今や普通の配給会社になった感のあるアルバトロスの配給作品。アルバトロスも変わりましたね。昔は「キラーコンドーム」とか「クイーンコング」とか「誰が見るねん、こんなん」みたいな作品ばっかり配給してましたが、「アメリ」のヒットで「こじゃれた」映画を配給する会社だと世間では思われてます。今度、アルバトロスで買い付けやってる叶井さんをモデルにしたドラマが始まるなんて噂あります。一発当てるとすごいなあ。。この業界。叶井さんが書いてる「映画秘宝」のコラム読むと叶井さん自身はアルバ=こじゃれ系、というのはあんまり好きじゃないらしく、「えびボクサー」(ハリボテのエビがボクシングするらしい)とかわけのわからん作品も相変わらず買い付けしておられます。頑張れ。

 舞台は1942年のパリ。フランスはドイツとの戦いに敗れ、当時、パリはナチスドイツの支配下にあった。ドイツ軍はフランス国民に対し、ユダヤ人検挙の協力を命じる。ひっそりと肉屋を営むパティニョールはある朝、肉の一部がなくなっていることに気付く。娘婿になる予定のピエール=ジャンに隣人のバーンスタイン家の子供ではないか、とパティニョールに告げる。バーンスタインはユダヤ人の医者で元々、気が合わなかったこともあってパティニョールはバーンスタインに食ってかかる。しかし、これは全くの濡れ衣であった。ピエール=ジャンはナチスの協力者であり、バーンスタインを告発しようとしていたのだ。早速、駆けつけるゲシュタポにバーンスタイン一家は残らず捕まえられてしまうのだった。バーンスタイン一家は今朝、スイスに亡命する予定だった。

 図らずも協力者になってしまったバティニョール。ドイツ軍のスプライヒ大佐は多いに喜び、バーンスタイン家が住んでいた大きなアパートの一室がバティニョールに与えられることになった。パティニョールは第一次世界大戦でドイツと戦った兵士。複雑な気分であった。

 ある晩、ドイツ軍のパーティがパティニョール家で行われた。パーティもたけなわ、その時、来客を告げるベルがなった。パティニョールは客人を出迎えに玄関に向った。彼がそこで見たのは、できあがったドイツ兵でも近所のフランス人でもなかった。そこにいたのはバーンスタイン家の子供であるシモンだった。家族の中で彼一人がうまく逃げおおせたのだ。慌てて屋根裏部屋にシモンを隠すパティニョール。誰かが向えに来てくれると信じるシモンであったが、親戚は既に収容所に送られており、協力者も残らず逮捕されていた。何とかシモンを亡命させようとするパティニョール。彼にある密輸業者が問うた。
「そこまでする価値があるのか?」
「俺にはある」
やがてパティニョールはすべてを捨て、シモンと共にスイスに向うのだった。。

 フランスは二度の大戦でドイツと戦っています。一次大戦中では勝ち、二次大戦中ではドイツの占領下に落ち、ピシー政府というドイツに協力的な政府を作らされています。レジスタンスばかりが歴史に取上げられますが中にはドイツに協力的なフランス人もいました。この映画の主人公であるパティニョールはドイツに対して批判的であるものの、かと言って、レジスタンスに参加していたわけではない。言わば普通の人でした。我々はともすれば忘れがちですが、大部分の人はこうした人々だったのです。

 パティニョールがどうしてシモンをかばったのか。それには自分が図らずも協力者になってしまった負い目もあるでしょう。しかしそれよりも、困った人をほっとけない、という人間の本能的なところから出た行動である、という方がしっくり来ると思います。

 話はかなり湿っぽいのですが、笑える部分も多く、楽しくみてられる作品です。ステレオタイプの”ナチスもの”でなく、軽く仕上げられた作品です。監督もパンフレットで語ってますが「ライフイズビューティフル」を意識した作品になっています。大阪では今週で上映が終了しますが、京都では4月中旬よりMOVIX京都にて公開。お見逃しあるな。

ホームページもよろしく→http://www.nkyo.net/~tetorapot/

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