが芸子にしてくれてよかったと思てます。」

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