今日はタランティーノの5年振りの新作「キル・ビルVOL.1」。私が映画に興味を持った今から5年前、今は無き京都松竹座で「ジャッキーブラウン」が公開されていたのをうっすら覚えています。私にとっては初めてのスクリーンで見るタランティーノ映画です。しかも今回は深作欣二に捧げたものであるらしい。これは見に行かねば。

 いきなり深作監督への追悼メッセージが出てきたときには少し嬉しかった。が、当作品は別に深作作品のパロディでもオマージュを捧げてるわけでもない。深作は人がバンバン死ぬ映画ばかり撮ってたわけではないのだ。「バトルロワイアル」だけで語られるとつらい。タランティーノは深作に逢ったこともあるし、めちゃくちゃファンだったらしい。深作欣二がどういう監督かをわかってる、よき理解者だと思う。しかし、無責任に「深作欣二に捧げた」とか宣伝に使われると深作が「人殺す」映画専門の北村龍平並みの監督みたいで極めて気分が悪い。現にそういう理解をしてる奴もいる。むかつく。

 どちらかと言うとこの映画、三池崇史と石井輝男に影響を受けており、オマージュを捧げているのだ。そう考えるとこの映画が日米同時公開されて大劇場で公開されてるのは間違ってるような気がする。(三池の傑作「牛頭」がビデオスルーだったことを参考に)もっともこういう映画が中心になる世の中も「鉄拳」がゴールデンでバラエティの司会をやるようでなんか間違ってる。つまり、宣伝の仕方が間違ってるのだ。

 まあtkrさん(http://diary.note.ne.jp/29346/)の10月29日の日記で述べられていることに近いんですが。。。

 映画秘宝という雑誌が懸命に宣伝しているが本来ならこの映画、この秘宝読者のために作られたもので全ての映画ファンの為に作られた映画ではない。「プレミア」で特集を組むような映画じゃないのだ。「CUT」など出入り禁止にすべきである。(ついでに映画界からも出入り禁止にして欲しい)私も実は秘宝読者で梶芽衣子さんの「恨み節」「修羅の花」を知ってた東映映画ファンなのでこの映画は大変面白かったが、わからないパロディもいっぱいあったし、万人に薦められる映画ではナイ。配給側はオシャレ映画として宣伝してるんだが石井輝男がオシャレか?少なくともカップルで見る映画ではない。

 大体、おまえら「パルプフィクション」を最後まで見たのか、3時間近くもあるんだぞと問いたい。問い詰めたい。小一時間ほど問い詰めたい。買い付けはうまいが宣伝が下手なことで有名なGAGAが配給でおそらくこの映画でヒットをあてようと考えているんでしょうが土台、考え方が間違っておる。本当に映画が好きなのか?おまえら、ただタラの映画を公開したという実績が欲しいんじゃないの?

 ただこれは曲がりなりにも私が映画ファンなんで言えることなんですが多分、ほとんどの人は「かっこえー」とか「日本語下手すぎ」とか「GOGO夕張に踏まれたい」とか思いながら見ているんでしょう。確かにそういう楽しみ方もできる映画だと思う。これはやはりひとえにタラの才能なんだろう。確かにテンポもよい。

 でもテンポはいいんだが一言で言うと面白くないのだ。笑いを担当させてるつもりだと思う千葉ちゃんの激寒寿司屋とかもしかして外人は面白いのかもしれないが日本ではこういう笑いがトップを取った時代はない。本当にタラは千葉ちゃんを尊敬してるのか?千葉ちゃんが出てくるのなら普通、アクションだろ。他の日本人も目立たない。國村準、麿赤児、菅田俊、北村一輝とかすごいメンバが出てるんだが出番はほとんどない。しかも台詞が棒読みで國村さんに至っては何を言ってるのかほとんど聞き取れなかった。

 よかったのはその名も役名”佐吉”で登場した佐藤佐吉。チャーリーブラウン呼ばわりされてルーシー・リューに逃がしてもらえるというおいしすぎる役どころ。実は「殺し屋イチ」「牛頭」の脚本を書いたすごい人なんですが本人は役者の方が好きらしいです。よかったな、佐吉。で、もう一人はこの人。

 「バトロワ」にてナイフ一本でレイプしようとした博太郎ジュニアのアソコを切り裂いたガッツある少女を演じた栗山千明がオーレン・イシイの護衛”GOGO夕張”として出演。女子高生コスプレで鎖鎌振り回す素敵な少女となってスクリーンに帰ってきてくれた。中村愛美同様、彼女の今後が少し心配だが臆することなく、独自の道を歩み続けて欲しい。

 まあいろんな意味ですごい映画である。ほとんどタラの自主映画と言ってもいいめちゃくちゃな映画が聖林で何十億という金をかけて続編も製作される、というすさまじさ。えらくなれば何でもできるのね。言わばベッソンが「フィフスエレメント」でやったことと同じことをやっとる。おそらくタラの頭の中をのぞいたらこんな世界なんだろう。「タランティーノの穴」やね。でも逆に言うのならそれだけの映画。それが商売になればいいんでしょうが。。力技で見せてくれますがリピーター客がつくのかどうかは疑問ですね、正直なところ。
 今週末は2日とも出勤で非常に疲れたので昨日は有休を取ってました。やっと仕事も一段落致しましたのでこれからはスムーズに更新が進むと思います。というか絶対にそうなるはずです、はい。

 まあ更新はともかくとしてホームページを間借りしているプロバイダが潰れましたので移転先を早く探さねばなりません。このページ、たちあげたのが10月26日で実はもう一年もたっておるのです。しれまでにホームページを移転しようと思いましたが無理でした。よって来月中に何とか移転を完了しようと思います。

 これを機会にホームページ名を変えようと思いますがなかなかいいのが見つからん。映画系のサイト名って似たり寄ったりではっきり言ってありがちなもんばかりで「キネマの星座」も決して悪くないと思うんですが、もっと奇抜なのにしようか、と。

 「キネマの星座」ってのは空に輝く星座のように映画の種類も様々でそれをまんべんなく紹介するのが当初の狙いだったんですが日本映画しか紹介してないし、というか東映やくざ映画ばっかりだし、なんか違うなと。

 私の中にある映画哲学というのもやはり変わってきてますしね。この一年、200本ぐらいの映画をスクリーンで見てきて、深作の映画ばかり見てきて自分がどういう映画が好きで同時に自分がどういう風に生きたいのかもわかってきた。

 映画の好みというのは不思議なもんでそれがイコールその人の価値観、人生観で自分というものを知るのにとても有効なのです。この一年、批評というか感想を書き綴ったわけですが感想というのは約まるところ、自分の人生観を述べるにやはりつながる。自分からはどうしたって逃れられないんです。

 そういう意味ではやはり映画の数だけ人生がある、というクサい言葉にもいっぺんの真実がある。映画も人生も空に輝く星座のように限りないのだ、と思うと偶然考えたサイト名にしては「いいところ、ついてるじゃねえか」と思ったりもするのです。やっぱ変えないでおこうか。

 一応、11月中と言っておきます。映画の感想はこれからも書き続けますが別に雑文も綴りたいなあと思っております。仕事のこととかね、政治のこととか、やっぱどこかで毒を吐いておきたいというのがあります。文章にするというのは漠然と考えていることがきっちりまとまって、そこからまた矛盾が出てきていろんなことを考えたりするのが実に楽しい。

 私の趣味は読書、映画から鼻毛抜きまで色々ありますが共通は「考える」ことなんだと思います。(鼻毛抜きながら何を考えるかわからんが。)足りない頭で振り絞って考える。それを議論できる友人がいればなお楽しい。ホームページは私にとっては考える一つの機会です。いつまで続くかわかりませんが、これからもお付き合いできるのならばお付き合いください、と思う今日この頃です。でわ。


 本日は「ぴあスカラシップ」作品の「BORDER LINE」。2000年、ぴあが開く「PFFアワード」でグランプリを獲得した李相日監督の作品です。この「PFFアワード」ってのは言わば自主映画監督の登竜門みたいなもんでここで頭角を表すと長編映画製作援助システムである「ぴあスカラシップ」で映画を撮ることもできる。この「BORDER LINE」はぴあスカラシップの12本目の作品に当たります。ぴあって雑誌はなんだかんだ言って私は毎週買っており、この作品のことも昔から知っていました。私はあまり自主映画に興味がないので、PFFアワードにも行ったことはないけど「さよなら、クロ」の松岡さんや「ウォーターボーイズ」の矢口さんもここら出てきたこともあって注目はしてました。

 工業高校の周史(沢木哲)は三年生になったが将来に全く意味を見出せなかった。学校が出された「10年後の自分へ」というレポートを前に苛立つ周史。遂に彼が校舎の屋上に干してある作業着に火をつけるところから映画は始まります。ある朝、アル中のタクシー運転手である黒崎(村上淳)は赤の信号で飛び出してきた自転車をはねてしまう。自転車に乗っていた少年は病院に行くことを拒否。かわりに北海道に連れて行くことを要求する。たった今、父親を殴り殺した周史だった。

 ヤクザの組に見を置く宮路(光石研)は彼は決して無能ではなかったが立ち回りの拙さでいまだに組の下っ端であった。弟分が金を持ち逃げした際にまず疑われたのは彼だった。娘の手術代のやりくりで弟分が金に苦しんでいたことを知っていた彼は弟分を逃がそうとしたが、組織に残る為に始末する。

 主婦の美佐(麻生祐未)は念願だったマイホームを手に入れて新しい生活に胸膨らませていた。が、なんだか息子の調子がおかしい。どうやら小学校でイジメにあってるらしいのだ。先生は無能でちっとも動いてくれない。もっとも彼女も強く言うことができない性格でパート先でも疎まれていた。さらなる不幸が彼女を襲う。旦那がリストラされてしまったのだ。

 女子高生のはるか(前田綾花)は一見、物静かな女の子だが援助交際をしていた。遂に警察に補導されてしまう。「親は?」という刑事の質問に彼女は「母は父に殺された。私がその父を殺してやった」とつぶやくのだった。彼女は親戚の家を転々として育った。彼女は退学になってしまい、友人も失ってしまう。。。

 この映画は群像劇で4つのストーリーが進められていきます。このうち主婦の物語を除いて3つの話は交錯していきます。ただこの交錯の部分がテンポ悪くてしかも説明が少ないためにわかりにくい。パンフレットを読まないとちゃんとしたストーリーがよくわからない。そうした意味ではまだまだ未熟な映画だと思う。がそれでも、これだけストレートにリアルな日常を描きながら、それを優しく見守る映画はめずらしい。不覚ながら何度か目頭を熱くさせてしまった。

 この映画に出てくる登場人物は世間に溶け込めなかった人たちで脛に傷を持っている。それが幼少の頃のトラウマとかだったりするのですが、本人の努力の足りなさと性分によって”BORDER LINE”上にいる人たちです。そしてある出来事からそのラインを超えてしまった。どうしてそんな馬鹿なことをしたのか。そんなことは本人が一番わかっている。

 が、そうなってしまった。人間というものは本当に弱くて悲しい。私が一番好きだったのはやはり自らの手で殺した弟分のために組織を裏切るヤクザの話でした。自殺しようとしていた周史を救い、「おまえ、自転車だって乗れるじゃないか。やればなんだってできるんだ」と励ますシーンでは思わず泣いてしまった。ただそうして人に何かを残せる人もいれば、全てが空回りで何も出来ない美佐の話もあり、それがまたすごく悲しい。人生なんて不平等だし、自分の努力が認められることだってないかもしれない。それが世間というものでそれが厭ならばその舞台から退場してしまわねばならない。でもそれもできない。

 主人公ではないのですが女子高生を買おうとしたおっさんのエピソードも強烈でした。買春がバレて全てを失ったおっさんが町で買ったことのある女子高生のはるかを買おうとする。彼が上機嫌でホテルに戻るとドアの前で見知らぬ少年の周史が立っている。どかせよう、とすると「帰れ」の一点張りでどこうとしない。彼は必死ではるかに売春させまいとしているのだ。周史を殴る親父。この場面、おっさんが悪なんだがこの映画では決してオッサンを悪としては描いていない。散々殴りつけたオッサンは少年に謝って去っていく憐れな男として描いている。きっとこの親父はこれからもこんなことを続けて生きていくのだろう。でも生きていかねば仕方ないのだ。

 10年後の自分が予想できないのは私も同じで今から10年前の中学生の時に10年後の自分についてどう考えていたのか、なんて覚えていません。ラスト、周史ははるかに「10年後にまた逢おうな」と伝えます。この少年が10年でも生きてみようかと思えたのがとても感動的でした。
 私の考える、いい映画というのは約まるところは自分が投影できる映画だ。自分がその登場人物だったらこうするだろうか、なってみないとわからないがそうしてただろう、いや私だったら、こうはしないだろう。。等々と見ながら考えられる映画が、いい映画である。もし見終わってからもしばらく考えられるなら、めちゃくちゃいい映画だろう。自分がもし何々だったら。。と考えさせるに値する映画にはやはりリアリティがなければならない。となればやはり骨子がしっかりした脚本が必要である。だからとても難しいと思うのだ。

 私が日本映画を愛するのはやはり私が日本人で同じ日本人が出てくる日本映画が一番わかりやすいからである。が、私のように映画の主人公に自分を投影している人が少ないのか、昨今の日本映画は如何にスタイリッシュに映像を魅せるか、または小ネタで人を笑わせるかに腐心している。等身大の人間を見せることなく、変人ばかり出してるショーと化している。前者の代表が北村龍平で後者が堤幸彦である。はっきり言って貴重な二時間を割いて2000円近くの金をかける価値はない。こんなのはビデオで3回ぐらいに分けて年賀状でも書きながら見れば充分である。

 もっと映画でしかできないことがあるのではないか。映画のよいところは2時間ないしの時間をきっちりと様々なことを考えさせてくれるところにあると思う。私はスクリーンで見れるのならビデオを持っていたとしても行きたい。それは映画館というところがそうした環境で見せてくれる最高の場所であると思うからだ。

 今年の一月末で幕を下ろした京都朝日シネマが名前を変えて、またも京都の地で上映を始めるという。映画館の完成は来年の年末になるというからまだまだのことになるがこんなに嬉しいことはない。私に映画の楽しみを教えてくれたのがこの京都朝日シネマであった。またこの劇場で様々な映画に出会いたいと思う。まずは本日、この言葉を書き置く。万歳。


 今日の深作まつりは1994年の「忠臣蔵外伝 四谷怪談」。私と同じ70年代後半から80年代に生まれた深作ファンの方の中ではこの作品が初めて見た作品という人も多いんじゃないでしょうか。私もこれと「いつかギラギラする日」はテレビで見た思い出があります。私が映画を見出したのは98年でスクリーンでリアルタイムで見たのは「バトルロワイアル」だけです。(「おもちゃ」公開時に深作監督の名前は知ってましたが見に行かなかった。)この年、東宝は市川昆監督で「四十七人の刺客」を公開。原作の権利を取られた松竹は深作監督で「忠臣蔵外伝 四谷怪談」をほぼ同日の公開でぶつけました。言わば東宝と松竹の「忠臣蔵対決」が行われたわけですが、興行成績は両者共々、大ヒットには至りませんでした。興行成績は「四十七人の刺客」に負けたようですがキネマ旬報ベストテン二位を獲得し、日本アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚本賞とほぼ独占しました。

 詳しくは下記のアドレスを見ていただきたいのですが
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/fiesta/friends/cinema/sakuhin2/sakuhin465.html
忠臣蔵と四谷怪談を組み合わせるというのは奇抜な印象を受けますが、江戸時代に遡りますとこの二つの物語は全く無関係ではなかったようです。この芝居は昔から交互に上映されることが多く、それから鶴屋南北の書いた「東海道四谷怪談」では伊右衛門は判官の家来でお岩さんの父親も判官の家来という設定になっています。当時、忠臣蔵は人気抜群のお芝居でその人気にあやかろうというものもあったと思います。「血煙高田馬場」なんかも後に討ち入りに参加した堀部安兵衛が主人公だからあんなに人気出たんだろうし。何にしても四谷怪談と忠臣蔵の合体というのは全くのデタラメというわけでもなく、深作監督ももちろんそのことを意識していた。

 元禄14年。江戸城松の廊下で刃傷騒ぎを起こした浅野内匠頭(真田広之)は切腹、赤穂藩はお取り潰しとなった。いくらなんでも横暴。喧嘩両成敗ではないのか、殿のご無念は如何ばかりか。赤穂城において血気を口走る堀部安兵衛(渡瀬恒彦)らを迎えての会議で城代家老・大石内蔵助(津川雅彦)は反対し、「仇討ちはしたくない。今は」と言い放つのだった。かくして赤穂藩は断絶。侍は浪人となった。大石は京都の山科に転居して妻を離縁しての芸者遊び三昧。浪士達は方々に散っていった。赤穂藩に召抱えられたばかりの民家伊右衛門(佐藤浩市)もまた、父親より受け継いだ琵琶をかきならしての門付けに立つ毎日であった。ある日、湯女のお岩さん(高岡早紀)が彼に興味を持った。やがて二人は恋に落ち、一緒に暮らし始める。やがて、大石より決起の知らせが入るが伊右衛門はお岩さんと所帯を持つことを選ぶ。しかしそれは長く続かなかった。。。彼は吉良家の重臣伊藤喜兵衛(石橋蓮司)の娘・梅(荻野目慶子)に惚れられており、婿入りすることで仕官することを考えていた。。

 初めてテレビで見た時にはキーキー騒ぎまくる荻野目慶子とか石橋蓮司の「あたし、死んじゃうっ」とか渡辺えり子のお歯黒とか(゜∀゜)アヒャな蟹江敬三とかが目について変な映画だなと思ったもんですが、何回か見ると深作監督が何をやりたかったのかが見えてくる。やはり深作がやりたかったのは「赤穂城断絶」と同じでやはり「仇討ちできなかった男」の悲しみでしょう。浅野の殿様が切腹した当時、多くの家来が仇討ちを心に誓いました。が、結局集まったのは47人。その47人に入れなかった者の中には忠義と義理の間に苦しみ、泣きながら逃亡した者もいますし、また現実に直面して考えを改める者もいました。伊右衛門もそんな一人だったのです。「赤穂城断絶」では困窮のうちに大石に恨み言を残して死んでいく橋本平左衛門という浪士が印象的でした。これが伊右衛門のモデルです。そして「赤穂城断絶」で橋本を演じた近藤正臣が伊右衛門の父を演じています。

 津川雅彦演じる大石内蔵助は従来の忠義の志というより、策謀家として描かれています。当時、江戸の町はいつ赤穂の侍が仇討ちを果たすかの話題で持ちきりで吉良家の方も相当に用心をしていました。勢いで果たせるものではなかったのです。失敗は許されない仇討ちだったのですから。

 見せ場は高岡早紀の「やーっ!!!」じゃなくて、やはりお岩さんが毒を飲むシーンと赤穂浪士の決起の宴と伊右衛門の婚礼が同時間軸で進むあのシーンでしょう。当初、ここは「東海道四谷怪談」の芝居を伊右衛門とお岩さんが一緒に客席に座って、自分たちのドラマが舞台の上で進行していくのを見るという設定にする予定だったようです。深作監督自身も「できていたら、すごいことを考えたなとお客は見てくれたと思うんですけど、ただのカットバックでやらなきゃなんないというときに、本当に泣きたくなくなった」と述べています。でもこのカットバックも充分、見応えがある。この映画ね、すごい複雑で登場人物もたくさん出てくるんですがテンポがすごく良くてぐいぐい引き込まれる。

 そしてあのラスト。吉良の首が落ちた時、生と死の間をさまよっていた伊右衛門は黄泉の世界に旅立つ。やはり彼の人生は討ち入りと共にあったのだ。お岩さんを連れて歩いていくシーンには自らの希望通りに生きれなかった男の悲しみを見たようで泣きそうになった。

監督:深作欣二 脚本:深作欣二、古田求 音楽:和田薫 美術:西岡善信
出演:荻野目慶子、高岡早紀、津川雅彦、石橋蓮司、六平直政、近藤正臣、渡瀬恒彦、名取裕子、真田広之、蟹江敬三、渡辺えり子、火野正平、佐藤浩市

 長らく休んでいた「深作まつり」ですが徐々に更新していきます。で、その復帰第一作が「新仁義なき戦い 組長の首」。1975年11月封切で併映が「五月みどりのかまきり夫人の告白」。どんな作品なんだ。「新仁義なき戦い」シリーズは都合3本作られました。「新仁義なき戦い」は「仁義なき戦い」の焼き直しでしたが(でも観客動員数は仁義無き戦いシリーズ最高の149万人)二作目となる今作は舞台を九州に移しています。

 新仁義なきシリーズの主な特徴は実録の末期に見える無駄なアクション、酷い設定がまず挙げられますが、私としては前作との大きな違いとして菅原文太が決して善人ではないというところを挙げたい。「仁義なき戦い」シリーズにおいて菅原文太は計略をめぐらすこともありましたが、基本的には目立った行動をせずに時流に巻き込まれる狂言回し的な主人公を演じていました。これにはやっぱり広能には美能幸三というモデルがいたからでしょう。美能氏はそもそも映画化に反対でしたし、OKしたあとも自分に関する設定には女に関する設定を削らせています。もっともこれは脚本の笠原和夫が女に関するエピソードを多く盛り込み、そこだけのカットでとどめるという作戦だったようですが。笠原にしても深作にしても美能氏から多くのネタをもらってるから、やはり主人公の性格を変えることはできなかったんでしょう。いや、別に変えなくてもいいんだけどね。

 そうした制約から外れたか今作の文太は槙原(田中邦衛)みたいにとってもダーティー。流れ者のヤクザ、いわゆる”旅の者”で北九州暴力団の大和田組の幹部・楠(山崎努)に雇われて組長を射殺して、服役します。出所後は今や大和田組長の婿となり、組の実権を握るに至った楠より、何らかの”お返し”があることに期待しながら刑期を勤めます。そして。。

 出所してきた黒田(菅原文太)は早速、楠を訪ねます。が、楠は生来からのヒロポン中毒が昂じて今や廃人状態。今や一人の若衆もおらず、シノギどころか組長の娘・美紗子(梶芽衣子)のヒモと成り下がっていました。組長の大和田(西村晃)にとりなしを頼むがけんもほろろで挙句の果てには破門まで言い渡される始末。当然、怒り狂う黒田。自棄になった楠は組長を拉致。愛人(中原早苗)を殺すと脅迫して500万円を出すことを約束させた。

 一方、大和田組内部は大モメに揉めていた。幹部の赤松(室田日出男)が独立を宣言し、若頭の相原(成田三樹夫)、井関(織本順吉)と対立を深めていた。数日後、相原は黒田に500万円分のシャブを譲り、これを売って金をするように依頼する。金に困っている黒田は早速、若衆にシャブをさばかせるが赤松の縄張りだった為に赤松との抗争が始まった。実はこれは赤松と黒田を争わせる相原の策略で、赤松は黒田の若衆に刺し殺されてしまう。

 相原は大阪の親分(内田朝雄)と結んでおり、大和田組の跡目を狙っていた。それを知った大和田は跡目を二番手の井関に譲ることを決定。黒田の抱きこみにかかった。怒った相原はキチガイとなった楠をそそのかし、大和田を殺させてしまう。楠をクルクル病院に送り込んだ相原は強引に二代目を襲名。黒田はそれに真っ向から対決することを誓うが。。

 後半のカーチェースが目を引きますがこの作品の醍醐味は各自の策士っぷり。相原、黒田、井関の腹の探り合いは「仁義なき戦い 代理戦争」を思わせるようで見応えがあります。金に異常な執着を見せる文太の悪人ぶりがえぐい。山崎努に組長を拉致させる、若衆に人の縄張りでシャブをさばかせる、自らは前面に立たずに井関の為と嘯き、カーチェースを敢行。さらに若衆の小林稔持を鉄砲玉として送り出す。。まさに手段を選ばず。後ろ盾を持たない”旅の者”だから当たり前かもしれないけど。

 深作映画の初登場となる山崎努の駄目ヤクザっぷりがすごい。将来を嘱望されて組長の娘をもらったのに今や廃人状態。愛想をつかした組長に逆ギレして撃ち殺してしまう。銃を向けられた瞬間の西村晃の演技もいい。「あー情けない。なんちゅう男や」って顔をして背中を向けたところに弾をブチこまれる。逃げ惑う組長に銃弾を散々と打ち込んでペタリとへたり込んでしまう。こんな奴とは絶対に友達になりたくない。シャブ中のキチガイとしては「新仁義無き戦い」の八っちゃん(宍戸錠)も怖いですが、病的にどこか哀れさを誘うこの楠は山崎努以外は絶対にできないと思う。

 女性も負けておりません。「仁義なき戦い 広島死闘編」と同じく破滅型亭主を背負わされる梶芽衣子の必死っぷりも印象に残りますが「下がりボンボン」のひし美ゆり子さん(以下、姐さん)にとどめを刺します。「下がりボンボン」ってのは所謂”さげまん”のことで姐さんを愛人にした男が次々に死んでしまう。成田三樹夫は彼女を愛人にしたのはいいのですが怖くて前からできない。(同じことだと思うが)胸をあらわに文太に「あんたは前から?後ろから?」と微笑む姐さんに勝てる者なんか誰もいません。もっとも「不良番長 一網打尽」においては「アソコがガバガバのトルコ嬢」というすさまじいヨゴレを演じています。元々はウルトラマンシリーズのアイドル。何が彼女にあったのでしょうか?ちなみに彼女は今でも現役バリバリでホームページhttp://www2.tky.3web.ne.jp/~boshichi/も持っておられます。なんか写真集がリバイバルで発売されまくってるらしい。ひし美さん本人が出演映画に対する一言コメントのコーナーがあります。コメントも「覚えてないですけど、ホステスの役でしょ?、どーせ(笑)」とか「撮影スタッフのまとまりがない」とか本音+投げやりなコメントが最高です。「プレイガール」もDVD化したし、下がりボンボンブームが来るか?(その言い方はやめれ。)

 それから特筆すべきところとしてはフォークシンガーの三上寛演じる”コバヤシアキラ”。脚本にはなかった三上のアドリブのようですが、名前とその死に様のギャップがとても悲しい。相棒の小林稔持もピラニア軍団に恥じない見事な死にっぷり。それから千葉真一がひっそりと出演しています。探しましょうね。

監督:深作欣二 脚本:佐治乾、田中陽造、高田宏治 撮影:中島徹 企画:日下部五朗、音楽:津島利章
出演:菅原文太、内田朝雄、ひし美ゆり子、小林稔持、梶芽衣子、山崎努、岩尾正隆、成田三樹夫、川谷拓三、八名信夫、小林亜星、野口貴史、福本清三、中原早苗、渡瀬恒彦、汐路章、三上寛、室田日出男、織本順吉、西村晃、千葉真一、成瀬正
 なかなか忙しくて更新できませぬ。深作まつりももう随分止まってるし。。書く気が失せたわけではないのですが、作品自体が見れておりません。まあもう少しお待ちを。。いずれ、どこかで帳尻は合わせるつもりです。

 で今日ご紹介するのは遅くなりましたが釣りバカ日誌シリーズ最新作「釣りバカ日誌14 お遍路大パニック」。監督は「サラリーマン専科」シリーズの朝原雄三。山田洋次のお弟子さんで「男はつらいよ」「学校」「たそがれ清兵衛」の助監督をやっています。そのせいか、今回の「釣りバカ」は「男はつらいよ」にそっくり。まあ脚本は山田洋次、朝間義隆のコンビなのもあると思うけどね。

 「釣りバカ日誌」シリーズは元々「男はつらいよ」シリーズの併映作品として平成元年からスタートしました。「男はつらいよ」は最後まで松竹最大のドル箱でピンでお客を呼べた(質的に素晴らしかったわけではない)のですが、少しさびしい。おまけもつけてやれ、と。「1」「2」がそこそこ評判がよかったのでシリーズ化が決定、「7」まで「男はつらいよ」の併映作品として「釣りバカ」は製作されています。いずれ来る「?デー」に備えて「男はつらいよ」の後釜を作ろうと考えていたのだと思います。

 「男はつらいよ」終了後、森崎東の「スペシャル」と「さすらいのトラブルバスター」(井筒和幸の失敗作)との併映を経て「釣りバカ日誌」は「9」より松竹の夏の顔としてピンで公開されます。「花のお江戸の釣りバカ日誌」まで栗山富夫がメガホンを取り、「11」「12」「13」は松竹若手のホープ本木克英がメガホンを取りました。今では松竹の目玉になっているのは皆様、ご存知のとおりです。何しろ週刊文春によると高知県にロケ代として6000万を請求したとか。えらくなったもんです。

 釣りバカ日誌の醍醐味とはぐうたら社員のハマちゃんに仕事一筋で趣味などに見向きもしなかったスーさんが憧れて釣りに興味を抱いていくところにあります。仕事においてハマちゃんはさっぱりですが、本人はいたって楽しそうです。今までのサラリーマン喜劇において、その笑いを誘うものは出世に憧れるあまり、たいこ持ち状態の課長さんに奥さんの目を盗んでの浮気(スナックに入り浸る程度のもの)、嫁さんに頭があがらない旦那の奮闘劇です。社長シリーズがその典型と言えますね。

 それに対し、会社での出世ばかりが幸せじゃないよ、という問いかけをしたのが「釣りバカ」シリーズだったのです。バブルの狂騒を経て、今まで身を粉にして働いてきた会社からあっさりとクビ飛ばされる時代。ハマちゃんのような生き方もいいかも?と思う人が多く出てきたのです。まあはっきり言うと私もそうです。映画観る金を稼ぐ為に働いてるみたいなところはあります。ごめんね。

 ただ、この時代においてハマちゃんみたいな社員はリアルに存在するのだろうか?ハマちゃんは本当に遊んでばっかりなのか?鈴木建設は今一番厳しいと言われる中堅ゼネコンじゃないか、ハマちゃんみたいな社員がいる余裕があるのか?本木監督がメガホンを取った「12」「13」が従来より、やや趣きを変えるのはこの問題に挑戦したからです。

 従来のシリーズに全くなかったとは言いませんがハマちゃんにサラリーマンっぽいところを持たせてみたのです。例えば「12」では仕事中に釣具のメンテナンスをする超駄目社員ですが釣り仲間のネットワークを使って大きな仕事を取ってきます。続く「13」では大仕事を一人で取ってくる”敏腕”営業マンで美人の同僚を得意先のドラ息子の見合いに連れて行こうとする”狡猾”なところも見せています。これは恐らく、当時ドラマでヒットしてた「明日があるさ」の影響が大きいと思われます。サラリーマンのつらさ、きびしさみたいなものがないと見ている人がシラけると。

 ただこの路線も「明日があるさ MOVIE」の大コケもあったので映画にして見に来る人がいるのか、という疑問も残ります。

 それに対し、今度の朝原演出は前作のそうした部分を一部残しながらも従来の路線にもう一度戻っています。始めに書いたとおり、「男はつらいよ」にそっくりで脚本も従来の焼き直しです。正直、今回の脚本はひどい。引きこもりの子供がハマちゃんと一緒に釣りに行くことで元気になるというのは前作と全く同じだし、母親がトラック運転手という設定は「学校?」と全く同じです。山田洋次も朝間義隆もこんな手抜き仕事するぐらいならもう降りたらどうかね?はっきり言ってもう限界で?

 今回の作品はつまらんとは言わないが、ありがちだし、これが松竹の目玉となるとちとしんどいし、さびしい。皮肉ながら1000円という額は適正なのかもしれない。それから「釣りバカ」が迎える危機は三国さんの問題だろう。前作もそうだったのだが、出番がほとんどなかった。やがて三国さんが引退したら、スーさん役はどうするんだ?「釣りバカ」自体が続くのか?松竹という会社はまた同じことを繰り返すのか?今回の「釣りバカ」はそうした様々な課題が浮き彫りになった作品になったと思います。朝原監督、大変やぞ。ただ、三宅祐司と西田敏行のミュージカルシーン(谷啓が出てます。)は面白かったし、しっかりとした映画を作れる人だと思うので山田洋次に遠慮しないでのびのびと撮ってください。期待してます。

監督:朝原雄三 脚本:山田洋次、朝間義隆 美術:須江大輔
出演:西田敏行、三国連太郎、三宅祐司、笑福亭仁鶴、間寛平、斉藤洋介、加藤武、さとう珠緒、濱口優、國村準、鶴田忍、笹野高史、中本賢、西田尚美、奈良岡朋子、松村邦洋、浅田美代子、高島礼子、谷啓
 今日、紹介するのは知る人ぞ知る名シリーズ「岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説」シリーズ最新作「岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説 番長足球」。95年から始まった「岸和田少年愚連隊」シリーズはこの前作の「岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説 エピソードファイナル スタンドバイミー」で感動的な結末をつけて終わったはず(マジに少し泣いた)なんですが、「カオルちゃんシリーズ」だけは続行。映画秘宝5月号のインタビューによると「観たお客さんに好評だったからね。やっぱり続くことになったんだよ!」らしいです。確かにこれ、回転率がめちゃくちゃ良くて貸し出しランキングは常に上位。これも関西特有なんかもしれませんが。。ただ脚本はNAKA雅MURA(名前です)から友松直之にチェンジ。監督は力兄曰く「『カオルちゃん』以降、信頼して全部任せられるようになった」(すごい褒め言葉だ)宮坂武志がまたもやメガホンを取る。この人の「人斬り銀次」も面白いので見ましょうね。

 「カオルちゃん」シリーズってのは、「岸和田少年愚連隊」に出てくる不良親父の高校時代を描いたシリーズです。井筒和幸版では小林稔持が演じており、電車を途中で止めたり、軽トラ襲ったりするむちゃくちゃなオッサンでした。学生時代、岸和田在住の友人がおったのですが実際に電車を止めたオッサンはおったそうです。原作は読んでないのですが、中場利一の自叙伝的な作品ですし、多分モデルはおったんでしょう。が、多分この作品のカオルちゃんは全くのオリジナル。何しろ、主人公が学ラン着た竹内力なんですから。。。大阪弁でリーゼント。こうなると「ミナミの帝王」になってしまうので、力兄は考えた。うなってタンばかり吐き棄てて、時にはよだれたらして、目を剥いて、ほとんど何を言ってるんかわかんない、カッコよさから無縁で、でも喧嘩はめちゃくちゃ強い、しかも変な髯まで生えてる(イメージとしてはじゃリン子チエのテツやな)カオルちゃんができあがった。一本調子で同じ演技しかしないで高いギャラもらってる俳優(誰とは言わん。窪塚とか篤郎とか永瀬とは言わんよ)が多い中、こうしてちゃんと工夫している力兄はエライし、本当に頭が下がる。

 60年代の岸和田。「出かけるでえ」と言い残し、旅にでた村山カオル(17歳)。彼には夢があった。それは番長のトップである”全国高校総番”になる為に旅に出たのだ。全国の番長を一撃で倒すカオル。遂に返還前の沖縄番長を倒し、念願の”全国高校総番”になったのだった。。が、さすがの彼も定時制高校を忘れていた。早速、そのためだけに地元岸和田の定時制高校に入り直す。が、早速叩きのめした番長がサッカー部のキャプテンだったことからサッカーの試合をさせられることになる。何しろ、この定時制高校は今度の試合に負ければ廃校になってしまうのだ。(アフォな!)が、カオルちゃんには悲しい思い出があった。子供の頃、サッカーができずに「カオルはへたれ」といじめられたのだった。番長は弱いもんを守らなあかん、とミツエ(伊佐山ひろ子)に言われ、サッカーに挑戦するが。。。案の定、ボールを蹴ることができない。。。

 「岸和田少年愚連隊」の最後をかざるにふさわしい感動的な前作と打って変わって今度の作品は完全なドタバタコメディ。題名は「少林サッカー」の原題「少林足球」から取ったパロディというだけで私はご機嫌だったのですが映画としてもなかなか面白い。カオルちゃんの復学を記念してか、エピソード1に原点回帰した、ちゃんとした学園物になっています。貧乏で飛田新地で体を売りながら学ぶマネージャー(すげえ設定)、ヤクザを親に持つ不良娘の明美(やはり不良娘の名前は明美だよな)、サッカーを純粋に愛する兄ちゃん、意地悪な教育委員会に実は心優しい不良たちとベタすぎるぐらいベタな図式でこのまま行くとNHK大阪の作るつまらんドラマなんだが、ここにカオルちゃんという強烈なキャラが入るだけでこんな映画になってしまうのだ。最近、脇にもおかしな人ばかり出してそれでよし、という風習があるが強烈なキャラははっきり言って一人でいいのだ。そのキャラがそれだけ強烈ならば。残念だったのはシリーズを通じてカオルの回りをうろちょろしてた田口トモロヲちゃんの出番が減ったこと。トモロヲちゃんはおそらく、ノーギャラで出演してるんだと思うんだが今回は時間が合わなかったみたい。代わりに山口祥行がレンガを持ってかかってくる。かっくいい!

 不良娘の明美を演じるのは中村愛美。「リップスティック」に出てる時は可愛かったんだ(あれも大概の役だったが)が「血を吸う宇宙」で奇妙奇天烈な役をやりだしてライク・ア・ローリング・ストーンズ。私生活でパンツ売り払って、「何が悪いんですか」と居直ったりとか、かなり変な人になってしまいますた。正直に言うと明美やってるのが中村愛美だということはエンドロール見るまで気づきませんでした。

 喧嘩のシーンはなかなか迫力があって特に同じプロダクションの山口祥行との喧嘩はなかなか迫力があります。サッカーのシーンで魅せ場はほとんどありませんがアクションはヘボくても「火山高」など遠く及ばず、「少林サッカー」にも肉薄。。とは言いすぎか。まあとにかく、ビデオ屋にGO!だ。

監督:宮坂武志、脚本:友松直之、音楽:奥野敦士、製作:中澤敏明、松下順一
出演:竹内力、羽賀研二、小沢仁志、古井榮一、船木誠勝、中村愛美、伊佐山ひろ子、山口祥行 、 池乃めだか、中山美保、田口トモロヲ
 もう10月だ!あと三ヶ月で年末だ!9月末で158本鑑賞。200本まであと42本。いけるかな。。いけますよね。。ちなみにスクリーン鑑賞本数です。それとしばらく休んでた深作映画ですが、来週からドカーと行くさかいに準備しとけや。

☆忠臣蔵外伝 四谷怪談 9/19 シネ・ヌーヴォ
★★★★★
→初めてテレビで見た時には最後のビームばかりが気になって「酷い作品だな」と思ったがこうして見直してみると普通に面白かった。まあ明らかに演出過多であると思うし、荻野目慶子はいらんと思うが。「仇討ちはしたくない」なんて言う大石をはじめてみた。そうか、こんな忠臣蔵が撮りたかったんだな。以前、どこかで高岡早紀の乳が最高じゃ、と書いたような気がするがスクリーンで大写しになる乳を見るたびに「う、うし。。。」と思ったことを白状しておきましょう。

☆いつかギラギラする日 9/19 シネ・ヌーヴォ
★★★★★
→充分に面白い映画なんだと思うが、深作が不振の日本映画界で久しぶりにアクションを撮るという意味合いからすると大ヒットせねばならなかった作品だったんだと思う。脚本を何回も書き直したこととか、とどめのパトカーの上をグシャグシャを見ても深作監督は最後まで乗り切れなかったんだと思う。大体、ロックなんかに興味ないのになんでロックなんかを題材にしちゃったんだろ。だから一八が中途半端になったのね。それから荻野目慶子ははっきり言っていらんかった。ちなみにこの作品がきっかけになってジュディマリが誕生したのは有名な話。

☆県警対組織暴力 9/19 シネ・ヌーヴォ
★★★★★
→おそらく、これ以上の作品はもう出てこないと思う。俳優の使い方は、どんな端役をとっても(汐路章に佐野浅男に遠藤辰雄)これ以上のうまさはないと思う。脚本が完璧で演出も完璧。たっぷり堪能させてもらいました。松方が特に最高です。

☆バトル・ロワイアル特別篇 9/19 シネ・ヌーヴォ
★★★★★
→この映画を見たのが「深作まつり」のきっかけになったんだよなあ。久しぶりにスクリーンで見ましたが同じところでドキドキし、同じところで目が潤み、同じところでニヤリと笑ってしまいました。改めて見るとたけしってのは本当にすごい役者だ。彼が出るだけで空気が変わっちゃう。それからノブが死ぬところで思わず、ニヤリと笑った私はやはり極悪人なんでしょうか。

シモーヌ 9/21 東宝公楽
★★★
→数年前にCGアイドルの何とかというのが出て、なんか写真集も確か発売になったような気がするけど、それから何も聞かないと言う事はあんまり売れなかったんだろうね。日本でもどこかのゲーム会社がオールCGのゲームを題材にした映画を製作して会社を合併せなあかんほどの負債を背負ったのは記憶の新しいところにございます。これが本当にCGだったらリアリティがあったかもしれないけどこのキャラクターを演じるのはモデルさんを一部デジタル処理したもの。このモデルさんがまあ、すごい美人で映画よりも監督がこの後、この娘をゲットしたサイドストーリーの方が妙に気になる。おまえ、ただこの娘に近づきたかったから映画作ったんちゃうか、と問いたい。問い詰めたい、小一時間ほど問い(略)

☆白い巨塔 9/21 京都文化博物館映像ホール
★★★★★
→これのドラマもやはり見たくなりました。DVDも出てるそうですがスカパーでやらないかな。本気で見たいんだけど。

☆ローマの休日<デジタル・ニューマスター版> 9/27 テアトル梅田1
★★★★
→この私が「ローマの休日」を見るなんてガラにあわないですが(笑)実はまだ見てなかったんです、これ。映画館で見れてよかったです。昔の女優さんは可愛いですねえ。もっと感動する作品かと思ったら普通に面白かったです。グレゴリー・ペックも死んだんですよね、そういや。

ドラゴンヘッド 9/27 ナビオTOHOプレックス(シアター6) 
(´・ω・`)ショボーン
→そもそも監督を飯田譲治に頼むところから成功するわけがなかった企画なんだがこう見直すとなんだな、他にも問題が山積だなゴルァ!まずはSAYAKAが本当にうざい。こいつ、こんなにブサイクだったか?もう少し可愛かったと思うんだが。。ただ猫みたいにヒンヒン泣いてるだけでどうしてこんなのを守るために妻夫木は頑張ってるんだ?つうか、一度くらい抱いとけ!挿れとけ!PG-15になりたかったからだろうか、血もほとんど飛ばないし、こうしたパニックムービーに付き物の性欲の話も全然出てこない。そもそも高校生のガキに見せる為に作ってるから大人の鑑賞に耐えうるわけないのだ。、だったら、一般公開せずにネットで公開しとけ。インチキだ!!だからちっとも臨場感もないし、共感もできない。こういうのはなんだな、やはり今村昌平がやってだな。もっと人間のたくましさみたいなのを描いて欲しかった。多分、主演は小沢昭一だろうが。とにかく、原作者も含めてこの映画製作者に言いたい。「人間をなめるな。」今年一番、むかつかせた映画で有力なワースト候補だ!アホが!何が三浦ノーヒットノーランじゃ。

レボリューション6 9/27 動物園前シネフェスタ(SCREEN4)
★★★★
→なんだな。ドイツという国は日本と同じ敗戦国だが、こんな粋な映画が撮れる生かした国
なわけだな。最近、「es」とか「ラン・ローラ・ラン」とかイカした映画ばかり出しておる。「ビター・スウィート」も行くぞ。

ナイン・ソウルズ 9/28 京極弥生座1
★★★
→始めはテンポの悪さにこれはあかんかな、と思ったが後半、9人のそれぞれの末路が出てくるに連れてぐいぐい惹きつけてくれた。豪華キャストに助けられた面があるが、出てくる登場人物一人一人がピチピチしており、大層楽しめた。私が一番好きだったのはキレて10人以上の人を殺してる男が捕まるシーンだ。ブチ切れて制御できない自分を自分でボカスカ殴る。あのシーンが大層カッコよかった。なお、この映画の実質的な主役はマメ山田であることは言うまでも無い。白木みのる以来のビッグスターの登場だ。ヨイショーヨイショー。

 今日、紹介するのはドイツ映画の「レボリューション6」。製作はソニー・ピクチャーズ・ワールドシネマ。大手配給会社のソニー・ピクチャーズの子会社で聖林以外の地域で映画を製作して配給していこうという企画です。この秋から「レボリューション6」から始まって同じくドイツの「ビタースウィート」に今敏の「東京ゴッドファーザーズ」が公開されます。東京の方は知りませんが関西では「レボリューション6」も「ビタースウィート」も動物園前で一週間だけのロードショー公開でちとさびしい。まあロードショー公開されるだけ、マシかもしれませんけど。ソニーの企画もどこまで続くかわかりませんが、面白い企画だと思うのでぜひ頑張って欲しいです。期待してます。

 80年代のベルリン。アナキズム(無政府主義運動)の闘士であった6人グループはドラッグをやり、酒を飲み、セックスをし倒し、警官に小便をぶっかけるなど楽しい毎日を過ごしていました。毎日のように爆弾を作り、町の空家に設置して警察に犯行予告のフィルムを送りつける。警官とデモ行進の衝突。これらはみな、ベルリンにとっては日常の風景でした。が、その後、ベルリンの壁が崩壊、東西ドイツ統一、ソ連の崩壊、統一ユーロと時代はすっかり変わってしまった。6人のうち、ホッテとティムを除く4人は堅気になっていた。

 そして現代のベルリンで爆発事故が起こった。古くから空家だった豪邸で突然、爆弾が作動したのだ。それは、まぎれもなく彼ら6人がしかけた爆弾だった。警察は捜査に入り、80年代の過激派がしかけた爆弾だと断定。80年代、過激派運動と戦い続けた敏腕刑事マフノフスキーが指揮を取り、ホッテがガサ入りを食らった。押収された中には爆弾予告のフィルムもしっかり入っていた。

 何とか警察から取り戻そうと6人はまたもや集結する。小心者で現在、検察官を目指しているテラー、売れっ子コピーライターに転身したマイク、育児に専念するネレ、ヤンエグとの結婚を控えたフロー。みな、幸せな生活を送っていた。ホッテとティムは今でも運動をやっているが実情は家賃も払えないでティムが車椅子のホッテを介護するので精一杯。6人は警察に忍び込んでフィルムを盗み出す作戦を計画。ジャーナリストに化けて警察に忍び込むが、マフノフスキーに阻まれる。ティムは警察に爆弾を仕掛けて、フィルムごとぶっ飛ばそうとする計画をたてるが。。

 いや、これにはやられました。こういう映画ね、実は考えていたんですよ。若い頃、主義運動やりまくってた人が後始末をつけるって映画。アナキズムと学生運動の違いはあるけど、日本とドイツのこういう状況って似てると思うんですよ。日本でも60年代から70年代にかけて学生運動が凄くてノンポリなんて言葉が許されないで勉強する為に大学に入るような奴はイモだ、ってそういう時代があったわけですよ。私の親父の世代ですね。今からは考えられない左翼運動が盛んだった。現代も完全に消えたわけでなく、そういうサークルは今でもあるし、大学一回生の時にそういう運動をまだやってる先輩に会ったこともあります。「インターナショナル」とか岡林信康を知ってる(本当にただ知ってただけなんだけど)と言ったらえらく喜んでくれてね。ただ、私は左翼運動ははっきり言って嫌いだし、日本赤軍もよど号もアホだと思う。週刊金曜日も朝日新聞も焼かれろと思う。でも、多分、自分がその時代に学生をやってたら運動をやってたと思うのね。私のことだから途中で辞めてたと思うけど、多分やってた。そういう意味での興味はあるし、あの運動やってて今、カタギやってる人が何を思うかというのは興味がある。

 日本でも高橋伴明の「光の雨」って作品がありますがこれが全然面白くないし、はっきり言って何も総括しとらへんのです。大体、日本の左翼運動家で曲がりなりにも総括したのは塩見さんぐらいでね。肯定ででも否定でもいいんだけど、映画人でも誰もやっとらん。そういう状況に対するイラツキというのは相当、ありますね。おまえら、一体何を考えて運動やっとったんだ、と。

 せっかく集結した6人ですがずっと運動やってる2人とカタギになった4人では相当に温度差がある。ティムはまた運動ができる!とはしゃいでいるのですが、ホッテを含めて他の5人はちっともそうは考えていない。そのギャップがまた悲しいね。で、そのティムの一番の理解者が実は刑事のマフノフスキーだったりするわけです。「左と右の対決は終わった。これからは勝ち組と頑固な負け組の対決だ」という言葉が全てを象徴するような気がする。非常に微妙な問題をテンポよく描いてエンターティメントにしています。日本でもこんな映画があればいいんだけど、日本の映画界はまだまだ未発達で多分、怒る奴が出てくると思うし、(多分、荒井晴彦は怒る)それに答える観客も少ないだろう。でもそろそろこういう映画もいると思うんだけどね。
踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ! 8/1 イオンシネマ久御山シネマ2
判定不能
→サスペンスとしては凡作で、何の工夫もない酷い作品なんだが、この作品がひとえに大ヒットを続けているのはやはり何かひきつけるものがあるのだろう。最近、スカパーで録画したドラマを見ておるのだがこのドラマは刑事ものでありながら事件は平凡でその主題は組織の問題であることに気づいた。その昔、「社長シリーズ」という一連の映画があった。主演は社長役の森繁である。社長の1日の生活なんてほとんどの人は知らない。が、それにしてもこの映画がヒットしたのは社長と言えども所詮は組織の一員であり、会長には頭が上がらず、妻からは責められ、子供は生意気。どんな組織であろうとも、組織の一員である限り、組織の悲しみ、組織の楽しみを感じられる。だから人々は社長シリーズを楽しんだのである。「踊る」シリーズも結局それで同じで警察と言ってもサラリーマンで支店と本店の格差は存在するのである。人々は現場の苦しみを体現する青島に拍手を送り、理想的な上司像、室井に「ああ、俺の上司が室井さんだったらなあ。。」と思うのである。まあよくできた映画である。日頃、映画館に近づかないサラリーマン層を映画館に呼んだだけでもすごい功績があると思う。が、アメリカ映画に対抗するにはこうした方法しかないことに気づいたのが映画界の人間ではなく、所謂「テレビ屋さん」であったことに本当に日本映画のヤバサを感じる。実写の日本映画にこんな客が集まることはまずない。お祭である。お祭に星をつけるのは無粋なので星はつけないことにする。

チャーリーズ・エンジェル フルスロットル 8/2 MOVIX京都シアター6
★★★
→なんつうか、最期までのれんかったというのが本当のところか。確かに面白いんだが、見終わっても、心に残る物はほとんどないです。どんな映画か、あんまり思い出せないのだ。ちなみにこの映画を見て帰ったあとに39度の高熱を出して倒れた。こんなことしか覚えてないのだ。

blue 8/4 みなみ会館
★★
→小西真奈美は78年生まれで私と同い年らしい。彼女を初めて見たのは「ちゅらさん」で女医の役だったので、なんか大人のイメージがあって、女子高生の役はなんか新鮮でした。

☆青べか物語 8/7 高槻市立生涯学習センター
★★★★
→物語の舞台になってるのは今をときめく千葉県浦安市。今でこそ、やれネズミーランドだのデズニーランドだの騒いでいるが、一昔まえはこんなド田舎だったのだ。浦安なんて成人をにデズニーランドでやるんだと。アメリカの植民地か!ということでチバリーヒルズに住む千葉県人は自らを律するためにまずは見ておけ。東野英治郎に加藤武、市原悦子が「YEEEEEE!!!」と叫びながらセックスしまくり、酒を飲みまくる。で、それにビビる森繁。まあこんな映画です。(半分、嘘)

☆暖簾 8/7 高槻市立生涯学習センター
★★★
→船場の商家を舞台にした映画。「夫婦善哉」でも見せた森繁のなんとも言えない、はんなりとした演技をお楽しみやす。乙羽さんが可愛いです。

茄子 アンダルシアの夏 8/14 MOVIX京都シアター6

→爺さんが日本語でスペインの歌を歌うところで力が抜けた。1時間もない映画で1000円も取ろうたあ、いい度胸だ。

マイ・ビッグ・ファット・ウェディング 8/14 MOVIX京都シアター6
★★
→正直、どうってこたあない作品。「ベッカムに恋して」とか「僕の国、パパの国」と同じ路線。つうか、世の中にこれだけ都合のいい男がいるか?アメリカでギリシャ正教に入るってのは日本で霊友会に入ることよりも勇気がいるぞ。

☆沖縄やくざ戦争 8/14 京極弥生座1
★★★★★
→フィルム状態が悪くて、なんだかわからないまま終わった。でもこの映画をフィルムで見せてくれたRCSには本気で感謝したい。これからも頑張ってください。期待してます。

HERO/英雄 8/16 MOVIX京都シアター3
★★★★
→「彼は言ったのです。アメリカに反対することでは何の解決もしない。アメリカが全世界が統一することで平和が訪れる、と」
「・・・・私の真情を理解するものが中国にいるとは。。」
まあこういう映画です。アクションは素晴らしいのでこの点をつけるが「始皇帝暗殺」に比べると物語に深みも何もない、凡作。アクションだけで見せてる、お菓子映画です。つうか、この思想がむかつく。始皇帝が統一して戦が減ったか?歴史を自分の都合のいいように曲げるんじゃねえぞ。つまり台湾とかチベットは平和の為に黙って従っておけ、とでも言いたいんだろうか。だから中国って国は大嫌いだ。どう言いつくろっても中国は軍事独裁の嘘つき国家じゃねえか!

少女の髪どめ 8/16 みなみ会館
★★
→正直、つまんなかった。私なら金を持ち逃げしたアフガン人をボコると思うが。

☆私は貝になりたい 8/16 京都文化博物館映像ホール
★★★★★
→頭だけで考えて戦争を語る者はこういう作品を見て欲しい。今こそこういう作品が求められてるのではないか。

☆軍旗はためく下に 8/17 シネ・ヌーヴォ
★★★★
→いよいよ始まった深作大会。これは深作が撮った、唯一の自主映画。あくが強い作品だが不思議に忘れられない作品である。

☆ジャコ萬と鉄 8/17 シネ・ヌーヴォ
★★★
→丹波と健さんの共演って「網走番外地」だよな。やはり北海道なんだな。痛快無比な娯楽作品。

☆白昼の無頼漢 8/17 シネ・ヌーヴォ
★★★★★
→ギラギラした初期の作品。中原ひとみがかわいい。

☆君が若者なら 8/17 シネ・ヌーヴォ
★★★
→これ、いい作品だからDVD買おうと思います。

マトリックス・リローデッド 9/3 MOVIX京都シアター2
★★★★★
→一度見てもわからんことが多すぎたので、もう一回見に行ってきた。やっぱりこれはよくできている。実はモーフィアスが唱える夢も預言者もキーメイカーもみんな、マトリックスのうろグラムの一部でザイオンの存在自体がマトリックスのプログラムだったのだ。前作で決まっていた世界観を全てひっくり返して、これからどうなるんやろと観客を不安に陥れさせる。これは次も見なあかんな!という気にさせるのはさすが、というべきやろ。結局、従来のメシヤとは違う選択肢を選んだネオによって人間の絶滅カウントダウンのスタート。ここに一つのバグが生まれてもう一つのバグがスミスである。どういう結末を迎えるのだろうか。それからたった一人生き残った戦士、これは多分スミスだろうが、も気になる。それからナイオビは死んだのか?

地獄甲子園 9/5 シネ・リーブル梅田1
★★★
→これ見たさに有休取りました。(笑)実は画太郎先生の漫画は読んだことないのですが、そこから立ちのぼる匂いだけで私は鑑賞を決めました。何故か和歌山市がお金を出しており、和歌山市市長 旅田卓宗(現在、容疑者&市議会議員)というクレジットが出てるのがなんともうさんくさい。外道高校のナインの半分は和歌山市の職員だそうです。旅田はんはなんでこの映画に金を出そうと思ったんやろか?映画の方は自主映画臭ぷんぷんのアホ映画で一切野球せずに殴り合ってます。アホです、アホすぎです。坂口拓さんはもう少し、真面目な役者だと思ってましたがこんなアホだったのですね。声も高いし。おばはんとのカンフー対決が最強に笑えました。ただ、少しは野球してくれ。(笑)

地獄甲子園外伝「ラーメンバカ一代」 9/5 シネ・リーブル梅田1
★★
→これを一本に加えることにはやや抵抗があるんだが、まあいいや。10分もないけど。菅田俊先生が「AIKI」で見せた暴力空手家のセルフパロディを披露。多分、見た人しか笑えないのでとりあえず、「AIKI」も見ておきましょうね。

アダプテーション 9/5 梅田ブルク シアター5
★★
→「マルコビッチの穴」自体がハマらなかった人にはこの作品は面白くないと思う。私もその口だったので正直、退屈で仕方なかった。チャーリーカウフマンって人は迷走しきった話をそれなりの筋道を立てて整理して結末まで持っていってしまうところのスリル感が醍醐味なんだが、そこまで根気がないとしんどい。ビデオで見てたら途中で見るのを止めちゃうだろうよ。「アメリカン・ビューティー」で隣家の軍人を演じたクリス・クーパーが「前歯が無くてもカッコいい」男を好演。これを見るためだけでも木戸銭払う価値はあるがまずは「遠い空の向こうへ」を見ておきましょうね。
パンチドランク・ラブ 9/5 梅田ガーデンシネマ1
★★★★
→こんな映画を(・∀・)イイ!!というだけでも充分、恥ずかしいんだが今時の映画でこれほどストレートにアホなのは珍しいので、皆さん恥ずかしがっときましょうね。サントラ、毎日聞いております。下手くそな歌なんだが、ツボに入った。

☆鴛鴦歌合戦 9/8 高槻市立生涯学習センター
★★★★★
→高槻松竹がひそやかに営む名画座も今年はこれでおしまい。この映画は戦前に作られてフィルムが一本しかないのだが、よくまあこんなのを発掘したなあと思う。色々なところで話題になって私も京都映画祭に一度見ていて二回目の鑑賞になるが、充分面白い。堪能した。全編、演技してる時間よりも歌う時間の方が長い。ディックミネが「ぼくは陽気なとのさま〜」と現れたら、志村喬が「さーてさてこの茶碗〜」と歌い出す。市川春代も「とかく、この世はままならぬ。日傘差す人、作る人〜」とド下手に歌いまくる。日本映画の歴史は羅生門から、というのが正史に異議申し立てを叩きつけるのがこの作品と「人情紙風船」だ。戦前の映画界はかくも晴れやかで発想が自由であったのだ。あなたの身近で上映される機会があるのなら、下帯を売り払っても行く価値がございますぞ!

☆警察日記 9/8 高槻市立生涯学習センター
★★★★
→これも1955年という大層、昔の作品で三国連太郎、森繁久彌、宍戸錠もみんなめちゃくちゃ若い。田舎の警察を舞台にした人情喜劇です。田舎と言えども、捨て子に無銭飲食に人身売買と事件は盛りだくさん。たくさんのエピソードが満載なのだが中でも一番記憶に残ったのが捨て子の話であろう。後に「赤ひげ」での好演が話題になる二木てるみのデビュー作でもあります。まだまだ、「銃後」という言葉が生きていた、そんな時代の映画です。

閉ざされた森 9/14 MOVIX京都シアター2
★★★
→トラヴォルタ映画にハズレなし。(奴が製作に関わっている映画除く)二転三転するサスペンスなんだが結末はそれはないやろとツッコミを入れたくなるが、トラヴォルタの力でオールオッケー。サミュエル・ジャクソンが情け容赦ない軍曹役で出演。この人は何やっても、似合うなあ。この人、確か飛行機持ってるんですよね。文珍と同じやな。

座頭市 9/14 MOVIX京都シアター3
★★★★★
→たけしの映画で一番好きな映画かもしれない。珍しく、脚本もしっかり書けてるしね。黒澤がどうのこうのと言うのは話半分に聞いておくとしてこの人と三池は日本映画を代表する監督になっていくでしょう。他がもっと頑張らんとあかんと思うけどね。

ロボコン 9/15 京極東宝3
★★★
→国民的美少女やホリプロスカウトキャラバンに比べるとマイナーな感が否めない東宝シンデレラの長澤まさみの為に作られたアイドル映画。(別にけなしてるわけではナイ。)長澤まさみは昨年の連ドラに出演したし、東宝の映画にもコンスタンスに出てますが、知名度はまだまだですね。可愛いんだけどね、いかんせん地味なんだわな。で、この映画なんですがアイドル映画というより、青春映画で実質の主役は小栗旬演じる航一君です。ロボコンに興味がある人にはとても面白い映画だと思う。ただ、演出がやや緩慢。もっとテンポよく、まとめてよかった。この秋の目玉はこれと「座頭市」ですね。「ゲロッパ!」なんか行かんでええです。
 すごい映画というのは時代を超えて人の心を打つ。「白い巨塔」は正にそんな映画だと言えると思う。二時間半という長さに関わらず、全く飽きることがありませんでした。この映画は1966年に田宮二郎で撮られましたが、この12年後の1978年にもフジテレビで同じく田宮二郎で作られています。なお、このドラマは田宮二郎にとっては最後の作品になりました。「白い巨塔」放送期間中に彼は命を絶ってしまったのです。

 主人公は名門浪速大学第一外科の助教授である財前五郎。(田宮二郎)彼は幼い頃に父を無くし、母一人子一人で苦学しながら医学部を卒業した。その後、彼は裕福な開業医の婿養子となり、浪速大学の助教授となります。雑誌に取材されるなど若くして頭脳は聡明で臨床の腕も立つ、たいした男であった。彼の所属する第一外科の東教授(東野英治郎)は今年末での退官が決まっており、後任は財前五郎しか考えられなかった。が、東教授は彼の自信過剰、傲岸不遜のところを嫌っていた。彼は財前に代わる教授候補を日本医師界の重鎮である船尾教授(滝田修)に頼む。

 一方、財前も東がすんなりと教授職を譲るつもりがないことを見抜くと早速に動き始めた。まずは浪速大学の実力者で次期学長候補でもある鵜飼部長(小沢栄太郎)を味方につける。医局は既に彼の手の中にあった。やがて教授会が開かれ、東の後任として船尾教授に推薦された菊川、財前五郎、そして財前の先輩である葛西が候補として選ばれた。一方、財前は友人である里見助教授(田村高廣)が担当していた佐々木の治療を行っていた。助手は手術を主張する彼に転移の可能性から再検査の必要性を訴えるが財前は無視。手術は見事に成功したが患者の容態は戻らなかった。

 が、彼にとってはそれどころでなかった。投票は三人とも、過半数に届かず。菊川と財前の決選投票への持ち越しとなった。財前の義父は金に糸目をつけなかった。一方、菊川サイドも船尾教授が陣頭指揮をとり、激しい根回しが繰り広げられた。が、一人解剖学の権威、大河内教授(加藤嘉)はどちらに転ぶこともなかった。買収しようとした財前サイドはたたき出される。選挙の結果は財前がわずかな差で勝利。泥試合は遂に終わった。が、彼の担当した佐々木の容態が急変して、死んでしまう。

 選挙後、東は引退。遂に財前は教授となる。が、新聞に彼の名前がおどった。何と佐々木の遺族が彼を医療ミスで訴えたのだった。鵜飼部長は進退伺いを出すことを要求するが、彼は拒否。徹底的に裁判で争うことを選択したのだった。

 山崎豊子の原作を橋本忍が脚本化。戦後、一貫して左翼映画を撮り続けてきた山本薩夫が大映でメガホンを握りました。この映画は1966年のキネマ旬報最優秀作品賞を受賞しています。テンポはそんなによくないのですが、話が進むに連れて展開が読めなくなってくる。ふと気づくと映画にどっぷり入り込んでいました。自信たっぷりの中にもどこかさびしさを漂わせる田宮二郎がいい。脇役には東野英治郎、滝沢修、加藤武、加藤嘉などの曲者が揃っています。特に加藤武は両者を手玉にとる教授として登場。憎たらしいがどこか小気味いい。東野さんは教授をやるには少し品がないのですが、そこがまた一筋縄には行かない曲者っぷりをうまく出せていたと思う。

 田村高廣が少し、弱かったような気がする。この人と田宮を対立軸で出せていけたらよかったのだろうが、田村の印象が薄くて東野と田宮の対立が軸になっている。そう見るとあまり田宮二郎って悪く見えないんですよね。むしろ彼が学長選挙に勝つところでは爽快感さえあるのだ。悪い奴ばかりの医学界で唯一、気を吐いたのが加藤嘉。どこか、飄々とした人ですがテコでも動かん頑固者ぶりが、カッコよくてどこか微笑ましい。少し安心する。

 今から数十年前の映画ですが扱われている問題は決して古くはありません。医療ミスの問題は今も大きな問題になっています。どの病院がいいのか、というのも人々の大きな関心ごとですしね。冒頭に行われる大名行列さながらの「教授の回診」は今も大学病院ではおなじみの光景で病院内の権威主義、事大主義は昔の話ではありません。昨今、医療界の問題を題材にした漫画がめちゃくちゃ売れてて、またそれのドラマ化が高視聴率を叩き出したのも記憶の新しいところです。

 この10月よりドラマ版「白い巨塔」をフジでリメイクするようです。フジでなあ。。TBSなら安心なんだけど。。出演陣はまあがんばったかなと思うが(かたせ梨乃、及川光博を選ぶセンスはわからんが)、脚本は井上由美子だからそんな酷いことにはならんと思うけど。。

参考→http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/report/030819.html

監督:山本薩夫 製作:永田雅一 原作;山崎豊子 脚本:橋本忍 音楽:池野成
出演:田宮二郎、加藤嘉、藤村志保、滝沢修、田村高廣、下条正巳、鈴木瑞穂、石山健二郎、船越英二、加藤武、小川真由美、東野英治郎

 シネ・ヌーヴォの「映画監督・深作欣二」もいよいよ今週でおしまい。全然いけへんかった。金曜日の最終日はお休み取って行く予定です。

 今日の深作まつりは1961年の「白昼の無頼漢」。深作監督にとって始めての長編映画です。それまで4本ほど60分以内の映画は撮ってますが言わば添え物の映画ばかりでヒットするか云々よりも「こいつは監督としてやっていけるか」のテストみたいなものでした。もっとも、この映画も別の映画が流れて番組に穴が空いたので、まあやってみいと。丹波哲郎は押さえてあるから、と言う感じだったようです。当時、東映は業績がダントツのトップで怖い物なし。それでもっと儲けようともう一つの封切系統「ニュー東映」を作って映画の製作本数を二倍にした。深作監督のデビューもその波に巻き込まれたものでした。なお、ニュー東映はあまりパッとした数字を残せずに61年の年末には無くなってしまいます。ニュー東映は主に東映東京撮影所で時代劇中心の京都とは違って、現代劇を多く撮りました。東映のロゴマークは例の波に三角ですがニュー東映は火山の噴火に丸いロゴマークでした。

 なお丹波哲郎が深作作品に出演したのはこれが最初。丹波哲郎っていろんな映画出てるせいか、あんまり深作作品の常連って印象は薄い。出演本数は多いんですがチョイ役が多いためでしょうかね。「仁義無き戦い 代理戦争」なんてスチールのみの出演だしね。でも深作監督の唯一のインディーズ作品である「軍旗はためく下に」も主演してますし、やっぱり仲がよかったんでしょう。深作が死ぬ一年前まで電話するなどの交友はあったようですし。キネマ旬報「映画監督深作欣二の奇跡」で丹波哲郎は深作監督のことを「面白い存在で、つまり仲間だな」と言っています。これ以上の褒め言葉はありゃしねえ。

 丹波哲郎という役者も不思議な人で新東宝、松竹、東映、日活とフリー同然で会社を渡り歩いた人ですが仕事に困ることはなかった。芝居もさほど達者でなかったし、チャンバラもそんなにできなかった人ですが堂々とした体格に目鼻立ちのくっきりとした顔がやっぱスクリーンで映えた。この「白昼の無頼漢」はそうした丹波哲郎のどこか日本人離れしたところを生かして作られた作品です。
やっぱ普通の日本人がギャングをやるとどこか変ですが、丹波哲郎が台詞に英語を混ぜながら喋るとカッコよく見えます。丹波演じる宮原と言うギャングが脛に傷持つ奴等を集めるところから映画はスタートします。

 女に目がない黒人兵トム、韓国人ヤクザ、アメリカギャングとその妻に宮原は現金輸送車強奪の計画を持ちかける。宮原は彼らの弱みを握っており、彼らが断るということはありえない。無理矢理、参加させられる。黒人兵にあてがったパンパンの花子(中原ひとみ)を加えた一行は現金輸送車を襲撃する。が、彼らの行動を監視していたヤクザの一団が彼らを襲撃。仲間の数人は死に、宮原の妻はヤクザに内通していた。宮原は金を奪ったトムをゴーストタウンに追い詰めるが。。

 これとっても面白いです。この映画はたった二週間でとり上げて、出ている外人もほとんど素人で脚本も結構いい加減なのですが勢いがあります。仲間がめちゃくちゃ仲が悪くてもちっとも動じない丹波哲郎がめちゃくちゃカッコいい。「戦後の日本でこんなこと考えるのは俺ぐらいだろう」という台詞が似合うのはこの人ぐらいですね。今の日本人にだっていません。

 大変、難渋した作品でトム役の黒人が逃亡してスタッフの一人が顔を黒く塗って出演した(後にこのスタッフは俳優になったらしいです。どこを代役したのかはよくわからなかった)とか、山火事が起こりそうになったとか、様々なエピソードには事欠かない作品です。が、後世の深作演出であるアクションのスピード感とテンポの良さはこの頃からのもので見てて時間を感じさせない作品でした。日活の若手監督が同じような作品を作る時に必ずこれを参考にしたというのも納得できる作品でした。

監督:深作欣二 脚本:佐治乾 撮影:星島一郎 美術:近藤照男
出演:丹波哲郎、中原ひとみ、曽根晴美、久保菜穂子、春日俊二、柳永二郎

 「マグノリア」で一世を風靡したポール・トーマス・アンダーソン(以下PTA)の最新作はアダム・サンドラー主演のラブコメ「パンチドランク・ラブ」。今の状態から言って(各自、アナグラムせよ)ラブコメを見ることは少ないし(男1人でラブコメなんかアホすぎる)、それから多くの日本人がそうだと思うんだがアダム・サンドラー主演の映画を見ることもあまりない。これほど日本とアメリカで評価が別れる俳優さんも珍しいのだ。まあ彼に限らず、聖林のコメディ映画って日本じゃ全然当たらんで、よってコメディ俳優は売れないのだ。ジム・キャリーだって「マジェスティック」以外は全然当たってない。エディ・マーフィーぐらいかな。私もアダム・サンドラー主演の映画を見るのがはじめてで、よっぽどのことがない限りは今後は見ないと思う、おそらく。共演は嫁にしたい女優ランキングで上位を占めるだろうエミリー・ワトソンと一部(秘宝系)でヒーロー視されてるフィリップ・シーモア・ホフマン。PTA映画の常連です。なお、この映画でPTAはカンヌの最優秀監督賞を受賞しております。何度も申しますがこの手の賞は当てになりまへん。

 と書くとつまらんかったように聞こえますがこれが大層よかったんである。こんなヌルいラブコメで感動してる俺はアホと違うか、と少し情けなくなるが、本当にほのぼのしてしまった。PTAはどうでもいいことに情熱をかけて勿体ぶって物語を作っていくんだが、ハマるとなかなか心地よい。でもハマらんかったら、「なんで蛙が降るんじゃ」となるわけです。なかなか好き嫌いが別れる監督ですね。

 アダム・サンドラー演じるバリー・イーガンは、トイレの詰まりを取る棒(通称・スコスコ棒)のセールスマンを営んでいます。毎日、早朝から出勤しているイーガンだがひっきりなしに電話がかかってくる。得意先から?いや違った。彼には七人の姉がおり、しょっちゅう、彼に電話をかけてくるのだ。今日も姉の誕生日で駆り出されたイーガンだったが過去のことを笑いものにされて、思わず、窓ガラスをハンマーで叩き壊してしまう。さらに情緒不安定で最近、急に泣き出すことがあると義理の兄に訴える。日常の寂しさを紛らわす為にテレホン・セックス・サービスに申し込んでしまった。次の日の朝、昨晩話した女から金の無心を頼まれるが慌てて電話を切った。

 彼の最近の関心は食品についているマイレージ特典。彼はプリンについているマイレージ特典が一番豪華であることを知り、プリンをドカ買いしてしまう。事務所にいると姉が同僚の女性、リナを連れてやってきた。お昼を3人でどうか、と。朝に電話がかかってきた女からまた電話がかかってきたイーガンはそれどころではない。体よく断るが、リナから申し込まれた明日のディナーには応じる。ディナーの席で、彼女は彼の姉から見せられた写真を見て彼のことを気に入ったことを告白。二人はキスして別れる。が好事魔多し。彼はその晩、何者かに襲われる。。

 いつも通り、ふわふわとしたストーリーでたるく進んでいくのだが、そのふわふわ感がなんともいい。いつも思うのだがこの人は音楽の使い方がうまいね。「マグノリア」のサントラはCDの穴がスポスポになるほど聞いちゃったし、今回も早速サントラの取り寄せをお願いしました。ちなみにこの中で出てくるプリンのマイレージ特典ですが、これは実話で3000ドルつぎ込んで一生分のマイレージをゲットした男が本当にいるそうです。考えついたのもえらいがよくプリンに3000ドルもかけたと思う。普通、そこまではしないぞ。それから姉のうち何人かと彼を襲う強盗は素人らしいです。なんか色々仕込むね、この人は。

 今回もやっぱりよかったのはユタ州で家具屋をやりながら、テレフォンセックスサービスの元締めを兼ねるフィリップ・シーモア・ホフマン。「ブギーナイツ」のホモカメラマン、「マグノリア」の心優しき看護人と全然違った、邪悪な、それでいてどこかとぼけた感じのヤクザがなんともカッコいい!エミリー・ワトソンもよかった。いいですね、彼女は。「アメリ」の主役候補にも名前が挙がってたらしいですが、外れてよかったと思います。感じは似てるでしょうけどね、なんかもっと怖いものになってたと思う、うん。「ゴスフォード・パーク」でもなかなか可愛かったです。。。と10歳以上離れてる人に言う台詞じゃねえな。ただ、実生活でなんもせんで、自分のことを完全に理解してくれるエミリーワトソンみたいな女は存在せんのです。そう思うとすごくアホな映画。でもこれはまあ、映画でおはなしだから夢みたいなストーリーでも許されるわけです。それが映画の醍醐味と言えば、そうですわな。

監督、脚本:ポール・トーマス・アンダーソン 音楽:ジョン・ブライオン
出演:アダム・サンドラー、エミリー・ワトソン、フィリップ・シーモア・ホフマン、ルイス・ガスマン

 最近、映画も歌もリメイクと言うか、リバイバルブームで多くの名作がリメイクされてます。聖林なんて今や映画はリメイクかアメコミの映画化ばかりですもんね。たけしが「座頭市」をリメイクすると聞いた時には、なんかやっぱり厭でした。「座頭市」って言えば勝新太郎の代名詞でイメージがあまりにも定着しきってます。たけしも一回は断ったが最終的には受けた。デビュー作の「その男、凶暴につき」以外の北野映画というのは基本的にオフィス北野が制作費を出す、自主映画整作方式なんですがこの映画は、他からオファーがあって引き受けた仕事です。企画したのは齋藤知恵子という方なんですが、この人は映画の人ではなくて浅草の実業家でたけしの浅草時代の恩人らしい。

 言わば芸術という側面よりたけしの娯楽映画としての才を買われて頼まれた仕事。もっともたけしはいつか時代劇をやりたい、といろんなところで書いていました。ただネックはお金の問題で時代劇というのは大変、お金がかかる。自主映画方式では難しいとも書いています。今回の機会は絶好の機会だったのかもしれません。それで賞まで取ってしまって「ゲロッパ!」を遠く引き離し、現在ヒットをかっ飛ばしています。才能もあるけど運もありますね。

 予告編を見たら、たけしは金髪になってるし、タップダンス踊ってるし、こらもうかなわんな、と。「SFサムライフィクション」みたいに時代劇こねくり回して、ぐっちゃぐっちゃになったもんに「巨匠」印を押されて見せられるんちゃうかと不安に覚えておったんですが、実際に見てみるとこれがちゃんとした時代劇になってる。腕が滅法立つ浪人、彼に寄り添う病身の妻、典型的な悪徳商人に、仇討ちを誓う姉と弟、と従来の古典的時代劇スタイル。ただ、そのままやったら面白くないんで少し変えてある。タップダンスも金髪もその一種。が、不思議なもんで金髪は全然違和感ないんだわな。タップダンスがどこに出てくるかは見てのお楽しみ。このシーンがまたいいんだ。

 たけしの映画は暴力が主題になっていますが、今回の「座頭市」も血がドバドバ出るシーンが満載で大層、痛い映画です。一般にアクションシーンは爽快なものですがたけしの映画は決してそうではない。これは、たけしの中にある、暴力への突き放した思いがあるのではないでしょうか。深作監督の中にはどこか、暴力に対する恋慕、憧れみたいなものがあると思うがたけしは違う。たけしの映画では人間がゴミのように死んでいく。深作の映画みたいに何発も撃たれて死ぬ奴らが出てこない。たけしにとっての暴力とはカッコ悪いもんでまたそれに惹かれる人間も大嫌い。この映画の座頭市は従来のたけし映画の主人公のように、無表情に人を殺していきます。浅野忠信との決闘もあっさりとすませてしまう。暴力には美学なんてない。ただ、強い者が弱い者を殺すだけ。

 座頭市に対して思い入れがない分、浪人夫婦と仇討ちの兄弟に監督の興味は向いています。浪人の妻に夏川結衣を引っ張ってきたのはさすがですね。出番は少ないですが、彼女が浪人の支えになっていることがよくわかる。それから大家由祐子(この人は北野映画の常連。数年前、たけしの愛人説が囁かれた。)と橘大五郎の兄弟もよかった。これは橘大五郎という役者がいたからこそできたエピソードですが、姉役の大家さんもよかった。ギリギリのところを描いています。ここがなかなか泣かせる。反対に笑わせてくれるのがガダルカナル・タカ。どうにもしょうがない遊び人で彼がやるチャンバラ講座は爆笑もんです。確かに三人で同時に打ち込んだら一人で戦っても勝ち目がないんだけどね。そうした時代劇のお約束をやっちゃうところが面白い。白塗りのバカ殿メイクで呆然と燃える家を見るシーンが印象的です。

 今まで、たけしってのは芸術の人でずっとこのまま行くんだろうと思ってましたがこういう映画も撮れるんですね。でも次はまた全然違う映画を撮るんでしょうけど。「座頭市」の原点を崩すことなく、全く違うものを作ってしまった。かなり好きな作品でもう一回見てもいいと思う映画。それから「座頭市」は三池崇史もリメイクしたいそうで、彼のまた「座頭市」も見てみたいと思います。

監督、脚本、編集:北野武、企画:齋藤知恵子 原作:子母沢寛 撮影:柳島克巳 衣装:黒澤和子
出演:ビートたけし、石倉三郎、ガダルカナル・タカ、橘大五郎、大家由祐子、岸部一徳、大楠道代、夏川結衣、柄本明、浅野忠信、田中要次、津田寛治

 本日で深作まつりも遂に30夜を迎えました。よくここまで続いたもんです。なんかもうあらかたやってしもうたような気がするのですが、まだ半分しか終わってないんですね。これからもよろしくね。記念すべき30夜目に紹介するのは1978年に公開された「宇宙からのメッセージ MESSAGE from SPACE」。

 この前年、アメリカでは「スター・ウォーズ」が大ヒットしており、そのブームにあやかって製作された映画です。「スター・ウォーズ」の日本公開の2ヶ月前に封切された理由は曰く「中身が似てるも何もパクリだから、先につくって封切しなちゃどうしようもない(笑)」。まあなんつうか、すごい作品です。里見八犬伝をモチーフに「スター・ウォーズ」のキャラをパクってそれにチャンバラをくっつけた、めちゃくちゃな作品。撮影期間も短かったみたいだし、とりあえず「スターウォーズ」より早く公開させるために早撮りしたんだと思うのですが(関係あるのかわからんがメインテーマがショスタコビッチの交響曲第五番にそっくりだった。作る暇なかったんやろか)勢いがあって面白い。

 実録路線の終了に伴い、東映は従来の二本立てのプログラムピクチャー体制より大作主義の一本立て公開に徐々に移行していきます。深作監督は東映の屋台骨を背負う職人監督としてこの年、一本立て公開で「柳生一族の陰謀」「宇宙からのメッセージ」「赤穂城断絶」を監督しています。「柳生一族の陰謀」から「宇宙からのメッセージ」までは3ヶ月しかあいてない。時代劇からSFともう何でもやる。錦之助に「なんで柳生一族のあとに、あんな映画撮るのよ」とツッこまれたそうです。

 太陽系から遥か200万光年離れた惑星グルーシアはガバナス帝国の圧政に苦しんでいた。長老(これを織本順吉がやる)はこの危機を救うために奇跡への願いをこめた「リアベの実」8つを太陽系に放つ。さらにこの8つの実を受け取った勇者を探す為に孫娘(志穂美悦子@長淵嫁)と勇士ウロッコ(佐藤允)は太陽系に旅立った。やがて彼らはリアベの実を受け取った宇宙暴走族(外人、真田広之)、退役軍人(外人)、成金の娘(外人)、ヤクザの若衆(岡部正純)に出会う。すったもんだあったあげく、グルーシアの救出に向う勇者達。一方、ガバナス帝国は次なる侵略地として地球を目指していた。。

 舞台は宇宙で元ネタは里見八犬伝、でも台詞は時代劇風と頭がおかしくなりそうな設定ですが天本英世のおばあさんとか、三谷昇の山姥とか、佐藤允のチューバッカとか、外人が出てるのにみんな日本語吹替えだとか、曾根晴美が参謀?もう色々ツっこむ要素で一杯なんであんまりそこでとまちゃいけません。「柳生一族の陰謀」で白塗りの剣豪公家をやらされた成田三樹夫が顔に銀粉まぶしてのド派手、皇帝メイクにはアホらしさを通り越して成田さんの役者魂すら、感じてしまいました。あ、アホすぎる。千葉真一はハンス王子としてこれまた変なメイクしてますが鎧が重いのか、動きが鈍い。それから、R2D2のつもりなんでしょうか、変なロボットが出てくるのですがこれがウザイ、本当にウザイ。子供の頃に見たNHK教育にこんなロボットが出てたような気がする。変な着ぐるみを着てぴょこぴょこ歩いてる姿を見て、日本映画の悲しさがひしひしと感じられた。こら、あかんわ。。

 特撮を担当したのは矢島信男で監督は特撮に関してはほとんど任せきりだったようです。特撮なんですが、宇宙遊泳(ドリフの宇宙コント以下)以外のシーンはまあまあ見れました。真田広之と警官の小林稔持のチキンランもなかなか面白い。日本の特撮界はこの年、東宝特撮界のエースだった中野昭慶が「スターウォーズから学ぶものは何もない!」と豪語して作った「惑星大戦争」が大コケ。私は特撮、全然知らないんだが特撮ファンから見たらこの映画はどうなんでしょうかね?もし特撮好きの方がここ見てたら教えて欲しいです。もっともこの映画の魅力は大仰な台詞回しと突き抜けたバカっぽさが魅力なんだけど。織本順吉が大演説するところは「アルマゲドン」なんかよりもよっぽど感動したよ。

監督:深作欣二 プロデューサー:岡田裕介 脚本:松田寛夫 原案:石森章太郎、深作欣二、松田寛夫 撮影:中島徹 特撮監督:矢島信男
出演:三谷昇、丹波哲郎、織本順吉、佐藤允、福本清三、天本英世、真田広之、岡部正純、志穂美悦子、小林稔持、曽根晴美、成瀬正、成田三樹夫、千葉真一
 8月30日にシネヌーヴォで行われた「仁義なき戦い」オールナイトに行ってきました。世の中棄てたもんじゃありませんで満員でした。老いも若きも映画に釘付けで金子信雄の卑怯さに笑い、松方のかっこよさにしびれ、拓ボンの死にっぷりにため息をつき、勝利の無茶に恐れおののき、ポン中の志賀勝に微笑んでいました。そうした空間はまだまだある。嬉しかったなあ。もう何十回と見ている映画ばかりでしたが、スクリーンで見る迫力はやはり違う。特に「仁義なき戦い 広島死闘編」は山中が可哀想で思わず涙が流れた。本当に、すごい映画だよな、「仁義なき戦い」って。リアルタイムで見た人が本当に羨ましいよ。

 さて今日の深作まつりは8月17日に見た「君が若者なら」。1970年公開の作品で配給は松竹で製作は後に「軍旗はためく下に」を撮る新星映画。「映画監督・深作欣二」によれば、代々木系の独立プロ、つまり共産党系。なんで深作監督がこんなところで、と思いますがこれも「誇り高き挑戦」のおかげなんでしょう。東映のプログラムピクチャーで反米の映画を撮った、左翼の映画監督がいると言う評判。ただ深作監督は別に反米をやりたかったわけではないみたいですが。ただ、会社の思惑とは別物にひりひりとした深作版「青春映画」に仕上がりました。

 時代は高度経済成長時代。「金の卵」と呼ばれて上京してきた5人の若者が主人公です。彼らは工場に就職しますが工場が倒産。工場で出会った5人の若者は人に使われるばかりではつまらない、独立をしよう!とお金を貯め始めます。が、5人いた仲間のうち、1人はスナックの女と所帯をかまえて脱落。河原崎一郎は盗みで刑務所入り。峰岸徹はスト破りの最中に警官に踏み殺されてしまいます。残ったのは幼い頃から友達だった前田吟と石立鉄男。彼らは苦心惨憺のあげく、トラックを手に入れて独立。その名も「独立1号」(ここらが民青ですね)。順風満帆である彼らだが彼らのうちに燃える青春の炎は彼ら自身をも焼き尽くそうとしていた。。

 前田吟という俳優さんは今は落ち着いたお父さんばっかりで80年代は石立鉄男と一緒に大映テレビで変な演技(口ひげを生やしたダンスの先生とか)を披露していましたが、私は「男はつらいよ」初期のギラギラした感じの博役が結構好きでした。「労働者は恋をしてはいけないのか」とマジに問い詰める博は寅さんと対照的なキャラクターでした。この映画の前田吟もいつも何かにイライラするように、ギラついています。前田吟だけでなく、ボクシングをやってる峰岸徹も怒鳴りまくる石立鉄男も警官を殺して脱獄する河原崎長一郎もギラギラしています。みんな後世、落ち着いた役ばっかりやってるだけにこの映画の演技が大変新鮮です。石立鉄男なんて私の記憶では「わかめラーメン」のアフロですもん。

 青春時代ってのは時に危険で乗り越えるまでに時に横死するものも表れます。青春時代には珍しい”ギラギラ”とあのラストは激情の炎はそんなに甘いもんじゃないぞ、ということを表したかったんじゃないでしょうか。当時の学生運動の行き着く先をある意味、予想していたみたい。でもそれは決して否定的でもないんだけどね。

 映画は後半、警官を殺して脱獄してきた河原崎長一郎が二人の家に飛び込んできたところからが大変面白いです。彼らは何とか自首するように説得するのですが二人の間でだんだん考えが違ってきます。脱獄の際に負った怪我で朦朧とする長一郎を海に連れて行こうとする前田吟と止めようとする石立鉄男。そして彼らを見つめる寺田路恵。この子がなかなかかわいい。ヌードシーンもあります。(今でいうとセミヌードって奴だな。)

 ひりひりとしたドラマになっています。ただ、フィルム状態が悪くて何となく赤っぽい。(代々木系の映画だからか?)これはDVDにはならんだろうと思ってましたがなんと松竹から発売されるDVDの「深作欣二監督シリーズ? FUKASAKUKINJI WORKS Vol.2」に修復デジタルリマスター版で収録されています。ただバラ売りはなしで「君が若者なら」「道頓堀川」「蒲田行進曲」「上海バンスキング」の4本セットで11200円。買ってまで見るべきとは思わないけどこの4本セットなら決して損ではないと思いますぜ。

参考→http://www.shochiku.co.jp/video/dvd/da0265.html

監督:深作欣二 脚本:中島丈博、松本孝二、深作欣二 音楽:いずみたく
出演:室田日出男、前田吟、小川真由美、藤田弓子、河原崎長一郎、寺田路恵、峰岸徹、太地喜和子、石立鉄男

 8月は湯布院映画祭とか、仁義なき戦いオールナイト大会とかあったためか、劇場での鑑賞本数が32本となりました。計算をすると勤めをしながら毎日、映画を見ておった計算になります。見下げ果てた道楽者でございますな。うふ。

 今日はお待ちかねでございます。井筒和幸の「ゲロッパ!」。8月30日にMOVIX京都で行われた舞台挨拶を見てきました。監督と西田さんと常盤貴子と岸部一徳さんが来てました。個人的には一徳さんを見れたのがとても嬉しい。「いやーこのへん懐かしいですわ。高校生の時には毎日のように来てました」岸部さんは京都人やからね。関西弁もなめらかでございます。監督はと言いますと、意外に静かで神妙な顔つきで挨拶してました。

 2ちゃんねるで一部のうんこちゃんが舞台挨拶中に「金返せー」とか叫ぶという話を聞いていたのですが舞台挨拶は滞りなく終了。面白くないかどうかは人それぞれですけど、やはり舞台挨拶を見に来ているお客というのは映画に対して好意的な人でそういう人たちの空間を潰そうとするのはやはりアホだと思うし、ぶん殴られても仕方ないと思う。ただ、監督がなんか元気なかったのが気になったなあ。。

 この映画のキーワードは「本物と偽者」です。JBのそっくりさんが出てきますし、常盤貴子は物真似タレントのマネージメントをやっています。それから主人公の西田敏行は極道で子分達と疑似の親子関係を築いています。西田敏行は小さな組をかまえる極道で生き別れた娘との再会を願っています。この娘が常盤貴子でこの二人の物語が映画の中心になります。つまり本物の親子関係ですね。そしてもう一つは井筒監督がよく言う「本物の映画」。

 世間での井筒監督のイメージはやはり「戦うオッサン」です。テレビでアメリカ映画の悪口を言いまくり、映画以外のことでも強気のコメントを繰り広げる頑固親父。その発言の全てが間違ってるとは思わんが、少しテレビに出過ぎ。2ちゃんねるで指摘されている北朝鮮問題に対するコメントもどうかと思うしね。映画評論にしてもピントがずれているというか、そこまで言わなくても。。と思う。いかりやのことを「あんなん、どこが渋い俳優なんですか。昔からテレビ出てるだけ」とコメントしましたが、演技の質云々よりも病と戦っている人をそうこき下ろすのは如何なものか。私は結構、いい演技してると思うぞ。

 もっとも今の井筒がどこまで演技なのか地なのかはよくはわかりません。が、井筒が映画のことをどう考えてどんな映画を作りたいか、ということはこの「ゲロッパ!」からも充分読み取れました。私が映画を見始めた99年ごろ、井筒監督の「のど自慢」をほとんど期待せずに見に行きました。その映画が面白かったのなんの。キャラクターの一人一人が魅力的でテンポもよくて、たっぷり笑わせて、泣かせどころではきっちり泣かせる、完璧な作品だったのです。その日は二回続けて鑑賞し、映画の世界に浸りました。私が日本映画に興味を持つのにきっかけになった作品で今でも私のマイベストの1本です。

 「ゲロッパ!」も基本的に「のど自慢」と一緒で泣かせどころで泣かせて、たっぷり笑わせる。多くの登場人物も生き生きしています。ただ、今ひとつ乗り切れませんでした。それは監督の中でどこか迷いがあったんじゃないでしょうか。

 井筒和幸の考える映画というのは娯楽で一種の”まつり”です。映画館中が笑い声で満ち、非常に楽しい空間になっている。映画館を出てからも、映画について「あそこがよかった、ここが面白かった」と話す観客。井筒の言う映画というのはそういうものじゃないかと思います。映画が娯楽の帝王、そういう時代は確かに存在しました。

 が、今の日本じゃそれは難しい。深作欣二も言ってたことですが「いつかギラギラする日」みたいな映画を撮ってもそれに答えてくれる観客がもういないのです。「仁義なき戦い」オールナイトを見てきましたが山守の卑怯さに皆が笑い、拓ボンの死にっぷりに思わずため息をもらす。そこにはまだそういう空間は広がっていました。湯布院映画祭にもありました。が、一般にそれが広がっているか。「ゲロッパ!」ならば、西田敏行の踊るシーンで拍手が巻き上がり、手拍子をする人がいてもいいと思う。

 でもその映画に対する熱気みたいなものを日本の観客に求めるのは無理だと思います。みんな、静かに見てますもん。クスクス笑いはあってもそれ以上のものはない。それは日本映画だけじゃなくて、どんなアメリカ映画を見ても一緒です。

 「のど自慢」は評論界の評判もよく、テレビとのタイアップもあったし、宣伝も力入れて行っていました。が、結果は惨敗。当時、公開されていた「踊る大捜査線」とは対照的に一ヶ月ほどで打ち切りになりました。同じ99年公開の「ビッグショー!ハワイに唄えば」からしばらく映画を撮らなかった井筒監督の気持ちを考えるとやはりショックだったんだと思います。その迷いみたいなものが映画にチラチラとしている。「のど自慢」に比べると思い入れみたいなものが感じられずに小手先で逃げているような気がする。

 でもやっぱ、ヒットして欲しいですね。そういう観客がいるというのはやはり日本映画界もまだまだ棄てたもんじゃないと思うし。いつも言うてることですが映画はやはり「まつり」なんですから。
 さて皆さん、深作映画見てますか。私は8月17日に「軍旗はためく下に」「ジャコ萬と鉄」「白昼の無頼漢」「君が若者なら」を連続で見ておりました。「ジャコ萬と鉄」以外は見るのが難しいので本当に見れてよかったです。明日は「仁義無き戦いオールナイト」に行って来ます。兄弟、映画館でまっとるで。

 本日の深作まつりは超異色作の「軍旗はためく下に」。1972年に東宝で封切されています。深作監督が自分の金で映画化権を購入して新星映画に持ち込んで作った自主映画です。当時、東映で厭だ厭だと思いながら仁侠映画を撮っていたことに対する鬱憤が溜まってか、その出来栄えは異色のものとなっている。深作作品は常に戦後や焼け跡の匂いを漂わせているのですがこの作品は正面から戦争と向き合っています。

 「誇り高き挑戦」で左翼映画評論家から一目置かれていたのもあったんでしょうが、1972年のキネマ旬報2位に選出されています。但し、興行的にはもう一つで、社会派の映画と評価されたのは(当時の映画評論界は、左翼的な作品が評価されており、娯楽性よりも映画の中で如何に政治を語るかに評論の中心がおかれ小難しい作品が高い評価を受けていた。後に売れっ子となる淀川長治は異端とされていた、そんな時代があった。どれだけ東映のヤクザ映画が多くの客を集めようとキネ旬では評価されなかった。)深作監督にとっては決して嬉しいものではなかったようです。その苛立ちは次回作「現代やくざ 人斬り与太」につながっていきます。

 主人公は左幸子演じる戦争未亡人。昭和27年、戦没者遺族援護法が制定され、遺族への金銭的な援助が始まった。が、左幸子の旦那の丹波哲郎は戦死でなく、敵前逃亡による処刑であったために”英霊”に加えられることはなく、援護法の規定からは外れていた。しかし、丹波はどのように処刑されたのか、何も出てこないのだ。軍の命令で処刑されたのなら、軍法会議の判決文ぐらい出てくるはずだ。それが何もない。彼女は金銭的な問題よりも自分の夫が何で死んだのか、「何故父ちゃんは天皇陛下から花をもらえないんだ」(終戦記念日に天皇は戦没者に花を供える)悔しくてどうにもやりきれない。近所から「わずかの銭取ろうと思って」などと陰口を叩かれながら彼女は厚生省に日参していた。幾度、通っても厚生省の返事は「無罪を立証する証拠なし。」が、彼女の粘りは遂に一つの道筋を切り開いた。丹波が所属していた部隊の生存者の中で当局からの照会に返事を返さなかった者が数名いる。彼らなら何かを知っているのではないか、尋ねてみてはどうか。

 彼女は次々と彼らを尋ねていく。ある者はゴミの山で養豚場をやり、あるものは漫才師になり、ある者は戦後のメチルアルコールで視力を失っていた。彼らの言う丹波の姿はバラバラでどれが真実かわからない。上官殺害、捕虜処刑、そして人肉を食った話。。。彼らはいまだに戦争の影を引きずり、戦後を送っていた。そして彼女は旦那が上官殺害事件に関与していたことを知る。。

 映画の中で横井さんをネタにしたコントが出てくるのですが横井さんが「恥ずかしながら・・・」と帰還したのはこの1972年。なお、この年は沖縄が返還された年でもありました。戦後、既に27年。世は田中角栄の「日本列島改造論」に夢を託し、先進国への道をひた走っていました。ゴミの島で豚を育てる三谷昇がポツリとこぼす、「戦後はごちゃごちゃで自分の居場所があった。が、世の中が綺麗になって俺たちの居場所はなくなった」という台詞が印象に残ります。深作監督が「仁義無き戦い」に託した「もう一つの戦後史を作りたい」という思いはここにも出てきています。

 戦争が終わって既に何年も立ち、戦争の傷跡を見つけることは難しくなりました。が、今もなお戦争がもし起こったら、どうなるのかという想像力だけは持っておかなければならないと思う。この映画は決して空想事ではない。飢え死にするぐらいならば、隣の戦友の食料を奪うのがやはり人間だと思う。人間はあさましいのだ。戦争の恐ろしさは人間をそこまで追い込むところにある。左幸子にしても三谷昇にしても顔を真っ白に塗りながら「あそこで死んでればよかった、と本気で思いますよ」と呟く関武志にしても、戦争により心に癒えぬ傷を負い、苦しんでいます。大多数の人間はどこかで見切りをつけて、戦争を過去のものにしている。が、彼らには見切りをつけることなんかできなかった。深作欣二も15の年に迎えた敗戦に見切りをつけることができず、その鬱憤を映画に昇華していきます。この作品はそうした深作欣二の思いをストレートに出した作品です。

 写真もふんだんに使われて、特に序盤の終戦記念日式典はよく使えたなと思います。前進座の中村翫右衛門が戦犯容疑を逃れた上官の役で出演しています。戦前は「人情紙風船」などの山中貞雄の作品に出ており、戦後は左翼の立場から演劇をやってた人で中国に亡命したこともあります。この前進座の歴史も語り始めると実に面白いです。脚本は新藤兼人で音楽は林光。左幸子も深作作品はこれ一本だしね。フィルム状態も悪いし、ビデオもなかなか見つからないと思いますが深作を知る為に欠かせない一作であります。

監督、脚本:深作欣二 脚本:新藤兼人、長田紀生 美術:入野達弥 音楽:林光
出演:三谷昇、内藤武敏、夏八木勲、江原正二郎、藤田弓子、小林稔持、中原早苗、丹波哲郎、ポール牧、関武志、中村翫右衛門


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