映画好きの友人が東京より上洛ということで京都国立博物館の「スターウォーズ展」を見てきました。曰く「スターウォーズはとんでもなく芸術である」。国立博物館ともなるとそれぐらいの理論武装をしねえとやれねえのに。どうせ頭にカビの生えた大学教授なんかからは批判されてるんでしょう。世俗的にすぎるとか。一人でやっとれ。

 早朝、京女の学生に混じってぞろぞろ歩いて向うは東山七条。朝一番で雨だったせいか、お客さんはちらほら。館内に入る時に「写真を撮るな」とかなりしつこく言われる。既にパンフの間にデジカメを仕込んでいた友人ですが、各フロアに監視員がおりほとんど撮れなかったようです。「税金の無駄遣いじゃのう」と思わず、広能の口調で言ってみた。

 アメリカの映画がすごいと思うのは下準備をめちゃくちゃしてること。脚本も練りに練ってるし、小道具一つにも充分気をつける。実はこうした地味なところにお金がめちゃくちゃかかる。アメリカの映画作りと日本の映画作りの違いはそこです。まあその分、外すことが許されないのでプレッシャーは凄いんだけどね。スターウォーズ旧作の3作品の展示なんだけど「こんな奴おったかな?」と思う奴でもきっちり原型があったり、模型があるのだ。これを楽しむ為にはよほどの予習が必要になってくると思われます。一応、私も旧作の3作品は5回は見ておるのですが結構忘れてました。ので、前日に3作品をチェックしときましょう。絶対にその方が楽しめます。

 感動したのはやはりチューバッカとR2D2の人形とかが飾られてたことだろう。持って帰りてええ!と思ったファンも少なくないでしょう。どこにおくか、わかんないですが。

 つうことで、これはスターウォーズファンの御祭ですな!ワショーイワショーイ 私はそんなにファンじゃないんですが楽しめました。行こう。そしてついでに他の京都の観光地にも行こう。SARSで客が減ってます。京都観光の夏の目玉になってくれたら嬉しいんやけど。。祇園祭のついでにも可
 今日から遂に7月。この2003年も半分が終わりました。なんかもう阪神は優勝しそうだし、世界戦争は起こりそうだし、ふと気づけば有事法制も個人情報保護法案もひかれてるし、なんか世の中の流れがおっそろしく早い昨今ですが、皆様如何お過ごし。まだまだ今年はいろんなこと起こりますよ。とりあえず梅雨だけは早く終わって欲しいです。

 映画業界も今年はハリポタのヒットが続く中で始まり、「指輪物語」に「戦場のピアニスト」「シカゴ」そして「マトリックス リローデッド」「チャーリーズエンジェル フルスロットル」と流れるように大作が続いております。まあここまでは予定通りでいよいよ夏戦線に突入。「T3」がどこまで行くか。「カリブの海賊」がどこまで追いすがるか。もしくはマトリックスの逃げ切りか。まあ景気のいいことでございます。一方、ミニシアターでは世相にぴったりあった感じでの公開となった「ボーリング・フォー・コロンバイン」が堅調。「酔っ払った馬の時間」などの社会物で普段ミニシアターに来ない人を呼び込みました。

 一方、邦画は日本映画を担う中堅どころの阪本「ぼくんち」、黒沢「アカルイミライ」、平山「魔界転生」の出来が悪くて本当に日本映画界大丈夫か、と危惧する厭な半年でした。そんな中でも崔「刑務所の中」、三池「許されざる者」、塩田「黄泉がえり」、滝田「壬生義士伝」が気を吐きました。特に東映は期待充分だった「トライ」のミニマムヒットに「魔界転生」のコケでいよいよ赤信号点滅。7月からの「バトロワ?」がどれだけ行くか。正月までのラインナップもロクにできていないだけに夏は本当に勝負。東宝にしても篠田に大枚はたいて作らせた「スパイゾルゲ」が大コケで「黄泉がえり」の貯金を使いきりました。「踊る2」に期待。あと個人的に「ロボコン」期待。松竹は前年からの「たそがれ清兵衛」に引き続き「壬生義士伝」と堅調。いよいよ松竹も復活かもしれません。

 で、さて今年半年の私のランキングでございます。今年は半年で自己最多となる92本の鑑賞。1月からバイトとは言え、フルタイムで働いておったのですが結構な本数になりました。うち今年度公開は64本。うち邦画が31本。いつも通り、キネ旬方式で洋画、邦画わけてのランキングになっています。まずは洋画から。

8Mile 6/21
ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 2/26
北京ヴァイオリン 6/28 
戦場のピアニスト 2/7
猟奇的な彼女 4/6
アバウト・シュミット 5/24
過去のない男 5/28
?−メン2(日本語版)5/5
マトリックス・リローデッド 6/23
ボウリング・フォー・コロンバイン 3/24

「8Mile」は正直、どうかなと思ってた作品でしたが見てみると単なるサクセスストーリーではなく、どん底に落ちた男が様々な壁に挑戦して自分の居場所を見つけていくという青春映画でした。ただ今年の前半は特にこれと言って目立った作品が少なかったような気がします。

次は邦画です。

許されざる者 4/19
刑務所の中 1/18
壬生義士伝 1/26
星に願いを。5/9
ラスト・シーン 1/24
新・仁義無き戦い/謀殺 2/15
クレヨンしんちゃん/嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード 4/20
私のグランパ 4/6
人斬り銀次 4/12
理髪店主の悲しみ 3/1

 ここに来て三池がめちゃくちゃよくなってきた。2時間半もある長い映画ですが厭きさせることなくじっくり見せる力量が出てきました。あと拾いものだったのは「星に願いを。」と「新・仁義無き戦い/謀殺」。特に富樫森は俺の感性をくすぐりまくる作品を作ってくれるのでこれからも楽しみ。

 あとおまけのワースト10作品(順不同)を加えときます。

恋愛寫眞、笑うイラク魂・民の声を聞け、木曜組曲、スパイゾルゲ、T.R.Y.<トライ>、火星のカノン、クリスティーナの好きなコト、007 ダイ・アザナー・ディ、ノー・グッド・シングス、タキシード、ギャング・オブ・ニューヨーク

 笠原和夫さんの新しい本が先日、発売されました。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4104609013/qid=1056622482/sr=1-11/ref=sr_1_0_11/250-8049141-7629820
その名も「映画はやくざなり」というアッパレすぎる題名だけでももうおなかいっぱいです。「兄マトリックス」をみておる場合ではありませんぞ!皆様!
 
 今日は1981年に撮られた「青春の門」。ご存知、五木寛之のベストセラー小説の映画化で日活で「憎いあんちくしょう」を撮った蔵原惟繕との共同監督。元々は蔵原監督の手で映画化が進められていたのですが、脚色に時間がかかりすぎて急遽、深作監督が助っ人として参加しました。(「映画監督 深作欣二の軌跡」参照)深作監督が担当したのは主人公の子供時代のパート。出演がこれまたすごい。主人公の父親役に菅原文太、母親役に松坂慶子、ヤクザの親分に若山富三郎に鶴田浩二まで登場するなどサービス満点!共同監督とは言え、やはりこの作品も深作作品と言えるのではないでしょうか。

 文太演じる伊吹重蔵はその者ありと知られた炭鉱労働者。腕っぷしが強く、義侠心が強い。先妻と間にできた子供信介(これが主人公)を連れて芸者のタエ(松坂慶子)と結婚します。しかしタエを愛していた男がもう一人いた。博徒の若山富三郎である。二人はドスで果し合いを行うが、土地の顔役である鶴田浩二に「九州を背負う男が何で殺しあう必要がある」と仲裁される。

 ある日、炭鉱で大事故が起こり多数の朝鮮人労働者が炭鉱に閉じ込められた。重蔵は日頃、朝鮮人グループと敵対していたがヤマで働く者には変わりはない。若山富三郎と協力して救出に向うが事故で死んでしまう。その後、タエは信介を女手一人で育ててきたのだった、とここまでが映画の冒頭。

 実は「青春の門」は読んでないので原作はどうなのかはわかりませんが映画は在日朝鮮人問題についてかなり深いところまで扱っています。ここでは詳しくは述べませんが戦争中と戦後で立場がゴロリと変わってしまい、工場経営者をつるし上げにしたりする部分も描いています。そういや、タエと渡瀬恒彦演じる金山という朝鮮人ヤクザとの情事もあったなあ。

 深作監督は80年代に入り、これまでのヤクザ映画をあえて棄てて、様々な作品に挑戦し続けています。脚本家の笠原和夫、高田宏治、神波史男と組むことも少なくなり、菅原文太と鶴田浩二の出演はこの映画が最後になっています。代わりに組むことが多くなったのは松坂慶子と若山富三郎。特に松坂慶子とはこの「青春の門」に始まって6作品も組んでいます。若山富三郎は深作監督と付き合いの長い俳優ですが「青春の門」や「魔界転生」「人生劇場」で大変いい演技を見せています。この映画における富三郎は主人公の父親代わりを果たすのですが大変よかった。ハーレーもよく似合ってた。

 本作品は深作監督にとって初めての文芸作品にあたり、また80年代の深作映画を彩る松坂慶子と若山富三郎が出演していることと菅原文太と組むことが最後になったことからもやはり深作監督にとっては大きな節目になった作品だと思います。なお蔵原監督はその後、「南極物語」で当時の興行成績を塗り替えました。2002年12月28日永眠。奇しくも深作監督の亡くなる15日前でした。合掌。

 来週末からいよいよ「BR?」が始まりますが、関西で先行かなんかやらんかな。。深作欣二の遺作と銘打ってますが私は正直、不安。というのも息子さんである深作健太さんのインタビューなんだがこの人、智に走りすぎとる。カツドウヤに理屈はいらねえんだよ。大島、篠田、吉田の二の舞になるぞ。

 勤め出してあと少しで三ヶ月のペーペーですが、本日は有休を頂きました。免許の更新でも行こうかと考えていたのですが日曜日に行ってしまい、フリーな1日でした。久々の平日のお休み!何をしようかな。。と思ったのですが、まあ結局、映画に落ち着きました。厭やわ。。遊び方知らん人みたい。

 平日ならばまあ混んでないだろうと「マトリックス・リローデッド」を梅田ブルクに見てきました。で、今日はその感想を。。と思ったのですが、内容が少し難しすぎて私には処理できませぬ。「マトリックス」ってね。めちゃくちゃ哲学的なんですよ。前作も一回見た時には全然わからんかったもん。劇場で3回見てビデオで5回見てやっとマトリックスの意味がわかってきて、映画秘宝の町山さんの記事を読んでようやく理解しきりました。

 けど、リローデッドはもっと難しいの。誰がプログラムで人間なんかもよくわからんし。「2001年宇宙の旅」みたいなシーンもあるし。もう一回見てきてから感想書きます。でも二度目に行く時にはブームが終わってるだろうし、(映画館がいっぱいで入れない)書かないと思います。多分。と言うか、まずパンフ買います。パンフでかすぎてカバンに入らんかったんで買わなかったのね。。少しでかすぎないか?これは何か?持ち歩いて宣伝しろということか?

 で、何にしようかなと思ったのですが土曜日に舞台挨拶を見てきた「女はバス停で服を着替えた」の感想を書きます。これ、東京の公開は今年の3月で北海道で先行で11月に公開終わってるのね。いつも思うことですが、東京が羨ましい。東京と公開時期が一緒になる場合もあるんですが日本映画は大体、公開時期がずっと後ろになってしまう。公開されるだけマシなんだろうけど、この映画も第七芸術劇場でロードショー公開は一週間(その後はレイトショー)だけ。何とかならんのかね。増えるどころか、減ってるのが今のミニシアター界ですしね。

 舞台は帯広市の側にある鹿追という小さな町。北海道の田舎町って感じでガラガラの道路と牧場以外は何にもなさそうな町。ここに一人の女がバスでやってきます。戸田菜穂演じるミズエという女性です。彼女はこの町に住む、ミツル(これを遠藤憲一がやってる)を訪ねてやってきたのです。ミツルは東京での生活を棄て、この鹿追で亡き弟の夢であった蕎麦屋を始めようとしていたのです。再会する二人ですが、ミツルの態度はどこかぎこちない。ミズエは死んだ弟の彼女でした。そしてミツルのダンスパートナーでした。そして。。やがて彼女はこの鹿追で生活を始めるがミツルは彼女を避け続ける。。

 監督はロマンポルノの名手、小沼勝。近年、久々に手がけた「NAGISA/なぎさ」でベルリン国際映画祭で賞を受けるなど高い評価を受けました。今回の作品ではそのものズバリのセックスシーンはありませんが、サルサのシーンが妖艶なこと。あえぎまくる戸田菜穂にアドレナリン出しまくりの遠藤憲一。すごい!

 実は二人は男と女の仲になっており、遠藤憲一はずっと弟がそのことに悩んでしまったと考えてる。それに対し、戸田菜穂は「いつまで死んだ人に縛られてるのよ!」と苛立ちをストレートにぶつけます。過去というものはどこで振り切るか、それを早く振り切れるかいつまでもズルズル引っ張っる人に分かれます。生き方としては前者の方が利口なんですが振り切れないのも何となくわかる。経験したことないから、よくわかんねえや。

 中村麻美が「星に願いを。」に引き続いて(・∀・)イイ!!。(そういやあれも北海道が舞台だったな)徐々に頭角を現してきましたね。これからも楽しみです。

監督:小沼勝、脚本:長谷川弓子、安倍照男、村上修 撮影:鈴木耕一
出演:戸田菜穂、遠藤憲一、中村麻美、片桐夕子、モロ師岡、北村和夫
 今日、ご紹介するのは「北陸代理戦争」。先ほど出版された「映画監督 深作欣二の軌跡」によると本来、この企画は「新仁義無き戦い」シリーズの一本として立てられたのですが、菅原文太が降板。主役が松方弘樹になったため、急遽この題名に変わりました。

 またこの映画はトラブル続きで予告編にも出演していた準主役の渡瀬恒彦が撮影中に事故を起こして瀕死の重傷を負いました。(ちなみに最後のあの場面でジープから落ちたらしい。渡瀬恒彦の役は伊吹五郎がやった。)もちろん、この話も実録もので松方が演じた川田のぼるのモデルとなったヤクザは公開直後に射殺されたそうです。警察からの圧力もあり、大変難産な作だったようです。

 福井は富安組の親分、安浦は怒り心頭に発していた。組員の川田である。競輪の権利を譲れ、という川田に逆らった安浦は雪の海岸に首だけ出して埋められた。川田はその横をブンブン、ジープで駆け抜けるのである。びびった安浦は引退に追い込まれた。親に逆らうとはなんちゅう奴じゃ!と安浦は弟分の万谷と相談して川田を抹殺しようとする。

 時はヤクザ戦国時代。関西最大暴力団浅田組の急先鋒、金井組は鳥取を制し、北陸に入ろうとしていた。万谷は金井と結んで川田を襲撃。川田は瀕死の重傷を負うが、バーのママ、中井きくの兄弟に匿われる。もちろん、黙ってやられる川田じゃない。回復すると万谷を襲撃。見事に腕をぶった切る。しかし北陸はすっかり、金井組の手に落ちていた。金沢では中井きくの弟である、たかしが親を殺して金井組の一員になっていた。窮地に陥った川田は金井のライバルである岡野と結ぼうとするが。。

 冒頭の「雪の海岸に首だけ出して埋める」からとにかく凄惨な話です。松方を含め、どいつもこいつも食えない奴ばっかり。出色だったのは野川由美子かな。自らの保身の為にコロコロ男を変える節操の無さが何とも頼もしい。深作映画に出てくる女で一番たくましいです。これの弟が地井武男。保身の為に実の妹を拉致します。こいつはただの外道。もっと凄いのがさらわれた妹。自分の兄貴を出刃で刺し殺す。この中井兄弟の生き様だけでもおなかいっぱい。

 ハナ肇と西村晃も面白い。「仁義無き戦い」で言うとハナ=打本、西村=山守と考えるとわかりやすいです。西村晃は「仁義無き戦い」撮影の始まる時に風邪で寝込んでいた金子信雄の代役として名前があがっていました。ちなみに有名な逸話ですが、金子信雄は西村が候補に上がった話を聞きつけて、病床から這って出演を希望したそうです。この映画では山守を演じられなかった鬱憤を晴らすか、のように(本人がやりたかったか、どうかは知りませんが。)独特の演技を披露してくれます。

 松方は深作監督の作品に多く出演していますが主演したのはこれと「恐喝こそわが人生」の二本だけ。(意外)この役は文太よりも松方の方がぴったりだったと思います。腕っぷし一本のように見えても実は策謀家。卑怯なことでも平気でやってのけるヤクザは何か、坂井の鉄っちゃんに共通するものがあります。「仁義無き戦い」から始まった東映実録路線も遂にこの作品で打ち止め。同時に深作監督もこれ以後、一度もヤクザ映画を撮りませんでした。実録路線というのは深作に始まり、深作に終わったというべきでしょう。

 衝撃のラストはあえて述べませんので、ぜひぜひビデオでお確かめください。6月21日にDVDも発売されるよ。

今週の素敵過ぎる一言
「北陸とはこういうところなんです。茶碗も盃も関係ない。その気になれば親でも食い殺す。生きるために手段を選ばないのが北陸人です。」
→福井、石川、富山の人はお互いをバカにしあうそうです。福井の人間は「富山、石川と一緒にされたくない」、富山の人間は「福井、石川とは一緒にされたくない」石川の人間も然りです。映画でも「越中強盗、加賀乞食、越前詐欺師」という凄い言葉が出てきます。私は北陸の友人がいないのですが、こんなん言われたら地元の人は怒るぞ。
 なんかマトリックス一色の映画館ですが、皆様如何お過ごしでしょうか。つうか、こんなファンがいたのか?前作は60億ぐらいでたいしたヒットじゃなかったんだけどな。本当にファンなのか、問いたい。問い詰めたい。小一時間ほど問い詰めたい。来週あたり、有休取るんでその時にでも見ますわ。

船を降りたら彼女の島 6/7 みなみ会館
★★
→主演が木村佳乃という時点で期待度が低かった映画ですが、まあまあ見れる映画になってました。これは愛媛県の名所を紹介する観光映画だと思います。愛媛と言えば松山と宇和島ぐらいしか知らないのですが、松山、宇和島以外の観光地を紹介しています。今年、大三島とか行って来たので「あーここ行ったなあ」とか思いながら楽しんで見れました。亀井大橋(しまなみ海道)も出てきてるしね。好きなエピソードは実際にはない所なのに子供の記憶に刻み込まれた思い出の場所がある、というお話。私にもぼんやりとしたあんな記憶がありました。

☆変態家族 兄貴の嫁さん 6/7 みなみ会館
★★
→もし監督が後世、めちゃくちゃ有名になってなかったら、今やそこそこ有名な役者になった大杉漣が出てなかったら、タダの変な映画として快楽亭ブラック師匠の本でしか紹介されなかった可能性が大きかったと思う。小津にオマージュを捧げた、というが考えてみたら小津の映画って私3本ぐらいしか見てないんだな。小津の映画見てたらもっと面白く思えたんやろうか。大杉漣の笠さんの真似が笑えた。それから隣の若夫婦がやんごとなき夫婦に似ていたのも完全な偶然でしょうけど変に笑えた。

☆ソナチネ 6/7 みなみ会館
★★★
→一言で説明すれば終わってしまうようなストーリーを思いっきり引き伸ばした作品。芸術的云々よりも主要登場人物が思い入れもなく、死んでいく様に衝撃を受けた。私はたけしという人は俳優としても監督としても怪我をする前の方が好きだな

☆アベック モン マリ 6/7 みなみ会館
★★★★
→男女同権の世の中で女性の社会進出は少しは進んだが男性の家庭入りは全く認められないのは全く変だと思う。失業した時に本気で専業主夫になることを考え、もし稼いでくれる嫁さんがおったらそうしていた可能性が高い私には(なお、現在でも少し考えている)大変、面白かった。これからの時代、ますます夫婦の形は複雑になるだろうし、男女の関係も変わってくると思う。そういう意味ではこの映画は時代を先取りした映画として後世、絶対に評価されます。「消えてなくなりたいです。。」のシーンは大爆笑もんでした。あと大杉漣のファンなあなたは絶対に見るべし!

ぷりてぃ・ウーマン 6/8 京極弥生座1
★★
→これだけ、老人が多くなるといろんな年寄りが出てくるもんで。そら若い中でも、もう少しで1000人斬りを達成せんとする山本太郎から私まで(対極かよ!)いろんな人がいるのですから年寄りでも個人差があるのは当たり前。ホームコメディのように見えるが込められたメッセージは意外に深く、じっくり見ると意外にキツイ映画だったりする。

セプテンバー11 6/10 みなみ会館
★★★
最後の今村昌平の作品だけ★★★★★
→世界を代表する(どんな基準で選んでるのかわからん)監督が取ったショートフィルム集。企画されたときには「テロにあった気の毒な人々への追悼」やったと思うのだができばえは、原陽子的な「ざまあみろ」(ケンローチとエジプトの監督、イランもそうか)的なもんか揶揄するような作品ばっかりだった。アメリカのショーン・ペンに至ってはなんかよくわからん。特にエジプトの監督は亡霊となって現れたアメリカ兵士に対して「てめえみたいな奴は死んで当然じゃ!ゴルァ!」と恫喝する凄い作品でした。おまえら、何様だ。しかしやはり一番凄かったのはトリを飾った今村昌平。田口トモロヲ、麻生久美子、北村和夫、市原悦子、柄本明、倍賞美津子、丹波哲郎、緒方拳という豪華出演陣で繰り広げる全力投球な映画でした。他の作品は片手間で1日で撮ったような薄い作品だらけの中で彼のこだわりようはすごい。「聖戦なんかない!」という緒方拳の一喝でああ、この映画は反米の映画だということに気づき、それでこの顔ぶれか、と感心した次第。今村監督、ごくろうさまでした。

恋愛寫眞 6/14 MOVIX京都シアター6

→堤幸彦の映画が好きな人というのは奴が繰り出す小ネタが好きなんだと思うが私にはその良さがさっぱりわからず。ストレスがたまる一方である。もっともそういう小ネタを棄てた後に残る堤の映画というのは見れたもんじゃなく、この人は所詮、石井克人並みの小ネタオンリーの監督なんだろうな、と思う。はっきり言うと映画に向いてない。金取って見るもんなんか作れない。基本的にドラマの人である。この映画も本当に見れたもんじゃなく、漫画喫茶で「バカボンド」読んでる本がよっぽど高級な時間つぶしとなるのだがそれでも映画として成り立っているのは広末涼子の魅力だろう。一時に比べれば勢いは落ちたがあれだけのスキャンダルにまみれながらもいまだにトップクラスを維持し続けられるのは一重に本人のしぶとさだと思う。同時期に人気者だった奥菜恵にしても榎本加奈子にしてもさっぱりだが、いまだにメディアに露出があるもんね。大学は留年したけれど。「秘密」で女優に転身したと思われた彼女だったが、いまだに彼女は現役のアイドルなのだ。

スパイゾルゲ 6/14 京都宝塚
(´・ω・`)ショボーン
→篠田監督最後の作品なんか知らんがそういう予備情報を入れても入れなくても「スパイ・ゾルゲ」はつまらん映画だった。監督はゾルゲへの思い入れが強く、映画化したいと常々考えていたと言うが一体、何をやりたいのか、よくわからんかった。映画監督が実際にある話を題材にしてそこに自分の気持ちを注入してメッセージを盛り込む。松竹ヌーベルバーグの一員として”革新的”な映画を撮ってきた篠田監督ならば、そうすべきであったと思うがそういうメッセージ性が全く皆無で、何故ゾルゲを題材にしたかったのかがわからんのだ。その昔、大島、吉田、篠田と松竹に革新的な(当時の革新とは北朝鮮のような国家体制が素晴らしいとするアホな思想だった)映画を生み出す松竹ヌーベルバーグなる運動があったのだが、その当事者全員の遺作が出揃ったと思う。「御法度」にしても「鏡の中の女達」にしても作品のつまらなさは折り紙付きだが、このような映画を公開させてくれる会社がまだあると言うことを御三人は感謝すべきだろうね。とりあえず葉月某はもう映画に出すな。それから脚本を誰が書いたか知らんが「人間、雨の日もあれば晴れの日もあるさ。人間だもの」という台詞を恥ずかしいとは思わんのか?本当に時間の無駄使いだった!こんなんやるぐらいなら成分献血でもしとけばよかった。(同じくらい時間がかかる)ちなみにスパイゾルゲについては「知ってるつもり」でやったのが一番面白かった。

注意!!本当に「スパイゾルゲ」は時間の無駄です。これを見るぐらいなら「マナに抱かれて」を見てる方がまだマシです。(見てないが)

うわ。。もうすぐ3000字。お退屈様
 今週は先週に引き続き、大杉漣出演作品の紹介で「変態家族 兄貴の嫁さん」。監督はたった3作品でトップに上り詰めて今や隠居してしまった感もある周防正行。大杉漣さんのお話によると、この作品は有名な評論家(蓮實重彦の名前ぐらい、スッと出るようにしようね)に褒められて一部の映画ファンの間で有名になったと言う作品。もっともポルノで小津をやってる変な奴がいる、という注目のされ方だったみたいですが。

 その後、まあ周防さんの活躍で「周防さんの原点!」として、まあこういうところでも上映されるようになりました。このオールナイト、大杉さんのファンばかり来てると思うのですが女性の数が多く、私の隣にも女性が座っておられました。多分、大杉漣見に来て、ポルノ映画を見るとは思わんかったでしょうなあ。。でも私も劇場でポルノ見るのは始めて。

 新東宝のロゴのあと、松竹映画の象徴である富士山がニュッと現れて「それはとても綺麗な女の人でした」みたいなナレーションが入って和紙の上に黒々と筆で書かれた「変態家族 兄貴の嫁さん」の文字。これだけでひっくり返りました。なんだこりゃ。その後、スタッフとキャストが紹介されていきます。これだけでポルノを見に来てた映画ファンの心はガシッとつかまれるわけです。

 ただ、周防さんという人はポルノには興味ないんでしょうなあ。またもや大杉漣さんの言葉を借りると「幾何学的なセックスでこれで興奮できる人はかなり変な人」と言われた濡れ場は退屈で1時半過ぎの上映だった為に少し寝ますた。主演の女優さんは胸がでかいだけの芋女でその胸をひたすら、下元史朗がひたすらこね回す。前戯もなんもなく、いきなりぶちこむ。でも、ほとんど無声。一応、三人の女優さんが出てくるのですが興奮できたのは「ちゃばん」のマダムとのSMプレイぐらいで退屈。当然ながら「こんなつまんないもん作るな」と会社から怒られたそうです。そらまあそうですな。

 で、大杉漣なのですが間宮周吉という60過ぎの嫁はんを失った年寄りを演じてるのですがこの時、まだ30台。わざとなのか、邪魔くさかったのか、老けメイクはほとんどせず、笠智衆の物真似をすることでジジイらしさを出してます。周防さんから「大杉さんはきっと笠さんみたいな年寄りになる」と言われて引き受けたそうですが、確かにそうかも。

 この爺さんは濡れ場には一切関わらず、ずっと長男や次男が嫁とからんでる部屋の横でお茶を飲んでます。落ち着いた年寄り、と言うよりこれはなんだろうか。おそらく自分が手を下さなくても嫁が他の男にやられてるだけでイッてるという設定なんだろう。周吉が「母さんに似ている」と通っていた「ちゃばん」のマダムが最終的に長男がデキてしまうのもなんかプレイ臭いな。マダムにしても嫁にしてもジジイに惚れているのは見たらわかるのだが。

 究極のプレイとは手を下さずにしてイカせてしまう、これを放置プレイと言うのですがもしかしてこの映画というのはその放置プレイを実現したものか!そんなに力入れんでもええことですが、これが本当なら周防さんってめちゃくちゃポルノに適した人やん。でもこれで興奮するのにはあと何年かかるのだろうか。

 ピンク四天王を引くまでもなく、現在日本映画を代表する監督にはピンク映画での下積みを終えた監督が多くいます。黒沢清にしても高橋伴明にしても滝田洋二郎にしてもそうだしね。ピンク映画というのはとりあえず、濡れ場があればOKと言う枠しかないそうです。ピンク映画は本番は無いらしく、全部演技で(肝心なところにはテープが貼ってあるらしい)そこそこの演技上手が揃っているのでいろんな映画が作れたんでしょう。

 最もピンク映画に限らず、AVでもたまに映画らしさを狙った作品もあり、「アパートの鍵貸します」をモチーフにした作品とか「羅生門」をそのまんまパクったのもありました。さらに今一度、大杉漣さんの言葉を引きます。「当時のピンク映画の現場は熱気で満ちあふれていた。」監督に「Shall we ダンス?」の周防正行、監督助手に「星に願いを。」の富樫森、製作担当に「がんばっていきまっしょい」の磯村一路と今見ると贅沢すぎるスタッフで作られた、この映画の現場は想像するだけでもわくわくしてしまうのです。

監督、脚本:周防正行、企画:朝倉大介、監督助手:富樫森、音楽:周防義和、製作担当:磯村一路、タイトル:斉藤浩一
出演:大杉漣、下元史朗、風かおる、山地美貴、麻生うさぎ
 今日は1967年の「解散式」。深作監督にとって初めての仁侠映画です。「誇り高き挑戦」、「狼と豚と人間」、「ギャング対Gメン」とギャング映画ばかり撮って来て一定の評価を受けてきた深作監督ですが、1967年から1972年にかけていろんな映画を撮っています。この「解散式」もそうした試行錯誤の中で一本で、仁侠映画を多くプロデュースした俊藤浩滋とはじめて組んでいます。俊藤さんは深作の才能を高く買っており、「仁義無き戦い」の製作にも名を連ねています。ただ、深作監督にとってはやはり仁侠映画を作るのは厭だったらしく、「やっぱり何か自分で好きな映画をやっている実感はなくて、しんどかったですね」(「世界の映画作家22」より)と自作を振り返っています。

 小滝組の幹部、沢木(鶴田浩二)は8年の刑期を終えて、娑婆に舞い戻ってくる。彼自身は何も変わらなかったが世間は変わりすぎていた。彼の古巣はコンビナートに生まれ変わり、かつてあったヤクザ組織は暴力団追放の世論をかわす為に解散していたのだ。小滝組もその例外ではなく、小滝組幹部の島村(渡辺文雄)が経営する島村組へと姿を消していた。沢木は島村より会社の経営に協力してくれるように頼まれるが、自分のガラではないとスラム街に身を寄せていく。「任侠道なんてのは上が押し付けたお仕着せだぜ。」「そのお仕着せが俺にはぴったり合うんだ。」

 しかしそのスラム街にも”時代の波”は押し寄せていた。内縁の妻、恩師も住むその土地は新たなコンビナート建設予定地として、島村組と桜田組の双方に狙われていた。やがて島村は、沢木の弟分を妹を人質にして、鉄砲玉に使おうとする。。

 追い詰められた主人公が最後に悪人をドス一本ぶらさげて殺しに行く。仁侠映画というのは所謂、そうしたガマン劇です。この映画もそのガマン劇の一種で鶴田浩二は最後にドスをぶら下げて殺しに行きます。俊藤さんは「任侠映画伝」で「任侠映画の魅力は夢とロマンや」と述べています。確かに追い詰められた主人公が一切の打算も駆け引きもなく、悪い連中を成敗するのは胸がすく思いもします。しかし。。なんかなあ。私は逆に敵役の渡辺文雄がかっこよく見えてしまう。鶴田浩二を前に「弱い奴は死ぬ。俺だってこの仕事に命はってるんだ」と言い切る姿には「悪人だと言われようが俺は自分の道を進む」という強さがあります。この映画では彼がラスボスではないのですが、やはり対立軸として鶴田と渡辺を比べると渡辺に「鶴田浩二にはなれなかった」男の悲しみみたいなものを感じてしまう。

 こうした違和感はやはり、深作監督自身が仁侠映画というものに疑問を覚えていたからだと思います。鶴田浩二演じるヤクザは正義の人と言うより、自分を貫いて生きたい人。時代に取り残されたことはわかっているのですが、旧来のヤクザにしがみつかざるをえない。丹波哲郎演じるヤクザもやはりそういうヤクザで、鶴田が出獄するのを一人待ち続けていました。こうした男たちの執念を無理やり、仁侠映画に当てはめたので何となくしっくりきてないんじゃないでしょうか。この傾向は「博徒解散式」でさらに強くなっています。

 共演ではボスをやらせたらこの人の右に出る者なしの内田朝雄にあご髯の政治家として金子信雄も出演しています。個人的には小松方正のテカテカ感が面白かったです。

 人が映画を選ぶ基準というのは様々です。ある人はジャンルで選び、ある人は口コミで決め、時にはその日の気分で「人がガンガン死ぬ映画が見たいわ」と「あずみ」を選ぶ人もいるでしょう。私も様々な基準で選んでいますが、日本映画を選ぶ時に私は一つの基準で選んでいます。それは大杉漣が出ているかどうか。私にとっては大杉漣は一つのジャンルでさえあるのです。どんな映画であろうとも彼の出演シーンを見るだけでもお金を出す価値があると信じ、なるべく見に行くようにしています。

 6月7日。京都のみなみ会館で行われた大杉漣Nightに行ってきました。大杉漣さんをお迎えしてのトークショーと彼が出演している映画から数本。ラインナップは周防正行の「変態家族 兄貴の嫁さん」「ソナチネ」「アベック モン マリ」「DRIVE ドライブ」そして新潟の高校生が監督した「黒いカナリア」(未完成)の大杉漣が出演したパートの上映がされました。165席分の前売り券は売り切れで立ち見まで出ていました。オールナイトを立ち見で楽しもうと思う客は根性満点だと思います。しかしこの日のこれは立ち見で見る価値が充分ありました。まさか20分予定のトークショーが90分にも延びるとは思わんかったです。

 みなみ会館側は舞台挨拶程度の予定(まさかこんなに喋ってくれるとは思わなかったらしい)だったと思うのですが、本人はもうノリノリでずっと喋り放し、写真撮影も許可され、握手する機会にも恵まれた、その空間は映画ファンに取っては、そこは楽園。

 撮影の裏話(黒沢清の話が面白かった)や映画の話や自分の信条とかがもうポンポン出てきてそれが一つ一つ面白い。いろんなことをやってくれるんじゃないかな、と期待していったのですが、まさかここまでサービスしてくれるとは!「この仕事はやはり心と心のつながりが大切だと思う」と語るその姿からは本当にこの人、映画が好きなんだなあと思いました。「黒いカナリア」に出演したきっかけが高校生の「僕が脚本を書いたら出演していただけるでしょうか?」という質問からだった話も印象的でした。それをまた気負うことなく、サラリと言うその姿勢からも人柄の良さが感じ取れました。

 私が始めて彼の出演作品を見たのは「HANA−BI」でした。捜査中に狙撃され、下半身不随となった刑事を演じていました。「家に帰ると嫁さんと子供が背中向けてるんだよ。」家族に棄てられ、ひたすら絵を描く生活を送る彼は破滅的な人生を歩んでいく主人公と対照的で印象に残りました。この日は「船を降りたら彼女の島」も含めて大杉漣出演作品を数本見ましたが「HANA−BI」と同じ北野監督の「ソナチネ」の感想を明日、書きたいと思います。「変態家族 兄貴の嫁さん」も面白かったんですが、これはまた来週。
 バトロワ?の公開まであと一ヶ月と迫った今晩、皆様如何お過ごしでしょうか。なんかまだ編集も終わってないようで本当に公開されるのか、不安ですがまあ大丈夫でしょう。ここに来てやっとどんな話なのか一部映像も紹介されてきましたが、竹内力がやっぱめちゃくちゃかっこよいです。前作のキタノのように不気味なオーラを出しています。「この世は勝ち組と負け組の二つです!」、「おまえら、絶対に負けんなよ!」かっこええ!!!以前、深作まつりを一時中断するとか書いてましたが撤回します。このまま、突っ走ります。

 今日は1969年の1月に公開された「黒薔薇の館」。二年前に撮られた「解散式」から深作監督はフリーになっており、この作品も松竹の大船で撮影されています。この時期、松竹でこの作品を含めて3本の作品を撮っています。

 この67年から70年の間、深作監督は東映で仁侠映画を撮ったり、深作監督自身がフィルモグラフィーから削除したかったと言う「ガンマー第3号 宇宙大作戦」を撮ったり、いろんなことをやっています。

 この作品もそんな試行錯誤の中から生まれた一本なのでしょう。深作監督は様々な俳優と組んでいますが、この映画の主演は丸山明宏。今の美輪明宏ですな。この前年にも丸山明宏を主演にした「黒蜥蜴」という作品を撮っています。

 会社の重役をしている資産家(小沢栄太郎)が趣味でやっているクラブ「黒薔薇の館」。久々に自分の店を訪れた資産家は新しい女が入ったことをする。リュウコ(丸山明宏)という女はその経歴、年全てが不明。夜の8時になるとクラブに表れ、魅惑的な歌だけ歌って帰ってしまう。彼女を目当てにした政治家や作家がぞくぞくクラブに表れる。

 彼女がこの店に現れるようになって、彼女の元旦那と名乗る男が次々とやってくる。考古学者(西村晃)や銀行員(川津祐介)、そして乱暴なマドロス(内田良平)は力づくで彼女を手にいれようとしてボディガード(ジョー山中)と刺し違える。いつしか、資産家も彼女の虜となっていた。しかし、彼はやがてあることに気付く。長らく家出をしていて帰ってきた息子のワタル(田村正和)は彼女に恋をしていたのだ。

 前半はリュウコが如何に綺麗か、グダグダと描いてるのですがこれがテンポが悪く、すごく退屈。確かに丸山明宏は綺麗なんだけど、でもやっぱどう見ても男だ。それに我々は今の、”もののけ”美輪明宏を知ってるわけですから気持ち入らないです。丸山明宏は多くの映画に出演してますが、川島雄三の「女であること」で主題歌歌ってたのが一番よかったような。

 西村晃が大袈裟なアクションで愛を捧げるシーンはどう見てもコメディ。散々に変態だ、罪深い女だと罵って彼女から一声かけてもらっただけで「思い出してくれたねえ。。おまえ」とほっとした顔になる。んで、これが全部嘘だったんだからとんでもねえ奴です。西村晃って役者はうまい!

 後半は資産家の家庭問題についてになってきます。資産家には優秀な長男(室田日出男)と放蕩息子のワタル(田村正和)と二人の子供がいます。そして数年前、夫の留守を狙い駆け落ちしようとしますが事故で下半身不随になった妻がいます。妻はワタルに自分が成し得なかった夢を託そうとします。

 親父は家族を愛しており、妻も許し、ワタルの放蕩も許そうとします。しかしそれでもワタルは親父から飛び立とうとし、強盗をしてやがて事故で死にます。後半の主役はこの息子で女はどうでもよくなる。むしろ、邪魔だったような気がします。最もその命題も使い古された物で新鮮味は何もないけどね。

 それから長男役を演じた室田日出男もよかった。優秀だけど嫌味な兄貴という似合わない役柄なんですが、こういう演技もできるというところも見せてくれました。じっくり見ればかなりの男前。それもそのはず、ニューフェース出身なんですな。
 ここではほとんど映画の感想以外のことは書きませんが私生活とは申しますと田舎の方でまあ楽しくやっとります。来た時には「何と忙しいとこなんだ」とへこんでおりましたが、波は越えました。多分、今月は残業ないです。

 現在の更新だけでも結構しんどいのですが、2週間か一ヶ月単位で映画コラムを書こうと考えております。少し真面目なコーナーもやりたくなってきました。

 今月も特に大当たり(ブルズアイ)な作品はありませんでしたが、気付けば12本。今年度鑑賞本数も77本に達しました。目標の150本はいけるかな。まあそんなに見たい作品ないんですけど。


魔界転生 5/1 MOVIX京都シアター7

→個々のエピソードは面白くないこともないが、全体に見たら駄作。平山監督の遊び癖が悪い方向に結びついたのと窪塚の勝手な思い込みによる独走が完全に浮き上がった。麻生久美子を始めとした女性陣もちっとも魅力的に撮れていない。全然駄目。

☆負ケラレマセン勝ツマデハ 5/4 みなみ会館
★★★
→税金を巡る軽いコメディ。社長シリーズでおなじみの森繁、小林桂樹のコンビが楽しい。乙羽信子の何となくとぼけた演技もいい。結局、「森繁映画祭」はこれしか行けなかった。

?−メン2(日本語版)5/5 京極東宝2
★★★★
→超能力の持ち主をマイノリティと定めたアイディアは前作よりもくっきりとして、ドラマを浮き出させてる。前作ではただの悪役だったマグニートは魅力あるキャラに変身し、説得力すらも出てきた。だが今作の主役は敵のウルヴァリンに恋慕を抱く、悲しすぎる少女のミスティークであろう。演じてる人はグラビアアイドルらしいが、この役では顔がわからん。役者魂を感じる。おまえーた、アンナ・パキンばっか見てんじゃねーぞ。

星に願いを。5/9 美松劇場2
★★★★
→よく考えれば、かなり穴がある作品なんだがやっぱり今思い出してもいい映画だと照れずに言おう。ヌルすぎる恋愛映画に國村準の一本筋が通った演技がアクセントになっている。もう一回見に行こうかと思うぐらい。富樫森は癖になる。WOWWOWのオリジナルドラマ「俺は鰯」も見てしもうた。

T.R.Y.<トライ> 5/17 祗園会館
(´・ω・`)ショボーン
→全然駄目。東映の社運を賭けた映画を大森一樹に撮らせるあたり、岡田ジュニアのボンクラぶりは相当なもんであることが推察される。まだ役者やってる方がいいんじゃない?星つけるほどの映画でもないので星もつけない。著しく、時間の無駄であった。いいとこ、全く無し!

☆宣戦布告 5/17 祗園会館
★★★
→今まで見る機会を探ってたのがやっと見れた、という感じ。こういう映画がある程度のリアリティが見れるような世の中になったことを感じる。対面ばかり気にする外務省に実際には何もできない防衛庁などには背筋が寒くなる。在日問題にも踏み込むなどかなり本格的な映画になっているが惜しむらくは笑うシーンが全く無く、少し肩に力が入りすぎたところか。まあそこまでを求めるのは酷か。

GUN CRAZY Episode 3: 叛逆者の狂詩曲 5/18 動物園前シネフェスタ4(SCREEN2)
★★
→仲根かすみのぼんやり加減をうまくキャラ設定につかったところは褒められるが映画自体のスケールが小さくなってしまったのが残念。まあ大谷みつほも可愛く撮れてたのでアイドル映画としては上出来とは思います。ただ、車上荒らしの捜査官は銃を持てないと思うけど。

GUN CRAZY Episode 4: 用心棒の鎮魂歌 5/18 動物園前シネフェスタ4(SCREEN2)
★★★★
→映画秘宝読者に大モテの加藤夏希が主演。結構、本格的にアクションしてるし、少し「七人の侍」へのオマージュが入っている演出が好き。70分でここまでやってくれる映画がまだ日本にあることを嬉しく思う。

めぐりあう時間たち 5/23 MOVIX京都シアター3
★★
→劇場でリピーター割引をしておったが、一回見ただけではすべてを理解でききれん映画。でもこれは結局は脚本の不首尾だと思う。何をやりたいかもわかるし、それなりに見る価値はあると思うが、他のやり方があったと思う。大体、何故ニコール・キッドマンの鼻に変なものをかぶせてまで、ヴァージニア・ウルフをやらせたかったのかよくわからん。

アバウト・シュミット 5/24 美松劇場1
★★★★★
→感想で散々書いたので詳しくは書きませんが、アメリカでもこういう映画がやはり涙が誘うのね。特に大きな事件もなく、二時間近くもある映画ですが厭きさせないのはさすが。なお、小ネタですがムーア髯の薄らハゲを演じた俳優さんは「ベズトフレンズウェディング」でキャメロン・ディアスとジュリア・ロバーツに愛されてました。役者ってなんでもやるのね。

過去のない男 5/28 みなみ会館
★★★★
→少しぬけたような演出にどっぷりハマった。主題ははっきりとわからんが、どんな状態になっても人生は進む、と言いたいんやろか。とりあえず、クレイジーケンバンドのCDはいつかゲットせねば。

ハンテッド 5/31 MOVIX京都シアター7
★★★
→若干、トミー・リー・ジョーンズがヘタってたような気がするがまあ面白かった。ベネチオ・デルトロファンにとっては充分、楽しめる映画。
 本日はアキ・カウリスマキの「過去のない男」。この作品、実はカンヌ映画祭のグランプリ作品でアキ・カウリスマキもめちゃくちゃ有名な監督らしいですが、全然知りませんでした。だってカンヌが推す作品って大多数がつまらん。「ダンサーインザダーク」とか言うクソ映画に賞をやった時点でグランプリ=素晴らしい作品、ではないことを知りました。アカデミー賞もそうなんですがグランプリの作品って5年後に忘れられてる作品ばっかりですもん。「恋に落ちたシェイクスピア」とか皆さん、覚えてますか?

 深夜のヘルシンキ。駅のベンチで座っていた男は暴漢に襲われて、瀕死の重傷を負う。医師も匙を投げてしまうが、奇跡的に蘇生。しかしその代償なのか、彼は記憶を失ってしまう。九九とか物の名前とか日常茶飯事のことは大丈夫なのだが、過去の記憶がさっぱりない。自分の名前も住所もわからない。

 彼を介抱してくれたニーミネンは「人生は前にしか進まない」と彼を励まし、空いているコンテナを紹介してくれる。彼自身も警備員をやりながらコンテナで妻と子供2人の4人で細々と暮らしているのだ。金曜日の夕方、おめかししたニーミネンが彼を食事に誘う。救世軍が無料で食事を振舞ってくれるのだ。そこで彼は救世軍に勤める孤独な中年女のイルマと出会う。

 コンテナにも家賃がある。家賃を稼ぐ為には働かねばならない。職安に向うが、住所も名前も書けない為に職員に「なめるな、ヴォケが」と受付を拒否される。疲れ果て喫茶店に入るが客だと思われず、食事まで恵んでもらう。困り果てた彼はイルマにもらった名刺を頼りに救世軍に助けを求める。イルマは彼のために小奇麗な洋服と仕事を斡旋してくれた。貧しいながらも人生は前に進みかけていた。やがて二人は恋仲になり。。

 監督のカウリマスキは小津の大ファンで自らの墓碑に「生まれては見たけれど」と刻みたいと公言しているそうです。変な奴。何故か映画のワンシーンで日本のナツメロが使われるシーンがあります。なんか水原弘みたいな歌なんですが、これ実はクレイジーケンバンドの「ハワイの夜」と言う歌で最近の歌らしいです。少し、ハマリました。

 溢れる失業者にコンテナで暮らす人々、そのコンテナの元締めを警官がやっているというめちゃくちゃ世界観が楽しい。まあ日本も遅かれ早かれ、こうなるんでしょうが。かなり悲惨な日常なんですが、不思議にそこに悲壮感はない。なんか突き抜けてしまった、あっけらかんな日常がそこにはある。なんか「ぼくんち」に似てる。

 実はとても真面目な映画なのかもしれませんが、救世軍のおエライさんが大真面目に皆の前で歌ったり、汚職警官と男のやり取りとか、「ハワイの夜」が流れるシーンとか笑えるシーンが多かったです。少し、ウルっと来るのは銀行強盗のシーンぐらいか。ストーリーはダラダラと進み、演出にキレはないですが、このヌルい感じが割りに癖になるかも。

 このページを見ている方はご存知でしょうが、映画芸術403号は深作と笠原の特集となっとります。他の雑誌は主に深作と関係の深かった俳優へのインタビューが多いのですが、この雑誌は脚本家とか監督が深作監督の思い出を語る、という男泣きな本になっています。緒方明に金子修介(もっとがんがれ)、望月六郎、阪本順治に森達也。(!)さらに深作×笠原の幻の企画「実録・共産党」まで載ってるぞ!(これがまた凄い内容)こういう雑誌がキアヌしか表紙に出さんバカ映画出版界に残ってるだけでも感動やぞ!みんな、買おう!

 今日は「暴走パニック 大激突」。「仁義無き戦い」シリーズを撮り終わった深作監督が渡瀬恒彦とピラニア軍団を率いて作った、アクション映画です。ピラニア軍団というのは大部屋俳優を中心にした、威勢のええ集団で室田日出男や川谷拓三、野口貴史、志賀勝、小林稔持なんかが入ってたようです。まあ、実際のところは誰がピラニアというのはよくわかりませんが(1977年に「殺られてたまるか ピラニアの唄」という本が室田日出男と川谷拓三の二人の共著で出版されています。)深作の映画で威勢よく死んでる人と思えばわかりやすいと思います。深作の映画で出るたびに様々な死に方で我々を楽しませてくれる小林稔持が今回もトラックに轢かれて死ぬ壮絶な死にっぷりを見せております。もちろん拓ボンも日出男も志賀勝も出演じゃ。

 気のいいバーテンのツネ(渡瀬恒彦)には銀行強盗という裏の顔を持っていた。相棒(小林稔持)に金の使い道について聞かれた彼は何気なく「ブラジルでも行くわ」と答えるのだった。彼にはミチ(杉本美樹)という女がいた。酒屋でイカれた元公務員(三谷昇)に付きまとわれていたのを助けに入ったのが縁になった。毛皮を万引きする困った女だが、どこか可愛いところがある。ツネはこの映画で幾度も彼女を棄てようとしますが彼女は健気にも彼を追っかけてきます。

 これが最後と決めた銀行強盗だが相棒がトラックに轢かれてしまった。何とか逃げおおせて高飛びしようと思うツネの前に一人の男が現れた。相棒の兄貴を名乗る男(室田日出男)は「死んだ弟の分け前をよこせ」と襲ってきたからさあ大変。ついでに警官(川谷拓三)に顔を見られてしまうが、その警官が興奮状態でちっともモンタージュができあがらない。

 ストーリーはこんなもんで最後はひたすら、カーチェイス。渡瀬恒彦、川谷拓三、室田日出男、志賀勝が画面狭しと暴れまくります。本当にそれだけの映画ですがアクションシーンは大変面白い。特に右翼が流す軍歌で非常ベルが鳴ってるのに気付かないというアイディアはよくできていると思います。逃げる渡瀬を追っかける室田のトラックと拓ボンのパトカー。こいつらが引き起こす騒動がめちゃくちゃ面白い。ホモに犯されそうになって人殺しを敢行した青年がパトカーに轢かれて宙を舞う。

 NHKの暴走族の取材中に室田のトラックに轢かれた仲間の仇を討つ為に追っかけるバイク達。拓ボンのパトカーに当てられた志賀勝、片桐竜二も「ポリ公が当て逃げしてええんかい!」とおっかける。なんかよくわからんけどヤクザの車も追っかける。拓ボンのライバル・曽根晴美も追っかける。途中で取材に切り替えて「キチガイ」を連呼しながらNHKも追っかける。もう大混乱。特に「てめえら!国営放送なめんなよ!」とアタックしまくるNHKのアナウンサーは絶品。もうわけわからん。

 実は同時期に全く同じメンバーで京都を舞台にした「狂った野獣」という同じくカーチェイスを売り物にした、同じような作品があります。監督の中島貞夫は深作監督と仲が良く、実録ヤクザ映画を多く撮った人ですがアクションを撮るのが大変うまかった。アクション自体は「狂った野獣」の方がずっとよく出来てるのですが、深作監督特有の味のある脇役(特に三谷昇と室田日出男がよかった!)が大活躍で印象に残る娯楽作品になったと思います。「狂った野獣」でもスタント無しで渡瀬恒彦がひたすらバスで京都の町を走り回る作品で室田日出男の立ち往生など笑えるシーンも満載です。こちらもお見逃し無きよう。

 本日は「アバウト・シュミット」。日本映画ばかり取上げるこのサイトにおいては久しぶりの外国映画です。実は私、ジャックニコルソンのファンでして、というか私が映画好きになったきっかけは「恋愛小説家」でして、映画見始めた頃はジャックの出演してる作品ばかり見てました。ということで、今回の映画も封切初回に見に行って参りました。京都の美松劇場は相変わらず、ガラガラでした。

 ジャック・ニコルソン演じるウォーレン・シュミットは、長年勤めた保険会社の定年退職の日を迎えた。42年間連れ添った妻に独立している、愛する一人娘のジーニー、そして多くの友人と後輩。彼の人生はこれからも順調であるはずだった。。だが。

 新しい人生の始まりの日、妻は彼にそう言った。しかし彼にはどうもその実感が持てなかった。それどころか、彼には妻がやることも言うこともさっぱり理解できなかった。こんなんとこれからずっと一緒か。。

 いつも通り、7時にきっかり目が覚めると何もやることがない。退屈しのぎにテレビで見たチャリティ団体に応募した。後輩が「また色々教えてください」と言っていたのを思い出し、会社に出向くのだが体よく追い出されてしまう。そしてその帰り、彼は自分が後輩の為に作成した資料が封を開けることなく、棄てられているのを目撃する。

 ムカつく気持ちと情けない気持ちになって帰ってくるとチャリティ団体から封書が帰ってきている。月々22ドル募金し、アフリカの少年の”養父”になってくれ、云々。こうして彼はンドゥグという少年の”養父”になった。端書に「子供に手紙を送ってあげてください。」彼は自己紹介がてらに手紙を書き始めるが、文章を書くというのは人を正直にさせる。日常の不満や妻の悪口などを書いてしまう。彼は手紙を投函しようと妻に一声かけて出かける。

 夕方、帰宅した彼が見たのは床につっぷした妻の姿だった。妻は急死してしまった。葬式に追われる中、しばらく会わなかった娘が帰ってくる。傍らにいるムーア髯の変な男は彼の婚約者。近日にも彼らは結婚する。妻はジーニーと連絡をとることが多かったが、彼はどうにもこのウォーターベッドを販売する、バツイチの薄らハゲが好きになれなかった。

 やがてジーニーとシュミットはどうでもいいことから決裂。シュミットは42年ぶりの独身生活に入る。煙になってその価値がわかるのは煙草と奥さん。彼は実は自分が妻を愛していたことを知るが、彼の親友が妻に当てた手紙を見て妻が自分を裏切っていたことを知る。もう何年も前のこととしても彼は許すことができなかった。妻、会社、友人、娘。。。全てを失ってしまった。。

 ストーリー自体は単調で批評や予告を見た方はご存知のように、ラストは娘の結婚式に出席したシュミットが最後にンドゥグの絵を見て号泣するシーンで終わっています。予告の「すべてを無くした日、いくつもの海と山を越え、人生最高の贈り物が届いた。」からしても、様々な批評を見てもこのラストはハッピーエンドにされています。

 しかし私はそうかな、と思う。ンドゥグは6歳の少年で読み書きもできません。シュミットがせっせと送った手紙は宣教師によって読み聞かされているかもしれませんが手紙の意味はほとんどわかってないでしょう。いや私は手紙は読まずに倉庫にほり込んであると思います。彼が会社の為に作成した資料のように。シュミットのことを何も知らない少年が描いた絵。そんな絵でもし、彼が報われたとなるとこれはハッピーエンドなんでしょうか?事実なんかどうでもいい、彼がどう思うかが問題だ、と思われる方もいらっしゃるでしょう。そういう考え方に一種の留保を認めつつも私はこれは悲劇だと思います。

 シュミットが求めたもの、それは「自分が生きた証」ではなかったのだろうか。何となく、彼は「自分が生きた証」は会社に、家族に残してきたと考えていた。この映画のラスト、彼はそれがすべて幻想であったことを知る。その彼が一枚の絵で報われる、とはあまりにも悲しすぎる。

 映画秘宝で町山智浩氏が指摘するようにこれは監督のアレクサンダー・ペインによる「生きる」なのである。ただ違うのは、渡辺課長が仕事で「自分が生きた証」を作れたのに対し、シュミットは何も残すことができなかった。実際のところ、それが真実なのだろう。

 この映画は、リアルと向き合わざるをえなかった男を描いているが決して絵空事ではない。何故なら人生とは「自分が生きた証」を自らに問うて行く旅なのだから。
 今日は1978年に公開された「赤穂城断絶」。もう何回も映画化されとる忠臣蔵を萬屋錦之助で撮ったシャシンです。同じ年、深作監督は錦之助を主演にした「柳生一族の陰謀」を撮り、大ヒットさせています。東映にしてみれば、柳の下の泥鰌じゃないが、東映時代劇のプリンス、錦之助がはじめて挑む忠臣蔵としても大ヒットさせたかったのだと思います。ただ、舞台裏はなかなか大変だったようで。。

 錦之助は内田吐夢の「宮本武蔵」に名優中の名優ですが、その名前の為に苦労もたくさんしています。特に任侠映画全盛の時代においてはその名前が時代劇復興を望むスタッフに利用されました。任侠映画を多くプロデュースした俊藤浩滋によると高倉健の出世作である「日本侠客伝」は元々、錦之助の主演で考えられたものでしたが、錦之助は「東映俳優労働組合」の代表にされたばかりで、断らざるを得ませんでした。結局、この「日本侠客伝」には他の役で出演し、多くの任侠映画にも出演していますが、東映と折り合いが悪かったのか1966年を最後に東映の作品には出演していません。後に錦之助プロを起こしたり、竹中労の誘いで「祇園祭」に主演したり、いろんなことをしていましたがあんまりうまく行っていたとは思えません。彼の10年ぶり以上の東映復帰作が大ヒットを博した「柳生一族の陰謀」。この後も東映は錦之助主演で何本か撮りますがたいした成績を残さずに終わりました。

 この映画が結局、あんまり面白くなかったのは錦之助と深作監督の意見がまるっきり食い違っていたことにあります。錦之助は時代劇の子ですから、忠臣蔵に対する憧れというのがあります。ところが深作監督は錦之助の思うような時代劇を撮るような人じゃない。何と大石のキャスティングに金子信雄を考えていたというのです。当然、二人は対立。結局、大石を彼がやり、金子信雄は吉良をやるという極めてオーソドックスなキャスティングになりました。もし、実現してたら今までになかった忠臣蔵となったやろうになあ。。

 忠臣蔵には、浪士達が決して一枚岩ではなく、堀部安兵衛のような急進派も多数いたことが描かれています。何が何でも仇討ち、という人もいればお家再興を第一に考える人もいたのに違いありません。そうした派閥を昼行灯を装いながら一本にまとめていく大石というのは凄い人だったのかもしれません。

 深作監督が大石に金子信雄をキャスティングしようとしたのはそうした大石の政治力を描こうとしたのではないでしょうか。当然、大石は山守のイメージで描かれるわけです。しかし深作監督がもっとも主張したいものはそうした大石に翻弄されていき、反主流派に行かざるをえない浪士達。つまり、広能を中心にもってきます。

 この映画ではそうした思いを貧乏の中で死んでいく橋本平左衛門に結集しますが対立軸が無い為に中途半端になっています。あまつさえ、錦之助にも「途中で倒れた同志を含め、仲間に恵まれた」と言わせてるし。

 消化不良な作品ですが、それでも千葉ちゃんと渡瀬の決闘は時代劇の歴史に残るほどの見事な立ち回りでしたし、吉良をドスに刺し殺す演出もなかなか面白い。

 錦之助が悪いというんじゃないけど、映画そのものの感想よりも深作監督が考える映画を見てみたかったなあ、と切に思うわけです。

 最後にキャストを並べておきますが、松方、千葉、遠藤、成田、渡瀬などのいつものキャストに加え、三船、丹波などの大物までズラリ。日本映画ファンとしてはマキノ映画の常連だった岡島艶子が出ていることに注目したい。夏樹陽子も出てるし、角川春樹もどこで出てたかわからんが出ています。

監督:深作欣二、製作:日下部五朗、 脚本:高田宏治、撮影:宮島義勇
撮影監督:仲沢半次郎、音楽:津島利章
出演:萬屋錦之介、島英津夫、藤岡琢也、峰岸徹、千葉真一、近藤正臣、森田健作、遠藤太津朗、加藤嘉、和崎俊哉、寺田農、安井昌二、野口貴史、 司裕介、汐路章、織本順吉、 西郷輝彦、丹波哲郎、金子信雄、茂山千五郎、田村亮、芦田伸介、渡瀬恒彦、福本清三、岩尾正隆、大滝秀治、成田三樹夫、若林豪、角川春樹、志賀勝、 藤本義一、 梅津栄、三田佳子、中原早苗、岡田茉莉子、原田美枝子、江波杏子、岡島艶子、 夏樹陽子、松方弘樹、三船敏郎

 最近、あまりにも日本映画がクソで本気で見に行くのがあほらしくなってきてます。先週末にやっと「TRY」を見てきましたが、あまりにもクソで本気で東映の行く先を案じてしまいました。問題なのはこれが社長の企画でめちゃくちゃお金かかっとることです。言わば勝負の作品だったわけですが、それを大森一樹に監督させた時点で東映はもう既におかしいんでしょうな。「ベンチがアホやったら野球がでけん」という言葉はどこにでも通用するのだな、と思った土曜日でした。

 今日、紹介するのは「GUN CRAZY Episode 3: 叛逆者の狂詩曲」と「GUN CRAZY Episode 4: 用心棒の鎮魂歌」。二本立てでございます。なんでこんな作品をわざわざ見に行くのか。ビデオでええやないかと思われる方もいるでしょうが、これの前のシリーズにあたる「GUN CRAZY Episode 1:復讐の荒野」は主演の米倉涼子の大根っぷりを差っぴいても大変よくできた作品でした。(但し菊川怜が出ている方はまったくあかんかった)

 このシリーズは70分程度の二本立てで単純なガンアクション映画です。70分というのはやや短いように思いますがこれで充分だと思います、正直なところ。厭きずにアクション見ていられるのはせいぜいこれぐらいでしょう。

 昨今、妙に長い映画が多いですが少しは見習って欲しい。「あずみ」とか言う2時間半近くも映画を撮った北村某とか言う、自称・世界が認めた才能のお方様には特に見習ってほしい。大体、黒沢、深作亡きあとの今の日本に2時間以上の鑑賞に耐え得る映画作れる監督はおらんのやから。こんな映画を公開する東宝もバカだが、「仁義無き戦い」が1時間40分の映画だということをよく肝に命じくように。スパイ・なんとか、という映画を作ってるおっさんも今からでも遅くないので1時間40分ぐらいにしとけ!

 ということで心意気だけでも私はこの作品を買うよ。肝心の中身でございますが一本ずつ見ていきましょう。まずは「GUN CRAZY Episode 3: 叛逆者の狂詩曲」ですが主演は仲谷かすみ演じる新米刑事。警視総監の娘である彼女は所謂エリート。その彼女が選んだのは親父が赴任したことがある15分署。射撃訓練も優秀でそれなりに自信はあったが、現場はそんなもんじゃない。面白半分で参加した現場で彼女が見たものは時限爆弾をつけられたチンピラ。先輩達は何とか彼を救おうと時限爆弾を解除しようとするが彼女は逃亡。このことが彼女のトラウマになり、犯人に発砲することができなくなってしまう。

 仲根かすみは演技がトホホなんだが、おっとりしたところをお嬢様刑事らしさとうまく結び付けてます。惜しむらくは、本来ならラストシーンで彼女が立派な女性刑事としてかっこよくならな、あかんのですがあんまり変わってないところでしょうか。それでも脇役の布施博の「はみ出しとるけど実は優秀」な刑事っぷりが実によいです。

 もう一人の主演である大谷みつほはテロ組織幹部の昔の恋人役として出演しています。正直、この人も演技はトホホなんですがアクションシーンになると俄然、光ります。室賀監督もパンフで書いてますが本当にアクションが好きなんでしょう。正直、かつての勢いが流行に乗り遅れた感のあるみつほ嬢ですが、こちらの道に進むのもいいかもしれん。

 次に「GUN CRAZY Episode 4: 用心棒の鎮魂歌」は題名の通り、実は主人公は加藤夏希ではなく、用心棒の又野誠治なのです。東南アジアのある国で日本企業支社長の令嬢が誘拐されます。会社は全力を尽くす、というがどうも交渉を真面目にやるつもりがないらしい。そんな状況に彼女の親友の平凡な女子大生が立ち上がります。支社長から託された金で彼女は、風俗嬢、ヘルスの店員を含む4人の用心棒を雇い、東南アジアに向うというお話。密かに「七人の侍」をモチーフにしているのが面白い。それから、誘拐グループから送ってくる写真は若王子さんの事件をパロディにしてますな。アクションにはめちゃくちゃ力入ってるのでそれを見るだけでも充分、価値があります。

 俗に言うVシネマですが、アクションシーンも豪華だし、脚本もよくまとめられています。ただ、問題なのはせっかくアイドルを出しているのに生かしておらん。おそらく監督の室賀厚は「俺はアイドル映画を撮るつもりはない!俺がやってるのはマカロニだ!」と思っててそれが画面からも痛いほどわかるんですが、それでええんやろか?才能のある監督だけに勿体無いような気がする。もっと面白くなるような気がするんやけど。

 まずは一言おわび。先週紹介した映画ですが、題名間違ってました。「豚と狼と人間」と書いてましたが正しくは「狼と豚と人間」でした。アホや。何間違ってるんや。メールで指摘していただいた方、ありがとうございました。

 今日は「人斬り与太 狂犬三兄弟」。1972年10月に公開された映画です。同年5月に公開された「現代やくざ 人斬り与太」のシリーズになりました。もっとも前作をご覧の方はご存知でしょうが、主人公は死んでいるので全く別の作品となっています。「人斬り与太」シリーズについては深作まつり第九夜「現代やくざ 人斬り与太」で散々述べたので詳しく書きませんが深作監督のフィルモグラフィーの中ではかなり重要な作品になっています。

 敵対する組織の会長を刺殺した村井組の若衆権藤(菅原文太)は懲役六年の刑を受けた。「出てきた時は金バッジよ!」と意気揚揚と監獄に向った権藤であった。そして六年後。「兄貴!長らくのお勤めごくろうさんでした!」と居並ぶ幹部連中。「権藤。ようやったのう。わりゃ、男の中の男じゃ」と迎えるオヤジ。そんな妄想をする権藤であったが、現実は違った。「兄貴!」迎えたのは彼の相棒だった大野一人。(田中邦衛)何と組同士が手打ちしていたのだ。幹部どころか、彼は邪魔者。

 自暴自棄になった権藤はショバ荒らしを敢行。淫売宿のマダムをレイプ。店を乗っ取って暴力バーを始める。田舎這い出しの娘(渚まゆみ)を強姦する、相手の賭場を荒らす、相手の商売の邪魔をするなどめちゃくちゃ始める。権藤、大野に賭場で知り合った蛇使いのオッサン(三谷昇)を加えた三人はたちまち、大手組織にとって目障りなものになる。

 特に会長を刺殺された志賀(今井健二)は三人を付回し、遂に蛇オヤジをぶち殺す。志賀の親分、佐竹(渡辺文雄)は村井組長(内田朝雄)に権藤の引渡しを要求。追い詰められた権藤は村井に一旦、頭を下げるが相手にされず。遂に大野にまで愛想をつかされる。。

 前作も大概めちゃくちゃな主人公でしたが、より無軌道な主人公を文太が好演。前作では多少、「一度負けちまった犬は噛み方を忘れちまうんだ」と男の悲しみを感じさせる台詞はありますが今度の主人公は女は犯す、カタギをシバくといいこと、全くなし。唯一、渚まゆみにやさしくするシーンはありますが、絶対に友達になりたくないタイプ。

 深作の作品には暴力に憑かれた男が多く出演しますが、大きく分けて二タイプに分かれます。一つには世の中に対する鬱憤を暴力で晴らす「人斬り与太 狂犬三兄弟」タイプ。ひたすら突っ走りますが結果的には誰かのパシリになってるに過ぎず、肝心の相手には一死も報いることができない。「現代やくざ 人斬り与太」で唯一の理解者である安藤昇を刺すシーンが印象的でした。「仁義の墓場」の石川力男、「広島死闘編」の山中もこのタイプです。

 それに対して、もうわけわからずに暴力にとり憑かれた狂犬。何者にもとらわれずに場面を血で汚し続けます。これには「広島死闘編」の大友勝利、「いつかギラギラする日」の木村一八、荻野目慶子。そして「バトルロワイヤル」の桐山和雄。(安藤政信がやった殺人マシーン)当然ながら前者の方が見ててキツイ。

 「仁義の墓場」並みに悲惨な話しなのに、何故かコメディのようにも見えてしまうのは、文太演じるこの権藤が大声を出すと妙に声が高くなるからかだろうか、憎めないキャラクターになっているからだと思います。文太はやはり二枚目半なんだろうと思う。「トラック野郎」もハマってたしね。もちろん、仲間が三谷昇と田中邦衛なのもあるけどね。

 田中邦衛は現在、「北の国から」ばかりクローズアップされてますが(あの話もよく見るとかなりめちゃくちゃですが)男になりきれずに小ズルく生きることしかできない小悪党を演じさせるとこの人の右に並ぶ人はおらんと思う。渚まゆみも相変わらず。今回は台詞は一つもなし。

 「人斬り与太」シリーズは深作の代表作に挙げる人も多くいます。平山秀幸は「人斬り与太」を見た時にこう感じたそうです。「明らかに時代が変わってきているなと思いました。それはまた、当時のある世相とも妙に合ってるような気がしましたね。」

 この1972年という年は、浅間山荘事件により学生運動が終結し、田中角栄の日本列島改造論による先進国への道を歩みだした年でもありました。なお横井庄一、小野田寛郎の帰還もこの年でした。戦後の一つの節目であったと思います。映画界においても仁侠映画が衰え、観客は新しい映画を求めていました。その翌年、「仁義無き戦い」が公開されるのです。

監督:深作欣二、企画:俊藤浩滋、脚本:松田寛夫、神波忠男、撮影:仲沢半次郎、音楽:津島利章
キャスト:菅原文太、田中邦衛、渚まゆみ、渡辺文雄、三谷昇、今井健二、内田朝雄、室田日出男、小林稔持
 今日、紹介するのは「星に願いを。」先週、ボロカスにけなした東宝映画です。私も正直、見るつもりなかったんですが、見る映画もなかったので先週の最終上映日に見てきました。しかしこれがよかったんです。やっぱり食わず嫌いはいけません。映画ファンを長いことやってますが、「面白そう!!」と思ってみたら「さっぱり」ということはよくありますが、「これはあかんやろう」と思ったら(・∀・)イイ!!ということは極めて稀です。稀だからかもしれませんが、この瞬間はとても嬉しい。映画ファン冥利に尽きます。監督は「非・バランス」「ごめん」の富樫森。全然知らんかったのですが、香港映画の「星願 あなたにもういちど」のリメイクらしいです。主演は「動物のお医者さん」も絶好調な吉沢悠と今やトップになった感もある竹内結子。

 北海道の小さな町。身寄り頼りの無い笙吾は事故で視力と声を失う。絶望の底に沈み、「死んだ方がよかった」とまで思う彼を救ったのは看護婦の奏だった。彼女の支援に彼は日常生活を送れるまでになる。ある日、街中で偶然彼女にあった笙吾は意外なことを彼女から告げられる。しかし、その晩に笙吾は車にはねられてしまう。病院に搬送される彼を目の前にした奏は何もできなかった。死んでしまった彼の死体に奏はすがりつく。

 その次の日の朝、笙吾は目を覚ます。神の思し召しで数日間、現世に残れるのだ。但し、別人として。視力と声を取り戻した彼は奏に気持ちを伝えようとする。しかし、奏は全てに絶望し、何もできないでいた。。

 ストーリーも単純だし、演出も多少甘いところがあります。でもそれでもこの映画はいいと思う。やや月並みな言い方をすると、キュンと来た。富樫監督は「非・バランス」にしても「ごめん」にしても口に出すのも恥ずかしいようなことをストレートに出しています。少々、ベタすぎるぐらいなんだけど、見ていてもあんまり苦にならない。これは富樫監督の才能でしょう。大切にせえよ。

 私が好きなシーンはリハビリ中に「好きな食べ物ある?」と聞かれた吉沢悠が画用紙に女の乳を書いて、隙をついてガシッと男らしく竹内結子の胸を揉むシーン。あんなに堂々としたセクハラは見たことない。カッコいいぞ。

 しかし、別人の姿を借りて現世に戻るという設定は浅田次郎の「椿山課長の七日間」にそっくりなんだが、どうなんだ?最もこの映画ではその設定はかなりどうでもいいみたいなんだが。

 竹内結子も「黄泉がえり」の時は何とも思わんかったけどこの映画では魅力的でした。頑張ってます。それから國村準も相変わらず素晴らしすぎる。音楽も(・∀・)イイ!!

監督:冨樫森
出演:竹内結子、吉沢悠、高橋和也、中村麻美、森羅万象、伊藤裕子、牧瀬里穂、國村隼
 世の中はやはり広いです。仕事を始めた私ですが同じ職場にいる人がかなりの映画ファンでした。年間鑑賞本数が何と300本。もちろん、スクリーンで、です。( ´_ゝ`)フーンと思われる方もいらっしゃるでしょうが、これ仕事しながら関西在住での達成です。東京と違い、関西は映画館が少ない。実際の話、300本見るのは時間よりも金よりもソフトが少ないのが問題なのです。年間100本みる私でも最近、見る映画がないなあ、と思っているのに。早く、私もそうなりたい。よし、頑張るぞ!その方と昼休みにお話したのですが、1時間も話して一度も聖林映画の話題が出なかったのが印象的でした。

少し遅くなりましたが毎月月末恒例の映画短評です。4月15日〜4月30日に見た映画です。

デアデビル 4/18 京極東宝3
★★
→これ当然、続編製作されるんやろね?映画の半分まで彼が才能を手に入れるまでの話で後半も中途半端でこれから面白くなるんやろなあ、と思う寸前で終わってしまいました。エピソード1としての作品ならまあこんなもんでしょ。頭にお○こマークつけたブルズアイが最高!

笑うイラク魂・民の声を聞け 4/19 シネ・ヌーヴォ

→イラクでの街頭インタビューがウリなんだけど、これイラクの情報省の支援で取ったもんなんですよね。横に役人がいてるのに好きなこと言えるほどイラクは開かれた国じゃないですよ。映画の目的としてはその時点で失敗してると思う。これなら、テレビでやってる番組と一緒。金払う価値なし。

許されざる者 4/19 シネ・ヌーヴォ
★★★★
→三池×武智コンビの第三作目。この二人はもしかして平成の深作×笠原になるかもしれないと勝手に興奮しています。2時間以上という尺の長い映画を厭きさせることなく、描ききってます。これだけの豪華キャストにたっぷり演技させながら、相変わらずオモロイ演出もやってくれています。

クレヨンしんちゃん/嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード 4/20 京極東宝1
★★★★★
→クレしんシリーズ第11作目。前作と打って変わった爆笑物。久々のブリブリざえもんが嬉しい。後半は若干もたつきましたがスピーディーな演出と水島さんの監督昇進を祝って星五つ!

シカゴ 4/20 MOVIX京都シアター6
★★★★
→久しぶりの本格ミュージカル映画。ストーリーをミュージカルに置き換える演出が楽しい。今まであんまり好きじゃなかったリチャード・ギアも最高のハマリ役。一番好きなのは腹話術のシーンとタップダンスのところ。ぜひご照覧あれ。

ぼくんち 4/26 梅田ガーデンシネマ2
★★★
→西原理恵子の漫画を阪本監督が映画化。カットやシーンにはキラリと光るものがあるが全体としてはちぐはぐ。意識的に一太のストーリーを省略したのはいただけない。脇を固めた役者は好きなんだけどね。

ベッカムに恋して 4/26 テアトル梅田2
★★★★
→日曜日の夕方の上映でしたが、ガラガラでした。題名が損したなあ。。でも作品自体は女の子が悩んで騒いで恋をして、という痛快青春群像。少々、ベタすぎるストーリーをサラリと仕上げた佳作

☆才女気質 4/27 みなみ会館
★★★★
→古き京都を舞台にしたホームドラマ。頭はええんやけど、気が強い為に誤解を受けやすい奥さんのお話。これがデビューとなった吉行和子や深作と結婚する前の中原早苗が出ています。昔のイノダコーヒーや昔の京都が楽しめる、京都人にとっては必見の映画。原ひさ子も出てるよ。

ホームページもよろしく
http://www.nkyo.net/~tetorapot/
 今日は1964年に作られた「豚と狼と人間」。ネットで検索しても妙に情報が出てこないなあ、と思ってたらこの映画がビデオ化したのは最近のこと。公開当時、あまりにもヒットしなかったので長らく放置されていた作品でした。この年、深作監督は黒澤の脚本「ジャコ萬と鉄」をリメイク。これは興行成績もよかったのですが、その次に撮ったこの作品は興行成績がよくない。その後、深作監督は66年の「脅迫」までホされます。なおこの作品は5月21日にDVDで発売されます。

 あるドヤ街に三人の兄弟がいた。長男は早くにドヤを棄てて、ヤクザになった。やがて次男も病気の母親と弟を棄ててヤクザの世界に身を投じた。が、あまりにもやり口が乱暴だったので長男が所属するヤクザ組織につぶされてしまう。三男は独り、ドヤ街に残り、母親を看取った。友人と母親の骨を川に流す。それが葬式だ。

 三男の前に次男が姿を表した。刑務所から出てきた次男は一発逆転にかけていた。俗に言う「闇取引」の現場を襲撃して金を奪おうと考えていたのだ。その手伝いを三男とその仲間に頼みに来たのだ。彼らは引き受ける。作戦は見事に成功。しかし一つ失敗があった。三男が金を隠してしまったのだ。次男は三男を拷問にかけるが、絶対に口を割ろうとしない。次男は三男の仲間思いの性格を利用して仲間を拷問にかける。。

 これは深作版「俺達には明日はない」ですな。オトナの世界にどっぷりつかってしまった長男、オトナになりきれない次男、そしてオトナを嫌う三男の対比が面白い。本来なら次男と三男は仲間なんでしょうが、中途半端にオトナの世界をのぞいてしまった次男は三男が憎らしくて仕方ない。言うならば、昔の自分を見ているようでたまらないのだ。三男はいまだに「仲間」や「友情」を信じていたのだ。次男は「世の中は騙しあい。やらなきゃ、やられる」と常に自分に言い聞かせています。

 長男が三国連太郎、次男が高倉健、三男が北大路欣也という凄すぎるキャスティングだけでもおなかいっぱい。他に深作映画には欠かせない内田朝雄(「仁義無き戦い」の大久保はん。大体、どの映画でもボスをやっている)や江原真二郎、これが深作作品の初出演となる中原早苗、そしてデビューしたての、ガリガリに痩せた石橋蓮司が出ています。

 序盤に「ウェストサイドストーリー」さながらのミュージカルシーンがあるのが楽しい。欣也や蓮司が指をならしながら、踊り狂います。でも楽しいのはここだけ。後はひたすら拷問、裏切りの連続でかなりへこみます。ラストの三国連太郎の表情がすごい。これを見るだけでも充分価値あります。深作のファンを名乗るならば、欠かせぬ作品であります。

監督:深作欣二 脚本:佐藤純彌、深作欣二
出演:北大路欣也、石橋蓮司、内田朝雄、中原早苗、八名信夫、三国連太郎、高倉健、室田日出男、江原真二郎

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