人外に堕ちる「復讐するは我にあり」
2003年3月25日 私のアカデミー賞予想ですが見事に外し倒しました。「めぐりあう時間たち」が行くんじゃないかな、と思ったんだけどなあ。。見てねえけどさ。主演女優賞以外、全て外しました。それから投票って一ヶ月以上前に終わってるのね。その場で投票してると思ってました。もういいです。忘れてください。慣れんことをやるといけまへんなあ。
さて今日、ご紹介するのは今村昌平が1979年に撮った「復讐するは我にあり」。昨日見てきた「ボウリング・フォー・コロンバイン」は来週の予定です。こういう映画があるからなかなか日本映画専門館としての覚悟がなかなか決まらないのです。
この作品は今村監督の8年ぶりの作品となり、ブルーリボン、日本アカデミー、キネマ旬報賞を総ナメした作品です。それにしてはどうしてビデオがなかなか見つからないのだ。連続強盗殺人事件を取材した同名の本が原作になっています。主演は緒方拳。父親役に三国連太郎で妻は倍賞美津子。チョイ役ですが、フランキー堺が刑事役で出演しています。
1963年、福岡で専売公社の集金車が襲われる事件が起こった。集金人、運転手は刺し傷だらけの死体で発見された。目撃証人がいた為、犯人は容易に知れた。榎津巌。前科を犯した37歳の男であった。彼は五島列島の出身で敬虔なクリスチャンの家庭に生まれた。(小説の中では出てこないが多分、隠れキリシタンだと思う。)一家は五島列島から別府に移住。宿屋を営んでいた。彼には妻子があった。
巌は父親を憎んでいた。彼が刑務所に入っている間、嫁さんが子供を連れて四国に逃げてしまった。それを迎えに行ったのは父親であった。「あいつはオヤジに惚れてやがる。。」それは母親も感じていた。「巌さんのために帰るんじゃない。ましてお母さんの為に帰るんじゃない。・・・私はお父さんの為に帰るんです。」告白する嫁の前で父親は十字を切るしかなかった。
浜松の小さな宿。一人の大学教授と名乗る男が宿泊した。巌であった。たちまち、女将といい仲になってしまう。女将には旦那があったが夫婦生活は破綻していた。小さな田舎町のドロドロとした不倫劇。それだけではなく、彼女にはもう一つ悩みがあった。彼女は実の母親と同居しているのだが、この母親は大変評判が悪かった。人を殺しているのだ。。枕芸者(古っ)も嫌がって近づかない。そんな彼女が客との逢瀬におぼれても仕方なかった。巌は既に弁護士も殺しており、全国手配されていた。もう逃げるところはなかった。。
重い作品です。実在した殺人犯を題材に取った作品ですので当たり前かもしれません。「娘がいるけん、命だけは助けてくれ」と懇願する運転手をメッタ刺しにぶっ殺したあと、手についた血を小便で洗い流すシーンなどは背筋が寒くなります。ただ殺人シーンは意外に少ない。
女性もたくさん出てきます。夫を嫁にやるわけにいかぬ、と意地で退院してくるミヤコ蝶々。お父さん。。と呟きながら三国に乳房を握らせる倍賞美津子。センセイと一緒に遠いところにいきたい。。と懇願する小川真由美。あんな奴、殺してやってセイセイしたわ、と妙にうっとりした顔で言う清川虹子。お、おまえらなあ。。
この事件が特殊だったのは、人を五人も殺してながら取った金額が極めて些少であったことと、全て行きずりの犯行であったことです。我々がもし、殺人を犯すとするならば。。そういう機会がないことを祈りますが、「青い炎」じゃないですがどうしても殺したい奴を殺す。ミツバチは針を持っていますが刺すと同時に死んでしまいます。人を殺すと同時に自分の人生も失うことも覚悟せねばなりません。榎津巌にはそうしたところがなかった。殺す理由がないのに殺している。ここで一つの名前が浮かび上がってきます。それは、池田小児童惨殺事件を引き起こした宅間守。化け物。三国連太郎は緒方拳に「ワレは恨みのない人間しか殺せん、弱い人間じゃ」と唾を吐きかけます。対決せねばならんものと対決せずに逃げ回った人生。一体、どこでボタンを掛け違えたのか。それとも元から化け物やったのか。。
今週の素敵すぎる一言
「わしゃ、あの女殺した時には本当にせいせいした。あんな奴、生きとってもこの世の為にならん。あんたはどうかいの?」
さて今日、ご紹介するのは今村昌平が1979年に撮った「復讐するは我にあり」。昨日見てきた「ボウリング・フォー・コロンバイン」は来週の予定です。こういう映画があるからなかなか日本映画専門館としての覚悟がなかなか決まらないのです。
この作品は今村監督の8年ぶりの作品となり、ブルーリボン、日本アカデミー、キネマ旬報賞を総ナメした作品です。それにしてはどうしてビデオがなかなか見つからないのだ。連続強盗殺人事件を取材した同名の本が原作になっています。主演は緒方拳。父親役に三国連太郎で妻は倍賞美津子。チョイ役ですが、フランキー堺が刑事役で出演しています。
1963年、福岡で専売公社の集金車が襲われる事件が起こった。集金人、運転手は刺し傷だらけの死体で発見された。目撃証人がいた為、犯人は容易に知れた。榎津巌。前科を犯した37歳の男であった。彼は五島列島の出身で敬虔なクリスチャンの家庭に生まれた。(小説の中では出てこないが多分、隠れキリシタンだと思う。)一家は五島列島から別府に移住。宿屋を営んでいた。彼には妻子があった。
巌は父親を憎んでいた。彼が刑務所に入っている間、嫁さんが子供を連れて四国に逃げてしまった。それを迎えに行ったのは父親であった。「あいつはオヤジに惚れてやがる。。」それは母親も感じていた。「巌さんのために帰るんじゃない。ましてお母さんの為に帰るんじゃない。・・・私はお父さんの為に帰るんです。」告白する嫁の前で父親は十字を切るしかなかった。
浜松の小さな宿。一人の大学教授と名乗る男が宿泊した。巌であった。たちまち、女将といい仲になってしまう。女将には旦那があったが夫婦生活は破綻していた。小さな田舎町のドロドロとした不倫劇。それだけではなく、彼女にはもう一つ悩みがあった。彼女は実の母親と同居しているのだが、この母親は大変評判が悪かった。人を殺しているのだ。。枕芸者(古っ)も嫌がって近づかない。そんな彼女が客との逢瀬におぼれても仕方なかった。巌は既に弁護士も殺しており、全国手配されていた。もう逃げるところはなかった。。
重い作品です。実在した殺人犯を題材に取った作品ですので当たり前かもしれません。「娘がいるけん、命だけは助けてくれ」と懇願する運転手をメッタ刺しにぶっ殺したあと、手についた血を小便で洗い流すシーンなどは背筋が寒くなります。ただ殺人シーンは意外に少ない。
女性もたくさん出てきます。夫を嫁にやるわけにいかぬ、と意地で退院してくるミヤコ蝶々。お父さん。。と呟きながら三国に乳房を握らせる倍賞美津子。センセイと一緒に遠いところにいきたい。。と懇願する小川真由美。あんな奴、殺してやってセイセイしたわ、と妙にうっとりした顔で言う清川虹子。お、おまえらなあ。。
この事件が特殊だったのは、人を五人も殺してながら取った金額が極めて些少であったことと、全て行きずりの犯行であったことです。我々がもし、殺人を犯すとするならば。。そういう機会がないことを祈りますが、「青い炎」じゃないですがどうしても殺したい奴を殺す。ミツバチは針を持っていますが刺すと同時に死んでしまいます。人を殺すと同時に自分の人生も失うことも覚悟せねばなりません。榎津巌にはそうしたところがなかった。殺す理由がないのに殺している。ここで一つの名前が浮かび上がってきます。それは、池田小児童惨殺事件を引き起こした宅間守。化け物。三国連太郎は緒方拳に「ワレは恨みのない人間しか殺せん、弱い人間じゃ」と唾を吐きかけます。対決せねばならんものと対決せずに逃げ回った人生。一体、どこでボタンを掛け違えたのか。それとも元から化け物やったのか。。
今週の素敵すぎる一言
「わしゃ、あの女殺した時には本当にせいせいした。あんな奴、生きとってもこの世の為にならん。あんたはどうかいの?」
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