「深作まつり」第三弾は「火宅の人」。壇ふみのお父さんであり、小説家の壇一雄の遺作となった私小説の映画化です。映画の始めにも説明がありますが、「火宅」とは「煩悩の止む時が無く、安らぎを得ない」という意味の仏教用語です。
 
 作家・桂一雄には5人の子供と妻がいた。妻・ヨリ子は後妻であり、腹違いの子を含む5人の子供を育てていた。小説家としての彼のキャリアは順調であり、ヨリ子もよく頑張っていた。しかし、その何不自由ない生活を壊したのは子供の病気であった。次郎は日本脳炎に罹患して手足と言語機能に障害を持った。寝たきりである。それをきっかけにヨリ子は怪しげな宗教にのめりこむようになった。自分にとって居心地の悪いところとなった家庭から一雄は逃げ出してしまう。友人太宰治文学碑の除幕式に参列する為の青森行きに、彼と同郷の新劇女優である矢島恵子を誘う。

 青森から帰った彼は浮気のことをヨリ子に告げてしまう。怒った彼女は突然、家を出てしまった。後悔する一雄であったが、またもや逃亡。ホテル暮らしを経て、恵子との同棲生活を始めてしまう。しかも恵子とのことを小説に書き始めた。当初は離婚するつもりだったヨリ子であったが、子供のことを考えて実家に戻ってくる。但し、一雄と一緒に暮らすことは拒否。家族はバラバラに暮らすことになった。そんなある日、一雄の住まいに空き巣が入った。なんと犯人は彼の長男である一郎であった。

 主演は緒方拳。深作監督とは80年代になってから幾度も組んでいます。一時に比べると露出は減りましたが「歩く、人」、「あつもの」などで確実にキャリアは積んでいます。「大誘拐」、「座頭市」はもちろんのこと、「国会へ行こう」なんかもよかった。現在、CMにも出ていますが実にいい役者さんです。これからも楽しみ。

 この映画は緒方拳演じる一雄を巡る三人の女の物語。正妻のヨリ子をいしだあゆみ、恵子を原田美枝子、ホステスの葉子を松坂慶子が演じています。よく指摘されていますが、深作監督も大変女性に愛が深い人でした。先ほど、不倫が暴露された荻野目慶子に限らず、この映画で出演した原田美枝子とも松坂慶子とも噂がありました。その噂が本当だったかわかりませんが、両人ともこの映画ではかなり大胆なラブシーンを熱演しています。原田美枝子なんか、緒方拳に巨乳をガンガン揉まれまくってます。大変よろしゅうございました。ありがとうございました。

 先ほど発売された「文藝春秋」3月号に深作監督の奥さん、中原早苗さんの手記が掲載されています。夫人は極力、旦那の女関係については「それはもういいじゃないですか。深作は逝ってしまったのだから。この件では何も言いたくありません。」という言い方で言及はしていません。しかし、早苗さんが夫の臨終の間際に言った「おじさん(奥さんは監督をこう呼んでいた。)、みんな終わったよ。みんな水に流したから」という言葉が全てを物語っていると思います。もう既に意識はありませんでしたが、監督の目から涙が一筋流れたそうです。やはり監督も大晦日に出刃包丁で鰤の頭を切り落とす奥さんを見たのでしょうか。なお、監督の若い頃と今の息子さんは全然似ておりません。監督にしておくのが勿体無いくらいの男前でした。

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