腹くくればどこでも天国「刑務所の中」
2003年2月24日 「網走番外地」を始めとして刑務所を題材に取った映画は昔からたくさんありました。中島貞夫の映画(つまり東映)にもいっぱいあります。この「刑務所の中」は同名の漫画を原作にした映画で、従来の刑務所を扱った作品とはやや趣を変えています。従来、刑務所と言えば=ヤクザでして、カタギには一切関係ない場所でした。(まあ今でもほとんどの人がそうですが。)「刑務所に入るのはヤクザと選挙違反と過激派だけ」というのが社会通念だったのです。
しかし昨今は事情が変わってきました。現在、逮捕者で多いのは殺人でも強盗でもなし。覚せい剤所持に痴漢(冤罪含む)に脱税。もちろん今でも逮捕者にヤクザ(それと外国人。確実に数は増えています。)は多いのですがご存知のように、電通、テレビ局の社員を始めとしてカタギのシャブ中がとても多いのです。普通のサラリーマンでもパクられる人がたくさんいます。よって刑務所も従来のように=ヤクザ、という図式ではなくなってきた。
「刑務所の中」はそうした現在の刑務所を描いた作品となったと思います。同映画でもヤクザは出てきますがそれ以上に、何でこの人が。。と思う人がいっぱい刑務所にはいています。つまり言い方は悪いのかも知れませんが、刑務所というところは我々にとって無縁な場所ではなくなったのです。昨今は酔っ払い運転でも監獄行きになるしね。
主人公、ハナワさんは銃刀法違反で逮捕されました。職業はよくわからんが、いい年して、河原で迷彩服着てほふく前進なんかやってるサバゲーオタク。別に街中で銃振り回したわけではないし、密輸入したわけではありません。「カチンコ」と呼ばれる劣悪な改造銃を自分で作っただけ。でも懲役3年。前科があったのか、それかサバゲーオタクへの見せしめか。普通の社会人には程遠いが、かと言ってヤクザにも程遠い。こういう人、最近増えております。私もそうか。
日本の刑務所はアメリカの刑務所と違い、更正と言う、できんことを一生懸命やっとります。アメリカは再犯防止の観点からか、職業訓練の色が強い。何しろ、向こうの刑務所は民営化しておって囚人の作った物が利益をガンガン稼いでいます。日本でも一応、職業訓練はありますが、病院の薬袋貼りとか彫刻とかはっきり言ってそれでメシは食えない、と思う。
「犯罪を犯す奴等は社会的な道徳が学べない奴等だからしっかり道徳を学ばせよう」という観点からやっているのでやってることは小学生レベルの教育。「返事ははっきりする」「決まった時間には起きる」「先生には従う」「しっかり掃除する」「みんなが使う雑誌に書き込んではいけない」。。。そんなん、当たり前やん、と思った方もいるでしょうが本当にこれ、皆さん守れてますか?横断歩道渡る時に片手挙げてますか?廊下を足音立てずに歩いてますか?図書館で借りた本に書き込みとかしないでちゃんと返してますか?(最近多いです。やめてね。)やってないでしょ?刑務所は、必要以上に細かいきまりをきっちり身につけることで更正を行おうとしているのです。
作業中に小便したいと思ったら手を挙げて大きな声で教官に向って「願います!」と叫ぶ。教官が気付いたら、手を脇に揃えて小走りで教官の前に出て行く。「用便願います!」と教官に訴える。「なんだ、朝にしてこなかったのか」「申し訳ありません」「よし!」そんなやり取りがあって色付きの札をもらい、同じように手を脇に揃えて小走りでトイレに向う。入り口に「使用中」を示す札(小便、大便によって色が変わる)をかける。小便が終われば、札を教官に返して「ありがとうございました!」と叫んで速やかに作業に復帰。とてつもなく、時間がかかる。あほらし。
ただそうした生活でも長く続くとだんだん慣れてくる。慣れてくると楽しみも出てくる。従来の生活では感じなかったようなことに幸せを感じてくる。メシの春雨スープに肉が一枚多く入ってることに大喜びしたり、おまんじゅうのコマーシャルに興奮したり、100円のチョコ菓子(映画の中で出てくる「アルフォート」のこと。みなみ会館で売ってました)を食ったことを威張ったり。。言わばつまんないことで一喜一憂します。それが何とも微笑ましい。
現在、刑務所については様々な論議がされていますがこの映画は一切、そうした問題には踏み込まず淡々と刑務所の中を描いています。きわどいところを題材にしていますが、見事にエンターティメントに仕立てあげるのは崔洋一&鄭義信コンビには今や朝飯前なんでしょう。このコンビは本当にすごい。映画全体が何となく、まったりとした感じで使われる音楽もクラシックばっかり。
ただ老婆心ながら付け加えておきますと刑務所によっても個人によっても全然待遇は違います。名古屋刑務所の例を引くまでも無く、千葉刑務所、静岡刑務所、広島刑務所などの待遇のひどさは有名ですし、長期刑受刑囚の多くは獄内で気が狂って死んでいます。ハナワさんが感動した懲罰房も見沢知蓮の「囚人狂時代」によると「一日中、正座して目をそらすことさえも許されない。3日も入れば気が狂う。」描かれています。あくまでも「一つの視点」であって、決して楽なところではありません。イジメもあるしね。
みなみ会館ではアルフォートを始めとして監獄キャラメルとか色々売ってました。監獄キャラメルは120円でしたが、割と食いでがありました。これ、刑務所でも買えるのかな。
2002年 93分 日本 カラー
監督:崔洋一 脚本:崔洋一 鄭義信 中村義洋
出演:山崎努、香川照之、田口トモロヲ、松重豊、村松利史、大杉漣、遠藤憲一、小木茂光、椎名桔平、窪塚洋介、木下ほうか、山中聡、林海象
しかし昨今は事情が変わってきました。現在、逮捕者で多いのは殺人でも強盗でもなし。覚せい剤所持に痴漢(冤罪含む)に脱税。もちろん今でも逮捕者にヤクザ(それと外国人。確実に数は増えています。)は多いのですがご存知のように、電通、テレビ局の社員を始めとしてカタギのシャブ中がとても多いのです。普通のサラリーマンでもパクられる人がたくさんいます。よって刑務所も従来のように=ヤクザ、という図式ではなくなってきた。
「刑務所の中」はそうした現在の刑務所を描いた作品となったと思います。同映画でもヤクザは出てきますがそれ以上に、何でこの人が。。と思う人がいっぱい刑務所にはいています。つまり言い方は悪いのかも知れませんが、刑務所というところは我々にとって無縁な場所ではなくなったのです。昨今は酔っ払い運転でも監獄行きになるしね。
主人公、ハナワさんは銃刀法違反で逮捕されました。職業はよくわからんが、いい年して、河原で迷彩服着てほふく前進なんかやってるサバゲーオタク。別に街中で銃振り回したわけではないし、密輸入したわけではありません。「カチンコ」と呼ばれる劣悪な改造銃を自分で作っただけ。でも懲役3年。前科があったのか、それかサバゲーオタクへの見せしめか。普通の社会人には程遠いが、かと言ってヤクザにも程遠い。こういう人、最近増えております。私もそうか。
日本の刑務所はアメリカの刑務所と違い、更正と言う、できんことを一生懸命やっとります。アメリカは再犯防止の観点からか、職業訓練の色が強い。何しろ、向こうの刑務所は民営化しておって囚人の作った物が利益をガンガン稼いでいます。日本でも一応、職業訓練はありますが、病院の薬袋貼りとか彫刻とかはっきり言ってそれでメシは食えない、と思う。
「犯罪を犯す奴等は社会的な道徳が学べない奴等だからしっかり道徳を学ばせよう」という観点からやっているのでやってることは小学生レベルの教育。「返事ははっきりする」「決まった時間には起きる」「先生には従う」「しっかり掃除する」「みんなが使う雑誌に書き込んではいけない」。。。そんなん、当たり前やん、と思った方もいるでしょうが本当にこれ、皆さん守れてますか?横断歩道渡る時に片手挙げてますか?廊下を足音立てずに歩いてますか?図書館で借りた本に書き込みとかしないでちゃんと返してますか?(最近多いです。やめてね。)やってないでしょ?刑務所は、必要以上に細かいきまりをきっちり身につけることで更正を行おうとしているのです。
作業中に小便したいと思ったら手を挙げて大きな声で教官に向って「願います!」と叫ぶ。教官が気付いたら、手を脇に揃えて小走りで教官の前に出て行く。「用便願います!」と教官に訴える。「なんだ、朝にしてこなかったのか」「申し訳ありません」「よし!」そんなやり取りがあって色付きの札をもらい、同じように手を脇に揃えて小走りでトイレに向う。入り口に「使用中」を示す札(小便、大便によって色が変わる)をかける。小便が終われば、札を教官に返して「ありがとうございました!」と叫んで速やかに作業に復帰。とてつもなく、時間がかかる。あほらし。
ただそうした生活でも長く続くとだんだん慣れてくる。慣れてくると楽しみも出てくる。従来の生活では感じなかったようなことに幸せを感じてくる。メシの春雨スープに肉が一枚多く入ってることに大喜びしたり、おまんじゅうのコマーシャルに興奮したり、100円のチョコ菓子(映画の中で出てくる「アルフォート」のこと。みなみ会館で売ってました)を食ったことを威張ったり。。言わばつまんないことで一喜一憂します。それが何とも微笑ましい。
現在、刑務所については様々な論議がされていますがこの映画は一切、そうした問題には踏み込まず淡々と刑務所の中を描いています。きわどいところを題材にしていますが、見事にエンターティメントに仕立てあげるのは崔洋一&鄭義信コンビには今や朝飯前なんでしょう。このコンビは本当にすごい。映画全体が何となく、まったりとした感じで使われる音楽もクラシックばっかり。
ただ老婆心ながら付け加えておきますと刑務所によっても個人によっても全然待遇は違います。名古屋刑務所の例を引くまでも無く、千葉刑務所、静岡刑務所、広島刑務所などの待遇のひどさは有名ですし、長期刑受刑囚の多くは獄内で気が狂って死んでいます。ハナワさんが感動した懲罰房も見沢知蓮の「囚人狂時代」によると「一日中、正座して目をそらすことさえも許されない。3日も入れば気が狂う。」描かれています。あくまでも「一つの視点」であって、決して楽なところではありません。イジメもあるしね。
みなみ会館ではアルフォートを始めとして監獄キャラメルとか色々売ってました。監獄キャラメルは120円でしたが、割と食いでがありました。これ、刑務所でも買えるのかな。
2002年 93分 日本 カラー
監督:崔洋一 脚本:崔洋一 鄭義信 中村義洋
出演:山崎努、香川照之、田口トモロヲ、松重豊、村松利史、大杉漣、遠藤憲一、小木茂光、椎名桔平、窪塚洋介、木下ほうか、山中聡、林海象
コメント